春木川パークの概要
西日本初の立体都市公園の全体像。未利用地の長年の課題と解決策としてのPark-PFI
市への使用料等(事業者の計画額)
約1,400万円
2021年12月選定委員会の価額審査
公園敷地面積
9,238㎡
全面開業
2024年12月
西日本初の立体都市公園
別府市の春木川パークは、西日本で初めて立体都市公園制度を活用して整備された都市公園である。都市計画決定から長年未整備のまま放置されていた公園用地に対し、Park-PFI(公募設置管理制度)を導入することで、民間の資金とノウハウを活用した公園整備を実現した。
この事例が注目される理由は3つある。
第一に、建物の屋上に公園を配置する「立体化」という手法で、限られた土地に商業機能と公園機能を両立させたこと。第二に、地元企業が主導するSPC(特定目的会社)による事業運営で、大手コンサルに依存しない地方都市型のPark-PFIモデルを示したこと。第三に、事業者の計画で市への使用料等を年約1,400万円と見込み、公園を「コスト」から「収入源」に転換する設計を示したことである。
2024年12月7日、春木川パーク西側エリアが全面開業し、人工芝グラウンド・リハビリ運動施設・学習施設・カフェ等が供用開始された。
立体化構造の設計
1階商業施設・2階公園機能の重層化の技術的背景と都市公園法上の位置づけ
1階:商業施設(スーパーセンタートライアル)
春木川パークの1階部分には、ディスカウントストア「スーパーセンタートライアル」が核テナントとして入居している。
敷地9,238㎡のうち約6,000㎡を立体化し、1階に商業施設を配置する設計である。スーパーセンタートライアルは日用品・食料品を扱うディスカウントストアであり、別府市民の日常的な買い物需要に応える。
2階:公園機能(春木川パーク)
建物の屋上(2階部分)が公園として整備されている。主な施設構成は以下の通りである。
- 全天候型人工芝グラウンド: サッカー・フットサル等のスポーツ利用が可能
- リハビリ運動施設: 高齢者の健康増進に対応した運動施設
- 多目的スタジオ: ダンス・ヨガ等の室内活動に対応
- 学習施設: 子どもの学習支援や地域活動の場
- カフェ・売店: 公園利用者向けの飲食・物販
- 管理事務所・更衣室: 施設運営の基盤機能
なぜ「立体化」が選ばれたか
春木川公園の敷地は約9,238㎡とそれほど広くない。この限られた面積の中で、商業施設による収益確保と住民のスポーツ・健康ニーズへの対応を両立するために、立体化という手法が採用された。平面配置では「商業機能を入れれば公園が狭くなる」「公園を広くすれば収益施設を確保できない」というトレードオフが生じるが、立体化によりこれを解消した。
事業スキームと収益構造
SPC構成・建設費負担・使用料等 年1,400万円(計画額)の内訳
出典を示していない収支試算の単価・金額は、説明用に仮定した数値であり、統計に基づく相場ではない。事業計画を作る際は、対象施設の状態や立地、事業内容に応じた見積もりと実績を用いる。出典を示した統計や事例の金額は、この仮定とは区別して参照する。
SPC(特定目的会社)の構成
春木川パークの整備運営は、地元企業を中心とした4社によるSPC「ミネルバ株式会社」が担っている。
別府市の選定結果及び講評に載る構成は次のとおりである。
| 一次資料での区分 | 法人名 |
|---|---|
| 代表法人 | 有限会社ゴトーシステムサービス |
| 構成法人 | 一般社団法人ミネルバスポーツクラブ |
| 構成法人 | 株式会社青木商事 |
| 構成法人 | 株式会社西商店 |
別府市の資料には、各社の所在地も役割分担も書かれていない。当方が確認できたのは次の2件である。
- 代表法人の有限会社ゴトーシステムサービスは大分県別府市大字南立石に本社を置く(同社サイト)
- 一般社団法人ミネルバスポーツクラブは別府市汐見町、春木川パーク2階に事務所を置く(同法人サイト)
SPC のミネルバ株式会社も本店は別府市汐見町である。 代表法人が別府市の企業であり、SPC の本店も別府市にあるという点は、大手デベロッパーが主導する事業とは異なる。 ただし4社の内訳を「何社が地元か」と数えるには、残る2社の所在地を一次資料で確かめる必要がある(2026-08-30 時点で未確認)。
年間使用料収入の構造
出どころは別府市自身の資料である。事業者を選んだ委員会の講評に、「価額審査においては、別府市に納付する使用料等が計画では年間約1,400万円程度となることを見込んでいることが評価された」とある。
これは事業者の計画額であって、実際に入った額ではない。選定は2021年12月、西エリアの供用開始は2024年12月なので、この評価は開業の3年前に行われている。市が実際に受け取った額を公表した資料は、当方が確認した範囲では見つかっていない(2026-08-29 時点)。
この収入構造のポイントは以下の通りである。
① 建設費の民間負担: 公園整備(2階部分)と商業施設整備(1階部分)の建設費はSPCが負担。市の初期投資を大幅に抑制している。
② 使用料の組み立て: 何にいくらかかるかは、別府市の公募設置等指針に書かれている。
| 何に | いくら |
|---|---|
| 公募対象公園施設(商業施設等)の設置許可使用料 | 事業者が提案した単価 × 設置許可面積。最低額は1,440円/㎡・年 |
| 立体都市公園部分の土地使用料 | 不動産鑑定評価額から算出した賃料(鑑定費用は事業者負担) |
| 利便増進施設の占用許可使用料 | 看板・広告塔33円/日(表示面積1㎡)/自転車駐車場120円/月(使用面積1㎡) |
| 特定公園施設(園路・広場・便所等)の設置許可使用料 | 営利目的でないと市が確認した後、無償 |
| 収益の還元 | 税引後当期損益が計画の120%を超えたとき、超過分の一部を市に還元(算定方法は市と協議) |
売上に連動する部分があるとすれば最後の「収益の還元」だが、これは120%を超えたときだけ発生する。 使用料の本体は面積に単価を掛けたものである。
③ 維持管理費の削減: 公園の日常的な維持管理もSPCが担うため、市の維持管理費支出が削減される。使用料収入と維持管理費削減の両面で市の財政にプラスとなる。
温泉観光地としての立地条件
別府市の人口動態・観光客数・公園利用者のニーズ分析
別府市の特性
別府市は人口約11万人(2024年時点)の温泉観光都市であり、年間の観光客数は800万人を超える。「別府八湯」と呼ばれる温泉群を有し、国内有数の温泉地として知られる。
この立地条件がPark-PFIにもたらす影響は2つの方向で現れる。
プラスの影響: 観光客による集客力
温泉観光客が公園施設やカフェを利用する可能性がある。特に春木川パークの2階部分にあるカフェ・売店は、温泉地の「散策→カフェで休憩」という行動パターンとの親和性が高い。
マイナスの影響: 観光需要の季節変動
別府市の観光客数は季節による変動がある。夏のビーチシーズンや冬の温泉シーズンにピークがある一方、閑散期には公園利用者数も減少する。スーパーセンタートライアル(1階)の日常需要が、この季節変動を下支えする機能を果たしている。
別府市の他のPark-PFI展開
別府市はさらに、別府公園東駐車場便益施設等整備運営事業でもPark-PFIを活用しており、市内複数の公園でPark-PFIを展開する「複数公園展開型」の自治体となっている。春木川パークの成功が、市内の他の公園へのPark-PFI展開を加速させた構図がうかがえる。
全国モデルとしての評価
PPP/PFI推進首長会議での発表内容と他自治体への示唆
PPP/PFI推進首長会議での発表
2024年11月11日に開催されたPPP/PFI推進首長会議において、別府市の長野恭紘市長が「三方良しの公民連携」として春木川パークの事例を発表した。
「三方良し」とは以下の3者を指す。
| 受益者 | メリット |
|---|---|
| 市(行政) | 使用料等 年約1,400万円(事業者の計画額)、建設費の民間負担、維持管理費削減 |
| 事業者(SPC) | 商業施設の収益機会、長期安定事業の確保 |
| 市民 | スポーツ・健康施設の利用、日常の買い物利便性、カフェ等の憩いの場 |
サウンディング調査の先行実施
別府市はPark-PFI導入に先立ち、サウンディング型市場調査を実施し、民間事業者の参入意欲と事業成立条件を事前に把握した。この調査を通じて「立体化」というコンセプトが形成され、公募条件の設計に反映されている。
サウンディング型市場調査の丁寧な実施が、適切な事業者選定と事業スキームの成立につながった点は、他の自治体が学ぶべき手順である。
他自治体への示唆
春木川パークの事例は、以下の条件を持つ自治体にとって参考になる。
- 未整備の公園用地を抱えている: 都市計画決定後に長年未整備のまま放置された土地は全国に多数存在する
- 人口10万人前後の地方中核都市: 大都市ほどの集客力はないが、日常的な商業需要を見込める規模
- 観光資源を持つ: 温泉・自然・歴史等の観光資源が公園利用者数の底上げに寄与する
- 地元企業によるSPC組成が可能: 大手に依存せず、地域内で事業を完結できる企業群がある
→ Park-PFIのサウンディング調査の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。
Park-PFI完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続き・事例を網羅的に解説
Park-PFIの使用料設計
使用料収入の算定方法・全国の水準・設計のポイント
Park-PFI最新事例・統計【2026年版】
203公園の全国統計・制度改正の動向
次にやること
事例を参考に事業を検討する際は、対象公園との条件の違いを確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 事例と対象公園の面積、立地、利用者層を比較する。人口規模だけで事業性を判断しない | 公表資料、対象公園の調査資料 |
| 2 | 事例の自治体が公表した公募設置等指針と選定結果を確認する。公開されていない資料は担当課に照会する | 事例の自治体の公園担当 |
| 3 | 指針の使用料の最低額と、選定された提案の金額を比較する | 公募設置等指針、選定結果 |
| 4 | 対象公園の既存施設の建築面積と、条例で定める建蔽率を確認する | 公園担当 |
| 5 | 対象公園の条件と事例の実績を示して、民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く | サウンディング |
事例を対象公園に当てはめる際は、公募条件と選定された提案を確認する。面積や立地、利用者層の違いも踏まえて、参考にできる条件を整理する。
この建蔽率の上乗せは、休養施設等と公募対象公園施設のそれぞれに10%が付くのではなく、両方あわせて10%である。既に休養施設や運動施設で12%に達している公園では、公募対象公園施設として便益施設を新たに設置することはできない。この10%も通常の2%も法令上参酌すべき割合で、実際の割合は各地方公共団体が条例で定める。