ざっくり言うと
- サウンディングは3種類(トライアル・プレ・マーケット)。段階的に実施するのが成功パターン
- 質問項目テンプレート8項目を「なぜこの質問を聞くのか」という設計意図とともに解説
- 結果の公表が次の参入者を呼び込む。非公表は機会損失
サウンディングとは何か
公募前に民間と対話し、参入意欲やアイデアを把握する調査手法——年716件に急増した背景
716件
サウンディング実施件数(2023年度)
2016年の69件から7年間で10倍以上に急増(国土交通省調査)
8項目
マーケット・サウンディング質問テンプレート
関心度・事業内容・改修・条件・スキーム・障壁・地域貢献・スケジュール
150〜500万円
サウンディング外部委託の費用相場
基礎調査含む場合は300〜800万円。自前実施との判断基準を解説
サウンディング型市場調査とは、公有資産の活用にあたり、公募前に民間事業者の意見・アイデアを聞く対話型の市場調査である。「公募すれば事業者は集まるだろう」という前提は、特に地方の小規模施設では危険である。サウンディングは「そもそも民間が参入したいか」を事前に確認する安全装置として機能する。
この制度の普及は数字に表れている。サウンディングの実施件数は2016年の69件から2023年には716件へと、7年間で10倍以上に急増している。この増加は「自治体が公募前に民間の意向を確認する」というプロセスが実務として定着してきた証拠であり、一方で「やり方がわからない」「質問設計に自信がない」という担当者のニーズが高まっていることも示している。
スモールコンセッションの進め方5ステップのフェーズ3に位置づけられ、事業化の成否を左右する最も重要なプロセスである。
3種類のサウンディング
トライアル(社会実験型)・プレ(意向把握型)・マーケット(本格型)の特徴、使い分け、開成山公園の3段階モデル
サウンディングには3つの種類がある。これらを段階的に実施するのが成功パターンである。
| 種類 | 目的 | 形式 | 時期 |
|---|---|---|---|
| トライアル・サウンディング | 施設の活用可能性を実地検証 | 社会実験(実際に出店等) | 構想段階 |
| プレ・サウンディング | 民間の意向を広く把握 | アンケート・簡易ヒアリング | 導入可能性調査段階 |
| マーケット・サウンディング | 事業スキームの詳細を詰める | 個別対話(1社30〜60分) | 公募指針策定直前 |
トライアル・サウンディング
施設を一定期間(1週間〜1ヶ月)民間に開放し、試験的に活用してもらう方式。飲食の出店、イベントの開催などが典型的である。
Park-PFI成功事例5選で紹介した開成山公園の事例では、2020年10月に1ヶ月間のトライアルサウンディングを実施し、参加者に公募時に5点の加点を付与した(500点満点)。これはトライアルへの早期関与が、単なる「見学」ではなく、施設特性の実体験として本番プロポーザルの精度向上につながるという設計思想に基づいている。
メリット: 民間事業者が実際に施設を使うことで、机上では見えない課題(動線・設備・需要)が顕在化する。 デメリット: 実施に手間とコストがかかる。施設の利用許可手続きが必要。
プレ・サウンディング
導入可能性調査の段階で、広く民間の意向を把握する方式。メールやWebフォームでの問い合わせ形式が多い。
メリット: 低コスト・短期間で実施可能。多数の事業者から意見を収集できる。 デメリット: 対話の深さは限定的。「関心はあるが詳細がわからない」レベルの回答が多い。
マーケット・サウンディング
公募指針の策定直前に、個別の民間事業者と1対1で対話する方式。事業スキーム、費用負担、条件整備について具体的に意見交換する。
メリット: 事業者の参入条件や課題を具体的に把握できる。公募条件の設計に直接反映可能。 デメリット: 実施に1〜3ヶ月を要する。対話の内容を公表する際、事業者の競争力に影響する情報の取扱いに注意が必要。
3段階モデルの意味
開成山公園では「トライアル(2020年10月)→ プレ(2021年春)→ マーケット(2021年秋)」の3段階を経て、2022年に公募指針を策定し本公募へと移行した。この段階的アプローチが重要なのは、各段階で得た情報を次の段階の設計に活かせるからだ。トライアルで発覚した施設の課題がプレサウンディングの質問に反映され、プレで判明した参入条件がマーケットでの個別対話のアジェンダになる。「段階を踏む」ことはコスト増ではなく、リスク管理である。
質問項目テンプレートと設計意図
8項目それぞれの「なぜこの質問を聞くのか」——回答から読み取るべき情報と判断ロジック
マーケット・サウンディングにおける質問項目テンプレートを以下に示す。各項目に「なぜこの質問を聞くのか」という設計意図を付記した。設計意図を理解することで、施設の特性に合わせたカスタマイズが可能になる。
1. 施設への関心度
質問内容:
- 本施設の活用に関心はあるか(高い/ある程度/低い/なし)
- 関心がある場合、どのような活用を想定しているか
なぜこの質問を聞くのか:
関心度のスコアリングは、サウンディング全体の「市場性」の定量的な指標となる。5社が参加しても全員「低い」なら実質的に市場がないということを意味し、逆に1社しか来なくても「高い」なら具体的な活用に向けて対話を深める価値がある。「どのような活用を想定しているか」を聞くのは、自治体が想定していなかった活用アイデアを把握するためだ。民間の創意を引き出す「最初の問い」として、オープンな形式にすることが重要である。
2. 希望する事業内容
質問内容:
- 具体的な事業内容・業態
- 想定する利用者層(ターゲット)
- 年間の集客・利用者数の見込み
なぜこの質問を聞くのか:
「業態」を聞くのは、どのセクター(飲食・福祉・教育・観光等)に市場があるかを特定するためだ。複数の事業者に同じ質問をして、「飲食が多い」「福祉が多い」という傾向が出れば、公募条件の設計でどのセクターを優先するかの判断材料になる。「年間集客数の見込み」を聞く理由は、収益性の評価に直結するからである。同じ飲食業態でも「年間5万人」と「年間50万人」では、賃料設定・改修費負担のバランスが根本的に変わる。民間事業者が「実現可能と考える集客数」は、後の事業計画の妥当性審査でも参照される。
3. 施設の改修・整備
質問内容:
- 必要な改修の内容と概算費用
- 自社負担可能な改修費の上限
- 行政側に求める整備事項
なぜこの質問を聞くのか:
改修費の問いは「参入障壁の高さ」を測る最重要指標のひとつである。「改修が必要だが自社負担は難しい」という回答が多ければ、行政が改修費補助や一部負担をしない限り民間参入が起きないことを意味する。逆に「自社で全額負担できる」という回答があれば、行政の財政負担なしに事業化が可能であることを示している。「行政側に求める整備事項」を聞くのは、どこまで行政が整備をすれば民間が動くかの「トリガー条件」を把握するためだ。この回答なしに公募条件を設計すると、参入障壁の設定を間違えてゼロ応募になるリスクがある。
4. 事業条件
質問内容:
- 希望する事業期間(年数)
- 許容可能な賃料・使用料の水準
- 収益還元(売上の一部を行政に還元)の可否
なぜこの質問を聞くのか:
事業期間の希望を聞く理由は、民間事業者の「投資回収ロジック」を把握するためである。改修費として1,000万円を投じる場合、5年では年200万円、20年では年50万円の回収になる。民間が「最低15年は必要」と言うなら、それが回収可能な最短の事業期間を意味しており、それより短い設定では参入者が現れない。賃料・使用料の水準は、「市場が受け入れられる上限」を早期に把握するための問いだ。行政が期待する収入と民間が許容できる支払いの乖離が大きければ、事業成立の可能性は低い。この乖離を事前に把握せずに公募を出すと応募ゼロになる。
5. 事業スキーム
質問内容:
- 希望する手法(PPP/PFI・賃貸借・指定管理等)
- 単独参入かコンソーシアムか
- コンソーシアムの場合、どのような構成を想定するか
なぜこの質問を聞くのか:
事業スキームの問いは、「どの制度枠組みで公募を設計するか」を決める最上流の情報を得るためだ。民間事業者が「賃貸借方式の方が参入しやすい」と答えるなら、スモールコンセッション方式でなく賃貸借による公募を設計した方が参入者を集めやすい可能性がある。「コンソーシアムかどうか」を聞くのは、単独では参入できないが特定のパートナーと組めば参入できる事業者層の存在を把握するためだ。この情報は公募要件の「参加資格」設計に直結する。コンソーシアムを認める要件にすることで参入者が増える場合がある。
6. 参入障壁
質問内容:
- 参入を検討する上での課題・懸念事項
- 行政側にどのような条件整備を求めるか
- 規制・許認可上のハードルはあるか
なぜこの質問を聞くのか:
この項目は、サウンディングの中で最も「聞きにくい問い」であり、同時に最も重要な問いでもある。民間事業者が正直に答えにくい理由は、「批判的なことを言うと印象が悪くなるのでは」という懸念だが、自治体にとってはこの回答こそが公募条件の改善につながる情報だ。「規制・許認可上のハードル」を聞くことで、たとえば「飲食の営業許可が取れるのか不明」「建築用途変更が必要かどうか不明」というグレーゾーンを事前に解消できる。これらが未解決のまま公募が出ると、事業者は「参入しても許認可でつまずくリスクがある」と判断して応募を控える。事前の明確化がリスク除去に直結する。
7. 地域貢献
質問内容:
- 地元雇用の計画
- 地域との連携方針(住民参加・地元調達等)
- 災害時等の公共的役割の担い方
なぜこの質問を聞くのか:
この項目を聞く目的は、事業計画の評価に使うだけでなく、「地域貢献を具体的に語れる事業者かどうか」を見極めるためでもある。スモールコンセッションやPark-PFIでは、地域貢献の評価ウェイトが15〜25%を占める。サウンディング段階で「地元雇用は3名を想定」「地元食材の調達率30%」といった具体的な回答ができる事業者は、本公募でも高得点を出せる可能性が高い。逆に「まだ考えていない」という回答は、事業化の具体化レベルが低いことを示す。この問いへの回答の質は、後の公募で「提案の実現性」を評価する基準のひとつとなる。
8. スケジュール
質問内容:
- 参入が可能となる最短の時期
- 準備に必要な期間(設計・許認可・工事等)
なぜこの質問を聞くのか:
スケジュールの問いは、「今すぐ公募を出しても対応できる事業者がいるか」を確認するためだ。参入に関心のある事業者が「最短でも2年後」という回答をするなら、自治体の「来年から事業化したい」という希望とのギャップが顕在化する。このギャップを事前に把握することで、公募のタイミング調整や準備期間の付与を検討できる。設計・許認可・工事に要する期間を把握しておくことは、開業予定日から逆算した公募スケジュール設計にも直接使える情報だ。「急いで公募→事業者の準備が追いつかない→プロポーザルの質が低い→苦しい選定」という失敗パターンは、このスケジュールの問いを省略したことで起きることが多い。
実施の進め方
公告→受付→対話→結果整理→公表の5ステップ
サウンディングの実施は以下の5ステップで進める。
Step 1: 公告(2〜4週間前) 自治体HPに実施要領を掲載。対象施設の概要、サウンディングの目的、参加申込方法、対話日程を明記する。国交省プラットフォームへの告知も行うと、エリア外の事業者にもリーチできる。
Step 2: 参加受付(2〜3週間) 参加申込書の受付。事前に会社概要と簡易な活用提案を提出してもらうと、対話の効率が上がる。
Step 3: 個別対話(1社30〜60分) テンプレートの8項目に沿って対話。対話は個別・非公開・完全分離で実施することが原則である。複数社を同時に同席させると、事業者のノウハウが競合他社に漏れるリスクがある。記録を取り、後日の結果整理に備える。守秘義務の取扱いを事前に説明する。
Step 4: 結果整理 全事業者の意見を項目別に集約。共通する要望・課題を抽出し、公募条件への反映可否を検討する。「この意見を反映した」「この意見は反映できなかった理由」を整理しておくことで、公募後に事業者から問い合わせが来た際の説明に使える。
Step 5: 結果の公表 概要(参加者数、主な意見の傾向)を自治体HPで公表。個社の特定につながる情報は伏せる。
結果の公表と活用
概要の公表が追加参入者を呼び込む効果——公表すべき情報の線引き
サウンディング結果の公表は、次の参入者を呼び込む効果がある。「他にも関心を持つ事業者がいた」という事実が、公募への参加意欲を後押しする。結果を非公表にすることは機会損失である。
公表すべき内容:
- 参加事業者数(社名は非公表)
- 活用提案の傾向(業態の分布:飲食が多かった、福祉が多かった、等)
- 参入にあたっての共通課題(改修費・事業期間・許認可等)
- サウンディングを踏まえた公募条件の方向性
公表すべきでない情報: 個社名、各社の具体的な事業計画・コスト試算・ノウハウ、対話の一字一句。これらは守秘義務の対象であり、無断で公表すると次回以降のサウンディングへの参加者が減少する。
外部委託の相場と判断基準
150〜500万円。庁内リソースと案件規模で判断する基準
サウンディングの設計・実施を外部のコンサルタントに委託する場合の費用は、一般的に150万〜500万円程度である(基礎調査を含む場合は300〜800万円程度)。
| 項目 | 自前実施 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 費用 | 人件費のみ | 150〜500万円 |
| 所要期間 | 3〜6ヶ月 | 2〜4ヶ月 |
| メリット | コスト抑制・庁内知見蓄積 | 専門性・第三者としての信頼性・民間ネットワーク |
| デメリット | 担当者の負荷大・質問設計の不確実性 | コスト・外部依存 |
判断基準: 初めてサウンディングを実施する場合や、大手事業者の参入が想定される案件(質問設計の精度が選定の成否を左右する)では外部委託が有効である。過去に実施経験があり、担当者のノウハウが蓄積されていれば自前実施も可能だ。
外部委託を選ぶ場合のもうひとつの理由として「民間ネットワークによる参加者集め」がある。コンサルが業界の人脈を使って「このサウンディングに参加してほしい」と声がけすることで、公告だけでは届かない事業者層にリーチできる。参加者数がゼロになるリスクを下げる手段として、外部委託を位置づけることもできる。
応募0者だった場合の対処法
条件緩和・手法変更・エリア拡大の3つのアプローチと診断フロー
サウンディングを実施しても参加者が0の場合、以下の3つのアプローチで対処する。
1. 条件の緩和
賃料の引き下げ、事業期間の延長、行政負担の拡大など、参入障壁を下げる条件変更を検討する。「なぜ参加しなかったのか」を推定する際は、以下のチェックリストが有効だ。
- 情報が届いていなかった(広報範囲が狭かった)
- 条件が厳しすぎた(賃料高・事業期間短・改修費全額自己負担等)
- 施設の状態が悪すぎた(耐震未対応・アスベスト等)
- そもそも需要がなかった(周辺の人口・観光客が不足)
最後の「需要なし」が原因の場合は条件緩和で解決しない。施設類型や活用用途の抜本的な見直しが必要になる。
2. 手法の変更
スモールコンセッションの手法自体を見直す。コンセッション方式が重ければ賃貸借方式に、PPP/PFI法に基づく手続きが煩雑なら簡素な包括連携協定に変更するなど、手法のダウングレードを検討する。
手法を変えることで「参入できる事業者の裾野が広がる」ことがある。特に中小企業・NPOにとっては、PFI法の複雑な手続きよりも賃貸借方式や協定型の方が参入しやすい場合が多い。
3. エリアの拡大
施設単体ではなく周辺エリアを含めた面的な活用計画に拡大することで、事業者にとっての魅力を高める。スモールコンセッション事例7選で紹介したPool町(北海道池田町)の事例では、旧庁舎単体からワインイベントスペース・研修施設・地域交流スペースの複合提案へと事業を拡張したことで、単体では採算が取れなかった事業が成立した。複数施設をパッケージ化するアプローチは、「単体では小さすぎる」施設の解決策として有効である。
サウンディングは「聞くだけ」の調査ではなく、官民の対話を通じて事業を共創するプロセスである。設計の質——特に「なぜこの質問を聞くのか」という問いへの理解——が公募の成否を左右する。
ISVDでは、サウンディングの設計(質問項目のカスタマイズ、対話の進行、結果の分析)を無料で支援している。
サウンディングの3類型と選び方
トライアル・プレ・マーケットの違いと、施設の条件に応じた選択方法を詳解
スモールコンセッションとは?
制度の定義・対象施設・3つの壁・5フェーズの事業化プロセスを入門解説
参考文献
スモールコンセッション推進方策 (2024)
サウンディング型市場調査に関する手引き (2023)
開成山公園 Park-PFI事業 公募設置等指針 (2022)
スモールコンセッションプラットフォーム (2024)
PPP/PFI推進アクションプラン (2024)
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