公募で問われているのは、警備への導入可能性
東京都は2026年10月23日、都庁舎を使うフィジカルAI実証事業の公募を開始した。第1期は、ドローンを用いた警備業務への導入可能性について、技術的・制度的・運用上の課題を検証する。フィジカルAIは、認識や判断を現実空間での機器の動作につなげる技術として、ここでは屋内の警備への適用を試す位置にある。
これは警備の無人化や人件費削減が達成されたという発表ではない。公募要領は、都が別途委託する有人警備との連携を前提としている。施設を管理する側が読むべき点は、ドローンを何台導入するかより、何を機器に任せ、人の判断をどこに残し、結果をどう評価するかである。
件数・期限・補助上限を分けて確認する
| 項目 | 公表されている条件 |
|---|---|
| 公表日 | 2026年10月23日 |
| 公募の提出締切 | 2026年11月16日17時、日本時間 |
| 質問受付 | 2026年11月2日正午、日本時間まで |
| 件数 | 1件。ドローンの台数は問わないと公募要領に記載 |
| 補助上限額 | 3,000万円。支給確定額や通常運用の年額ではない |
| 実施期間 | 補助金の交付決定日から2027年3月末まで |
| 実施場所 | 都庁第一本庁舎1・2階の屋内 |
出典は公募ページ(外部サイト、新しいタブで開きます)と公募要領(外部サイト、新しいタブで開きます)。交付決定は2026年11月下旬又は12月上旬の予定であり、事業者が選定済み・実証開始済みとは読まない。補助対象経費や支払条件は交付要綱等によるため、上限額をそのまま受取額や費用削減額に置き換えない。
実施時間は開庁日の午後7時頃から午後10時頃までとされ、詳細なルート、高度、日、回数、頻度は交付決定後に都と協議して決める。庁舎のすべての場所で24時間運用できる仕組みの調達ではない。募集条件は変更されうるため、応募前には公式ページの更新と質問回答を再確認する。
機器の検知と、警備上の判断は別の役割
公募要領pp.2–3は、巡回への適用可能性、不審者等の検知機能、防災センターとの情報連携を検証事項に挙げる。一方、警備上の判断や現場対応は認定を受けた警備事業者が行う。補助対象者は、機器の提供、運行管理、保守、検知情報の生成、技術的検証を担い、警備上の判断や警備行為を行わないとされる。
本稿では、機器が何かを検知した時刻、センターへ情報が届いた時刻、人が判断・対応した内容を区別して評価したい。見逃しや誤検知、通知が重なる状況も記録する設計が必要になる。これは本稿が提案する評価の観点であり、既に検知精度や対応時間が改善したという実績ではない。
停止できることを、実施体制として確かめる
ドローン稼働時は1名以上の監視員を置き、職員や警備員を含む第三者の頭上を飛行しないことが条件である。安全監視や人の警備との連携が残る実証なので、この条件だけから省人化人数を計算することはできない。
公募要領pp.3–4は、事故や障害が発生した場合だけでなく、そのおそれを検知した場合も、直ちにホバリング・着陸等のあらかじめ定めた安全な方法による停止など、必要な安全措置を求める。事故等の際は都へ直ちに第一報を行い、原因究明や再発防止に協力し、実証再開前に都の承認を得る。緊急の安全確保を、承認待ちのため遅らせるという意味ではない。
映像・センサーデータ・稼働ログ、ソフトウェア等の変更履歴、運用・保守・安全措置の記録を残すことも求められる。国内の保守体制と事故・障害から1時間以内の現場到着体制も条件にある。これらを後から足す付帯作業とせず、実証の人員・連絡経路・費用に含めて読む必要がある。
通常運用へ進めるかは、別に評価する
下表は本稿が提案する実証後の確認項目である。東京都が通常導入を決定した、又は本公募でその条件まで確定したという意味ではない。
| 確認すること | 実証と通常運用を比べる観点 |
|---|---|
| 機能と対象範囲 | 検知対象、運用できなかった条件、有人の確認が必要だった場面 |
| 安全と責任分担 | 停止判断、復旧手順、監視者・警備事業者・施設管理者の役割 |
| 維持費 | 監視、保守、通信、電池・機器更新、記録管理、保険等の負担 |
| 継続性 | 障害時の代替警備、データの受渡し、契約終了後の運用可能性 |
補助上限3,000万円と、通常運用の継続費用は同じ数字ではない。人件費を比べるなら、既存警備で何を実施しているかと、実証で追加する監視・保守等を対応づける。費用や省人化の効果が出るかどうかは、対象範囲と測定方法をそろえて検証する必要がある。
施設台帳や点検情報の統合は公共施設マネジメントDXで扱う。本稿は同じDX一般論を増やさず、特定の実証で人の判断と検証条件をどう読むかに絞る。まず公募要領から検証事項と役割分担を抜き出し、自施設なら何を測り、何が未確認なら通常運用へ進めないかを整理したい。
