廃校を売るか貸すかで、地方自治法の手続きと契約の中身が変わる。議会の議決が要るか、相手をどう選ぶか、契約のあとに自治体が解除できるか、貸すなら期間をどう決めるか。この記事は、地方自治法と同法施行令、借地借家法、民法の条文を読み、売払い、譲与、有償の貸付、無償の貸付の違いを並べた。国庫補助を受けて整備した建物の財産処分の手続きは廃校の財産処分の記事に、募集中の廃校で自治体が示している形と金額は廃校は売るか貸すかの記事に載せた。
市が不動産を売り払うとき、議会の議決に付すものを条例で決める予定価格の基準
2,000万円
条例の額はこれを下らない。町村は700万円で、土地は1件5,000平方メートル以上のものに限る(地方自治法施行令別表第四)
定期借地権の存続期間
50年以上
事業用定期借地権等は10年以上50年未満で、公正証書で契約する(借地借家法第22条・第23条)
売払い・譲与・有償の貸付・無償の貸付の違い
行政財産のままでできるか、議会の議決、契約後の解除、借地借家法、財産処分の手続きを4つの形で並べた表
条文で比べると、次のようになる。根拠にした条文と文書は、下の節ごとに示した。
| 売払い(有償の譲渡) | 譲与(無償の譲渡) | 有償の貸付 | 無償の貸付 | |
|---|---|---|---|---|
| 行政財産のままでできるか | できない | できない | 地方自治法第238条の4第2項から第4項に当たる場合だけ | 同左 |
| 議会の議決 | 予定価格が条例で決めた額以上で、土地は1件5,000平方メートル以上(市町村)のものは要る | 条例で定める場合を除いて要る | 第96条第1項第6号にも第8号にも当たらない(条例で議決事件に加えている場合を除く) | 条例で定める場合を除いて要る |
| 契約後に公用・公共用で要るようになったとき | 解除の定めは無い | 同左 | 長が解除でき、借受人は損失の補償を求められる | 同左 |
| 用途と期日・期間を指定したとき | 指定に反したら解除できる | 同左 | 同左 | 同左 |
| 借地借家法 | 当たらない | 当たらない | 建物の所有を目的とする土地の賃借権と、建物の賃貸借に当たる | 当たらない(民法の使用貸借) |
| 国庫補助を受けた建物の財産処分 | 承認申請が要る | 国庫補助事業の完了後10年以上なら報告で済む | 承認申請が要る | 国庫補助事業の完了後10年以上なら報告で済む |
相手方の選び方(競争入札か随意契約か)は、売買にも貸借にも同じ条文が当たる。財産処分の手続きは、国庫補助事業の完了後10年以上たった建物等でも、有償による処分は報告事項の1(10年以上たった建物等の無償による処分)に当たらず、承認申請が要る。国庫に納付することになる補助金相当額以上を、その地方公共団体が設置する学校の施設整備に要する経費に充てる基金に積み立て、適切に運用するものは、国庫納付金を要さずに承認される。10年以上たった建物等の無償による処分は、学校施設に不足を生じる場合などを除いて、報告書を出せば承認があったものとみなされる。10年未満の処分の扱いと必要書類は、廃校の財産処分の記事に載せた。
行政財産と普通財産
行政財産は決まった場合を除いて貸付も売払いもできないこと、使用の許可、廃校を普通財産に改める扱い
公有財産は行政財産と普通財産に分かれる。行政財産は、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産で、普通財産は行政財産以外の一切の公有財産である。行政財産は、第238条の4第2項から第4項に定めるものを除いて、貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができず、これに違反する行為は無効である。第2項が挙げるのは、行政財産である土地の上に堅固な建物などを所有しようとする者にその土地を貸し付ける場合や、庁舎等の床面積や敷地に余裕がある場合に余裕がある部分を貸し付ける場合などである。行政財産は、用途又は目的を妨げない限度で使用を許可することができ、この許可を受けてする使用には借地借家法の規定を適用しない。公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、長又は委員会は許可を取り消すことができる。普通財産は、貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
財産処分手続ハンドブックによると、廃校にするときは、財産を管理する権限を持つ地方公共団体の長が、他の公用又は公共用施設とする場合を除いて、その施設を行政財産から普通財産に改める。売り払うのも、第238条の4第2項から第4項に当たらない貸付も、普通財産に改めてからになる。公民館などの公共施設に変えて行政財産のまま使い、その一部を事業者に使わせるなら、使用の許可になり、借地借家法は適用されない。
財産処分の必要書類一覧は、譲渡の欄に「譲渡契約書(案)」を、貸与の欄に「貸借契約書、目的外使用許可書等(案)」を挙げている。
議会の議決が要る場合
無償や適正な対価に満たない額で出すときの条例か議決、売払いの議決の基準になる予定価格と土地の面積
無償や、適正な対価に満たない額で出すとき
地方自治法は、第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、普通地方公共団体の財産は、条例又は議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けてはならないと定め(第237条第2項)、条例で定める場合を除くほか、適正な対価なくして財産を譲渡し、若しくは貸し付けることを議会の議決事件にしている(第96条第1項第6号)。無償で貸すか譲る場合と、適正な対価に満たない額で出す場合は、財産の無償貸付や譲与を定めた条例が自治体にあるかを先に確かめ、条例で足りなければ議会の議決を日程に入れる。国庫補助を受けた建物の財産処分では、承認申請にも報告にも、無償の譲渡・貸与に「無償での処分が可能な根拠」(例として条例や議会の議決等、案でも可)を付ける。
一定の額以上の不動産を売り払うとき
議会は、第6号と第7号に定めるものを除くほか、その種類及び金額について政令で定める基準に従い条例で定める財産の取得又は処分を議決しなければならない(第96条第1項第8号)。これとは別に、条例で、普通地方公共団体に関する事件で議会の議決すべきものを定めることもできる(同条第2項)。
施行令は、この基準を、種類は別表第四の上欄に定めるもの、金額は予定価格の金額が同表の下欄に定める金額を下らないこと、としている。上欄は、不動産若しくは動産の買入れ若しくは売払い(土地については、その面積が都道府県は1件2万平方メートル以上、指定都市は1件1万平方メートル以上、市町村は1件5,000平方メートル以上のものに限る)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは売払いで、下欄は、都道府県7,000万円、指定都市4,000万円、市(指定都市を除く)2,000万円、町村700万円である。
別表第四に並ぶのは買入れと売払いで、貸付と譲与は入っていない。適正な対価で貸すときは、第96条第1項第6号にも第8号にも当たらない。売り払うときに議決が要るかは、自治体の条例が決めた額と面積で見る。条例で議決事件を加えている場合もあるので、貸付でも条例を確かめる。
相手方の選び方
競争入札を基本とする地方自治法第234条と、随意契約によることができる場合
売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとし、指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
随意契約によることができる場合として、施行令は、予定価格(貸借の契約は予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五の額の範囲内で規則で定める額を超えない契約(別表第五は、財産の売払いが都道府県と指定都市で100万円、市町村で50万円、物件の貸付けが都道府県と指定都市で50万円、市町村で30万円)、その性質又は目的が競争入札に適しない契約、競争入札に付することが不利と認められるとき、時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき、競争入札に付し入札者がないとき又は再度の入札に付し落札者がないとき、などを挙げている。
廃校の売払いも貸付も、この条文で相手方の選び方が決まる。事業の提案を比べて相手方を選ぶなら、施行令第167条の2第1項のどの号に当たるかを、契約の担当と先に詰めておく。募集中の廃校で自治体が示している選び方と条件は、廃校は売るか貸すかの記事に載せた。
契約後に自治体が解除できる場合
公用・公共用に必要を生じたときの解除と損失の補償、用途を指定したときの解除、売払い・譲与への準用
普通財産を貸し付けた場合に、その貸付期間中に国、地方公共団体その他公共団体において公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、普通地方公共団体の長はその契約を解除することができ、借受人はこれによって生じた損失につきその補償を求めることができる(第4項・第5項)。長が一定の用途並びにその用途に供しなければならない期日及び期間を指定して普通財産を貸し付けた場合に、借受人が指定された期日を経過してもなおその用途に供せず、又はその用途に供した後指定された期間内にその用途を廃止したときは、長はその契約を解除することができる(第6項)。第4項と第5項は貸付け以外の方法により普通財産を使用させる場合に、第6項は普通財産を売り払い、又は譲与する場合に準用する(第7項)。
売り払ったあとや譲与したあとに、公用・公共用で要るようになっても、第4項の解除は準用されていない。売払い・譲与で解除の定めがあるのは、用途と期日・期間を指定した場合である。売るなら、何の用途に、いつまでに使い始め、何年続けるかを契約で指定する。貸すなら、公用・公共用の必要で解除されうることと、そのときの損失の補償を、契約の前に借受人と確かめておく。
国庫補助を受けた建物を民間企業に無償で譲渡し、その企業が建物を取り壊したり第三者に有償で譲渡したりする場合も、当初に国庫納付をしていなければ、所有権が移っていても再度の手続きが要る。ハンドブックは、再処分するときは補助事業者等にあらかじめ連絡することなどを譲渡契約書に書いておくよう求めている。
貸付の期間と更新
賃貸借と使用貸借、借地権の存続期間、定期借地権と事業用定期借地権等、定期建物賃貸借、国庫補助を受けた建物の貸与を更新するときの手続き
賃貸借と使用貸借
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる(第601条)。使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる(第593条)。使用貸借は、期間を定めたときはその期間の満了によって終了し、借主の死亡によっても終了する(第597条第1項・第3項)。当事者が期間も使用及び収益の目的も定めなかったときは、貸主はいつでも契約の解除をすることができ、借主もいつでも契約の解除をすることができる(第598条第2項・第3項)。
借地借家法は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをする法律で、借地権は、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。借地権の存続期間は30年で、契約でこれより長い期間を定めたときはその期間とする。
賃料を取らない貸付は使用貸借で、借地借家法が特別の定めをしている賃借権と建物の賃貸借には当たらない。無償で貸すときに期間も使用の目的も書かなければ、自治体も事業者もいつでも解除できる契約になる。事業者が改修費をかけて長く使うなら、期間、使用の目的、解除できる場合を契約書に書く。
定期借地権と事業用定期借地権等
存続期間を50年以上として借地権を設定する場合は、契約の更新と建物の築造による存続期間の延長がなく、建物の買取りの請求をしないこととする旨を定めることができ、その特約は公正証書による等書面によってしなければならない(第22条)。専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)の所有を目的とし、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合も同じ旨を定めることができ、存続期間を10年以上30年未満として設定する場合は、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定を適用しない。これらの借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない(第23条)。
校舎を取り壊して事業者が自分で建物を建てるなら、建物の所有を目的とする土地の賃貸借で、借地権の定めが当たる。更新の無い契約にするなら、第22条か第23条の期間で組む。既存の校舎を有償で貸すなら建物の賃貸借で、更新の無い契約にするなら次の第38条による。
定期建物賃貸借
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合は、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく期間の満了により終了することを、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならず、説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは無効となる。期間が1年以上の場合は、期間の満了の1年前から6月前までの間に、期間の満了により終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。
貸与の期間を更新するとき
国庫補助を受けた建物を一定の年数に限って貸与した場合、期間が過ぎたあと、更新する期間について改めて財産処分の申請又は報告をする。申し出がなければ更新される契約でも同じである。更新の手続きと、定期借地権や定期建物賃貸借の期間は別々に決まるので、両方の日付を契約の工程表に並べる。
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次にやること
廃校の活用方針と改修予算を検討する際は、次の事項を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 活用に関心のある事業者を探す。希望する用途や必要な条件を聞き、活用方針の検討に反映する | サウンディング、地元事業者 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を確認する。未実施の場合は、調査の範囲と実施方法を検討する | 営繕担当 |
| 3 | 調査結果に基づいて改修費を見積もり、解体する場合の費用と比較する | 設計事務所 |
| 4 | 財産処分に必要な手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎は、活用方法と処分制限期間に応じて、文科省の承認申請または報告の要件を確認する | 教育委員会、文科省 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生や地域団体に活用方針を説明し、意見を聞く | 同窓会、自治会 |
用途を確定する前に事業者の関心と必要な条件を確認し、借り手の見込みを踏まえて活用方針を検討する。