5事例の一覧
郡山市・むつ市・二戸市・別府市・前橋市の5事例をファクトシートで比較
最小規模自治体(二戸市)
22,999人
最小公園面積(別府市・春木川パーク)
0.92ha
春木川パークの市への使用料等
約1,400万円
事業者の計画額。2021年12月選定委員会の価額審査
今回の分析対象
5事例
Park-PFI(公募設置管理制度)の成功事例を、大規模公園から小規模公園まで5件選定した。「大きな公園でないとPark-PFIは成立しない」という認識は誤りであることを、これらの事例が示している。
Park-PFIの基本的な仕組みについては、Park-PFI(公募設置管理制度)とは?を参照されたい。
| 事例 | 自治体(人口) | 公園面積 | 事業者 | 業態 |
|---|---|---|---|---|
| 開成山公園 | 郡山市(313,125人) | 12.89ha | 大和リースグループ | カフェ・ベーカリー・多目的 |
| PARK DAIKANYAMA | むつ市(49,699人) | - | むつ不動産取引センター | グランピング・飲食・ドッグラン |
| カダルテラス金田一 | 二戸市(22,999人) | 2ha(近隣公園) | カダルミライ(SPC) | 温泉・サウナ・宿泊・レストラン |
| 春木川パーク | 別府市(112,267人) | 0.92ha | ミネルバ(SPC) | スーパー・人工芝G・カフェ |
| ココルンシティ公園 | 前橋市(324,554人) | 0.19ha | 特定非営利活動法人 三和会 | カフェ(コミュニティスペース併設) |
事例1: 開成山公園(福島県郡山市)
約31万人の中核市のPark-PFI。3段階サウンディングのインセンティブ設計、500点評価基準、大手×地元JVが成功を導いた構造を詳解
出典を示していない収支試算の単価・金額は、説明用に仮定した数値であり、統計に基づく相場ではない。事業計画を作る際は、対象施設の状態や立地、事業内容に応じた見積もりと実績を用いる。出典を示した統計や事例の金額は、この仮定とは区別して参照する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手法 | Park-PFI + 指定管理者制度 |
| 事業対象面積 | 約12.89ha(公園総面積は約30.3ha) |
| 事業期間 | 2024年〜2043年(19年間) |
| 整備費 | 約7億円(市90%以内・民間10%以上) |
| 指定管理料 | 19年間で14億4,160万円(年間約7,587万円) |
| 事業者 | 大和リースグループ(5社JV) |
| 応募者数 | 2者(2共同事業体) |
| 年間来園者 | 約140万人 |
3段階サウンディングとインセンティブ設計
開成山公園が採用した3段階サウンディングは、日本のPark-PFI事例の中でも最も精緻な官民対話設計の一つである。
第1段階: トライアル・サウンディング(2020年10月)
社会実験形式で民間事業者が実際に公園内で出店・イベントを実施する機会を設けた。1か月間(9:00〜21:00)、使用料免除の条件で参加した企業・NPO法人には、後の公募審査で5点の加点が与えられた。
トライアル参加への加点は500点満点のうち5点、全体の1%である。参加事業者は公園の利用状況を現場で確認し、その情報を提案へ反映する機会を得た。
第2段階: プレサウンディング(2021年9月)
導入可能性調査段階での民間ニーズ・意向把握が目的。メール問い合わせ形式で広く意見を集めた。この段階で得た民間側の懸念点と提案可能性の分析が、第3段階の公募指針設計に反映された。
第3段階: マーケットサウンディング(2022年1月)
公募指針策定直前に実施。事業スキームへのフィードバックを取得し、民間が参入しやすい条件を最終調整した。参加者には公募審査で3点の加点。
検討開始(2020年3月)から開業(2024年4月)まで約4年の準備期間を要したが、この3段階の丁寧な官民対話なしに2共同事業体という競争的な公募は実現しなかっただろう。
評価基準(500点満点)の構造
公募審査の評価基準は500点満点+インセンティブ8点で構成される。この配点構造そのものが、郡山市が何を重視しているかを示している。
| 大項目 | 配点 | 意味 |
|---|---|---|
| 事業総括(全体計画) | 120点 | 事業実施方針・市民サービス・エリアマネジメント・安定性 |
| 特定公園施設の整備 | 100点 | 施設の全体像+8区分×10点の各施設整備計画 |
| 公募対象公園施設 | 80点 | にぎわい創出・効果と連携・リスク対応 |
| 管理運営(指定管理) | 100点 | 平等な利用・効用最大化・人的物的能力・維持管理・雇用 |
| 経費削減 | 70点 | 削減効果(定量)・費用の妥当性・収益還元 |
| 付加価値提案 | 30点 | 独自の付加価値提案 |
| 合計 | 500点 | |
| インセンティブ | +8点 | トライアル参加+5点、マーケット参加+3点 |
最低制限基準:全委員合計が配点合計の60%以上、かつ「事業総括」「課題解決(特定公園施設)」「管理運営」の各項目がすべて60%以上。
「収益還元」には40点が配分されている。Park-PFIは単に収益施設を誘致する制度ではなく、民間の収益が公園の維持管理や整備に還元される「公益との両立」が制度の根幹にある。この配点は、その趣旨を審査基準に明示的に落とし込んだものである。
座組構成と「大手×地元」の設計
採択された大和リースグループの座組(グループ名:開成山フロンティアパートナーズ)は5社で構成される。
| 企業 | 本拠 | 担当領域 |
|---|---|---|
| 大和リース(代表) | 大和ハウスグループ | PPP/PFI企画・マネジメント・施設整備 |
| a.ru.ku出版 | 郡山市 | 地域コンテンツ・情報発信・テナント誘致 |
| 東京美装興業 | 東京都 | 維持管理・清掃・管理運営 |
| 八光建設 | 郡山市 | 土木・建設工事 |
| 櫻エンジニアリング | 郡山市 | 土木設計・測量・調査 |
全国ノウハウを持つ大和リースが代表を務めながら、郡山市の地元企業3社がJVの中核を担う構成だ。地元企業の組み込みは単なる「地域貢献のアリバイ」ではなく、地域コンテンツの企画力(a.ru.ku出版)と施工実施力(八光建設・櫻エンジニアリング)を確保するための機能的な判断である。
評価基準の「雇用への配慮(10点)」も、こうした地元雇用創出の視点が審査で問われることを示している。
収益施設の業態
選定後に開業した施設は、カフェ・ガーデニング雑貨・ベーカリー・ラーメンなど5店舗と多目的スペースである。年間来園者約140万人という集客力を前提に、飲食を核としたにぎわい施設が展開されている。
事例2: PARK DAIKANYAMA(青森県むつ市)
人口49,699人。地元企業が「本州最北端のグランピング」でブランディングし閑散公園を再生
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口 | 49,699人(令和7年国勢調査 速報値) |
| 代表企業 | むつ不動産取引センター(地元企業) |
| 業態 | グランピング(トレーラーハウス宿泊)・飲食・ドッグラン |
| 事業期間 | 20年 |
構造的成功要因
「本州最北端」という唯一性のブランディング:下北半島の端に位置するむつ市のロケーションを、弱点ではなく強みに転換した。トレーラーハウスという移動可能な設備を採用することで初期投資を抑えながら、「本州最北端のグランピング」という唯一無二のポジショニングで高単価を実現した。
地元企業の主導:大手ゼネコンやPPP専門企業ではなく、地元の不動産会社が代表企業として事業を主導している。地域の文脈を理解した企画力が、投資効率の低い閑散公園を観光と住民の複合空間として再生した。地元に根を張る企業が代表になることで、事業の長期継続性も確保されやすい。
この事例が示すこと:この事例では、人口5万人規模の地方都市で、立地の特徴を生かし、施設整備費を抑えた事業が実施された。他の公園で検討する場合も、立地に合う業態と、その利用需要・整備費を確認する。
事例3: カダルテラス金田一(岩手県二戸市)
人口2.3万人。地元出資まちづくり会社が温泉×Park-PFIで土木学会賞
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 人口 | 22,999人(令和7年国勢調査 速報値) |
| 公園種別 | 近隣公園(2ha) |
| 代表企業 | カダルミライ(地元出資の第三セクター型まちづくり会社)+SPC |
| 業態 | 温泉・サウナ・宿泊・レストラン・屋内プール |
| 開業 | 2022年3月 |
| 受賞 | 土木学会デザイン賞2023年優秀賞 |
構造的成功要因
老朽化施設の建替とPark-PFIの一体化:市営温浴施設の老朽化という「行政の課題」と、Park-PFIによる民間活力導入という「制度活用」を一体的に設計したことが事業化の出発点である。単独では収益が厳しい温浴施設を、宿泊・レストラン・サウナを組み合わせた複合施設として再設計することで、人口2.3万人の市場規模でも事業性を確保した。
地域資源の収益化:温泉という地域固有の資源が収益の柱であり、近隣公園という小規模敷地(2ha)でも事業化が成立した根拠である。温泉のような「移植不可能な地域資源」が公園に隣接または内包されている場合、Park-PFIはきわめて強力なスキームになる。
地元出資モデルの意義:カダルミライという地元出資のまちづくり会社がSPCの中核になることで、収益が地域内で循環する構造を実現した。外部資本が入ると収益が域外に流出しやすいが、地元出資モデルでは雇用も収益も地域に留まる。この「地域でお金が回る」設計は、小規模自治体にとって再現性の高いモデルである。
この事例が示すこと:人口2万人台でもPark-PFIは成立する。ただし、温泉・歴史・景勝地などの地域固有資源が収益の核になることが前提条件である。開成山公園のように年間140万人の集客力がなくとも、「来てくれる人が支払う単価」を高くできる業態設計があれば事業化できる。
事例4: 春木川パーク(大分県別府市)
0.92haの狭小敷地を立体化で解決。西日本初の立体都市公園で、事業者の計画では市への使用料等が年約1,400万円
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 面積 | 約0.92ha(1ha未満) |
| 代表企業 | 地元企業を中心とした4社によるSPC「ミネルバ株式会社」 |
| 業態 | 1階:スーパー、2階:人工芝グラウンド+カフェ |
| 市への使用料等(事業者の計画額) | 年約1,400万円 |
構造的成功要因
狭小敷地という制約の「立体化」による克服:0.92haという面積は、単純な平面利用では収益施設と公園機能が競合してしまう。この問題を、1階に生活インフラ(スーパー)、2階に公園機能(スポーツ・憩い)を重層化することで解決した。 西日本初の立体都市公園 として話題性を生んだことも、テナント誘致と情報発信に好影響をもたらした。
地元SPCが核:代表法人を含む4社がSPCを組み、スポーツ施設への集客と日常の買い物という異なる来訪動機が1つの敷地で重なる構造になった。大手に頼らず地元で完結する座組が、市への使用料等を年約1,400万円と見込む価額提案につながっている。
この事例が示すこと:面積0.25ha以上という国の交付金面積要件を満たしていれば、1ha未満の都市公園でもPark-PFIは適用可能。敷地が小さいことは「立体化」という選択肢で克服できる。
事例5: ココルンシティ公園(群馬県前橋市)
0.19haの街区公園。生涯活躍のまち事業の一部として設計し、NPO法人のカフェが成立
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業名 | 日赤跡地生涯活躍のまち(CCRC)街区公園 |
| 公園面積 | 約0.19ha |
| 事業費 | 4,100万円(公募対象公園施設および特定公園施設) |
| 事業期間 | 令和3年9月〜令和23年8月(20年) |
| 事業者 | 特定非営利活動法人 三和会 |
| 公募対象公園施設 | カフェ(内部にコミュニティスペース) |
| 特定公園施設 | 公衆用トイレ |
| 供用開始 | 令和4年7月 |
構造的成功要因
全国チェーンに断られてから、地元に切り替えた。市は当初、CCRC事業の代表事業者の紹介で全国チェーン店を中心にサウンディングを実施したが、事業規模等から参画は困難との回答だった。そこで地元企業を中心とした担い手探しに切り替え、商工会を通じた紹介や、CCRC事業に関心のある地元企業へのPRを行い、クローズドサウンディングで関心を示す事業者を探した。決まったのはNPO法人である。
公募条件に「連携」を書き込んだ。市は公募条件として、①CCRCの事業コンセプトに沿う取組みと活動拠点の創出、②まちづくり団体(ココルンサークルまえばし)との連携と相乗効果、③行政が負担する整備費・管理費の縮減、の3点を掲げた。事業者は施設の設置・管理だけでなく、地域活性化のための活動を行うことが前提になっている。選定後、Park-PFI事業者はそのまちづくり団体に加入した。
この事例が示すこと:0.19haでもPark-PFIは成立する。ただし公園単体で採算を組んだのではない。生涯活躍のまち(CCRC)という上位の事業の一部として公園を設計し、既にそこで動いている団体と組ませたことで、カフェ1軒が成り立った。公園の面積ではなく、公園の周りで何が動いているかが条件になる。
小規模成功の6類型
地域資源型・課題解決型・グランピング型・立体化型・パッケージ型・まちづくり会社型の構造的特徴
5事例の分析から、小規模公園のPark-PFIには以下の6つの成功類型が浮かび上がる。
| 類型 | 代表事例 | 核心 | 適用条件 |
|---|---|---|---|
| 地域資源型 | カダルテラス金田一 | 温泉等の地域固有資源で収益の柱を確保 | 移植不可能な地域資源が公園周辺にある |
| 課題解決型 | 柳町児童公園(むつ市) | 飲食ではなく社会インフラ(保育)を収益施設に | 待機児童・福祉ニーズ等の社会課題がある |
| グランピング型 | PARK DAIKANYAMA | 少投資でブランド化、地方でも高単価 | 希少なロケーションや自然資源がある |
| 立体化型 | 春木川パーク | 狭小敷地を重層化で解決 | 面積0.25ha以上だが平面が不足 |
| 上位事業連動型 | ココルンシティ公園 | 公園単体でなく、周辺で動く大きな事業の一部として設計 | 生涯活躍のまち・再開発等が公園の周りで動いている |
| まちづくり会社型 | カダルテラス金田一 | 地元出資SPCで「地域でお金が回る」構造 | 地域の中核となる事業者・団体がいる |
前提条件の比較と構造分析
5事例を前提条件で比較し、共通の成功要因を抽出
5事例に共通する構造的成功要因を整理する。
1. 段階的サウンディング
開成山公園の3段階が最も体系的だが、他の事例でも公募前に何らかの形で民間との対話が行われている。「いきなり公募」で成功した事例はない。特に重要なのは、サウンディング参加に何らかのインセンティブ(加点・優遇)を設計することで、早期から本気の事業者を呼び込む工夫である。
サウンディング型市場調査の詳細な設計方法については、サウンディング設計テンプレートを参照されたい。
2. 地元企業の座組への組み込み
5事例中4事例で地元企業がJV・SPCの代表または中核を担っている。地元企業の組み込みは3つの効果をもたらす。
- 企画力の補強:地域の文脈を知る地元企業が入ることで、「地域に合った使い方」の提案精度が上がる
- 地域循環の実現:収益・雇用・整備工事が地域内に留まる構造を作りやすい
- 継続性の確保:地域に根を張る企業が事業主体になることで、20年の長期事業を安定的に運営できる
ただし、これらの成功要因が機能するためには、前述の前提条件(年間集客力・地域資源・準備期間・民間参入意欲)が揃っていることが必要である。事例の「やり方」だけをコピーしても、前提条件が異なれば同じ結果にはならない。
事例から学べることは多いが、自分の公園で同じことができるかは別の問題である。まず必要なのは、あなたの公園の前提条件を正確に把握することだ。年間集客力はどの程度か、地域固有の資源は何か、民間事業者は手を挙げるか。
一般社団法人 社会構想デザイン機構(ISVD)では、サウンディングの設計から事業スキームの策定まで、Park-PFI導入の初期段階を無料で支援している。
Park-PFI完全ガイド
仕組み・特例・導入フローを網羅した完全ガイド
サウンディング設計と実施手順
3段階サウンディングの設計方法と自治体担当者向け実践ガイド
次にやること
事例を参考に事業を検討する際は、対象公園との条件の違いを確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 事例と対象公園の面積、立地、利用者層を比較する。人口規模だけで事業性を判断しない | 公表資料、対象公園の調査資料 |
| 2 | 事例の自治体が公表した公募設置等指針と選定結果を確認する。公開されていない資料は担当課に照会する | 事例の自治体の公園担当 |
| 3 | 指針の使用料の最低額と、選定された提案の金額を比較する | 公募設置等指針、選定結果 |
| 4 | 対象公園の既存施設の建築面積と、条例で定める建蔽率を確認する | 公園担当 |
| 5 | 対象公園の条件と事例の実績を示して、民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く | サウンディング |
事例を対象公園に当てはめる際は、公募条件と選定された提案を確認する。面積や立地、利用者層の違いも踏まえて、参考にできる条件を整理する。
さらに詳しく
カダルテラス金田一
人口2.3万人の二戸市がPark-PFIに成功した理由
開成山公園Park-PFI
500点配点表の設計思想と19年間の収支モデル
横浜市のPark-PFI
大都市型公園活用の最前線
公園の収益施設 業態比較
カフェ・BBQ・グランピング・福祉の比較
Park-PFIで福祉施設を設置する制度的枠組み
インクルーシブ公園との複合モデルの論点整理
沖縄のPark-PFI
観光資源との融合モデル