売却と貸付を検討するため、自治体の募集条件と活用事例を比較する。文部科学省の実態調査の調査項目は、廃校の数、活用の状況、活用に向けた検討の状況の3つである。売却と貸付の別は調べていないので、全国の割合は出せない。この記事は、同省の活用用途を募集している廃校施設の一覧で、自治体が譲渡と貸与のどちらを示しているかを数え、金額と期間を書いた募集を並べた。あわせて、同省の事例集で譲渡か有償の貸与を選んだ14事例の改修費用を載せる。条文での違いは廃校の売却と貸付を条文で比べるの記事に、国庫補助を受けた建物の財産処分の手続きは廃校の財産処分の記事に載せた。
譲渡と貸与の両方を示した募集
124件
活用用途を募集している廃校施設の一覧(令和8年9月1日現在の情報に基づく版を9月14日に取得)で、目次に載りページがある455件のうち。この記事で数えた数
譲渡か貸与かを書いていない募集
209件
事業提案やアイデアの募集、サウンディング型市場調査など。同じ455件のうち
事例集で譲渡か有償の貸与を選んだ事例
14事例
譲渡の5事例は、改修費用の欄に自治体負担額が書かれていない
募集中の廃校で自治体が示している形
文部科学省の一覧の様式と、455件で譲渡と貸与のどちらを示しているかを数えた結果
文部科学省は、地方公共団体の希望に基づいて、各地方公共団体が活用方法や利用者を募集している未活用の廃校施設等の情報を集め、一覧にして公表している。一覧は毎月更新され、いま載っているのは令和8年9月1日現在の情報に基づく版で、目次と、北海道から九州2(鹿児島)までの地方別のPDF12ファイルで出ている。地方別の一覧は全国統一の様式で、施設ごとに募集内容、貸与・譲渡条件等、備考の欄がある。作成要領は、募集内容の欄に募集する内容を具体的に書くよう求めて「譲渡先募集、貸与先募集(3年間)、アイデア募集」を例に挙げ、貸与・譲渡条件等の欄は募集に当たっての条件や希望する用途などを自由に書く欄として「賃料(月額)○○円」「売却予定価格○○○円」などを例に挙げている。
譲渡と貸与の示し方を数えた結果
9月14日に地方別の一覧12ファイルを取得し、目次に載る456件のうち地方別の一覧にページがある455件を、募集内容、貸与・譲渡条件等、備考の3つの欄で読んだ。譲渡(売却、売払い、売買、所有権移転を含む)と貸与(貸付、賃貸借、賃料を含む)のどちらが書いてあるかで分け、いまの使い方(体育館を地域の団体に貸していることなど)を書いた箇所は数えていない。結果は次のとおりである(この記事で数えた数)。
| 示している形 | 件数 |
|---|---|
| 譲渡と貸与の両方 | 124 |
| 貸与だけ | 69 |
| 譲渡だけ | 42 |
| 土地は貸付、建物は譲渡のように分けたもの | 11 |
| どちらも書いていない(事業提案の募集、利活用アイデアの募集、サウンディング型市場調査など) | 209 |
| 計 | 455 |
目次にあって地方別の一覧にページが無いのは、福岡県八女市の横山小学校1件である。地方別の一覧には、目次に無い栃木県日光市の湯西川小中学校と福岡県八女市の鶯西小学校のページもあり、この2件は数えていない。一覧は毎月差し替わるので、開いた時点の版とこの記事の数は合わないことがある。
譲渡か貸与かを書いた246件のうち、両方を示したのが124件ある。この124件は、譲渡でも貸与でも応募できる書き方である。宮古市のように両方の希望があれば売却を優先するとしたものや、佐野市のように売却を優先して貸付も可能としたものもある。どちらも書いていない209件は、ページを見ても形が分からないので、担当窓口に聞いて確かめる。
金額と期間を書いた募集
売るときの金額、貸すときの金額、無償や減額、契約期間を書いた募集を、地方別の一覧から並べた
売るときの金額
宮城県大崎市は、6校の利活用提案の募集に「売却時の参考価格」を載せ、予定価格ではないと断っている。西大崎小学校4,200万円、上野目小学校3,500万円、池月小学校9,800万円、高倉小学校1億3,600万円、東大崎小学校1億8,500万円は令和7年6月の市の試算額で、清滝小学校1億5,200万円は令和6年10月の不動産鑑定時点価格で、どれも消費税等を除く。岩手県宮古市の茂市小学校と和井内小学校は、売却又は貸付の利活用希望を募り、両方の希望がある場合は売却を優先する。
茨城県小美玉市の下吉影小学校は、建物の売却予定価格を246,015,000円(消費税含)、土地の売却予定価格を112,950,000円とし、「公益性」がより高い提案と認められる場合は建物を「無償譲渡」とすることがあるとしている。栃木県那須塩原市の旧大貫小学校等は、売却予定価格5,660,000円以上で、現況有姿での一括取引とし、施設改修や光熱水費等の費用は全て提案者の負担としている。栃木県佐野市の4校は、売却を優先し、貸付も可能としている。
貸すときの金額
岩手県一関市は、3校の事業提案の募集に貸付料の概算額を載せている。旧老松小学校は年額487,300円、旧永井小学校は年額1,518,770円、旧新沼小学校は年額602,800円である。栃木県日光市の旧日光中学校は、民間提案制度による公募型の事業者募集で、年額の賃料を約450万円と想定している。
兵庫県豊岡市の奈佐小学校は、公募型プロポーザル方式で、土地と建物を一括で10年間貸与する。基準貸付価格は年額2,658,000円で、利用促進のため建物は無償で貸し付け、土地の貸付料だけを設定し、基準貸付価格を上回る額も下回る額も提案できる。兵庫県三木市の星陽中学校は、10年間の貸与先募集で、賃料を月額665,000円(別途消費税及び地方消費税)としている。
東京都足立区の旧北鹿浜小学校は、土地を貸し付けて建物を譲渡する事業提案の募集で、令和6年度の公募のときの土地貸料の最低提案限度額を月額1,667,000円とし、備考に「建物の無償譲渡(議決された場合)」と書いている。広島県福山市の山野中学校は、校舎3階の一部を貸付の対象にし、3階の教室の賃料の最低価格を年66,331円からとして、教室ごとに基準価格が違うとしている。
無償や減額を書いた募集
兵庫県丹波市の芦田小学校は貸付料を土地建物とも無償とし、旧鴨庄小学校は貸付料を土地建物とも無償も可としている。福島県西会津町の群岡小学校は、原則として有償による貸与とし、公共公益的利用のほか町長の認めるものは無償とする。福島県川俣町の富田小学校は、町条例により貸付料の無償、減額の措置があると書いている。宮城県山元町の坂元中学校は、有償での貸借を前提とし、公益に資する事業であれば減額・無償での貸借も検討するとしている。長野県佐久穂町の旧八千穂小学校は、譲渡先と貸付先を募り、校舎等の建物は無償譲渡とするとしている。
無償や適正な対価に満たない額で貸すか譲るには、地方自治法で条例か議会の議決が要る。川俣町は町条例を、足立区は議決を書いている。条文は廃校の売却と貸付を条文で比べるの記事に載せた。
期間を書いた募集
京都市の元西陣小学校など9校は、原則として敷地全面を貸し付けて建物を譲渡し、契約期間を10年以上80年以内としている。大阪市のもと西淡路小学校は、土地は活用事業者に事業用定期借地権設定契約で49年11か月貸し付け(居住の用途は不可)、建物は、屋体棟を活用事業者に随意契約で売却し、屋体棟以外は活用事業者が全ての建物等を基礎部分・杭等も含めて解体撤去するとしている。兵庫県多可町の3校は、公募型プロポーザルで候補者を選び、土地建物賃貸借契約で貸付期間を5年間としている。
栃木県栃木市の皆川中学校は最大10年の貸与先募集で、栃木県真岡市の山前南小学校は10年以上の事業の継続を、栃木県大田原市の旧須佐木小学校は概ね5年以上の賃貸借を条件にしている。北海道新ひだか町の春立小学校と鳧舞小学校は、所有権移転から3年以内に提案した事業を始め、所有権移転から10年間は提案した事業の用に活用することを条件にし、備考に文部科学省から財産処分の承認を得る必要があると書いている。
事例集で譲渡と有償貸与を選んだ14事例
事例集の14事例の契約の形と改修費用、自治体負担額が書かれているかどうか
文部科学省の事例集は47事例を載せ、事例ごとに、活用事業者名に続けて契約の形を、改修費用の欄に総額と負担の内訳を書いている。契約の形が有償譲渡、土地は有償譲渡で建物は無償譲渡、有償貸与、土地は有償貸与で校舎は無償貸与の事例は14あり、改修費用の欄は次のとおりである。
| 事例 | 元の学校と活用後の施設 | 契約の形 | 改修費用(事例集の書き方) |
|---|---|---|---|
| 北海道小清水町(事例1) | 旧北陽小学校、せんべい工場 | 有償譲渡 | 総額約4.5億円(事業者負担)。補助金はなし |
| 茨城県行方市(事例8) | 旧大和第三小学校、体験型農業テーマパーク | 有償譲渡 | 総額約22億円(うち事業者負担額約17億円、補助金額約5億円) |
| 熊本県菊池市(事例43) | 旧水源小学校、酒蔵 | 有償譲渡 | 総額約2.5億円(事業者負担)。補助金はなし |
| 青森県大鰐町(事例2) | 旧大鰐第三小学校、生ハム工房 | 土地は有償譲渡、建物は無償譲渡 | 総額約3,705万円(事業者負担額及び補助金額) |
| 新潟県長岡市(事例15) | 旧島田小学校、障害福祉サービス事業所 | 土地は有償譲渡、建物は無償譲渡 | 総額約2億3,500万円(うち事業者負担額約1.8億円、補助金額約5,500万円) |
| 栃木県那珂川町(事例9) | 旧馬頭東中学校、製材工場とバイオマス発電所 | 有償貸与 | 製材工場約7億円、発電所約14億円(うち事業者負担額は2事業者合計約11.5億円、補助金額は2事業者合計約9.5億円) |
| 山梨県身延町(事例19) | 旧中富中学校、ドローン開発・研究等施設 | 有償貸与 | 総額約100万円(事業者負担)。補助金はなし |
| 静岡県島田市(事例22) | 旧湯日小学校、グランピング施設 | 有償貸与 | 総額約4億600万円(うち自治体負担額約600万円、事業者負担額約3億7,600万円、補助金額約2,400万円) |
| 京都府福知山市(事例26) | 旧中六人部小学校、いちご農園と農業体験型施設 | 有償貸与 | 総額約2,600万円(事業者負担)。補助金はなし |
| 兵庫県養父市(事例28) | 旧浅野小学校、スナップリング製造工場 | 有償貸与 | 総額約2億円(事業者負担) |
| 岡山県笠岡市(事例33) | 旧大島東小学校、シェアアトリエ | 有償貸与 | 総額約708万円(自治体負担)。補助金はなし |
| 福岡県宮若市(事例40) | 旧吉川小学校、AI研究開発施設 | 有償貸与 | 総額約3億2,684万円(うち自治体負担額約1億1,768万円、補助金額約2億916万円) |
| 長崎県西海市(事例42) | 旧松島小学校、放課後児童クラブ | 有償貸与 | 総額約814万円(うち自治体負担額約814万円、事業者負担額約1,000円) |
| 岩手県西和賀町(事例3) | 旧越中畑小学校、介護施設 | 土地は有償貸与、校舎は無償貸与 | 総額約4,150万円(うち事業者負担額約850万円、補助金額約3,300万円) |
譲渡の5事例は、どれも改修費用の欄に自治体負担額が書かれておらず、事業者負担か、事業者負担と補助金額で書かれている。有償貸与の8事例は、自治体負担額が無いものが4事例(那珂川町、身延町、福知山市、養父市)、自治体負担額を含むものが4事例(島田市、笠岡市、宮若市、西海市)で、半分ずつに分かれる。
売るか貸すかを決める前に確かめること
公用・公共用で使う見込み、無償や減額、国庫補助、貸付の期間の4つと、それぞれの条文と通知
- 将来、公用・公共用で使う見込みがあるか。貸し付けた普通財産は、貸付期間中に公用又は公共用に供するため必要を生じたときに長が契約を解除でき、借受人は損失の補償を求めることができる。売払いと譲与に準用されるのは、用途と期日・期間を指定したときの解除だけである。
- 無償や適正な対価に満たない額で出すか。普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくして譲渡し、若しくは貸し付けてはならない(第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除く)。
- 国庫補助を受けた建物か。有償による処分は、国庫補助事業の完了後10年以上たった建物等でも承認申請が要り、国庫納付金相当額以上を学校の施設整備に充てる基金に積み立てれば国庫納付金は要らない。10年以上たった建物等の無償による処分は、学校施設に不足を生じる場合などを除いて、報告書で済む。
- 貸すなら、期間と更新をどう決めるか。更新の無い借地権は、存続期間50年以上の定期借地権か、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする10年以上50年未満の借地権(公正証書で契約する)で、更新の無い建物の賃貸借は公正証書による等書面で契約し、あらかじめ書面を交付して説明する。
それぞれの条文と手続きは、廃校の売却と貸付を条文で比べると廃校の財産処分の記事に載せた。
廃校の売却と貸付を条文で比べる:行政財産と普通財産、議会の議決、相手方の選び方、契約後の解除、貸付の期間
行政財産のままでは売れないこと、議会の議決が要る場合、競争入札と随意契約、契約後に自治体が解除できる場合、借地借家法の期間と使用貸借
廃校の財産処分:手続きが要らない場合、報告で済む処分、国庫納付金と基金、必要書類と提出の時期
手続きが要らない場合、報告で済む処分と承認が要る処分、国庫納付金の算定と基金への積立て、必要書類と提出の目安
廃校活用の進め方:実態調査の数、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分の手続き、国の補助制度
実態調査の数と用途が決まらない理由、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分が報告で済む場合と国庫納付金が要らない場合、国庫補助制度の一覧
次にやること
廃校の活用方針と改修予算を検討する際は、次の事項を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 活用に関心のある事業者を探す。希望する用途や必要な条件を聞き、活用方針の検討に反映する | サウンディング、地元事業者 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を確認する。未実施の場合は、調査の範囲と実施方法を検討する | 営繕担当 |
| 3 | 調査結果に基づいて改修費を見積もり、解体する場合の費用と比較する | 設計事務所 |
| 4 | 財産処分に必要な手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎は、活用方法と処分制限期間に応じて、文科省の承認申請または報告の要件を確認する | 教育委員会、文科省 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生や地域団体に活用方針を説明し、意見を聞く | 同窓会、自治会 |
用途を確定する前に事業者の関心と必要な条件を確認し、借り手の見込みを踏まえて活用方針を検討する。