PPPとPFIの違い
PPPは総称、PFIはその一手法。7つの代表的手法を整理した全体マップ
ここから先の単価と金額は、この記事が置いた前提である。公表された統計ではない。施設の状態・地域・業態で大きく変わるので、自分の案件では見積書と近隣の実績に置き換えて使う。
実施方針を公表した累計のPFI事業数(平成11年度〜令和6年度末)
1,154件
うち公共施設等運営事業は71件
PPP/PFI推進アクションプランの事業規模目標
40兆円
令和4年度から令和13年度までの10年間(令和8年改定版)
築30年以上の国の官庁施設
5割超
国土交通省 官庁営繕。地方公共団体の公共施設について同種の全国統計は見当たらない
「PPP/PFI」という言葉は行政文書や新聞で頻繁に使われるが、PPPとPFIを混同していることは珍しくない。まず定義を整理する。
PPP(Public-Private Partnership)
PPP(公民連携)は、 公共サービスの提供に民間の資金・ノウハウ・経営能力を活用する取り組みの総称 だ。行政が単独で行ってきた公共施設の整備・管理・運営を、さまざまな形態で民間と分担・連携する仕組み全体を指す。
PPPには多様な手法が含まれる。指定管理者制度・PFI・コンセッション・スモールコンセッション・Park-PFI・PPP賃借・包括管理委託など、いずれも「PPP」の一形態だ。
PFI(Private Finance Initiative)
PFI(民間資金等活用事業)は、PPPの中でも特に 民間の資金と経営能力・技術力を活用して公共施設等の整備・維持管理・運営を行う手法 を指す。1999年に制定された PFI法 (民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)を根拠とする。
PPPとPFIの関係を一言でいえば:
PFI ⊂ PPP(PFIはPPPに包含される)
PFIと言うとき、厳密には「PFI法に基づく事業」を指す。PFI法によらない民間活用(指定管理者制度・Park-PFI等)はPFIではなくPPPと表現するのが正確だ。
7つの代表的なPPP/PFI手法
内閣府が整理する代表的な手法の全体像を以下に示す。
| 手法 | 概要 | 主な対象施設 | 根拠法・制度 |
|---|---|---|---|
| 指定管理者制度 | 公の施設の管理を民間に委ねる | スポーツ施設・文化施設等 | 地方自治法第244条の2 |
| PFI法(BTO/BOT/BOO等) | 民間資金で施設整備・運営 | 庁舎・病院・学校等大型施設 | PFI法 |
| コンセッション | 施設所有権を残し運営権を民間に | 空港・有料道路・水道等 | PFI法第2条第6項 |
| スモールコンセッション | 小規模施設の運営権設定 | 地域の公共施設 | 地域再生法等 |
| Park-PFI | 都市公園内に収益施設を設置 | 都市公園 | 都市公園法第5条の2〜 |
| 包括管理委託 | 複数施設の維持管理を一括委託 | 道路・公園・施設群 | 地方自治法 |
| PPP賃借 | 民間施設を行政が賃借して活用 | 庁舎・窓口施設等 | 地方自治法 |
PFI法の概要とVFM
1999年制定のPFI法の目的・事業スキーム・VFM(Value for Money)の計算方法
PFI法の成立と基本的な仕組み
PFI法は1999年(平成11年)に制定された。目的は「民間の資金・経営能力・技術的能力を活用して、効率的かつ効果的に公共施設等の整備等を行う」ことにある。
PFI事業の基本スキームは次のとおりだ。
- 実施方針の策定・公表: 自治体が事業の目的・条件・リスク分担等を公表
- 民間事業者の募集・選定: 複数の提案から最優秀事業者を選定
- SPC(特別目的会社)の設立: PFI法が求めているものではなく、公募の条件で決まる
- 施設整備・維持管理・運営: 民間が一体的に行う(内閣府の手引きは先行事例の事業期間を7〜30年程度としている)
- 事業期間満了後の引渡し: 公共側に施設を返還(BTO・BOTの場合)
PFI事業の類型(BTO / BOT / BOO / RO)
| 類型 | 概要 |
|---|---|
| BTO(Build-Transfer-Operate) | 民間が整備→完成後に所有権移転→民間が運営。最も多い類型 |
| BOT(Build-Operate-Transfer) | 民間が整備→民間が所有・運営→期間満了後に移転 |
| BOO(Build-Own-Operate) | 民間が整備・所有・運営(移転なし) |
| RO(Rehabilitate-Operate) | 既存施設を改修して運営(廃校等の活用に適す) |
VFM(Value for Money)とは
PFI導入の可否を判断する指標が VFM (Value for Money)だ。
VFM = 従来手法でのコスト(PSC)− PFIでのコスト(LCC)
- PSC(Public Sector Comparator): 行政が従来手法で実施した場合のライフサイクルコスト
- LCC(Life-Cycle Cost): PFIで実施した場合のコスト(建設・運営・維持管理・解体の合計)
VFMがプラス(PFIの方がコスト削減)であることが、PFI導入の基本条件だ。平成11年度から令和6年度末までに実施方針を公表した累計のPFI事業数は1,154件で、そのうち公共施設等運営事業は71件である。契約金額の累計は令和7年3月31日現在で98,088億円。これは実施方針を公表した事業のうち当該年度に公共負担額が決定した事業の当初契約金額の合計で、運営権対価を含まないなど、アクションプランの事業規模とは別の指標である。
内閣府アクションプランの概要
2022〜2031年の目標・優先的検討規程・推進体制の現状
アクションプランの事業規模目標
内閣府の民間資金等活用事業推進会議は、アクションプランを毎年改定している。最も新しいものは令和8年6月11日決定の令和8年改定版だ。
平成25年度から令和4年度までの事業規模目標21兆円を7年間で達成したことに加え、令和4年度からの3年間の実績や社会経済情勢を踏まえ、令和4年度から令和13年度までの10年間で40兆円の事業規模の達成を目指すとしている。類型ごとの目標は、類型Ⅰ(公共施設等運営事業)3兆円、類型Ⅱ(収益型事業)12兆円、類型Ⅲ(公的不動産利活用事業)13兆円、類型Ⅳ(その他)12兆円である。
類型Ⅰが前の改定版の7兆円から3兆円に下がっているのは、関西国際空港・大阪国際空港のような大型案件が令和4年度からの3年間の実績に無く、今後も同じ規模の事業が現時点では見込まれないことに留意したためだと脚注に書かれている。
この目標は公共施設の老朽化問題と財政制約を背景に設定されたものだ。2019〜2048年度の30年間の維持管理・更新費は、事後保全で約280兆円、予防保全で約190兆円と推計されている。対象は国土交通省所管の12分野(道路・河川・下水道・港湾・公園・公営住宅・官庁施設ほか)で、公共施設だけの数字ではない。
優先的検討規程の整備
アクションプランの重要な要素のひとつが 優先的検討規程 の整備だ。
優先的検討規程とは、 一定規模以上の公共施設等整備事業について、従来の行政直営・公設公営方式を採用する前に、必ずPPP/PFIの活用可能性を検討する ことを義務づける規程だ。
人口20万人以上の地方公共団体への策定要請はすでに完了し、人口2万人以上の団体への拡大が進められている。
対象事業の規模目安(内閣府ガイドライン):
- 事業費 10億円以上 の公共施設等整備事業(建築系)
- 事業費 1億円以上 の維持管理・運営事業(運営系)
推進体制:PPP/PFI推進室
内閣府内に設置されたPPP/PFI推進室が全体の推進・調整を担っている。地方自治体向けには専門家派遣制度・マニュアル・研修・補助制度などのサポートメニューが用意されている。
7つの手法の比較と選定基準
指定管理者・Park-PFI・スモールコンセッション・PFI法・PPP賃借等の比較と、規模・目的・リスク許容度別の選定フローチャート
手法比較表
| 手法 | 事業費目安 | SPC設立 | リスク移転 | 導入難度 | 主な事例数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 指定管理者制度 | 問わず | 不要 | 低 | 低 | 数万件 |
| 包括管理委託 | 数千万〜 | 不要 | 低〜中 | 低〜中 | 多数 |
| Park-PFI | 数千万〜数億 | 不要 | 中 | 中 | 203公園 |
| スモールコンセッション | 数千万〜数億 | 不要 | 中 | 中 | 公表された件数が無い |
| PFI法(BTO等) | 条文に定めは無い | 公募の条件による | 高 | 高 | 1,154件 |
| コンセッション | 条文に定めは無い | 公募の条件による | 高 | 高 | 71件 |
| PPP賃借 | 問わず | 不要 | 低 | 低 | 多数 |
自治体が検討すべき順序
実務的には、以下の順序で検討を進めるのが現実的だ。
STEP 1:まず指定管理者制度の見直しを検討する
既存施設の管理方法を見直す場合、まず指定管理者制度の活用・更新を検討する。既存の指定管理者との連携強化・指定管理料の見直し・評価体制の整備は比較的容易に着手できる。
STEP 2:サウンディングで市場関心を確認する
新たな手法の導入を検討する場合、サウンディング型市場調査を実施して民間の関心度・実現可能性を把握する。サウンディングは費用が少なく、PPP/PFIを検討するための情報収集手段として最も敷居が低い。
STEP 3:公園・廃校・小規模施設からPark-PFIやスモールコンセッションを試みる
都市公園があればPark-PFI、廃校や地域の小規模施設があればスモールコンセッション・廃校プロポーザルが選択肢になる。事業費が10億円未満でもSPCなしで実施でき、比較的短期間で成果を出せる。
STEP 4:大規模施設の更新でPFI法の活用を検討する
庁舎・体育館・学校等の大規模更新(事業費10億円以上)では、PFI法に基づく本格的なVFM試算とプロポーザルの活用を検討する。この段階では内閣府の専門家派遣制度や調査費補助の活用が有効だ。
よくある誤解5点
PFI≠民営化、SPC設立は必須ではない、廃校でもPFI法は使えるが稀、等
誤解1:「PFIは民営化だ」
正しくは: PFIは施設の 所有権や行政責任を民間に移転するものではない 。公共サービスの提供主体は行政のままで、民間の資金・ノウハウを活用して効率化するのがPFIの本質だ。民営化(Privatization)とは明確に区別される。
誤解2:「PFIには必ずSPCが必要だ」
正しくは: PFI法が会社の形について定めているのは欠格事由の1つだけで、法人でない者は特定事業を実施する民間事業者の募集に応じることができない、という内容である。特別目的会社(SPC)の設立を求める条文は無い。SPCを置くかどうかは公募の条件で決まる。 Park-PFI・スモールコンセッション・廃校プロポーザル等のPFI法によらない手法 にも、SPCを求める条文は無い。中小規模の事業者でも、SPCを設立せずに公共施設へ参入できる手法が多数ある。
誤解3:「廃校活用にPFI法は使えない」
正しくは: 廃校活用でPFI法を適用している事例は極めて少ないが、 技術的には可能 だ。ただし、事業費10億円未満の廃校案件にPFI法を適用することは費用対効果が合わず、現実的ではない。廃校活用の実務では、プロポーザル方式・スモールコンセッション・PPP賃借が主流だ。
誤解4:「PPP/PFIは大都市だけの話だ」
正しくは: Park-PFIでは人口2万人規模の小規模自治体でも活用事例がある。スモールコンセッションや廃校プロポーザルは小規模自治体でも十分実施可能な手法だ。優先的検討規程の整備義務も人口2万人以上の団体まで拡大されており、地方での活用拡大が進んでいる。
誤解5:「PPP/PFIを導入すれば行政コストが必ず下がる」
正しくは: VFMがプラスであることがPFI導入の条件だが、実際には業者選定・契約管理・モニタリングに新たなコストが発生する。特に初めてPFIを実施する自治体では、外部専門家の起用費用・アドバイザリー費用が想定以上になることがある。「PPP/PFIを導入すること」が目的になってしまうと、本来の目的(コスト削減・サービス向上)が後回しになるリスクがある。
具体的な手法の参照先
各手法の詳細は、以下の関連記事で解説している。
Park-PFI(公募設置管理制度)とは?
都市公園に収益施設を設置できるPark-PFIの仕組みをゼロから解説
スモールコンセッションとは何か
小規模公共施設の運営権設定制度の概要と注目される背景
サウンディング設計テンプレート
民間意向調査の設計から実施・活用まで実務テンプレート
実務の始め方
今日から始められる3つのファーストステップ
PPP/PFIの検討を始める場合、以下の3つのアクションが出発点となる。
- 内閣府の「PPP/PFIとは」ページと入門テキストを読む: 内閣府のPPP/PFIとはページには無料の入門テキスト(PDF)が公開されており、制度の基礎を体系的に学べる
- 自治体の優先的検討規程を確認・策定する: 未策定の場合、内閣府の策定指針を参照して早期に整備する
- 管下施設の「更新時期・事業費・課題」をリストアップする: PPP/PFI導入の可能性は施設ごとに大きく異なる。どの施設が最初の検討対象として現実的かを、担当部署横断でリストアップすることが最初の実務作業になる