神奈川県の公園概況
公園数・面積・管理体制の特徴。県営公園・政令市・中小自治体の3層構造
神奈川県最大都市・横浜市の人口規模
3,754,840人
令和7年国勢調査 速報値
先進的スモコン事例の真鶴町の人口規模
5,971人
令和7年国勢調査 速報値
神奈川県の公園管理体制(県営・政令市・市区町村)
3層
神奈川県は、全国屈指の都市公園整備水準を誇る都道府県の一つであり、政令市2市(横浜市・川崎市)、中核市1市(相模原市)、各市区町村の公園が重層的に存在する。人口規模でも横浜市から真鶴町まで多様な自治体が混在しており、都市型・郊外型・地方型のPark-PFI事例が一つの県内に揃う希少な地域といえる。令和7年国勢調査の速報値では、横浜市が3,754,840人、真鶴町が5,971人である。
3層の公園管理体制
神奈川県の公園管理は大きく3層で構成される。
第1層: 県営公園
神奈川県公園協会が指定管理を担う県営公園群がある。丹沢・大山・湘南など広域の自然公園・広域公園が含まれる。県が公園管理者としてPark-PFIを使っているのは観音崎公園の1箇所である。
第2層: 政令市・中核市の都市公園
横浜市・川崎市・相模原市は、それぞれ独自の公園管理体制を持つ。Park-PFIの活用は、川崎市が4箇所(池上新町南緑道・富士見公園・橘公園・登戸つくりと公園)、横浜市が3箇所(横浜動物の森公園・山下公園・大通り公園)で、相模原市は一覧に出ていない。件数では川崎市が県内で最も多い。
第3層: 市区町村の公園
一般市・中都市から真鶴町のような小規模自治体まで幅広い。小規模自治体での公園活用は、予算制約・担当職員の少なさという課題がある一方、スモールコンセッション等の支援制度を活用した先進事例も生まれている。
横浜市の事例
約375万人の政令市でのPark-PFI。国土交通省の一覧に出ている3公園と、大都市での留意点
横浜市は大小あわせて約2,700の公園がある(令和3年6月現在)国内最大の政令市の一つだ。公園管理の課題として老朽施設の更新・維持管理費の増大が顕在化しており、Park-PFIを活用した民間活力の導入が重要な政策手段になっている。
横浜市が使っている3公園
国土交通省の一覧で横浜市が公園管理者になっているのは、横浜動物の森公園・山下公園・大通り公園の3箇所である。約2,700ある公園のうちの3箇所だ。
この3公園の性格:
- 山下公園・大通り公園: 都心部の集客力が高い公園。周辺に民間の飲食・サービス業が集まっている
- 横浜動物の森公園: 郊外の大規模公園。ズーラシアを含む区域である
- 区立公園: 一覧には出ていない。区立公園でPark-PFIを使った例は、この資料では確かめられない
各公園でどの業態が入るかは、横浜市の公募設置等指針と選定結果で確かめる。業態別の全国集計は公表されていない。
横浜市での成立条件と留意点
横浜市規模の大都市では、Park-PFIの民間参入意欲は高い一方、いくつかの特有の課題がある。
課題1: 周辺民間施設との競合
横浜市内の主要公園周辺には、既存の民間カフェ・レストラン・フィットネスが充実している。公募条件の設計において、「民業圧迫」の批判を避けるための業態の差別化・立地の工夫が求められる。
課題2: 景観・都市デザインとの整合
横浜市は都市景観への意識が高く、山下公園・港の見える丘公園等の歴史的景観エリアでの建築物設置には、 横浜市景観計画 との整合が求められる。建物の高さ・デザイン・素材に関して通常より高い水準の設計が必要だ。
課題3: 地域住民との合意形成
横浜市の公園は地域住民の日常的な利用が多く、収益施設の設置に対して「静かな公園を守ってほしい」という意見が出やすい。サウンディング前の住民説明・公園の利用実態調査が不可欠だ。
横須賀市の取り組み
約36万人の都市での公園活用課題と検討状況
出典を示していない収支試算の単価・金額は、説明用に仮定した数値であり、統計に基づく相場ではない。事業計画を作る際は、対象施設の状態や立地、事業内容に応じた見積もりと実績を用いる。出典を示した統計や事例の金額は、この仮定とは区別して参照する。
横須賀市は人口364,978人(令和7年国勢調査 速報値)の中核市で、三浦半島に位置し、海と丘に囲まれた地形を持つ。公園については、市内に多数の公園を管理しており、観光・地域振興との連携を視野に入れた活用が課題となっている。
横須賀市の公園活用の課題と可能性
立地の優位性: 三浦半島の海岸・丘陵という自然資源は、グランピング・海辺のカフェ・アウトドアスポーツ施設など観光需要と結びついた収益施設との親和性が高い。首都圏からのアクセス(横須賀線・京急線)も良好で、日帰り観光客の集客が期待できる。
課題: 人口減少への対応
横須賀市は首都圏の中でも人口減少が顕著な都市の一つだ。地域住民の利便性向上と、域外からの観光集客の両立を公園活用のコンセプトとして設定することが求められる。
課題: 軍港・基地との隣接
横須賀基地周辺エリアでは用途制限・建築規制があり、公園整備に関わる制度的な制約の確認が必要だ。
すでに3箇所で使っている: 横須賀市が公園管理者としてPark-PFIを使っているのは、長井海の手公園(ソレイユの丘)・三笠公園・大矢部みどりの公園の3箇所である。県内では川崎市の4箇所、横浜市の3箇所と並ぶ数だ。観音崎公園は県が公園管理者で、同じ一覧に載っている。
→ サウンディング型市場調査の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。
真鶴町のスモコン事例
人口約6,000人の小規模町での先進的な公共施設活用の試み
真鶴町(まなづるまち)は神奈川県小田原市の南に位置する人口約6,000人の小規模町だ。面積は約7.05km²と非常にコンパクトな自治体だが、真鶴半島の豊かな自然・景観・漁業文化を活かした独自のまちづくりで知られる。
真鶴町のスモールコンセッション採択の背景
国交省のスモールコンセッション形成推進事業において、真鶴町は選定7自治体の一つとして採択された。神奈川県内では真鶴町が唯一の採択自治体であり、人口規模・立地・課題の特殊性から全国的に注目を集める事例となっている。
真鶴町の対象施設と課題
真鶴町では、 旧真鶴町立中学校跡地・関連施設 をはじめとする旧公共施設の活用が課題となっている。廃校後の施設は老朽化が進んでいるが、真鶴半島という希少な自然環境に立地し、観光・宿泊・体験施設としての可能性がある。
公園との組み合わせとしては、真鶴港に隣接する 真鶴臨海公園(海水浴場・磯遊び・キャンプ場)エリアと旧公共施設の一体的な活用が検討されている。これが実現すれば、公園の自然資源(海・磯・砂浜)と旧施設(宿泊・飲食機能)の相互補完が生まれ、真鶴半島全体の観光拠点化が加速する可能性がある。
真鶴町モデルの特徴と課題
特徴1: 小規模自治体の先進モデル
人口約6,000人規模の自治体でのスモールコンセッション×公園活用の取り組みは、同規模の自治体に対して「自分たちにもできる」というモデルを示す意義がある。スモコン専門家の派遣支援を活用しながら、職員体制が手薄な小規模自治体でも事業化が可能であることを示す先例となる。
特徴2: 自然環境ブランドの活用
真鶴半島は「お林」(特別の保護林)・景観形成地区として保護されており、環境規制が厳しい地域だ。しかしこの制約は同時に、「守られた自然の中での体験」というブランド価値にもなる。グランピング・自然体験・環境教育との組み合わせが有効だ。
課題: 担い手不足と事業性の確保
人口約6,000人という小さな地域市場では、単独での収益施設経営は難しい。神奈川県内の中核都市(横浜・川崎・横須賀・小田原等)や首都圏からの来訪者を取り込むことが事業成立の前提となる。そのためには、交通アクセスの改善・観光誘客プロモーションとの連携が不可欠だ。
→ スモールコンセッションの専門家派遣制度の詳細については、スモールコンセッション専門家派遣ガイドを参照されたい。
県内の今後の動き
神奈川県全体のPark-PFI・スモコン推進の方向性と期待される展開
神奈川県全体のPark-PFI・スモコン推進方針
神奈川県内のPark-PFIは14箇所で、東京都18箇所・福岡県17箇所に次ぐ数である。ここから先は本記事の見方である。 今後の展開を分ける要素を3つ挙げる。
要素1: 政令市2市の事例が参照先になるか
政令市2市が積極的なPark-PFI推進を進めることで、県内の中小自治体への波及効果が生まれる。大都市での成功事例・運営ノウハウが県内に蓄積され、中小自治体の参照事例になる。
要素2: 観光資源と組み合わせられるか(湘南・三浦・箱根・足柄)
神奈川県は湘南・江の島・三浦半島・箱根・足柄など多彩な観光資源を持つ。公園活用をこれらの観光資源と連携させることで、公園単体では得られない集客力が実現する。
要素3: 小規模自治体に広がるか
真鶴町の事例が先行事例となって、小田原市・逗子市・葉山町・南足柄市等の小規模〜中規模自治体でのスモールコンセッション・Park-PFI活用が広がることが期待される。
神奈川県内の担当者が今取るべきアクション
- 情報収集: 横浜市の事例をモデルとして研究する。市内の類似公園とのベンチマークを行う
- サウンディング実施の検討: 民間需要の把握から着手。地域の観光業者・飲食業者へのアプローチ
- スモコンPFへの登録: 国交省が設立したスモールコンセッションプラットフォームへの自治体登録を検討する
- 広域連携の模索: 神奈川県内の自治体間での情報共有・広域連携による事業化の可能性を探る
→ 全国の最新統計と制度動向については、Park-PFI最新事例・統計【2026年版】を参照されたい。
小規模自治体のPark-PFI戦略
人口2.3万人の二戸市が成功した理由と小規模成功の6類型
Park-PFI最新事例・統計【2026年版】
203公園の全国統計・制度改正の動向・今後3〜5年の見通し
次にやること
Park-PFIの導入を検討する際は、公園の条件と利用状況、民間事業者の意向を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 公園の敷地面積と既存施設の建築面積を確認する。休養施設や運動施設を含め、建蔽率の現況を把握する | 公園担当 |
| 2 | 条例で定める建蔽率と適用できる特例を確認する。既存施設の建築面積と照合し、新たな施設を設けられるかを判断する | 公園担当 |
| 3 | 来園者数と利用状況を調べる。平日・休日や季節による違いを確認し、需要の見込みを検討する | 現地調査、既存の調査資料 |
| 4 | 条件の近い公園の使用料の実績を確認する。面積や立地、施設の用途などの違いも比較する | 先行自治体、公表資料 |
| 5 | 調査結果と活用方針を示して民間事業者の意見を聞く。参入意向と、事業が成立するために必要な条件を確認する | サウンディング |
新たな施設を設けられるかどうかは、既存施設の建築面積と条例の規定を確認して判断する。増築の余地がない場合も、既存施設の活用や別の事業手法を含めて検討する。