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ARTICLE · スモールコンセッション

スモールコンセッションとは?自治体担当者のための完全ガイド【2026年版】

自治体担当者向け:スモールコンセッション(事業費10億円未満の小規模PPP/PFI)の定義・対象施設・3つの壁・国交省プラットフォーム・専門家派遣制度を2026年最新情報で解説。

この記事の要点

  • スモールコンセッションは事業費10億円未満の小規模PPP/PFI。廃校・古民家・遊休施設が対象
  • 国交省が2024年にプラットフォームを設立。会員1,000名超、専門家派遣制度あり
  • 推進上の「3つの壁」と、それを乗り越えるための制度的支援が整備されつつある
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • 公共施設の活用を検討している自治体職員
  • PPP/PFIの導入を初めて検討する企画課・財産管理課の担当者
  • 公共空間ビジネスへの参入を考えている民間事業者

前提となる知識

  • 特になし(入門記事)
この記事の内容

スモールコンセッションとは何か

事業費10億円未満、遊休公的不動産を活用する小規模PPP/PFI事業の定義と位置づけ

年間廃校発生数(文部科学省のページ。累計8,850校)

約450校

同省の実態調査の年度別では2023年度298校。2016年度以降450校に達していない

スモールコンセッションPF会員登録数(令和8年8月27日現在)

1,547件

民間企業等606・個人479・自治体365

スモールコンセッション事業化の標準プロセス

5フェーズ

機運醸成→施設選定→事業化検討→事業計画→公募・選定

とは、地方公共団体が所有・取得する遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模な事業を行う取組みである。

具体的には、使われなくなった廃校、住民から寄付を受けた古民家、老朽化した公共施設など、いわゆる「遊休公的不動産」を対象に、民間事業者が企画・整備・運営を担うことで、地域課題の解決とエリア価値の向上を同時に実現する仕組みだ。

従来の(空港・水道など大規模インフラが対象)との最大の違いは 規模 にある。スモールコンセッションは 事業費10億円未満 を想定した「小さな官民連携」であり、大手事業者でなくとも参入できる設計になっている。

項目従来のコンセッションスモールコンセッション
事業規模数十億〜数千億円10億円未満
対象施設空港・水道・有料道路廃校・古民家・遊休施設
事業者大企業中心中小企業・NPO・地元事業者も参入可能
所管各施設の所管省庁国土交通省が横断的に推進

この制度は令和6年12月に国土交通省がプラットフォームを設立したことで本格的に始動した。制度としてはまだ新しく、競合する情報源も少ない。だからこそ、今のうちに正確な理解を持っておくことが重要である。

なぜ今スモールコンセッションが注目されるのか

毎年数百校の廃校発生、公共施設の老朽化という構造的背景

スモールコンセッションが制度化された背景には、日本の公共施設が直面する2つの構造的な問題がある。

増え続ける遊休施設

日本では毎年約450校の廃校が発生していると文部科学省は書いている。同省の実態調査を年度別に見ると、2016年度以降は毎年279〜405校で450校に達した年はなく、2023年度は298校である。2004年度から2023年度までの累計は8,850校に達する。現存する7,612校のうち活用されているものは5,661校(74.4%)で、1,951校が未活用である。そのうち活用用途が決まっていない施設は1,503校にのぼる。

廃校だけではない。人口減少に伴い、公民館、集会所、旧庁舎、旧医院、旧住宅など、用途を失った公共施設・公的不動産は全国に無数に存在する。これらは維持管理費だけがかかり続ける「負の資産」となりつつある。

従来手法の限界

こうした小規模施設の活用に、従来の大規模PPP/PFI手法は適さない。事業費が数億円規模の案件に、大手コンサルへのアドバイザリー委託(数千万円)やPFI法に基づく複雑な手続きを適用するのは、費用対効果の面で現実的ではない。

一方で、では指定期間が通常3〜5年と短く、民間事業者にとって長期の投資回収が見込めない。改修工事に数千万円を投じても、3年後に指定を外される可能性があるなら、誰も投資しない。

スモールコンセッションは、この「大規模PPP/PFIでは重すぎるが、指定管理では軽すぎる」という隙間を埋める制度として設計された。

対象となる施設と事業手法

廃校・古民家・公共施設を、コンセッション・PFI・賃貸借・指定管理の中から最適手法で活用

対象施設の類型

国交省の推進方策では、以下の施設類型が想定されている。

  • 廃校・学校跡地: 福祉施設、フリースクール、コワーキングスペース、地域交流拠点等への転用
  • 古民家・旧住宅: 観光施設、宿泊施設、飲食店等への再生
  • 遊休公共施設: 旧庁舎、旧医院、旧保養所等の民間活用
  • スポーツ・文化施設: 研修施設、体験施設等への用途変更

重要なのは、対象が「 既存建築物の活用 」に重点を置いている点である。新築ではなく、既にある建物をリノベーションして活用する。これにより初期投資を抑えつつ、建物の歴史や地域の文脈を活かした事業が可能になる。

事業手法の選択肢

スモールコンセッションは特定の法律に基づく単一の手法ではなく、案件の特性に応じて最適な手法を選択する「 手法のメニュー 」として設計されている。

手法特徴適するケース
PFI法に基づくコンセッション運営権を民間に付与収益性が見込める施設
RO方式等のPFI改修+運営を一体委託大規模改修が必要な施設
賃貸借方式施設を民間に賃貸手続きを簡素化したい場合
指定管理者制度管理運営を民間に委託公共サービス維持が必要な施設

どの手法を選ぶかは、施設の状態、収益性の見込み、自治体の方針によって異なる。なお、公園施設の場合は都市公園法に基づくが別途存在し、スモールコンセッションとは制度的な位置づけが異なる。この「手法選択」の設計自体が、事業化において最も重要な意思決定の一つである。

スモールコンセッション推進上の「3つの壁」

イメージの壁・パートナーの壁・事業化の壁と、国の制度的支援

国交省の推進方策は、スモールコンセッションの普及を阻む構造的な課題を「3つの壁」として整理している。

スモールコンセッション推進上の3つの壁。イメージの壁は機運醸成の段、パートナーの壁は事業者と出会う段、事業化の壁は計画する段で立ちはだかり、それぞれ知識と理解を深める・対話と関係づくりの場・事業化の支援という打ち手が対応する。
壁ごとに、つまずく段と打ち手が対応している出典: 国土交通省 総合政策局「スモールコンセッション推進方策案について」(2024年)

第1の壁: イメージの壁

PPP/PFIという言葉自体が「大規模事業」のイメージと結びついており、小規模な施設活用にも適用できるという認識が自治体内に広まっていない。特に、首長や議会の理解が得られないケースが多い。

第2の壁: パートナーの壁

地方の小規模施設の場合、運営を担う民間事業者が見つからないことが最大の障壁になる。大都市圏では複数の事業者が手を挙げるが、人口数万人の町ではを実施しても応募がゼロというケースが珍しくない。

第3の壁: 事業化の壁

仮に事業者が見つかっても、PFI法に基づく手続きは煩雑であり、小規模自治体にとって担当者1〜2名で進めるには荷が重い。さらに、事業性の検証(収支シミュレーション)や資金調達の知見が庁内にないことも多い。

これらの壁を乗り越えるために、国は後述するプラットフォームの設立や専門家派遣制度を整備しつつある。

事業化までの5つのフェーズ

機運醸成→施設選定→事業化検討→事業計画→公募・選定の流れ

スモールコンセッションの事業化は、以下の5つのフェーズで進む。

事業化までの5つの段と、壁が立つ場所。機運醸成でスキームを知る、施設選定で企画する、事業化検討で民間事業者と出会う、事業計画で計画する、公募・選定で実施する。壁が立つのは機運醸成・事業化検討・事業計画の3か所。
壁が立つのは5つの段のうち3か所。どの段にいるかで打つ手が変わる出典: 国土交通省 総合政策局「スモールコンセッション推進方策案について」(2024年)

フェーズ1: 機運醸成

PPP/PFIに対する庁内の理解を深める段階。首長・議会・関係部署への説明、先進事例の視察、セミナーへの参加などが含まれる。この段階を飛ばして「いきなり公募」に進むと、庁内合意が得られずに頓挫するケースが多い。

フェーズ2: 施設選定

遊休施設の棚卸しを行い、スモールコンセッションの対象候補を絞り込む。単に「空いている施設」を選ぶのではなく、周辺のエリアビジョンや地域のニーズを踏まえて選定することが重要である。

フェーズ3: 事業化検討

サウンディング型市場調査を実施し、民間事業者の意向やアイデアを把握する。この段階で「そもそも民間が参入したいか」を確認できるため、公募後に応募ゼロという事態を回避できる。

フェーズ4: 事業計画

収支シミュレーション、導入可能性調査、事業スキームの設計を行う。施設の改修費用、運営コスト、収益見込みを具体的に試算し、事業として成立するかを検証する。

フェーズ5: 公募・選定

募集要項の策定、評価基準の設計、事業者の選定を行う。評価基準は価格だけでなく、事業計画の質、地域貢献度、運営体制なども総合的に評価する配点設計が求められる。

スモールコンセッションプラットフォームの活用

国交省が設立した官民連携のプラットフォーム。会員登録・専門家派遣の仕組み

2024年12月、国土交通省はスモールコンセッションプラットフォームを設立した。産官学金の多様なステークホルダーが参加し、情報共有・マッチング・案件形成を支援する仕組みである。

会員構成(令和8年8月27日現在)

プラットフォームの会員登録数は令和8年8月27日現在で1,547件である。

会員種別登録数
民間企業等(金融機関を除く)606
個人479
都道府県及び市区町村365
金融機関50
関係府省庁等25
大学、研究機関等22
計1,547

民間企業等606に対して、都道府県及び市区町村が365。官と民が同じ場に登録している。会員登録は無料で、自治体・民間事業者・個人を問わず参加できる。

専門家派遣制度

プラットフォームの重要な機能の一つが、 スモールコンセッション形成推進事業 による専門家の派遣である。スモールコンセッションの検討を行う自治体に対し、国が選定した専門家を派遣して伴走支援を行う制度だ。

2025年度は7つの自治体が対象となり、エリアビジョンの検討から施設現況調査まで、事業化の初期段階を専門家が支援している。2026年度も引き続き募集が行われている。

次のステップ

スモールコンセッションは制度として整備が進みつつあるが、実際の事業化には 自分の自治体・施設に合った事業設計 が不可欠である。他の自治体の成功事例をそのままコピーしても、前提条件(人口規模、立地、民間事業者の参入意欲等)が異なれば同じ結果にはならない。

まずは以下のステップから着手することを推奨する。

  1. 遊休施設の棚卸し: 自治体内に対象候補がいくつあるかを把握する
  2. プラットフォームへの参加: 会員登録(無料)で最新情報と事例を収集する
  3. サウンディングの検討: 民間事業者の参入意欲を早期に把握する

事例から学べることは多いが、自分の街で同じ結果が出るとは限らない。前提条件の整理、手法の選定、事業設計。これらを一つひとつ組み立てていく作業は、事例を読むだけでは完結しない。

一般社団法人 社会構想デザイン機構(ISVD)では、自治体ごとの前提条件を整理した上で、最適な官民連携の手法を一緒に設計する無料相談を受け付けている。

ガイド

スモールコンセッションプラットフォーム活用ガイド

会員登録1,547件の国交省公式プラットフォームの登録方法・3つのメリット・実践的な活用法

ガイド

スモールコンセッション完全ガイド

廃校・古民家・公共施設の活用から補助金・専門家派遣まで網羅した実践ガイド

この記事で使った統計の出典

  1. 1文部科学省「みんなの廃校プロジェクト」(2024年) 出典を開く
  2. 2国土交通省「スモールコンセッションプラットフォーム 会員登録状況」(令和8年8月27日現在)(2026) 出典を開く
  3. 3本記事の整理
  4. 4国土交通省 スモールコンセッションプラットフォーム(プラットフォームの概要)(2026) 出典を開く
  5. 5文部科学省 令和6年度「廃校施設活用状況実態調査」(令和6年5月1日現在)(2025) 出典を開く

参考文献

スモールコンセッション推進方策/国土交通省 総合政策局 (2024)

スモールコンセッションプラットフォーム/国土交通省 (2024)

みんなの廃校プロジェクト/文部科学省 (2024)

PPP/PFI推進アクションプラン/内閣府 民間資金等活用事業推進室 (2024)

Park-PFI(公募設置管理制度)/国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 (2024)

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記事を庁内資料・議会・勉強会・研究で引用するときは、記事名・公共0区(一般社団法人 社会構想デザイン機構)・URLを明記してください。 引用・転載の案内 →

訂正履歴

  1. :数字カードの「約450校」の出典を、450校と書いていない実態調査にしていました。

    訂正前
    年間廃校発生数 約450校(出典表示は文部科学省 廃校施設活用状況実態調査(2025年3月))
    訂正後
    年間廃校発生数 約450校(文部科学省のページ)。同省の実態調査の年度別では2016年度以降は毎年279〜405校で450校に達した年はなく、2023年度は298校

    誤った理由 「令和6年度 廃校施設活用状況実態調査」の結果(令和7年3月31日公表のPDF)に、年に約450校という数は載っていません。約450校は、文部科学省「~未来につなごう~『みんなの廃校』プロジェクト」のページにある「全国では毎年約450校程度の廃校施設が生じています」という表現です。同省の「令和6年度 廃校施設活用状況実態調査」の資料1(公立学校の年度別廃校発生数)では、2016年度以降の各年度が279〜405校で、2023年度は298校です。2015年度以前は428〜597校でした。20年度分を足すと8,850校になり、調査の累計と一致します。数字カードの出典を450校と書いているページに直し、本文にも調査の年度別の数を足しました。

  2. :スモールコンセッションプラットフォームの会員数を、出典に載っていない数字で書いていました。国土交通省が公表している会員登録状況に差し替えました。

    訂正前
    2025年5月時点で会員数1,042名(民間事業者430名・自治体250名・個人288名)
    訂正後
    令和8年8月27日現在の会員登録数1,547件。内訳は民間企業等606・個人479・都道府県及び市区町村365・金融機関50・関係府省庁等25・大学、研究機関等22(うち名前を公表しているのは872)

    誤った理由 出典に挙げていた国土交通省のプラットフォーム案内ページ(https://www.mlit.go.jp/smcn/about/)に、会員数の記載はありません。同省が数を出しているのは「スモールコンセッションプラットフォーム 会員登録状況」という一覧(PDF)で、そこにあるのはその時点の登録数だけです。617→903→1,042という推移を確認できる公表資料は見つからなかったため、推移の記述そのものを落としました。数え方も出典に合わせ、「名」から「件」に直しています。同じ数字を使っていた7記事をまとめて直しました。

この記事の用語

Park-PFI(公募設置管理制度)
都市公園法に基づき、飲食店等の収益施設と公園施設の整備・管理を一体的に行う民間事業者を公募する制度。2017年の法改正で創設。収益施設の設置許可期間は最長20年。
PPP/PFI
官民が連携して公共サービスの提供や公共施設の整備・運営を行う手法の総称。PFIは民間資金を活用したインフラ整備、PPPはPFIを含むより広い概念で指定管理者制度や包括的民間委託等を含む。
コンセッション方式
公共施設の所有権を行政が保持したまま、運営権を民間事業者に委託するPFI手法。水道事業では2022年に宮城県が全国初の導入事例となった。
サウンディング型市場調査
公有資産の活用にあたり、公募前に民間事業者の意見・アイデアを聞く対話型の市場調査。事業の実現可能性や条件設定の妥当性を事前に検証する目的で実施される。
スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
指定管理者制度
地方自治法第244条の2に基づき、公の施設の管理を民間事業者やNPO等に委ねる制度。2003年の法改正で導入。総務省の調査(令和6年4月1日現在、79,332施設)では指定期間は5年が77.1%、3年が10.9%、10年以上は5.7%で、この期間の短さが長期投資を妨げる課題として挙げられる。

ご自身の案件で確認すること

  • あなたの自治体に、スモールコンセッションの対象になりうる遊休施設はいくつあるか?
  • 庁内でPPP/PFIの理解はどの程度進んでいるか?「イメージの壁」は存在するか?
  • サウンディングを実施した場合、参加してくれそうな民間事業者の心当たりはあるか?

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