用途変更とは
建築基準法別表第一の特殊建築物の区分と、学校から福祉施設への用途変更の位置づけ
用途変更で確認が要る面積。その用途に使う部分の床面積の合計がこれを超えるとき
200㎡
2018年の改正の前は100㎡
建築主事等が確認の申請書を受理してから審査する期間(建築基準法第6条第4項)
35日以内
工事が終わったら建築主事等に届け出る
養護老人ホームなど(六)項ロの施設で、防火管理者を定める収容人員(消防法施行令第1条の2第3項)
10人以上
(六)項ハは30人以上
建築基準法において、「用途変更」とは建築物の使用目的を変えることを指す。廃校を福祉施設に転用することは、この用途変更に該当する。
特殊建築物の区分
建築基準法の別表第一は、特殊建築物の用途を(一)項から(六)項に分けている。(二)項は病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもので政令で定めるもの、(三)項は学校、体育館その他これらに類するもので政令で定めるもの、(五)項は倉庫その他これに類するもので政令で定めるものである。(二)項の用途に類するものは児童福祉施設等である。児童福祉施設等には、児童福祉施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、障害者支援施設、地域活動支援センター、福祉ホーム、障害福祉サービス事業(生活介護、自立訓練、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る)の用に供する施設などが入る。
学校((三)項)から福祉施設((二)項)への転用は、別表第一の別の項への用途変更である。
廃校転用に関係する主な用途変更パターン
| 転用前(学校) | 転用後 | 別表第一の区分 |
|---|---|---|
| 小・中学校 | 老人福祉施設(デイサービス・特養等) | (三)項から(二)項(児童福祉施設等) |
| 小・中学校 | 障害者支援施設・就労継続支援事業所 | (三)項から(二)項(児童福祉施設等) |
| 小・中学校 | 保育所・認定こども園 | (三)項から(二)項(児童福祉施設等) |
| 小・中学校 | 倉庫 | (三)項から(五)項 |
| 小・中学校 | 事務所 | 特殊建築物ではない用途へ |
確認申請の要否(200㎡基準)
その用途に使う部分の床面積で数える200㎡、類似の用途、2018年の改正、審査の期間と工事完了の届出
確認が要る面積と類似の用途
建物の用途を変えて、別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものにする場合は、確認の手続きの規定が準用される。用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間のものである場合は除かれる。
200㎡を超えるかは、校舎全体の延べ床面積ではなく、新しい用途に使う部分の床面積の合計で見る。校舎の一部だけを福祉施設にするときも、その用途に使う部分の面積で数える。
確認が要らない類似の用途には、劇場・映画館・演芸場、公会堂・集会場、診療所(患者の収容施設があるもの)・児童福祉施設等、ホテル・旅館、下宿・寄宿舎、博物館・美術館・図書館、体育館・ボーリング場・スケート場・水泳場・スキー場・ゴルフ練習場・バッティング練習場などの組があり、学校はどの組にも挙がっていない。学校を児童福祉施設等に変え、その用途に使う部分が200㎡を超えれば、確認が要る。
2018年建築基準法改正の内容
2018年(平成30年)の建築基準法の改正は、既存建築ストックの活用のため、用途変更に伴って建築確認が必要となる規模を見直し、確認が不要な規模の上限を100㎡から200㎡にした。空き家等を福祉施設・商業施設等に用途変更する際に、大規模な改修工事を不要とするとともに手続を合理化し、既存建築ストックの利活用を促進するとしている。
200㎡超か否かによる手続きの違い
新しい用途に使う部分が200㎡を超える場合(確認が要る)
- 工事に着手する前に確認の申請書を出し、確認済証の交付を受ける(法第87条第1項で準用する第6条第1項・第8項)
- 建築主事等は、申請書を受理した日から35日以内に、計画が建築基準関係規定に適合するかを審査する
- 用途変更では、工事を完了したときの第7条第1項の「建築主事等の検査を申請しなければならない」が「建築主事等に届け出なければならない」と読み替えられる。完了検査の申請ではなく、届出である
新しい用途に使う部分が200㎡以下の場合(確認は要らない)
- 確認の手続きは要らないが、用途を変えた建物は、新しい用途の建築基準法の規定に合わせる
- 消防用設備等の設置の届出と検査は、この面積とは別に、消防法の区分で決まる(福祉施設特有の注意点の節)
- バリアフリー法の基準適合義務は、用途を変える部分の床面積の合計が2,000㎡以上のときにかかる(同じ節)
既存不適格の建物で見る点
建築当時の基準には合っていたが、その後の改正で現行の規定に合わなくなった建物(既存不適格建築物)の用途を変えるときは、どの規定を新しい用途に合わせるかが問題になる(緩和措置の節)。確認が要るかどうかにかかわらず、設計の前に建築士と確認検査機関に相談する。
主な改修義務
防火区画・排煙設備・廊下の幅・直通階段・内装制限の条文上の条件
廃校を福祉施設へ転用する場合、以下の分野の規定を確かめる。
1. 防火区画
防火区画は、火災の延焼を防ぐために、建物の中を準耐火構造の床や壁、防火設備で区切る決まりである。
面積区画
準耐火建築物や、特定主要構造部を耐火構造とした建築物などで延べ面積が1,500㎡を超えるものは、床面積の合計1,500㎡以内ごとに、1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床・壁か特定防火設備で区画する。スプリンクラー設備など自動式の消火設備を設けた部分は、その床面積の2分の1を除いて数える。
竪穴区画(縦方向の区画)
主要構造部を準耐火構造とした建築物などで、地階か3階以上の階に居室があるものは、吹抜き、階段、昇降機の昇降路、ダクトスペースなどの竪穴部分を、その他の部分と準耐火構造の床・壁か防火設備で区画する。
用途区画(特殊建築物の区画)
建築物の一部が法第27条第1項各号のいずれかに該当する場合は、その部分とその他の部分とを、1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床・壁または特定防火設備で区画しなければならない。(二)項の用途は、3階以上の階をその用途に使うときか、2階のその用途に使う部分の床面積の合計が300㎡以上のときに、法第27条第1項に当たる。老人福祉施設や障害者支援施設などの児童福祉施設等を2階に置くときも、面積を確かめる。
2. 排煙設備
法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの用途に供する特殊建築物で延べ面積が500平方メートルを超えるものには、排煙設備を設けなければならない。
学校のままなら、この義務はかからない。同条の適用除外に「学校(幼保連携型認定こども園を除く)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場」が挙がっている。廃校を学校以外の用途に変えると、この除外から外れる。排煙設備が要るかどうかは、転用後の用途で決まる。
(二)項の用途に供する特殊建築物のうち、準耐火構造の床・壁か防火設備で区画された部分で床面積が100㎡以内のものは、排煙設備の規定から除かれる。火災のときに避難上支障のある高さまで煙やガスが降りてこない部分として、天井の高さや壁・天井の仕上げの材料などを考えて国土交通大臣が定めるものも除かれる。どの除外が使えるかは、平面図をもとに建築士と確かめる。
3. 避難施設(廊下の幅・直通階段)
廊下の幅などの規定は、別表第一(い)欄(一)項から(四)項までの特殊建築物、階数が3以上の建築物、延べ面積が1,000㎡を超える建築物などに適用する。居室の床面積の合計が200㎡(地階は100㎡)を超える階の廊下は、廊下の左右に居室があれば1.6m以上、その他は1.2m以上とする。小学校・中学校などの児童用・生徒用の廊下は、左右に居室があれば2.3m以上、その他は1.8m以上である。
避難階以外の階で、児童福祉施設等の主たる用途に供する居室の床面積の合計が50㎡を超える階には、避難階か地上に通じる2以上の直通階段を設ける。主要構造部が準耐火構造か不燃材料で造られている建物では、50㎡が100㎡になる。
福祉施設の種類ごとの設備の基準(事業者の指定の基準)にも、廊下の幅などの定めがあることがある。指定を受ける自治体の担当課に、建築基準法とあわせて確かめる。
4. 内装制限
(二)項の用途は、1時間準耐火基準に適合する耐火建築物・準耐火建築物なら3階以上の部分の床面積の合計が300㎡以上、1時間準耐火基準に適合しない準耐火建築物なら2階の部分の床面積の合計が300㎡以上、その他の建築物ならその用途に供する部分の床面積の合計が200㎡以上のときに、内装の制限を受ける。居室の壁(床面からの高さ1.2m以下の部分を除く)と天井は難燃材料(3階以上の階に居室がある建物の居室の天井は準不燃材料)、居室から地上に通じる主たる廊下・階段などの壁と天井は準不燃材料で仕上げる。
緩和措置
既存不適格の建物を用途変更するときの準用、工事を分けて進める全体計画の認定、階避難安全検証法
既存不適格の建物を用途変更するとき
既存不適格の建物の用途を変える場合は、第27条、第28条、第35条などの規定が準用される。類似の用途相互間の変更で、修繕や模様替をしないか大規模でない場合などは除かれる。あわせて第86条の7第2項・第3項が用途変更に準用され、第27条などは別の建築物とみなせる独立部分が二以上ある建物で用途を変える独立部分以外に、第28条(採光など)や第35条の廊下等に関する基準などは用途を変える部分以外に、適用しない。
工事を分けて進めるとき(全体計画の認定)
既存不適格の一の建物で、用途の変更に伴う工事を二以上の工事に分けて行う場合、特定行政庁が全体計画を認定すると、最後の工事に着手するまで第27条等の規定を準用しない。認定の基準は、工事を分けることが建物の利用状況などからやむを得ないこと、全ての工事の完了後に建物と敷地が法令に適合すること、どの工事の完了後も安全上・防火上・避難上の危険性などが増えないこと、の3つである。
避難の安全を計算で確かめる方法
主要構造部が準耐火構造か不燃材料で造られた建物の階で、階避難安全検証法によって階避難安全性能があると確かめたもの(または国土交通大臣の認定を受けたもの)は、廊下の幅(第119条)、排煙設備(第126条の2)、内装(第128条の5の一部)などの規定を適用しない。仕様どおりに改修すると費用がかさむ部分があるときは、この方法が使えるかを建築士と確かめる。
福祉施設特有の注意点
スプリンクラー設備、バリアフリー法、消防用設備等の設置の届出と検査、防火管理者
スプリンクラー設備の設置義務
消防法施行令は、スプリンクラー設備の要否を、別表第一の用途の区分と、面積・階で定めている(第12条)。
| 施設の例 | 別表第一の区分 | スプリンクラー設備が要る主な場合(第12条) |
|---|---|---|
| 養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、避難が困難な要介護者を主として入居・宿泊させる有料老人ホームや小規模多機能型居宅介護の施設、認知症高齢者のグループホーム | (六)項ロ(1) | 面積にかかわらず(延焼を抑制する構造として総務省令で定めるものを除く) |
| 障害者支援施設、短期入所・共同生活援助を行う施設(避難が困難な障害者等を主として入所させるもの) | (六)項ロ(5) | 延べ面積275㎡以上。介助がなければ避難できない者を主として入所させるものは面積にかかわらず(延焼を抑制する構造のものを除く) |
| デイサービス、上の欄以外の小規模多機能型居宅介護の施設 | (六)項ハ(1) | 平屋建以外で床面積の合計6,000㎡以上か、地階・無窓階で床面積1,000㎡以上の階、4階以上10階以下で床面積1,500㎡以上の階など |
| 保育所、幼保連携型認定こども園 | (六)項ハ(3) | 同上 |
| 児童発達支援、放課後等デイサービス | (六)項ハ(4) | 同上 |
| 生活介護、就労移行支援、就労継続支援 | (六)項ハ(5) | 同上 |
(六)項ハの施設では、面積だけでなく、どの階に置くかと、その階が無窓階に当たるかで決まる。校舎の図面で、使う階と床面積を確かめる。
バリアフリー法への対応
建築主等は、特別特定建築物の政令で定める規模以上の建築(用途の変更をして特別特定建築物にすることを含む)をするときは、建築物移動等円滑化基準に適合させなければならない。地方公共団体は、条例で対象の特定建築物を加えたり、規模を政令より小さく定めたりできる。義務の対象にならない場合も、基準に適合させる努力義務がある。法第14条第1項の政令で定める規模は、床面積の合計2,000平方メートル(公衆便所は50平方メートル)。用途の変更の場合は、変更に係る部分の床面積で見る。特別特定建築物には、老人ホーム、福祉ホームその他これらに類するもの(主として高齢者、障害者等が利用するものに限る)、老人福祉センター、児童厚生施設、身体障害者福祉センター、一般公共の用に供される体育館が入る。廃校の一部だけを転用する場合、この2,000平方メートルは転用する部分で数える。
建築物移動等円滑化基準の便所の規定では、不特定かつ多数の者が利用し、または主として高齢者、障害者等が利用する便所を設ける階で、そのうち1以上に車椅子使用者用便房を1以上設ける(地上階で、近くに車椅子使用者用便房を設けた施設がある場合などを除く)。出入口の段差、廊下や傾斜路の構造、昇降機などの基準もあるので、条例とあわせて設計の前に確かめる。
消防法上の手続き
建築基準法の確認とは別に、消防法の手続きがある。
消防用設備等を設置したときは、消防長又は消防署長に届け出て検査を受ける。対象は、(六)項ロと、(六)項ハのうち利用者を入居・宿泊させるものは面積にかかわらず、(六)項ハのその他は延べ面積300㎡以上などである。簡易消火用具と非常警報器具は除く。
防火管理者を定める防火対象物は、(六)項ロなら収容人員10人以上、(六)項イ・ハ・ニなどなら30人以上、学校など(七)項なら50人以上である。
どの消防用設備等が要るかは、設計の前に所轄の消防署に相談して確かめる。
工事が終わったときの手続き
用途変更の確認を受けた工事が終わったら、建築主事等に届け出る(法第87条第1項で読み替えて準用する第7条第1項)。消防用設備等は、設置の届出をして検査を受ける。福祉サービスの事業者の指定の申請で求められる書類は、指定をする自治体の担当課に確かめ、開業日から逆算して日程を組む。
改修費の目安
この表の金額は、この記事が置いた前提である。公表された統計ではない。施設の状態・地域・業態で大きく変わるので、自分の案件では見積書と近隣の実績に置き換えて使う。
廃校を福祉施設に転用する際の主要な改修工事と費用の目安をまとめる。
| 改修項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| スプリンクラー設置 | 150〜300万円(200㎡建物の場合) | ㎡あたり8,000〜15,000円 |
| 防火区画改修(防火扉・防火壁) | 50〜200万円 | 改修範囲による |
| バリアフリー(スロープ・トイレ) | 100〜300万円 | 仕様・フロア数による |
| 排煙設備 | 50〜200万円 | 機械排煙の場合 |
| 内装改修(準不燃仕上げ) | 100〜500万円 | 改修面積による |
| 合計概算 | 500〜1,500万円 | 施設規模・状態による |
文部科学省の事例集に載っている改修費は、福祉・子育て・医療の用途でも、総額約400万円から約10億円まで開く。事例ごとの施設の規模と改修費用は「廃校の改修費:費目別の内訳と事例」に表にした。
実務上のポイント
確認申請前の事前相談
確認の申請を出す前に、建築主事または確認検査機関に相談する。廃校のように既存不適格の規定や用途区画が絡む計画では、事前の相談で問題点を先に洗い出せる。
建築士の早期関与
建築士でなければ設計や工事監理ができない建築物の決まりは、新築する場合と、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合が対象である。用途変更だけの工事は挙がっていないが、どの規定をどこまで合わせるかの判断には建築の専門知識が要る。設計の段階の早いうちから建築士に相談する。
関係部署との連携
廃校の用途変更には、建築基準法の担当(確認)、消防署(消防用設備等)、福祉の担当部署(事業者の指定)、教育委員会と文部科学省(財産処分)が関わる。手続きが並行して進むので、早い段階で各部署に計画を伝えておく。
内部リンク
廃校の財産処分:手続きが要らない場合、報告で済む処分、国庫納付金と基金、必要書類と提出の時期
手続きが要らない場合、報告で済む処分と承認が要る処分、国庫納付金の算定と基金への積立て、必要書類と提出の目安
廃校の福祉施設転用と住民説明会
NIMBY問題への対処法と住民合意形成のポイント
廃校の財産処分手続きについては「廃校の財産処分」を参照されたい。廃校のNIMBY問題への対処については「廃校の福祉施設転用と住民説明会」で詳しく解説している。
次にやること
この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。
| 順 | やること | どこで | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 入居予定者を1者でも先に見つける。用途を決めてから探すのではなく、借りる人を決めてから用途を決める | サウンディング、地元事業者 | 1〜3か月 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を出す。無ければ先に実施する | 営繕担当 | 2〜3か月 |
| 3 | 2を踏まえた改修費の概算を取る。解体費も同時に出して比べる | 設計事務所 | 1か月 |
| 4 | 財産処分の手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎を処分制限期間内に学校以外に使うときは文科省の承認が要る(要件を満たせば報告で済む) | 教育委員会、文科省 | 1〜2か月 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生・地域団体に説明の場を持つ | 同窓会、自治会 | 1か月 |
1を飛ばすと、用途だけ決まって借り手が現れない状態になる。