横浜市のPark-PFI — 大都市型公園活用の最前線
横浜市は山下公園レストハウス・大通り公園・横浜動物の森公園の3件でPark-PFIを展開し、大都市型の公園活用モデルを構築している。三井不動産・ゼットン・フォレストアドベンチャーなど大手事業者が参入する横浜市のPark-PFI戦略を構造分析する。
ざっくり言うと
- 横浜市は市内3公園(山下公園・大通り公園・横浜動物の森公園)でPark-PFIを展開。約2,700か所の都市公園を管理する政令市として、民間活力導入の先駆的モデルを形成
- 山下公園レストハウスではゼットンを代表とする8社共同事業体が「THE WHARF HOUSE」を運営。歴史的景観との共存が設計要件
- 大通り公園1-3区では三井不動産・東急・京急・DeNAの4社が事業予定者に決定。大規模都市再開発と連動したPark-PFIのモデル
横浜市の公園とPark-PFI戦略
約2,700か所の都市公園を管理する横浜市がPark-PFIを導入した背景と全体方針
約2,700
横浜市が管理する都市公園・緑地
3件
Park-PFI実施公園数
2026年時点
374万人
横浜市の人口規模
横浜市は約2,700か所の都市公園・緑地を管理する日本最大級の政令市である。公園施設の老朽化と維持管理費の増大が財政課題となる中、Park-PFI(公募設置管理制度)を活用した民間活力の導入を積極的に進めている。
2026年時点で横浜市がPark-PFIを実施している公園は以下の3件である。
| 公園 | 事業者 | 事業類型 | 開業時期 |
|---|---|---|---|
| 山下公園レストハウス | ゼットン代表8社共同事業体 | 飲食・観光複合 | 2023年4月 |
| 大通り公園1-3区 | 三井不動産代表4社共同事業体 | 都市リニューアル | 計画中 |
| 横浜動物の森公園 | フォレストアドベンチャー | アウトドアレジャー | 2019年9月 |
横浜市は公園公民連携推進委員会を設置し、Park-PFI事業者の審査を組織的に行っている。この制度的基盤が、事業者選定の透明性と公園活用の質の確保につながっている。
山下公園レストハウス「THE WHARF HOUSE」
事業概要
横浜市は山下公園レストハウス及び周辺園地の整備・管理運営を行う事業者として、ゼットンを代表法人とする「山下公園再生プロジェクトグループ」を選定した。2023年4月14日に「THE WHARF HOUSE 山下公園」としてオープンしている。
事業者構成
共同事業体は代表法人の株式会社ゼットンを含む8社で構成される。
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| 株式会社ゼットン(代表法人) | 飲食施設運営 |
| 株式会社ファンケル | ウェルネス関連 |
| 横浜エフエム放送株式会社 | メディア連携 |
| 三菱地所株式会社 | 不動産・施設管理 |
| 株式会社ケーエムシーコーポレーション | 施設運営 |
| サカタのタネグリーンサービス株式会社 | 緑地管理 |
| 株式会社tvkコミュニケーションズ | メディア連携 |
| 株式会社ありあけ | 物販(菓子) |
8社という多数の構成は、横浜市ならではの特徴である。飲食(ゼットン)・不動産管理(三菱地所)・緑地管理(サカタのタネGS)・メディア(FMヨコハマ・tvk)・物販(ありあけ)・ウェルネス(ファンケル)と、異なる専門領域の企業が結集することで、公園の多面的な価値向上を実現している。
歴史的景観との共存設計
山下公園は1930年開園の歴史的な公園であり、横浜港を望む景観は横浜市の象徴的な風景だ。レストハウスのリニューアルでは、横浜市景観計画との整合が厳密に求められた。
THE WHARF HOUSE山下公園には足湯やBBQスペースも設けられ、従来のレストハウスにはなかった体験型の機能が追加されている。横浜港の景観を活かしながら「滞在時間を延ばす」設計は、観光地の公園活用として示唆に富む。
大通り公園1-3区リニューアル
三井不動産・東急・京急・DeNAによる大規模都市公園リニューアル
大規模都市再開発と連動するPark-PFI
大通り公園は横浜市中区に位置する都心型の帯状公園である。Park-PFIを導入する1-3区の設置予定者として、三井不動産を代表とする共同事業体が選定された。
事業者構成
三井不動産・東急・京浜急行電鉄・ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社による共同事業体が事業予定者に決定している。
| 企業 | 業種 | 想定される役割 |
|---|---|---|
| 三井不動産(代表) | 総合不動産デベロッパー | 事業統括・施設開発 |
| 東急 | 鉄道・不動産・生活サービス | まちづくり連携 |
| 京浜急行電鉄 | 鉄道・沿線開発 | 交通アクセス連携 |
| DeNA | IT・エンタメ | デジタル技術活用 |
この事業者構成は、山下公園の「飲食主導型」とは大きく異なる。三井不動産・東急・京急という不動産・鉄道大手3社が中核を担い、DeNAのデジタル技術が加わる構成は、公園単体のリニューアルではなく周辺都市再開発と連動した公園活用を想定したものだ。
横浜動物の森公園(フォレストアドベンチャー)
アウトドアレジャー型Park-PFI
横浜動物の森公園(ズーラシア隣接)の未整備区域において、2018年11月からPark-PFIを活用したアスレチック施設・キャンプ体験施設の公募設置が行われた。
フォレストアドベンチャーエリアが2019年9月14日に開業し、続いてトレイルアドベンチャーエリアが2020年2月29日に開業した。
この事例の特徴は「自然環境をそのまま活かす」設計にある。森林内にアスレチックコースを設置する手法は、大規模な建築物を必要とせず、公園の自然環境を損なわない。収益施設と環境保全を高いレベルで両立したモデルとして評価されている。
大都市型Park-PFIの課題と教訓
景観規制・民業圧迫・住民合意という3つの特有課題
横浜市の3事例から、大都市特有のPark-PFI課題が見える。
課題1: 景観規制との両立
山下公園のような歴史的公園では、建物のデザイン・高さ・素材について通常のPark-PFIより厳しい制約がかかる。景観計画との事前調整が事業成立の前提条件となる。
課題2: 周辺民間事業者との競合(民業圧迫)
横浜市内の主要公園周辺には既存の飲食店・商業施設が充実しており、公園内に収益施設を設置すると「民業圧迫」の批判を受けるリスクがある。公募条件で業態を差別化する設計(既存店舗と競合しない業態に限定する等)が必要だ。
課題3: 住民合意の形成
横浜市の公園は市民の日常利用が多く、「静かな公園を守りたい」という市民の声は根強い。Park-PFI導入前のサウンディング調査と住民説明会を丁寧に実施し、市民の理解を得るプロセスが不可欠である。
→ サウンディング調査の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。
神奈川県のPark-PFI
横浜・横須賀・真鶴の事例比較と県全体の動向
Park-PFI最新事例・統計【2026年版】
全国165公園の統計・制度改正の動向
Park-PFI完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続きを網羅的に解説
参考文献
山下公園レストハウスの利活用事業の公募(Park-PFI) (2022)
大通り公園1区~3区リニューアル事業の公募(Park-PFI) (2024)