廃校活用の現状
累計8,850校が閉校し、現存する7,612校のうち活用済みは74.4%。年度別の廃校数と活用用途の内訳
2004〜2023年度の廃校累計
8,850校
現存廃校の活用率
74.4%
活用用途が未決定の廃校
1,503校
2004年度から2023年度までに発生した廃校は累計8,850校。年度別に見ると、2016年度以降は一度も450校に達しておらず、2023年度は298校だった。
現存する7,612校の活用状況は以下の通りである。
| 区分 | 校数 | 割合 |
|---|---|---|
| 活用されている | 5,661校 | 74.4% |
| 活用用途が決まっている(未着手) | 235校 | 3.1% |
| 活用用途が決まっていない | 1,503校 | 19.7% |
| 取壊し予定 | 213校 | 2.8% |
注目すべきは「活用用途が決まっていない」19.7%(1,503校)である。これらの学校は毎年維持管理費がかかり続けているが、活用の方向性が見えていない。用途が決まらない理由を校舎について聞いた複数回答(n=2,177)では、「地域等からの要望がない」が903件(41.5%)、「建物が老朽化している」が902件(41.4%)で上位に並ぶ。
同じ調査は、地域住民からの意向聴取の状況も聞いている。校舎7,211件について複数回答で聞いたところ、アンケート調査を実施479件(6.6%)、説明会等によるヒアリングを実施2,782件(38.6%)、その他739件(10.2%)、実施していない3,580件(49.6%)である。これは用途が決まっていない廃校に限った数字ではなく、現存する廃校全体の数字である。活用が決まった校舎も含めて、およそ半数では住民に意向を聞いていない。
同じ調査は、活用されている廃校の主な用途も集計している。ただしこの集計は校舎と屋内運動場を別に数えた件数の複数回答であり、1つの廃校が複数の用途に数えられるため、校数の内訳ではない。
| 活用用途 | 件数 | 用途別割合 |
|---|---|---|
| 学校(大学を除く) | 4,191 | 40.5% |
| 社会体育施設 | 1,693 | 16.4% |
| 企業等の施設・創業支援施設 | 1,207 | 11.7% |
| 社会教育施設・文化施設 | 1,206 | 11.7% |
| 福祉施設・医療施設等 | 735 | 7.1% |
| 体験交流施設等 | 535 | 5.2% |
| 庁舎等 | 449 | 4.3% |
| 備蓄倉庫 | 231 | 2.2% |
| 大学 | 81 | 0.8% |
| 住宅 | 20 | 0.2% |
最多は学校(大学を除く)の4,191件(40.5%)で、次いで社会体育施設が1,693件(16.4%)、企業等の施設・創業支援施設と社会教育施設・文化施設がそれぞれ11.7%と続く。福祉施設・医療施設等は735件(7.1%)である。
廃校活用の基本手順については、廃校活用の全手順を参照されたい。また、スモールコンセッションの枠組みで廃校を活用する方法についてはスモールコンセッションとは?を参照されたい。
分野別の事例分析
事例集47事例の活用用途別の件数と一覧、企業・福祉・教育・観光・コミュニティ・複合の6分野の特徴と前提条件
文部科学省の廃校活用事例集には、北海道から沖縄県まで47の事例が載っていて、事例ごとに活用用途が付いている。1つの事例に複数の用途が付くことがあるので、合計は47を超える。
| 事例集が付けた活用用途 | 事例の数 |
|---|---|
| 企業や法人等の施設 | 22 |
| 宿泊施設 | 6 |
| 社会教育施設 | 5 |
| 体験交流施設(自然体験施設等) | 5 |
| 創業支援施設 | 4 |
| 社会体育施設 | 4 |
| 文化施設 | 3 |
| 大学 | 3 |
| 認定こども園、障害者福祉施設、放課後児童クラブ、庁舎等 | 2ずつ |
| 老人福祉施設、学校、児童福祉施設、医療施設、住宅 | 1ずつ |
| その他(コミュニティ複合施設、ロケ地など) | 11 |
47事例の一覧は次のとおりである。活用の内容は事例集の目次の書き方、活用用途は各事例のページの書き方をそのまま写した。
| 番号 | 自治体 | 活用の内容 | 活用用途 |
|---|---|---|---|
| 1 | 北海道小清水町 | せんべい工場 | 企業や法人等の施設 |
| 2 | 青森県大鰐町 | 生ハム工房 | 企業や法人等の施設 |
| 3 | 岩手県西和賀町 | 介護施設 | 老人福祉施設 |
| 4 | 宮城県加美町 | 音楽技能修得施設 | 学校 |
| 5 | 秋田県由利本荘市 | 木のおもちゃ館 | 社会教育施設、文化施設、体験交流施設(自然体験施設等) |
| 6 | 山形県高畠町 | 大人の学び舎 | 企業や法人等の施設、体験交流施設(自然体験施設等) |
| 7 | 福島県三春町 | 福祉型農業施設 | 障害者福祉施設 |
| 8 | 茨城県行方市 | 体験型農業テーマパーク | 企業や法人等の施設 |
| 9 | 栃木県那珂川町 | 製材工場、バイオマス発電所 | 企業や法人等の施設 |
| 10 | 群馬県みどり市 | 社会教育施設 | 社会教育施設、その他(子育て応援施設) |
| 11 | 埼玉県小鹿野町 | 映画・テレビ・CM撮影等のロケ地 | その他(映画・テレビ・CM撮影等のロケ地) |
| 12 | 千葉県鋸南町 | 都市交流施設・道の駅 | その他(複合商業施設) |
| 13 | 東京都北区 | 文化芸術活動拠点 | 文化施設 |
| 14 | 神奈川県 | ロボット開発のプレ実証フィールド | その他(生活支援ロボットの実証実験施設) |
| 15 | 新潟県長岡市 | 障害福祉サービス事業所 | 障害者福祉施設 |
| 16 | 富山県立山町 | IT交流施設 | 企業や法人等の施設 |
| 17 | 石川県珠洲市 | 大学の教育・研究拠点 | 大学、社会教育施設、創業支援施設 |
| 18 | 福井県若狭町 | 漁村体験施設 | 体験交流施設(自然体験施設等)、大学 |
| 19 | 山梨県身延町 | ドローン開発・研究等施設 | 企業や法人等の施設 |
| 20 | 長野県飯綱町 | 創業交流施設、自然体験交流施設 | 創業支援施設、宿泊施設、社会体育施設、放課後児童クラブ、企業や法人等の施設、その他(コミュニティ複合施設) |
| 21 | 岐阜県美濃市 | 和紙用具ミュージアム | 文化施設 |
| 22 | 静岡県島田市 | グランピング施設 | 宿泊施設、その他(地域開放スペース、テレワーク用スペース) |
| 23 | 愛知県新城市 | レストラン | 企業や法人等の施設、体験交流施設(自然体験施設等) |
| 24 | 三重県四日市市 | 子育て支援等複合施設 | 認定こども園、児童福祉施設 |
| 25 | 滋賀県高島市 | 菌床キノコ生産工場 | 企業や法人等の施設 |
| 26 | 京都府福知山市 | いちご農園、農業体験型施設 | 企業や法人等の施設 |
| 27 | 大阪府堺市 | 大学 | 大学 |
| 28 | 兵庫県養父市 | スナップリング製造工場 | 企業や法人等の施設 |
| 29 | 奈良県 | 県の庁舎 | 庁舎等 |
| 30 | 和歌山県海南市 | スポーツセンター | 宿泊施設、社会体育施設 |
| 31 | 鳥取県八頭町 | コミュニティ複合施設 | 企業や法人等の施設、創業支援施設、その他(コミュニティ複合施設) |
| 32 | 島根県出雲市 | カワハギ陸上養殖施設 | 企業や法人等の施設 |
| 33 | 岡山県笠岡市 | シェアアトリエ | 企業や法人等の施設 |
| 34 | 広島県三原市 | 認定こども園 | 認定こども園 |
| 35 | 山口県周防大島町 | サテライトオフィス | 企業や法人等の施設 |
| 36 | 徳島県三好市 | カフェ&ホステル | 企業や法人等の施設、宿泊施設 |
| 37 | 香川県三木町 | 希少糖研究研修センター | 企業や法人等の施設 |
| 38 | 愛媛県新居浜市 | 生涯活躍のまち拠点施設 | 創業支援施設、社会体育施設、その他(コミュニティ複合施設) |
| 39 | 高知県室戸市 | 水族館 | 体験交流施設(自然体験施設等) |
| 40 | 福岡県宮若市 | AI研究開発施設 | 企業や法人等の施設 |
| 41 | 佐賀県佐賀市 | 地域交流拠点・オフィス・合宿施設 | 宿泊施設、社会体育施設、その他(コミュニティースペース、サテライトオフィススペース) |
| 42 | 長崎県西海市 | 放課後児童クラブ | 放課後児童クラブ |
| 43 | 熊本県菊池市 | 酒蔵 | 企業や法人等の施設 |
| 44 | 大分県国東市 | 非破壊検査機器の開発・製造等拠点 | 企業や法人等の施設 |
| 45 | 宮崎県美郷町 | ウナギ研究所・博物館 | 企業や法人等の施設、社会教育施設 |
| 46 | 鹿児島県南さつま市 | 市役所出張所、診療所等の複合施設 | 社会教育施設、医療施設、庁舎等、住宅、その他(野間池分団消防車庫、詰所) |
| 47 | 沖縄県うるま市 | 地域交流拠点施設 | 宿泊施設、その他(コミュニティ複合施設) |
この47事例と、文部科学省の「みんなの廃校」プロジェクトの情報をもとに、6つの分野の特徴と前提条件を整理する。
企業の事業所(工場・研究開発・オフィス)
事例集で最も多いのが、企業や法人等の施設として使う事例である。製造の工場、研究開発の拠点、サテライトオフィスなどがある。
北海道小清水町の旧北陽小学校は、有償譲渡を受けた株式会社山口油屋福太郎がせんべい工場にし、改修費の総額約4.5億円は事業者負担、補助金は使っていない。滋賀県高島市の旧今津西小学校は、無償貸与を受けた共栄精密株式会社が菌床キノコの生産工場にし、改修費の総額約5,200万円は事業者負担だった。山口県周防大島町の旧和田小学校は、株式会社ビジコムが無償貸与を受けてサテライトオフィスにし、改修費の総額約4,652万円のうち自治体が約1,931万円、事業者が約1,721万円を負担し、山口県の補助金が約1,000万円入った。
前提条件:
- 事業に合った立地(原材料の産地、交通、通信環境など)と、進出を考える企業がいること
- 譲渡か貸与か、改修費をどちらが持つかを、公募や協議の段階で決めておくこと
福祉施設(高齢者・障害者・児童)
廃校の教室と体育館は、障害者の就労継続支援施設、放課後等デイサービス、高齢者の介護施設などへの転用が考えられる。事例集で福祉・子育て・医療の用途が付いた事例は8件(事例3、7、15、20、24、34、42、46)である。
北海道夕張市の旧のぞみ小学校(1986年竣工、2011年閉校)を養護老人ホーム「夕張紅葉園」にした例では、調査の結果、構造躯体・外壁・屋根など主要部分は十分使える状態で、軽微な改修で済んだ。旧校舎から転用した部分(延べ面積2,145.20㎡、増築部分を除く)の最終的な契約金額は1億5,853万円、㎡単価は73,900円で、記事は新築工事で建てた場合の平均的な費用の1/3程度で済んだと書いている。これは1件の例で、どの廃校でも新築の1/3になるわけではない。
収益構造の安定性:障害福祉サービスの報酬は障害者総合支援法に基づく公定価格であり、景気変動や季節変動の影響を受けにくい。観光施設のように「客が来なければ赤字」というリスクがない点が、他分野と根本的に異なる。
前提条件:
- 対象地域に福祉サービスの需要(利用者)が存在すること
- 建物が用途変更(学校→福祉施設)に対応できる状態であること(耐震・バリアフリー)
- 福祉事業の運営実績を持つ法人が参入する意思があること
教育・研修施設
廃校の校舎を教育施設(大学、音楽などの専門の学校、社会人の学び舎など)に使うパターン。事例集では、大学の用途が付いた事例が3件(事例17、18、27)、学校が1件(事例4)ある。教室・黒板・グラウンドといった教育のための設備をそのまま使える。
収益構造:フリースクールや職業訓練は公費補助が入るケースと民間運営のケースが混在する。企業研修所の場合は大都市からのアクセスが重要な前提条件になる。
用途変更の手続き:建物の用途を変えて、別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものにする場合は、確認の手続きの規定が準用される。用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間のものである場合は除かれる。変えたあとの用途が特殊建築物でなければ、この確認は要らない。どの用途に当たるかは、建物ごとに建築主事等に確かめる。
観光・交流施設
体験型観光施設、宿泊施設、レストラン、マルシェ等への転用。事例集では、宿泊施設の用途が付いた事例が6件、体験交流施設が5件ある。廃校の「ノスタルジー」それ自体が集客要素になるが、このモデルは前提条件が最も厳しい分野でもある。
収益構造の課題:観光は季節変動と集客力に収益が直結する。都市部からのアクセスが良く、既存の観光動線に乗ることができる施設でなければ、通年での事業採算は困難だ。
前提条件(厳しい):
- 年間集客数が事業採算に見合うだけのアクセスと観光需要があること
- 季節変動への対策(冬季の集客が見込めない地域では通年営業が困難)
- 改修費の大半を自己調達できる事業者の存在
コミュニティ施設
地域住民の交流拠点、コワーキングスペース、子育て支援センター等への転用。事例集では、その他の用途に「コミュニティ複合施設」が付いた事例が4件(事例20、31、38、47)ある。収益性は低いが、地域のコミュニティ維持という公共的価値が高い分野だ。
収益構造:収益で運営費を賄うのが難しい場合は、指定管理料や交付金など、自治体の負担を前提に組む。完全な民間収益事業としての成立は難しいが、自治体が一部費用を負担することで持続可能になる。
住民にとって「母校」であった場所を活用するため、他分野と比較して心理的な受容性が高い。ただし、自治体が費用を負担し続ける前提が崩れると持続困難になる点は考慮が必要だ。
複合活用
1つの廃校に複数の機能を入れるモデル。事例集では、長野県飯綱町の事例20に6つの用途(創業支援施設、宿泊施設、社会体育施設、放課後児童クラブ、企業や法人等の施設、コミュニティ複合施設)が付いている。
収益構造の優位性:収益部門(飲食・体験)と公共部門(福祉・教育)を組み合わせることで、事業全体の採算性を確保しやすい。複数の事業者・法人がコンソーシアムを組んで参入でき、リスク分散が可能だ。
前提条件:複数テナントをまとめる調整コストが高い。事業者間の役割分担と収益按分の設計に専門的な知見が必要になる。
福祉施設への転用が選ばれる理由
報酬の安定性、建物との相性、自治体の維持管理費の3つを事例集の記載で読む
福祉施設・医療施設等への活用は735件(7.1%)で、前回調査(令和3年5月1日現在)の774件を下回る。障害者福祉施設は177件で、前回の176件とほぼ同じである。数が増えているわけではない。それでも福祉転用を選ぶ事業者と自治体があるのには、3つの背景がある。
理由1: 報酬の安定性
障害福祉サービスの報酬は国の公定価格(障害者総合支援法に基づく報酬基準)であり、原則として3年ごとの改定はあるものの、景気変動や季節変動の影響を受けにくい安定した収益構造を持つ。
観光施設が「集客ゼロの冬季は赤字」というリスクを抱えるのに対し、就労継続支援B型や放課後等デイサービスは、利用者が安定して通所する限り収益が確保される。過疎地の廃校であっても、需要があれば事業継続できる。
理由2: 既存建物との物理的相性
就労継続支援A型の事業所には、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室などを設ける。訓練・作業室は訓練又は作業に支障がない広さを有し、必要な機械器具等を備える。この規定はB型に準用される。基準は広さを数字で決めていないので、教室の広さと利用者の人数と作業の中身を、指定の窓口と照らし合わせる。
事例集では、岩手県西和賀町が2階建ての校舎の1階部分を事務室・居室・食堂等に改修して小規模多機能ホームにしている。福島県三春町の旧沢石小学校は、葉物野菜の水耕栽培で障害者等を雇用する福祉型農業施設になり、改修費の総額は約400万円だった。
厚生労働省の社会福祉施設整備補助金は、社会福祉法人等が施設を整備する場合に、国が整備費の1/2、都道府県が1/4を補助する(後述)。
理由3: 自治体の維持管理費と解体費
新潟県長岡市は、廃校を法人に活用してもらうことで、施設の維持管理や解体撤去等に係るコストの削減につながったことを利点に挙げている。建物を残して使うかどうかは、維持管理費と解体費を含めて比べる。
ただし、福祉の事業を新しく始めることに反対の声が出ることもある。西和賀町では、町内に老人福祉施設が人口に対して比較的多く、介護保険料が高いことが課題で、同業者から保険料のさらなる上昇を懸念する反対の声があった。今後の高齢者数の推移などの説明会を数多く開いて理解を得た。住民合意の進め方と契約の設計が、転用を成功させるための鍵となる。
改修費の実態と補助金スキーム
約4,150万円から約10億円まで。延床面積、建物の状態、使った補助金の制度が3件で違う
廃校を福祉・子育て施設に転用する場合の改修費は、施設の規模・用途・建物の状態によって大きく異なる。3事例の比較を示す。
| 事例 | 元施設(建築年度) | 用途と事業主体 | 延床面積 | 改修費の総額 | うち負担 | うち補助金(制度) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 岩手県西和賀町 雪つばきの里 | 旧越中畑小学校(1980年度) | 小規模多機能ホーム(NPO法人) | 489.78㎡ | 約4,150万円 | 事業者 約850万円 | 約3,300万円(介護サービス施設等整備臨時特例事業費補助金、施設開設準備経費助成特別対策事業費補助金) |
| 新潟県長岡市 和島トゥー・ル・モンド | 旧島田小学校(1904年度) | 障害者就労支援施設(社会福祉法人) | 2,973.68㎡ | 約2億3,500万円 | 事業者 約1.8億円 | 約5,500万円(社会福祉施設等施設整備費補助金) |
| 三重県四日市市 橋北交流会館 | 旧東橋北小学校(1992年度) | 子育て支援等複合施設(市) | 約6,315㎡ | 約10億円 | 自治体 約9.9億円 | 約1,000万円(スポーツ振興くじ助成金) |
3事例の建築年度、延床面積、改修費、負担、補助金はいずれも文部科学省の事例集に記載されたものである。改修費の総額は約4,150万円から約10億円まで開きがあるが、延床面積も約490㎡から約6,300㎡まで違う。延床面積1㎡あたりに割ると、西和賀町が約8.5万円、長岡市が約7.9万円、四日市市が約15.8万円になる(本記事の計算。改修費の総額には、建物の改修以外の費用が入っていることもある)。
① 建物の状態:長岡市の旧島田小学校は、建物の老朽化で変形した柱の修復、地震の影響で下がった基礎の調整、今の建築基準法や消防法に合わせる改修が必要で、事例集は工事にかなりの費用がかかったと書いている。西和賀町の校舎は、活用する前から耐震基準をクリアしていた。
② 用途と規模:四日市市は、地域の幼稚園・保育園・児童館などの機能を集めた約6,315㎡の複合施設で、3件の中で延床面積も1㎡あたりの改修費も最も大きい。
③ 補助金の制度:3件で使った制度が違う。社会福祉施設整備補助金は、保護施設、障害児入所施設等、障害福祉サービス事業所等を対象に、社会福祉法人等が施設を整備する場合、国が原則として整備費の1/2を、都道府県(指定都市・中核市を含む)が1/4を補助する。長岡市の障害者就労支援施設はこの補助金(事例集の表記では社会福祉施設等施設整備費補助金)を使った。西和賀町の小規模多機能ホームは介護の補助金を、四日市市はスポーツ振興くじ助成金を使っている。用途が決まったら、その用途に使える制度を先に確かめる。
住民合意形成の3パターン
住民組織型・大学コーディネート型・合議体型の使い分け
文科省事例集から、住民合意形成のプロセスとして3つのパターンが確認できる。
パターン1: 住民組織型(岩手県西和賀町)
町から閉校の方針が示されたあと、旧学区4行政区の代表者等による10回以上の検討で、廃校を活用して地域福祉に取り組むことが決まった。閉校前の2011年2月に地域住民の代表らがNPO法人を立ち上げ、2012年6月に事業を始めた。運営法人には介護事業を立ち上げた経験者がおらず、研修に力を入れて設立期を乗り切り、事業開始から8年余りで累積赤字を一掃した。
住民自身が運営主体になる形である。その分、NPO設立という組織化のコストと、長期の経営安定化を待てる体力が必要になる。
パターン2: 大学コーディネート型(新潟県長岡市)
長岡市は、学校の統合とそれに伴う廃校の活用が地域全体の重要な問題だったことから、市内の大学にコーディネートを依頼した。地域住民や教育関係者からなる4つの検討部会で各12回にわたる検討会を開いたほか、地域住民へのアンケートやホームページで意見を集め、学校の統合から廃校の活用までの検討を進めた。事業者は簡易評価型プロポーザルで選んだ。
利害関係が複雑な場合や、住民間で意見が対立しやすい場合に向いた進め方である。
パターン3: 合議体+オブザーバー型(三重県四日市市)
地域住民が廃校の活用方法を検討するために立ち上げた合議体に、市の職員がオブザーバーとして参加し、そこで把握した住民の声を活用方針に反映できるよう検討を進めた。住民が疑問に感じることには質疑応答や協議を重ね、市としての活用方針を決めた。
住民の議論の場を別に作り、決定は市が持つ形である。合議体の運営を支えるファシリテーターの役割が重要になる。
前提条件の整理
廃校活用の成否を分ける5つの前提条件と判断基準
廃校活用の成否を分ける5つの前提条件を整理する。
| 前提条件 | 確認すべき内容 | 判断基準 |
|---|---|---|
| 建物の状態 | 耐震性・アスベスト・設備の劣化度 | 耐震診断の結果と、補強や法令に合わせる改修が要るか |
| 改修費の見通し | 概算費用と財源 | 用途に使える補助金の制度があるか(3事例でも制度が違う) |
| 需要の有無 | 活用分野に合った利用者・顧客の存在 | 福祉は需要推計、観光は年間集客力 |
| 事業者の参入意欲 | サウンディングで確認 | 応募見込みがゼロなら手法を再検討 |
| 地域住民の合意 | 母校への愛着と新用途への理解 | 事前説明会・住民参加プロセスの設計 |
重要な視点:現存する廃校の校舎7,211件のうち、地域住民からの意向聴取を「実施していない」が3,580件(49.6%)ある。事例を読んで「何ができるか」のイメージを持つことは第一歩だが、それより先に「地域の住民が何を望み、どんな需要があるか」を丁寧に聴取するプロセスが、失敗を防ぐ最も確実な方法である。
47事例のデータは「何ができるか」のヒントを与えてくれるが、「うちの廃校でそれが成立するか」は別の問いである。まず必要なのは、建物の状態と地域の需要を正確に把握し、それに合った事業者を探すプロセスを設計することだ。
一般社団法人 社会構想デザイン機構(ISVD)は、構想段階の相談から事業化まで、無料で話を聞く窓口を設けている。
廃校×福祉施設の収支モデル
就労継続支援B型を例に、令和8年6月からの基本報酬の区分、工賃の決まり、施設費の差の出し方、3つの事例を載せた。
廃校の改修費:費目別の内訳と事例
構造・内装・設備・消防用設備・バリアフリーの費目ごとに、改修費の考え方と文部科学省の事例集の金額を整理した。
廃校活用の進め方:実態調査の数、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分の手続き、国の補助制度
実態調査の数と用途が決まらない理由、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分が報告で済む場合と国庫納付金が要らない場合、国庫補助制度の一覧
次にやること
廃校の活用事例を参考にする際は、費用と施設の条件を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 想定している用途に近い事例を選ぶ | 記事の事例、公表資料 |
| 2 | 事例の自治体に、改修費の決算額と補助金の内訳を照会する | 事例の自治体 |
| 3 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を確認する。未実施の場合は、調査の範囲と実施方法を検討する | 営繕担当 |
| 4 | 財産処分に必要な手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎は、活用方法と処分制限期間に応じて、文科省の承認申請または報告の要件を確認する | 教育委員会、文科省 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生や地域団体に活用方針を説明し、意見を聞く | 同窓会、自治会 |
他自治体の改修費を参考にする際は、建物の状態と工事の範囲を確認する。対象施設の予算は、その施設の調査結果と見積もりに基づいて検討する。
さらに詳しく
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