別府市春木川パーク — 温泉地のPark-PFIと年間収入1,400万円の構造
別府市の春木川パークは西日本初の立体都市公園として注目を集めるPark-PFI事例である。温泉観光地という立地条件を活かし、1階に商業施設・2階に公園機能を重層化する設計で、市に年間約1,400万円の使用料収入をもたらす構造を解説する。
ざっくり言うと
- 別府市春木川パークは西日本初の立体都市公園。1階にスーパーセンタートライアル、2階に人工芝グラウンド・カフェ・スタジオを配置する重層構造
- Park-PFI方式の導入により、市は年間約1,400万円の使用料収入を確保。建設費は民間負担で市の財政支出を抑制
- PPP/PFI推進首長会議で別府市長が「三方良しの公民連携」として発表。温泉観光地×公園活用の全国モデルとして注目
春木川パークの概要
西日本初の立体都市公園の全体像。未利用地の長年の課題と解決策としてのPark-PFI
約1,400万円
市の年間使用料収入
Park-PFI方式
9,238㎡
公園敷地面積
2024年12月
全面開業
西日本初の立体都市公園
別府市の春木川パークは、西日本で初めて立体都市公園制度を活用して整備された都市公園である。都市計画決定から長年未整備のまま放置されていた公園用地に対し、Park-PFI(公募設置管理制度)を導入することで、民間の資金とノウハウを活用した公園整備を実現した。
この事例が注目される理由は3つある。
第一に、**建物の屋上に公園を配置する「立体化」**という手法で、限られた土地に商業機能と公園機能を両立させたこと。第二に、**地元企業が主導するSPC(特定目的会社)**による事業運営で、大手コンサルに依存しない地方都市型のPark-PFIモデルを示したこと。第三に、市に年間約1,400万円の使用料収入をもたらし、公園が「コスト」から「収入源」に転換したことである。
2024年12月7日、春木川パーク西側エリアが全面開業し、人工芝グラウンド・リハビリ運動施設・学習施設・カフェ等が供用開始された。
立体化構造の設計
1階商業施設・2階公園機能の重層化の技術的背景と都市公園法上の位置づけ
1階:商業施設(スーパーセンタートライアル)
春木川パークの1階部分には、ディスカウントストア「スーパーセンタートライアル」が核テナントとして入居している。
敷地9,238㎡のうち約6,000㎡を立体化し、1階に商業施設を配置する設計である。スーパーセンタートライアルは日用品・食料品を扱うディスカウントストアであり、別府市民の日常的な買い物需要に応える。
2階:公園機能(春木川パーク)
建物の屋上(2階部分)が公園として整備されている。主な施設構成は以下の通りである。
- 全天候型人工芝グラウンド: サッカー・フットサル等のスポーツ利用が可能
- リハビリ運動施設: 高齢者の健康増進に対応した運動施設
- 多目的スタジオ: ダンス・ヨガ等の室内活動に対応
- 学習施設: 子どもの学習支援や地域活動の場
- カフェ・売店: 公園利用者向けの飲食・物販
- 管理事務所・更衣室: 施設運営の基盤機能
なぜ「立体化」が選ばれたか
春木川公園の敷地は約9,238㎡とそれほど広くない。この限られた面積の中で、商業施設による収益確保と住民のスポーツ・健康ニーズへの対応を両立するために、立体化という手法が採用された。平面配置では「商業機能を入れれば公園が狭くなる」「公園を広くすれば収益施設を確保できない」というトレードオフが生じるが、立体化によりこれを解消した。
事業スキームと収益構造
SPC構成・建設費負担・年間使用料1,400万円の内訳
SPC(特定目的会社)の構成
春木川パークの整備運営は、地元企業を中心とした4社によるSPC「ミネルバ株式会社」が担っている。
| 構成企業 | 所在地 | 役割 |
|---|---|---|
| 有限会社ゴトーシステムサービス(代表法人) | 別府市 | SPC代表・事業統括 |
| ミネルバスポーツクラブ | 別府市 | スポーツ施設運営 |
| 株式会社青木商事 | 宮崎県 | 商業施設運営 |
| 株式会社西商店 | 別府市 | 地域調達・運営支援 |
注目すべきは、4社中3社が別府市内の地元企業であることだ。大手デベロッパーや全国チェーンのコンサルティングファームではなく、地域に根ざした企業がSPCの中核を担っている。この構成は、事業の地域密着性と継続性を高める設計として評価できる。
年間使用料収入の構造
Park-PFI方式の導入により、別府市は年間約1,400万円の使用料収入を確保している。
この収入構造のポイントは以下の通りである。
① 建設費の民間負担: 公園整備(2階部分)と商業施設整備(1階部分)の建設費はSPCが負担。市の初期投資を大幅に抑制している。
② 使用料による安定収入: SPCから市への年間使用料は約1,400万円。この金額は、商業施設(トライアル)の売上に連動する変動部分と、公園施設利用に基づく固定部分の組み合わせと考えられる。
③ 維持管理費の削減: 公園の日常的な維持管理もSPCが担うため、市の維持管理費支出が削減される。使用料収入と維持管理費削減の両面で市の財政にプラスとなる。
温泉観光地としての立地条件
別府市の人口動態・観光客数・公園利用者のニーズ分析
別府市の特性
別府市は人口約11万人(2024年時点)の温泉観光都市であり、年間の観光客数は800万人を超える。「別府八湯」と呼ばれる温泉群を有し、国内有数の温泉地として知られる。
この立地条件がPark-PFIにもたらす影響は2つの方向で現れる。
プラスの影響: 観光客による集客力
温泉観光客が公園施設やカフェを利用する可能性がある。特に春木川パークの2階部分にあるカフェ・売店は、温泉地の「散策→カフェで休憩」という行動パターンとの親和性が高い。
マイナスの影響: 観光需要の季節変動
別府市の観光客数は季節による変動がある。夏のビーチシーズンや冬の温泉シーズンにピークがある一方、閑散期には公園利用者数も減少する。スーパーセンタートライアル(1階)の日常需要が、この季節変動を下支えする機能を果たしている。
別府市の他のPark-PFI展開
別府市はさらに、別府公園東駐車場便益施設等整備運営事業でもPark-PFIを活用しており、市内複数の公園でPark-PFIを展開する「複数公園展開型」の自治体となっている。春木川パークの成功が、市内の他の公園へのPark-PFI展開を加速させた構図がうかがえる。
全国モデルとしての評価
PPP/PFI推進首長会議での発表内容と他自治体への示唆
PPP/PFI推進首長会議での発表
2024年11月11日に開催されたPPP/PFI推進首長会議において、別府市の長野恭紘市長が「三方良しの公民連携」として春木川パークの事例を発表した。
「三方良し」とは以下の3者を指す。
| 受益者 | メリット |
|---|---|
| 市(行政) | 年間約1,400万円の使用料収入、建設費の民間負担、維持管理費削減 |
| 事業者(SPC) | 商業施設の収益機会、長期安定事業の確保 |
| 市民 | スポーツ・健康施設の利用、日常の買い物利便性、カフェ等の憩いの場 |
サウンディング調査の先行実施
別府市はPark-PFI導入に先立ち、サウンディング型市場調査を実施し、民間事業者の参入意欲と事業成立条件を事前に把握した。この調査を通じて「立体化」というコンセプトが形成され、公募条件の設計に反映されている。
サウンディング型市場調査の丁寧な実施が、適切な事業者選定と事業スキームの成立につながった点は、他の自治体が学ぶべき手順である。
他自治体への示唆
春木川パークの事例は、以下の条件を持つ自治体にとって参考になる。
- 未整備の公園用地を抱えている: 都市計画決定後に長年未整備のまま放置された土地は全国に多数存在する
- 人口10万人前後の地方中核都市: 大都市ほどの集客力はないが、日常的な商業需要を見込める規模
- 観光資源を持つ: 温泉・自然・歴史等の観光資源が公園利用者数の底上げに寄与する
- 地元企業によるSPC組成が可能: 大手に依存せず、地域内で事業を完結できる企業群がある
→ Park-PFIのサウンディング調査の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。
Park-PFI完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続き・事例を網羅的に解説
Park-PFIの使用料設計
使用料収入の算定方法・全国の水準・設計のポイント
Park-PFI最新事例・統計【2026年版】
165公園の全国統計・制度改正の動向
参考文献
春木川公園整備運営事業 (2024)
PPP/PFI推進首長会議 別府市長発表資料「三方良しの公民連携」 (2024)
春木川パーク、2023年春ごろ開業 — 別府市立春木川公園を重層化、資さんうどん・トライアルなど出店 (2023)
春木川公園整備運営事業 設置等予定者の決定 (2022)