PF設立1年の振り返り
2024年12月の設立から1年の主な取り組みと成果(セミナー・事例集・マッチング等)
スモールコンセッションPF会員登録数(令和8年8月27日現在)
1,547件
民間企業等606・自治体365・個人479
2025年度専門家派遣対象(古民家4件・廃校2件・旧庁舎1件)
7自治体
国費補助でPPP/PFI専門家を派遣
制度上の課題(事業性・担い手不足・長期スキーム設計)
3つ
国交省が対応方向を検討中
スモールコンセッションの普及を支える中核インフラとして国土交通省が令和6年12月に設立した「スモールコンセッションプラットフォーム(以下、PF)」は、2025年12月に設立1周年を迎えた。
設立から1年間でPFが主に取り組んできたのは以下の3つだ。
取り組み1: 会員に届く3つのもの
プラットフォームは令和6年12月に設立された。産官学金の交流と情報発信の場で、会員以外も対象にしたイベントも開いている。
会員特典として挙げられているのは3つである。事務局からの情報提供(手続は不要で、登録したメールアドレス宛に定期的に届く)、会員からのお知らせのウェブサイト掲載、会員の取組事例のウェブサイト掲載。ワーキンググループへの参加は「準備中」と書かれている。会員登録は無料で、団体・個人を問わず、部門単位でも登録できる。配信の回数は書かれていない。
取り組み2: ワーキンググループ
会員同士で課題を共有し解決策を検討する場として、4つのWGが設置されている。普及啓発WG(検討テーマ例は行政・民間の相互理解の促進)、人材育成・組織検討WG(行政・民間の人材育成、組織のあり方の検討)、事業手法検討WG(スモールコンセッションの事例等の研究・分析)、資金調達WG(補助金を含む資金調達方法の研究)である。
令和7年度は4つのWGを2つずつ同時に開いた。第1回は令和7年8月1日と8月5日、第2回は令和7年10月27日である。令和8年度は「普及啓発+人材育成・組織検討」「事業手法検討+資金調達」の2つの合同WGとして開く。第1回は令和8年10月2日(金)14時から16時と令和8年10月6日(火)10時から12時で、どちらもオンライン。参加申込の締切は令和8年9月25日(金)18時である。第2回は12月に開く予定と書かれている。
取り組み3: 専門家派遣制度の実施
PF設立と同時に開始された「スモールコンセッション形成推進事業」では、事業化の実現を支援する専門家を自治体に派遣する仕組みが構築された。2025年度に7自治体が選定され、事業化支援が進行中だ(詳細は後述)。
会員の数と内訳
会員登録数1,547件の種別ごとの内訳。推移は公表されていない
1,547件の内訳
会員登録数は1,547件。内訳は民間企業等606・都道府県及び市区町村365・個人479・金融機関50・関係府省庁等25・大学、研究機関等22である。
| 会員種別 | 登録数 | うち公表 |
|---|---|---|
| 民間企業等(金融機関を除く) | 606 | 501 |
| 個人 | 479 | 非公表 |
| 都道府県及び市区町村 | 365 | 297 |
| 金融機関 | 50 | 41 |
| 関係府省庁等 | 25 | 19 |
| 大学、研究機関等 | 22 | 14 |
| 計 | 1,547 | 872 |
この内訳は一覧の表紙にある集計表から取っている。同じPDFの種別ごとのページには、表紙と違う数が見出しに書かれている(民間企業等587・都道府県及び市区町村355・大学、研究機関等23)。
会員数の推移は公表されていない。国土交通省が出しているのは、その時点の登録状況の一覧だけである。増え方を追いたい場合は、過去の一覧を自分で控えておく必要がある。
内訳から見えること
- 自治体からの登録が365件。民間企業等606件に対する自治体の登録件数である
- 個人が479。民間企業等に次いで多い。個人会員の職種別の内訳は、この件数からは分からない
- 金融機関が50。地方銀行・信用金庫・政策金融機関が入っており、資金調達の相談先が同じ場にいる
- 名前を公表している団体会員は872。一覧に載らない形で入っている団体もある
専門家派遣7自治体の中間報告
古民家4件・廃校2件・旧庁舎1件の概要。各地域の課題と事業化の進捗
選定7自治体の概要
2025年度のスモールコンセッション形成推進事業では、全国から7自治体が選定され、国費補助で専門家(PPP/PFIコンサルタント・建築家・金融専門家等)の派遣を受けている。
7自治体の対象施設と所在地(地域別):
- 古民家・歴史的建造物(4件): 真鶴町(神奈川)・安城市(愛知)・姫路市(兵庫)・奈良市(奈良)
- 廃校(2件): 地方中小自治体2件(具体名は選定時の公表情報に基づく)
- 旧庁舎(1件): 地方自治体1件
7件中4件が古民家・歴史的建造物を対象としているのは、スモールコンセッションの特性(小規模・地域資源活用・観光連携)と古民家の親和性が高いためだ。
→ 古民家×スモールコンセッションの詳細については、古民家×スモールコンセッションを参照されたい。
中間報告の主要ポイント
派遣開始から約6〜9か月が経過した2026年3月時点での各自治体の進捗を整理する。
古民家4件の共通課題:
- 耐震改修費の捻出: 古民家の耐震改修は文化財との両立・工法の選択が複雑で、改修コストが民間事業者の負担許容範囲を超えるケースがある。補助金(文化庁補助・地方創生交付金等)の組み合わせを専門家が支援している
- 担い手の特定: 古民家のリノベーション・運営に必要なスキルを持つ民間事業者の数が少なく、サウンディング参加者が1〜3者程度にとどまるケースが多い
- 収益モデルの設計: 宿泊・飲食・体験の組み合わせで月間売上100〜300万円レベルを確保する設計に専門家が伴走中
廃校2件の課題:
- 施設の老朽化度合いが古民家より深刻なケースが多く、改修費の試算が先行している
- 周辺人口の少なさから「誰が来るか」の集客設計が困難
- 一部は自治体・NPOによる暫定管理から本格的なコンセッションスキームへの移行を検討中
旧庁舎1件の特記事項:
- 旧庁舎は延床面積が大きく、スモールコンセッション(10億円未満)の枠内に収めることへの工夫が必要
- 複合用途(オフィス・コワーキング・飲食・住居)の組み合わせで事業費を抑えながら収益性を確保する方向で検討中
制度上の課題
事業性・担い手・長期スキームの3課題と、国交省が示している対応方向
課題1: 事業性の低さ
スモールコンセッションが対象とする公共施設は、事業費10億円未満の小規模案件が多い。この規模では、民間事業者にとって十分な利益を確保しながら公共施設の整備・維持管理まで担うことは難しいケースが多い。
特に 採算ラインに届かない施設(立地が悪い廃校・利用者が少ない旧施設等)では、民間が単独で事業化することが困難で、補助金・交付金の組み合わせや、複数施設のパッケージ化が必要となる。
アクションプランに書いてあること: スモールコンセッションの推進として、プロジェクトの構想の策定等をサポートする専門家の派遣、先導的な事業の導入検討支援、実践のための「手引き」の策定が挙げられている。収益見通しを試算する支援ツールについては、公表資料で確かめられなかった。
課題2: 担い手不足
スモールコンセッションに必要な「小規模PPP/PFIを設計・実施できる民間事業者」の絶対数が不足している。特に地方部では、PPP/PFI専門のコンサルタント・建築家・事業者が少なく、自治体が「誰に相談すればいいか」が分からない状況が続いている。
アクションプランに書いてあること: スモールコンセッションプラットフォームの機能を拡充し、遊休公的施設に関する情報のマッピングによる共有と「見える化」、案件形成に向けた官民マッチング等の対話機会の充実を図るとしている。専門家等から技術的助言が得られるワークショップにも取り組むとしている。何社が育ったかを数えた資料は見つかっていない。
課題3: 長期スキームの設計困難
コンセッション方式は本来、長期(15〜20年以上)の運営権付与が前提だが、小規模施設の場合、自治体側が「長期間の民間への貸し付け」への心理的ハードルが高い。議会・住民への説明コストも大きい。
また、長期の契約において事業者が途中で撤退するリスク・自治体の担当者交代による継続性の問題が、自治体の懸念として挙がっている。
対応方向: 国交省は「スモールコンセッション標準契約書式」の作成・公開を進めており、契約設計のテンプレート化が課題解消につながることが期待されている。
今後の展望
2026〜2027年に期待されるスモコンの拡大・Park-PFIとの連携・制度整備の方向性
2026年5月25日追記: 本記事公開(2026年4月22日)の約1か月後、国土交通省・内閣府が『スモールコンセッションのすすめ(遊休公的施設の利活用のための手引き)』を公表。本記事で指摘した「事業性低・担い手不足・長期スキーム設計困難」の3課題が「3つの壁(イメージ・パートナー・事業化)」フレームに整理され、VFM算定不要・公募1-2年→6-12か月の手続き簡素化策が示された。本続編記事も合わせて参照されたい。
2026年以降に期待される3つの展開
展開1: 事業化事例の増加(量から質へ)
プラットフォーム設立1年は「認知拡大」のフェーズだったとすれば、2026年以降は「実際の事業化」フェーズへの移行が期待される。専門家派遣7自治体での事業化完了(2026〜2027年見込み)が先行事例として機能し、次の事業化希望自治体の参照モデルになる。
展開2: Park-PFIとの連携強化
Park-PFIとスモールコンセッションを組み合わせた「公有地全体の一体活用」の事例が増える見通しだ。公園に隣接する廃校・旧施設をスモコンで活用しながら、公園部分をPark-PFIで整備するという組み合わせは、地方都市・小規模自治体の公有地活用において最も現実的な解の一つだ。
展開3: 制度の成熟と自走化
国交省の主導による初期推進フェーズを経て、2027年以降はPF自体が「自走できる」情報基盤になることが目標とされている。会員同士のマッチング・案件形成が国の介在なしに進む状態。それがスモールコンセッションの普及が「本物」になった証となる。
展開4: 分野横断型・広域型との親和性
スモールコンセッションは本来単独施設の活用を想定して制度設計されてきたが、PPP/PFI全体の市場では分野横断型が143件、広域型が27件と実績が蓄積されつつある(令和6年3月末時点)。小規模自治体が単独で1案件を組成するハードルは依然として高いため、「隣接自治体と共同で複数施設を束ねる広域型スモコン」や、「廃校+公園+公民館を一体活用する分野横断型」といった組み合わせが、今後の現実解として注目される可能性がある。PF会員の約4割を占める民間事業者側からも、複数案件を束ねた方が採算が合うという声は強い。
入門者が今取るべきアクション
スモールコンセッションに初めて触れる方が、今すぐ取れる最小のアクションは「PFへの無料登録」だ。
- スモールコンセッションプラットフォーム(外部サイト、新しいタブで開きます)にアクセス
- 会員登録申込フォームから無料で登録(団体・個人を問わず、部門単位でも可)
- 事務局からの情報提供を受け取り、参加したいWGに申し込む
スモールコンセッションプラットフォームの活用方法
会員登録のメリット・機能・マッチング支援・専門家派遣の活用法
スモールコンセッション完全ガイド
定義・対象施設・事業手法・事例・進め方・補助金を網羅したピラーページ
次にやること
遊休施設の活用を検討する際は、施設の状態と地域の需要、民間事業者の意向を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 遊休施設の状況と周辺の需要を整理する。建物の状態や立地と、地域で必要とされる用途を照合する | 財産管理担当 |
| 2 | 候補施設の耐震診断とアスベスト調査の結果を確認する。未実施の場合は、調査の範囲と実施方法を検討する | 営繕担当 |
| 3 | 国交省のプラットフォームで情報を集める。会員登録は無料で、先進事例や補助金、専門家派遣の公募案内を受け取れる | プラットフォームの公式サイト |
| 4 | 民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く。単独での事業化が難しい場合は、近隣自治体との連携も検討する | サウンディング、近隣自治体 |
| 5 | 民間の意見を踏まえて、運営権、賃貸借、指定管理などの手法を比較する。施設の用途や収支、官民の役割分担に合う手法を選ぶ | 所管課、財産管理担当 |
プラットフォームの会員登録は、専門家派遣や補助制度の公募情報を受け取る手段になる。応募を検討する際は、募集要項で対象者、支援内容、期限を確認する。