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スモールコンセッション事例分析 — 福知山型・行政負担ゼロモデルの再現性
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スモールコンセッション事例分析 — 福知山型・行政負担ゼロモデルの再現性

横田直也
約16分で読めます

国交省『スモールコンセッションのすすめ』R8.5.25とPMCセミナー資料から、福知山市の小規模コンセッション事例を抽出。VFM算定不要要件と行政負担最小化を実現するモデルの再現可能性を構造的に分析する。

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ざっくり言うと

  1. 福知山市は2012年度〜2020年度に発生した16校の廃校のうち、売却2校・貸付6校・行政利用2校・未活用6校を整理し、廃校活用による歳入増約1.5億円・年間維持管理費削減約1,000万円を実現した。先行事例として国交省『スモールコンセッションのすすめ』R8.5.25の事例集に組み込まれている
  2. THE 610 BASE(旧中六人部小学校)は補助金を一切受けず、建物と直下の土地は無償・周辺の土地は有償というスキームで成立した。地代年160万円が市の歳入となっており、文字どおりの『ゼロ』ではなく『新規財政負担ゼロ+運営期の歳入プラス』の構造である
  3. 再現性を分解すると、議会と合意した『共通方針7原則』だけが他自治体でも制度設計で移植可能な要素である。物理的状態・用途規制・需要密度・事業者誘致力の4要因は自治体固有条件であり、福知山型を地方の中山間地・過疎地に脊髄反射で移植するアプローチには無理がある

スモールコンセッションの制度的位置

PFI法の公共施設等運営権制度における位置づけと、VFM算定不要要件の根拠条文

16校

福知山市が2012年度〜2020年度の統廃合で発生させた廃校数

約1.5億円

廃校活用による歳入増の累計(売却収入・賃料収入を含む)

約1,000万円

廃校活用に伴う年間維持管理費の削減額(年あたり)

160万円

THE 610 BASEから市が徴収する地代の年額

は、PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)に基づく公共施設等運営権制度を、事業規模10億円未満の小規模案件に適用する運用枠組みである。法律上の独立した制度ではなく、PFI法第16条以下に規定される公共施設等運営権を、廃校・旧公舎・遊休庁舎などの個別案件に小規模適用するためのガイダンスとして整理されている。

推進方策(2024)は、独立採算で財政支出が発生しない案件についてはVFM(Value for Money)算定義務の対象外であることを明示した。これによりPFI法の手続的負荷を実質的に軽減できる枠組みが整い、2026年5月25日に40ページの実務手引き「スモールコンセッションのすすめ」が公表された。

制度の中核は3点にある。第一に、公共施設等運営権の設定により、民間事業者が長期にわたり施設の運営権を保有できること。第二に、独立採算型の事業設計を取れば、PFI法のVFM算定義務を負わないこと。第三に、事業構想・事業化・公募の3STEPで進行し、従来PFIの1〜2年に対し6〜12か月での事業者選定が可能となること。

整理すると、スモールコンセッションは「公共施設等運営権という長期権利の付与」と「VFM算定不要による手続簡素化」を組み合わせ、小規模案件でも民間事業者の参画を可能にする運用枠組みである。福知山市の廃校活用事業は、この制度的位置づけが整う前から先行して走った代表的な実例として、国交省の手引き本体(R8.5.25公表)の事例集に組み込まれている。

→ 制度の基本構造はスモールコンセッションとは?仕組みと事例で解説、手引き本体の解説は国交省『スモールコンセッションのすすめ』完全解説で詳しく整理している。


福知山市の事例構造

16校廃校・歳入+1.5億・THE 610 BASE事業スキーム・共通方針7原則の整理

何が起きたか — 数字で見る全体像

福知山市は京都府北部に位置する人口約7.6万人の都市である。平成24年度(2012年度)から令和2年度(2020年度)にかけて小学校の統廃合が進み、27校あった小学校が14校に集約された。これにより16校の廃校が発生した。

福知山市の16校の廃校のうち、売却2校・貸付6校・行政利用2校・未活用6校という活用区分が成立し、廃校活用による歳入増は累計約1.5億円、年間維持管理費の削減は約1,000万円に達した。8校が民間活用、2校が行政利用、6校が未活用の状態である。活用率は10校/16校=62.5%で、文部科学省「みんなの廃校プロジェクト」の全国平均(2018年5月公表時点で75%再活用、2004-2023の累計では8,850校閉校・1,951校(25.6%)未活用)と比較しても、市全体としては全国平均水準に近い活用率を維持している。

注目すべきは、活用済8校の半数を超える6校が「貸付」、つまり所有権を市が保持したまま民間事業者に運営権を渡すスキームで成立している点である。売却2校とは異なり、貸付6校は「公共資産を保持しつつ民間に運営を委ねる」設計であり、スモールコンセッションの基本構造と整合する。

共通方針7原則 — 議会と合意した『廃校活用の標準ルール』

福知山市が国交省手引きで明示的に評価された理由は、個別案件ごとに議会調整を繰り返すのではなく、「廃校活用の標準ルール」を共通方針として議会と事前に合意した点にある。

福知山市発表資料に整理された7原則は以下のとおりである。

  1. 地域の意向を重視した活用とする
  2. 賃貸・売却ともに可とする(地域意向に反する場合を除く)
  3. 市と契約締結する事業者は1者とする
  4. 廃校全体の活用または管理とする(一部のみ不可)
  5. 廃校は現状有姿とする
  6. 賃貸時は建物・その下の土地は無償、その他土地は有償
  7. 事業者は期間を設けて公募する

7番は「随意契約禁止」と読める内容である。福知山型は「行政負担ゼロ+公募競争」の組合せをコアとしており、特定事業者への特恵的取扱いを排した上で行政負担の最小化を実現している。議会議決所要期間は半年〜1年とされ、案件ごとに繰り返すのではなく7原則を一度議決すれば、後続案件は同方針の適用として処理できる仕組みになっている。

THE 610 BASE — 個別事業スキームの実体

7原則に基づく代表的な事業化事例が、旧中六人部小学校を活用したTHE 610 BASE(ザ・ロクトーベース)である。

項目内容
運営事業者井上株式会社(ウェルズユナイテッド)
賃料設計建物・直下の土地は無償/周辺の土地は有償
補助金活用一切なし(同社代表発言、ジチタイワークス Vol.1393)
用途構成イチゴ農園(約2,142m²ハウスに約15,000株)+ SLIDERS CAFE +クラフトビール醸造
開業時期令和2年10月
来訪者目標年間延べ2万人
来訪者実績年1万人ペースで増加中
用途規制市街化調整区域・地区計画上『沿道サービス施設』が建築可能
地代年額約160万円

事業者は地元企業の井上株式会社で、補助金を一切受けずに内装改修と運営立ち上げを実施した。市は建物本体と直下の土地を無償で貸付ける一方、周辺のイチゴ農園敷地や駐車場用地など『その他土地』には地代を設定しており、年額約160万円の地代収入が市の歳入となっている。

事業内容は、廃校の体育館と教室を改修したイチゴ農園(約2,142m²のハウスで約15,000株を栽培)と、校舎を活用したSLIDERS CAFE、さらにクラフトビール醸造設備を組み合わせた体験型農業観光施設である。市街化調整区域に立地するため、通常は商業施設の建築が制限されるが、地区計画上『沿道サービス施設』が建築可能と整理されており、体験型農業施設として用途規制の壁を回避している。


行政負担ゼロモデルの分解

初期投資・運営費・リスク配分の3要素から構成される実態と、地代年160万円の歳入構造

『ゼロ』の正確な意味

『行政負担ゼロモデル』という表現には誤解を生みやすい含みがある。文字どおり市の負担が一切発生していないのではなく、以下の4点が同時成立している状態を指す。

  1. 市の財政支出が事業初期・運営期ともに発生しない(補助金支給なし・改修費負担なし・運営費負担なし)
  2. 国・府の補助金にも依存しない(民間事業者が自己資金で内装改修)
  3. 建物本体と直下の土地は無償貸付、ただし周辺土地は有償
  4. 市は地代収入を得るので『ゼロ』ではなく運営期の歳入はプラス

正確に言えば「新規財政負担ゼロ+運営期の歳入プラス」の構造である。事業初期の改修投資から運営期の維持管理まで、すべての経常コストを民間事業者が引き受け、その対価として建物の無償使用権を得る設計である。市側は、廃校として保有し続けた場合の維持管理費(推計年数百万円規模)を削減できるとともに、地代年160万円の歳入を新規に得る。

初期投資・運営費・リスク配分の3要素

事業設計を3要素に分解すると、福知山型の特徴がより明確になる。

初期投資

事業者が全額を自己資金で負担する。井上株式会社は「補助金などを一切受けていない」と明言しており(ジチタイワークス Vol.1393の代表発言)、内装改修・設備導入・農園整備のいずれも事業者自身が資金調達した。市は施設を『現状有姿』で渡すため、改修費の応分負担も発生しない。

運営費

光熱費・人件費・修繕費を含むランニングコストはすべて事業者負担である。事業者は売上から運営費を賄い、市への地代を支払う構造で、市側の継続的な支出は発生しない。

リスク配分

民間事業者倒産・施設修繕・不可抗力(災害・感染症等)の3リスクは原則として事業者負担となる。共通方針7原則の第5項「廃校は現状有姿とする」が、運営期中の修繕リスクを事業者側に振り分ける契約根拠となっている。

要素公共側の負担民間側の負担
初期投資(改修・設備)なし全額
運営費(光熱・人件・修繕)なし全額
倒産リスクなし(再公募負担のみ)事業継続責任
大規模災害リスクなし原則負担
地代収入年160万円(建物・直下土地は無償、周辺土地に課金)同額を支出

→ 福知山型は「公共施設等運営権を民間に渡すと同時に、運営リスクも全面的に民間に振り分ける」設計である。事業者の自己資金体力と運営力が前提条件となる構造で、リスクをすべて引き受けられる事業者が見つかった場合に限り成立する。


再現性の必要条件と十分条件

5つの構造要因の再現難度マトリクスと、制度設計で移植可能な要素の限定

福知山型を成立させた5つの構造要因

他自治体が福知山型を採用しようとする場合、まず福知山が満たしていた5つの構造要因を整理する必要がある。

要因福知山の状況他自治体での再現難度
(1) 廃校の物理的状態現状有姿でも運営可能(耐震・配管に致命的損傷なし)中 — 老朽度次第
(2) 用途規制の柔軟性地区計画で『沿道サービス施設』が建築可能高 — 市街化調整区域では用途変更困難
(3) 需要密度京都市・大阪圏から日帰り圏、観光ルート上高 — 中山間地は集客困難
(4) 事業者誘致力地元企業が補助金なしで進出中 — 自治体外企業誘致はさらに困難
(5) 議会・地域合意の仕組み7原則を『廃校共通方針』として事前議決低 — 制度設計で再現可能

ここで重要なのは、(5)だけが他自治体に脊髄反射で移植可能な要素である点である。(1)〜(4)は自治体固有の物理条件・地理条件・社会条件であり、政策的努力で短期間に変えられるものではない。中山間地で観光需要が限定的な自治体が福知山型をそのまま採用しても、(3)需要密度の不足が事業者の収益性を圧迫し、(4)事業者誘致力も低下する。

『3つの壁』フレームでの位置づけ

国交省手引きは、スモールコンセッション推進にあたって自治体側が直面する『3つの壁』を整理している。各壁に対する福知山型の解は次のとおり。

通常の自治体が直面する状況福知山型の解
イメージの壁何ができるかわからない、議会への説明が困難共通方針7原則で『貸付なら建物無償・地代徴収』と明示済み、議会も既了承
パートナーの壁民間事業者が見つからない、応募がない地区計画で建築可能な用途を確保 → 民間が事業を組み立てやすい
事業化の壁手続が煩雑、案件ごとに調整が必要全16校に同じ方針を適用 → 案件ごとの議会調整負荷を低減

→ 福知山は「壁を案件ごとに乗り越える」のではなく「壁を制度設計で取り払う」アプローチを取った。共通方針7原則は議会調整の負荷を一度きりに集約し、後続案件はすべて同方針の適用として処理できる仕組みである。

行政負担ゼロの限界 — 有事の修繕・再公募コスト

国交省手引き第30頁が指摘する3リスクを福知山型に当てはめると、平時の経常コストはゼロだが有事の備えに脆弱性が残る。

第一に、民間事業者倒産リスク。補助金なしの自走を前提とするため、事業者の自己資金体力が前提条件化する。中小事業者にとっては実質的なハードルであり、事業者選定段階で「自己資金100%・補助金ゼロでも回せる事業者」という条件が他自治体での応募者を狭めうる。

第二に、施設修繕リスク。『現状有姿』で渡すため、運営中に発生する大規模修繕(屋根改修・耐震補強・配管全面更新等)は事業者負担になりやすい。築40〜50年の校舎で大規模修繕が発生した場合、事業者の負担能力を超える可能性がある。

第三に、不可抗力リスク。災害・感染症等の影響を民間事業者が負担しきれない場合、撤退で施設が再び遊休化する。撤退時には市が再公募コストを負担するか、空き校舎として塩漬けになる二択を迫られる。

『行政負担ゼロ』は平時の経常コストにおいてゼロだが、有事の修繕・再公募コストは公共側に残る。リスクを民間に全面振り分けする設計は、民間の体力を前提とする設計でもある。


他自治体への展開可能性

廃校・旧公舎・公園施設・道の駅への応用ルートと、福知山型部分採用の現実解

廃校・旧公舎・公園施設・道の駅への応用ルート

福知山型を他の施設タイプに展開する場合、対象施設ごとに必要条件が異なる。

廃校(最も近い適用先)

福知山型がもっとも素直に適用できるのは、廃校である。築年数・耐震状態・敷地形状・周辺人口密度のいずれかで条件を緩和できる場合は、共通方針7原則を移植して案件処理することで議会調整負荷を圧縮できる。文科省「みんなの廃校プロジェクト」によれば、2004〜2023年の累計で全国8,850校が閉校し、うち1,951校(25.6%)が未活用のまま残っている。母集団規模は大きく、福知山型の応用余地は広い。

旧公舎・旧庁舎

旧庁舎の場合、廃校と比べて床面積が小さく事業規模が確保しにくい一方、市街地立地で需要密度が比較的高い。福知山型の7原則のうち「全体活用」「現状有姿」「地代徴収」の3項目を中心に移植し、用途は飲食・小売・コワーキングなど立地特性に合わせて変える応用が考えられる。

公園施設

公園施設の場合は制度(都市公園法第5条の2)が別途存在するため、純粋なスモコン適用よりも両制度の併用が現実的である。令和7年5月のガイドライン改正で、Park-PFIとスモコンの連携可能性が明文化された。公園に隣接する廃校・旧公民館をスモコンで活用しながら、公園部分をPark-PFIで一体整備する設計が想定される。

→ Park-PFIとスモコンの接続点はPark-PFI 2025年採択動向レビュー — 地方都市の活用パターン分類で詳しく整理している。

道の駅・観光交流施設

道の駅の場合、地域振興施設としての公益性が前提となるため、行政負担ゼロモデルの純粋適用は難しい。指定管理者制度との併用か、運営権設定対価を一部公的負担とする設計が現実的である。

部分採用 — 7原則のみ移植する現実解

事業者誘致力や需要密度で福知山と同等の条件を満たせない自治体にとって、現実解は『7原則のみ移植』である。共通方針7原則のうち、行政負担最小化に直結する第3項(1事業者契約)・第4項(全体活用)・第5項(現状有姿)・第7項(公募競争)の4項目を議会と合意するだけでも、案件ごとの議会調整負荷を大幅に圧縮できる。

第6項(建物無償・周辺有償)は、需要密度が低い地域では事業者の応募インセンティブを確保するために、無償範囲を周辺土地まで広げる調整が必要になる場合もある。

中山間地・過疎地への展開上の限界

OECD報告書(2025-09)は、過疎地について次のように指摘する。過疎地は人口減少と高齢化が同時進行し、土地利用変化が加速、極度過疎地では『将来見通しを立てられない自治体が大半』である。コミュニティ主導型イニシアチブが鍵だが、政府レベル間の調整不足が制約となる。

専門家コンセンサスとしては、単一施設での収益性が低下しがちで、民間が初期投資回収困難であること、自治体側にPPP/PFIノウハウが不足し金融面の専門人材も不在であることが指摘される。福知山は『京阪神圏1〜2時間圏』という需要立地が前提条件として効いており、北海道過疎地・東北山間地・中国地方山間部などでは福知山型単独適用は厳しい。

中山間地・過疎地でスモコンを成立させる場合は、運営事業者への補助金併用・運営権設定対価ゼロ・複数施設パッケージ化のいずれか(または複数)で行政負担を限定的に引き上げる設計が必要となる可能性が高い。


構造的含意

スモコンの制度パッケージ化、運営パートナー選定の論点、行政負担ゼロの限界

スモコンの制度パッケージ化

国交省PPP/PFIアクションプラン(2025改定版)は、廃校等の空き施設・空き家など地域課題解決にスモコンを位置づけている。2024年12月16日にはスモールコンセッションプラットフォーム(SCPF)が設立され、2025年度形成推進事業で7自治体(真鶴町・安城市・姫路市・奈良市・池田町・下田市・長洲町)が選定された。

『事業規模10億円未満』のスモコン領域は、まだ概念紹介から実務実装に移行する過渡期にある。福知山は2020年開業の先行事例として、手引き本体の事例集に組み込まれた『全国の自治体が参照する基準点』となっている。今後3〜5年で7自治体の事業化事例が積み上がり、福知山型のバリエーション(補助金併用型・運営権対価ゼロ型・複数施設パッケージ型)が制度パッケージとして整理されることが予想される。

国際比較 — UK Community Asset Transfer (CAT) との対比

英Localism Act 2011(第5編第3章「Assets of Community Value」)は、地域団体・パリッシュ議会が『コミュニティ価値資産』として指定可能とする制度を導入した。売却時に6か月のモラトリアム期間が設けられ、地域団体が買取準備を行える。これと連動するCommunity Asset Transfer(CAT)は、自治体が所有権またはリースを地域団体に移管する仕組みである。

福知山型とUK CATを並べると、目的と主体が大きく異なる。

項目福知山型UK CAT
主体民間営利事業者(株式会社)地域団体・NPO・パリッシュ議会
対価賃料あり(建物無償+地代年160万円)無償または名目額が標準(peppercorn rent)
公募競争公募地域団体への優先交渉権
期待される効果経済活性化(雇用・観光)地域社会の自治・回復力

日本の福知山型は『民間営利による経済再生』、UK CATは『地域団体による自治回復』と目的が異なる。両者を『コミュニティ主導型公有資産活用』として並べる議論はOECD報告書にも存在するが、制度設計は分岐している。日本でCAT型の運用を進める場合は、共通方針7原則の主体規定(『市と契約締結する事業者は1者とする』)を地域団体・NPOにも適用できるよう拡張する制度的調整が必要となる。

運営パートナー選定の論点

福知山型を採用する自治体にとって、運営パートナー選定の評価項目設計は事業成否を分ける論点である。評価項目には次の4点を含める必要がある。

  • 自己資金体力: 補助金なしで内装改修・運営立ち上げを完遂できる事業者か
  • 地元事業者参画: 地元企業の単独応募が困難な場合、JV(共同事業体)への地元事業者参画をどう配点するか
  • 20年事業継続の蓋然性: 公共施設等運営権設定期間中の事業継続性をどう評価するか
  • 撤退時の対応: 万が一の撤退時に、原状回復・後継事業者選定・再公募コストの分担をどう設計するか

評価項目の重み付けは自治体ごとに異なるが、福知山が達成した『行政負担ゼロ』を再現する場合、自己資金体力と20年継続蓋然性の配点を厚くせざるを得ない。これは事業者選定の門戸を狭める方向に作用するため、地元事業者参画とのバランス設計が論点となる。

国交省『スモールコンセッションのすすめ』完全解説 — 3つの壁・VFM算定不要・契約リスクまで

2026年5月公表手引き40ページの実務解説。3つの壁・4 CASE STUDY・VFM算定不要要件・14支援制度を整理

スモールコンセッションとは?仕組みと事例で解説

PFI法に基づく公共施設等運営権制度の小規模適用、VFM算定不要の根拠、Park-PFIとの違い

廃校活用の成功事例 — 全国の代表ケースと事業構造

廃校Re活用プロジェクトをはじめとする全国の廃校活用事例集、業態・収支構造の比較


参考文献

スモールコンセッションのすすめ(遊休公的施設の利活用のための手引き) (2026)

福知山市 廃校Re活用プロジェクト 国交省官民連携セミナー発表資料 (2023)

福知山市 公式『廃校Re活用プロジェクト』 (2024)

廃校活用で地元企業からの注目度アップ、福知山市の公共FM (2024)

ジチタイワークス Vol.1393 福知山市廃校活用記事 (2024)

スモールコンセッション推進方策 (2024)

Enhancing Rural Innovation in Japan (2025)

廃校施設の有効活用について (2022)

PPP/PFIアクションプラン(2025改定版) (2025)

Localism Act 2011 (UK) (2011)

読んだ後に考えてみよう

  1. 自治体が保有する遊休公共施設のうち、現状有姿で民間活用可能な物件はどれか — 修繕負担を事業者が引き受けられる前提条件は揃っているか
  2. 福知山型の『共通方針7原則』のうち、自治体が議会と合意できる項目はどれか — 7原則のうち何項目を移植すれば事業化が現実的になるか
  3. 対象施設が京阪神圏・首都圏・福岡圏のいずれの需要立地からも外れる場合、福知山型の部分採用か、それとも別モデル(指定管理+運営権設定なし/無償譲渡+運営期支援)に切り替えるべきか

この記事の用語

Park-PFI(公募設置管理制度)
都市公園法に基づき、飲食店等の収益施設と公園施設の整備・管理を一体的に行う民間事業者を公募する制度。2017年の法改正で創設。収益施設の設置許可期間は最長20年。
スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
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