なぜ旧庁舎の用途変更が課題になるのか
用途を変えると、建築基準法・消防法・耐震改修促進法で見るところが変わる
用途変更で確認が要る面積。その用途に使う部分の床面積の合計がこれを超えるとき
200㎡
2019年6月25日に改正法が施行されるまでは100㎡
耐震の境目。5月31日以前に新築の工事に着手した建物を、耐震改修促進法施行令は地震に対する安全性が明らかでない建築物とする
1981年
構造耐震指標Isがこれ以上で、qが1.0以上なら「倒壊し、又は崩壊する危険性が低い」
0.6
国土交通省告示第184号の別表第六
築30年以上の国の官庁施設
5割超
国土交通省(官庁営繕)。地方公共団体の公共施設について同種の全国統計は見当たらない
庁舎の統合や移転で空いた旧庁舎を、別の用途に変えて使う検討がある。国の官庁施設では築後30年以上を経過したものが5割を超えている。地方公共団体の庁舎について同じ割合を示す全国の統計は見当たらないので、自団体の建物は公共施設等総合管理計画の建築年別の集計で確かめる。
旧庁舎を福祉施設や集会場、ホテルに変えると、次の3つの法律で見るところが変わる。
- 建築基準法の用途変更の確認(第87条)
- 消防法の消防用設備等を、変更後の用途の基準に合わせるか(第17条の3)
- 耐震改修促進法の耐震診断・耐震改修の努力義務・指示・義務
確認は建築主事等か指定確認検査機関、消防用設備等の同意と検査は所轄の消防長又は消防署長、耐震改修促進法の指導・助言と指示は所管行政庁が行う。窓口が3つに分かれるので、転用後の用途の候補を決めたら、それぞれに条件を確かめる。
壁1:建築基準法の確認申請
確認が要る3つの条件、類似の用途、2018年に公布された改正、検査済証が無い建物の調べ方
確認が要る3つの条件
建物の用途を変えて、別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものにする場合は、確認の手続きの規定が準用される。用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間のものである場合は除かれる。工事が終わったときは、完了検査の申請でなく、建築主事等への届出になる。
確認が要るかどうかにかかわらず、用途を変えるときは第48条の用途地域の制限などが準用される。建築当時の基準には合っていて今の規定に合わない建物(既存不適格建築物)の用途を変えるときは、第27条・第28条・第35条などの規定も、類似の用途相互間で大規模な修繕や模様替をしない場合などを除いて準用される。用途変更の確認が要らない場合でも、法令に合わせる義務は残る。
2018年に公布された改正で100㎡から200㎡に
建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)は2018年(平成30年)6月27日に公布され、一部は同年9月25日に、その他は2019年(令和元年)6月25日に施行された。既存建築ストックの用途変更による活用を進めるため、建築物の用途を変更して特殊建築物のいずれかにする場合に、200㎡以下の建築物について建築確認の手続きを不要とした。転用する部分が200㎡を超えるなら、確認の手続きは今も要る。
別表第一の特殊建築物
別表第一(い)欄の用途は(一)項から(六)項まであり、それぞれ「その他これらに類するもので政令で定めるもの」を含む。施行令は、(二)項に類するものを児童福祉施設等、(三)項を博物館・美術館・図書館・ボーリング場・スキー場・スケート場・水泳場・スポーツの練習場、(四)項を公衆浴場・待合・料理店・飲食店・物品販売業を営む店舗(床面積10㎡以内のものを除く)、(六)項を映画スタジオ・テレビスタジオとしている。
| 項 | 法律に挙がっている用途 | 施行令で定める類するもの |
|---|---|---|
| (一) | 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場 | なし |
| (二) | 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎 | 児童福祉施設等 |
| (三) | 学校、体育館 | 博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツの練習場 |
| (四) | 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場 | 公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(床面積10㎡以内のものを除く) |
| (五) | 倉庫 | なし |
| (六) | 自動車車庫、自動車修理工場 | 映画スタジオ、テレビスタジオ |
児童福祉施設等には、保育所などの児童福祉施設のほか、老人福祉施設・有料老人ホーム・障害者支援施設・福祉ホームなどが入る(施行令第19条第1項)。事務所は別表第一に挙がっていないので、旧庁舎を事務所として使い続けるなら、第87条第1項の確認は要らない。
確認が要らない類似の用途
確認が要らない類似の用途は11の組で、劇場・映画館・演芸場、公会堂・集会場、診療所(患者の収容施設があるもの)・児童福祉施設等、ホテル・旅館、下宿・寄宿舎、博物館・美術館・図書館、体育館・ボーリング場・スケート場・水泳場・スキー場・ゴルフ練習場・バッティング練習場、百貨店・マーケット・その他の物品販売業を営む店舗、キャバレー・カフェー・ナイトクラブ・バー、待合・料理店、映画スタジオ・テレビスタジオである。第一種低層住居専用地域などにある場合は、一部の組が除かれる。
事務所はどの組にも入っていないので、旧庁舎を福祉施設や店舗にする変更は、類似の用途に当たらない。第137条の19は、既存不適格の建物の用途を変えるときに第27条などを準用しない類似の用途を定める条で、確認が要るかを決める条とは別である。
検査済証が無い建物
完了検査率(その年度の検査済証の交付件数を確認件数で割った値)は、平成10年度に約4割、平成28年度に約9割である。検査済証の交付を受けていない建築物は、平成11年以前では半数以上を占めていた。こうした建築物で増改築や用途変更の確認申請をするときは、既存の部分が建築時点の法令に適合していることを確かめる必要があり、既存不適格なのか違反なのかの判断が難しい。
このガイドラインは、令和7年(2025年)4月1日に「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合された。
現況調査は、建築主の依頼を受けた建築士か指定確認検査機関が行う。まず直近の建築等の工事の検査済証の交付状況を調べる。所有者が検査済証を無くしていても、特定行政庁で「処分等概要書」を閲覧するか「台帳記載事項証明書」の発行を受ければ確かめられる。検査済証が無くても、現地調査で工事の着手時の法令に適合していると確かめられれば既存不適格として扱い、工事の着手時が特定できなければ建物全体を今の法令に合わせる。
壁2:消防法の遡及適用
変更後の基準に合わせる条件、特定防火対象物、設備ごとの条件、消防同意と設置の届出
用途を変えたときに当てる基準
用途が変わって、消防用設備等が変更後の用途の技術上の基準に合わなくなるときは、原則として変更前の用途の基準を当てる。ただし、変更前から基準に違反していた設備、用途を変えたあとに政令で定める増築・改築・大規模の修繕・模様替えに着手したもの、変更後の用途が特定防火対象物の用途である場合は、変更後の基準に合わせる。
この原則からは、消火器・避難器具と、簡易消火用具、一部の用途の自動火災報知設備、漏電火災警報器、非常警報器具・非常警報設備、誘導灯・誘導標識などが除かれていて、これらは変更後の基準になる。政令で定める増築・改築は、増築・改築の部分の床面積の合計が1,000㎡以上か、基準時の延べ面積の2分の1以上になるもの、大規模の修繕・模様替えは主要構造部である壁の過半について行うものである。
特定防火対象物とは
特定防火対象物は、百貨店、旅館、病院、地下街、政令で定める複合用途防火対象物と、多数の者が出入するものとして政令で定める防火対象物で、施行令では別表第一の(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の三)項が挙がっている。
| 別表第一の項 | 用途の例 | 特定防火対象物か |
|---|---|---|
| (一)項イ・ロ | 劇場・映画館・演芸場・観覧場、公会堂・集会場 | 当たる |
| (五)項イ | 旅館・ホテル・宿泊所 | 当たる |
| (六)項 | 病院・診療所、老人ホームなどの福祉施設、保育所、幼稚園・特別支援学校 | 当たる |
| (七)項 | 小学校・中学校・高等学校・大学などの学校 | 当たらない |
| (十五)項 | 前各項に該当しない事業場(事務所など) | 当たらない |
旧庁舎を事務所として使っていれば(十五)項である。集会場((一)項ロ)、ホテル((五)項イ)、福祉施設((六)項)に変えると、変更後の用途が特定防火対象物になり、消防用設備等を変更後の基準に合わせる。
設備ごとの条件
用途を変えたあとの基準の例。どれも建物の階や面積の数え方に細かい条件があるので、図面を持って所轄の消防に確かめる。
| 設備 | 条件の例 | 条 |
|---|---|---|
| スプリンクラー設備 | 病院などの(六)項イ(1)(2)と、養護老人ホームなどの(六)項ロ(1)(3)は面積にかかわらず(延焼を抑制する構造を除く)。(六)項ロ(2)(4)(5)は延べ面積275㎡以上(介助がなければ避難できない者を主として入所させるものは面積にかかわらず)。平屋建以外では、(四)項と(六)項イ(1)〜(3)は床面積の合計3,000㎡以上、(一)〜(三)項・(五)項イ・(六)項のその他・(九)項イは6,000㎡以上。ほかに地階・無窓階・4階以上10階以下の階ごとの条件がある | 消防法施行令第12条 |
| 自動火災報知設備 | (五)項イ、(六)項イ(1)〜(3)・ロ、入居・宿泊させる(六)項ハは面積にかかわらず。(一)項・(四)項・通所の(六)項ハなどは延べ面積300㎡以上、(七)項は500㎡以上、(十五)項は1,000㎡以上 | 同第21条 |
| 消防機関へ通報する火災報知設備 | (六)項イ(1)〜(3)・ロは面積にかかわらず。(一)項・(四)項・(五)項イ・(六)項ハなどは延べ面積500㎡以上、(七)項・(十五)項などは1,000㎡以上。消防機関へ常時通報できる電話を設ければ置かなくてよい用途がある((五)項イ・(六)項イ・ロ・ハを除く) | 同第23条 |
| 誘導灯(避難口・通路) | (一)項〜(四)項・(五)項イ・(六)項・(九)項・(十六)項イなどは建物全体。(七)項・(十五)項などは地階・無窓階・11階以上の部分。避難が容易と認められるものは除く | 同第26条 |
| 避難器具 | (六)項は2階以上の階か地階で収容人員20人以上、(五)項は30人以上、(十五)項は3階以上の階か地階で100人以上か150人以上など | 同第25条 |
所轄の消防への相談と、設置の届出
用途の変更の確認をする建築主事等や指定確認検査機関は、建物の所在地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ確認できない(防火地域・準防火地域以外にある住宅などを除く)。確認の前に、次を所轄の消防に聞いておく。
- 用途を変えたあとの別表第一の項
- 変更後の基準に合わせる消防用設備等
- 今ある設備を使えるか
- 消防同意に要る書類
消防用設備等を設置したときは、消防長又は消防署長に届け出て検査を受ける。対象は、(五)項イ、(六)項イ(1)〜(3)・ロ、入居・宿泊させる(六)項ハなどは面積にかかわらず、(一)項・(四)項・通所の(六)項ハなどは延べ面積300㎡以上、(七)項・(十五)項などは延べ面積300㎡以上で消防長又は消防署長が指定するものである。簡易消火用具と非常警報器具は除く。
壁3:耐震基準への対応
1981年の境目、用途変更と構造耐力、耐震改修促進法の区分、耐震診断の結果の読み方
1981年の境目
国土交通省は、昭和56年以前に建築された建物は、耐震基準が強化される前のいわゆる「旧耐震基準」で建てられ耐震性が不十分なものが多いとして、まず耐震診断をし、耐震性が不十分なら耐震改修や建替えを検討するよう呼びかけている。耐震改修促進法の施行令は、地震に対する安全性が明らかでない建築物を、昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手したものとしている。同年6月1日以後に増築や大規模の修繕などに着手して検査済証の交付を受けたものなどは除く。
用途変更と構造耐力
既存不適格の建物の用途を変えるときに準用される規定は、第27条、第28条第1項・第3項、第29条、第30条、第35条から第35条の3まで、第36条の一部、第48条第1項から第14項まで、第51条などで、構造耐力の第20条は入っていない。解説集の一覧表でも、構造耐力(法第20条)は、増築・改築と大規模の修繕・模様替では緩和の措置がある規定、用途変更では遡及適用されない規定になっている。
耐震診断と耐震改修を所有者に求めるのは、次の耐震改修促進法である。
耐震改修促進法の義務と努力義務
耐震診断が義務になるのは、都道府県や市町村の耐震改修促進計画に記載された建築物(要安全確認計画記載建築物)で、病院・官公署など地震のあとも利用を確保することが公益上必要な建築物や、計画に記載された道路の沿道の建築物が入る(第7条)。学校・病院・集会場・百貨店・事務所・老人ホームなど多数の者が利用する一定規模以上の既存耐震不適格建築物(特定既存耐震不適格建築物)の所有者は、耐震診断をして、必要なら耐震改修をするよう努める(第14条)。そのうち不特定かつ多数の者が利用するものや、老人ホームなど避難に特に配慮を要する者が主に利用するもので一定規模以上のものは、必要な耐震診断や耐震改修が行われていないと認めるとき、所管行政庁が必要な指示をでき、正当な理由なく従わなければ公表できる(第15条)。ほかの既存耐震不適格建築物の所有者も、耐震診断と必要に応じた耐震改修に努める(第16条)。病院・店舗・旅館など不特定かつ多数の者が利用するものや、学校・老人ホームなどのうち大規模なもの(要緊急安全確認大規模建築物)は、平成27年12月31日までに耐震診断の結果を報告する義務があった(附則第3条)。
用途ごとの規模は施行令で決まっている。面積は、その用途に使う部分の床面積の合計で数える。
| 用途 | 努力義務の対象(第14条、施行令第6条) | 指示の対象(第15条第2項、施行令第8条) |
|---|---|---|
| 事務所 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 | 施行令第8条の用途に挙がっていない |
| 集会場・公会堂 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 | 2,000㎡以上 |
| ホテル・旅館 | 階数3以上かつ1,000㎡以上 | 2,000㎡以上 |
| 老人ホーム、老人短期入所施設、福祉ホームなど | 階数2以上かつ1,000㎡以上 | 2,000㎡以上 |
| 保育所 | 階数2以上かつ500㎡以上 | 750㎡以上 |
| 小学校・中学校など | 階数2以上かつ1,000㎡以上 | 1,500㎡以上 |
表の規模は施行令第6条第2項と第8条第2項による。第6条は幼稚園・保育所を階数2以上かつ500㎡以上、小学校等・老人ホームなどを階数2以上かつ1,000㎡以上、事務所・集会場・ホテル・旅館などを階数3以上かつ1,000㎡以上とし、第8条は老人ホーム・ホテル・集会場などを2,000㎡以上、幼稚園・保育所を750㎡以上、小学校等を1,500㎡以上としている。
耐震診断の結果の読み方
構造耐震指標Isと、保有水平耐力に係る指標qの値で、構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性を3つに分ける。木造の建物は、同じ告示の別表第一で、構造耐震指標Iwを使って分ける。
| Isとqの値 | 地震に対する安全性 |
|---|---|
| Isが0.3未満、又はqが0.5未満 | 地震の震動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が高い |
| 上と下のどちらにも当たらない | 倒壊し、又は崩壊する危険性がある |
| Isが0.6以上で、かつqが1.0以上 | 倒壊し、又は崩壊する危険性が低い |
ここでいう地震は震度6強から7に達する程度の大規模の地震で、どの区分でも、違法に建築されたものや劣化が放置されたものでない限り、震度5強程度の中規模地震で倒壊するおそれはないとされている。
補強の方法は建物ごとの診断で決まる
下田市は、Is値0.346で耐震性能が不足していた本庁舎の本館について、建物の内部に在来鉄骨ブレースを設ける方法は工事費を抑えられるが執務への影響が非常に大きく工期も長い、建物の外部に鋼板内蔵RCブレースを設ける方法は工事費は高いが期間が短く執務室への影響は小さい、と比べている。柱・壁のコンクリートの強度が設計基準(18N/mm2)を下回る12N/mm2で、中性化も進んでいることから、補強の判断は慎重に行う必要があるとしていた。
突破口:3つの壁を越える実務戦略
転用後の用途ごとの3つの法律の条件、進める順番、耐震診断・耐震改修の補助
転用後の用途ごとに、3つの法律で起きること
| 転用後の用途 | 建築基準法の確認(第87条第1項) | 消防用設備等(消防法第17条の3) | 耐震改修促進法(既存耐震不適格建築物の場合) |
|---|---|---|---|
| 事務所として貸す | 用途変更に当たらない | 用途変更に当たらない | 階数3以上かつ1,000㎡以上で努力義務 |
| 集会場 | (一)項。その用途の部分が200㎡を超えれば要る | (一)項ロで特定防火対象物。変更後の基準 | 階数3以上かつ1,000㎡以上で努力義務、2,000㎡以上で指示の対象 |
| ホテル・旅館 | (二)項。200㎡を超えれば要る | (五)項イで特定防火対象物。変更後の基準 | 階数3以上かつ1,000㎡以上で努力義務、2,000㎡以上で指示の対象 |
| 老人ホームなどの福祉施設 | (二)項に類する児童福祉施設等。200㎡を超えれば要る | (六)項で特定防火対象物。変更後の基準 | 階数2以上かつ1,000㎡以上で努力義務、2,000㎡以上で指示の対象 |
| 保育所 | (二)項に類する児童福祉施設等。200㎡を超えれば要る | (六)項ハで特定防火対象物。変更後の基準 | 階数2以上かつ500㎡以上で努力義務、750㎡以上で指示の対象 |
用途変更の手続きが起きないのは、事務所として貸す場合である。ただし、耐震改修促進法の努力義務は、転用するかどうかでなく建物の用途と規模で決まる。
進める順番
- 確認済証・検査済証・図面があるかを確かめる。無ければ、既存建築物の現況調査ガイドラインの手順で調べる
- 耐震診断の結果(Is値とq)を確かめ、耐震改修促進法のどの区分に当たるかを所管行政庁に聞く
- 転用後の用途の候補ごとに、建築基準法の別表第一と消防法施行令の別表第一の項を当てる
- 候補を持って、建築主事等か指定確認検査機関と、所轄の消防に相談する
- その用途の部分が200㎡を超えるなら確認を受け、工事が終わったら建築主事等に届け出る。消防用設備等は設置を届け出て検査を受ける
既存不適格の建物で、用途の変更に伴う工事を2回以上に分けて行う場合は、工事の全体計画が、分けて行うことがやむを得ないことなどの基準に適合すると特定行政庁が認めれば、最後の工事に着手するまで第87条第3項の規定を準用しない(第87条の2)。
耐震診断・耐震改修の補助
社会資本整備総合交付金と防災・安全交付金の基幹事業である住宅・建築物安全ストック形成事業では、建築物の耐震診断・補強設計等は、地方公共団体が実施するなら国1/3、民間が実施するなら国と地方で2/3である。耐震改修・建替え・除却は、多数の者が利用する建築物(1,000㎡以上の百貨店等)で公共建築物が国11.5%、民間建築物が国と地方で23%、避難所等の防災拠点で公共建築物が国1/3、民間建築物が国と地方で2/3である。地方公共団体の補助制度は、建物がある地方公共団体に問い合わせる。
過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に基づく施策として、過疎対策事業債は元利償還の7割を交付税で措置する。過疎地域の市町村なら、改修に過疎対策事業債を充てられるかを、過疎地域持続的発展市町村計画と起債の手続きで確かめる。
事例:下田市旧稲生沢中学校の新庁舎転用
市の方針と工事の経過、学校を事務所に変えるときの法律の扱い
背景
下田市は2009年から新庁舎の整備を進めてきた。市の本庁舎は旧耐震の施設で老朽化が著しく、津波浸水区域に立地していることから、平成21年(2009年)から建替え・移転が検討され、複数の建設候補地の議論を経て、平成29年(2017年)12月に条例を可決して移転先を河内地域に決めた。その後、稲生沢川の新しい洪水想定の公表と、新型コロナウイルス感染症の拡大による財政面への影響などを考え、新庁舎建設事業を一時中断して再検討した。
方針転換:新築からリノベーションへ
市は令和3年度(2021年度)に「現庁舎安全性調査」と「稲生沢中学校耐力度調査」を行い、令和3年9月議会で市役所の位置に関する条例を改正して(建設場所は河内のまま、施行期日を令和8年以内に変更)、令和7年度中の建物の完成と令和8年度の開庁に向けて事業を再開した。詳しい調査の結果、現庁舎は倒壊の危険性が大きく、より早急な対応が必要と分かった。
現庁舎のIs値は本館0.346、西館0.39、別館0.402で、どれも耐震性能が不足していた。本館は補強が難しいとして、必要な改修をした稲生沢中学校の校舎に執務機能を先に移す方針にした。稲生沢中学校の校舎と体育館は、津波浸水区域の外にあり、新耐震基準で整備された建物で、現庁舎と比べて相当程度堅牢な施設とされている。一方で、校舎は築40年、体育館は築37年で、長寿命化の改修をしても耐用年数には限りがあるとしている。
市の資料と報道に出ている、校舎を使う理由と費用の見込みは次のとおり。
- 立地と構造。校舎と体育館は津波浸水区域の外にあり、新耐震基準で整備された建物である(先行移転方針)
- 費用。概算では、中学校の改修工事費が約5億8,000万円(中学校面積2,934㎡×約20万円/㎡)、改修設計費が約2,000万円。参考として、前回の新庁舎建設設計の概算単価(新築)は約50万円/㎡。全体の概算事業費は、前回計画の36.9億円に対して、改訂版で28〜32億円としている。どれも令和4年2月時点の概算で、工事の実績額ではない
- 報道。市はコスト縮減や環境負荷の低減を考え、旧稲生沢中学校の施設を新庁舎として活用することを決めた
学校を事務所に変えるときの法律の扱い
建築基準法では、事務所は別表第一に挙がっていないので、学校を事務所として使う変更は第87条第1項の確認の対象にならない。用途地域の制限(第48条)などは準用される(第87条第2項)。建物を建て増す部分は、用途変更ではなく建築の手続きになる。
消防法では、学校は(七)項、事務所は(十五)項で、どちらも特定防火対象物ではない。消防用設備等は原則として変更前の基準のままでよいが、消火器・避難器具・誘導灯などと、用途を変えたあとの一定規模以上の増築・改築や大規模の修繕・模様替えは、変更後の基準に合わせる(第17条の3)。
バリアフリー法の特別特定建築物には、保健所・税務署その他不特定かつ多数の者が利用する官公署が挙がっていて、公立の小学校・中学校なども同じ条に挙がっている。用途の変更で特別特定建築物にする場合の建築物移動等円滑化基準への適合義務は、その部分の床面積の合計が2,000㎡以上のときにかかる。学校から官公署への変更がこの義務に当たるかは、所管行政庁に確かめる。
時系列
| 時期 | 事項 |
|---|---|
| 2009年 | 本庁舎の建替え・移転の検討を始める |
| 2017年12月 | 条例を可決し、移転先を河内地域に決める |
| 2021年度 | 現庁舎安全性調査と稲生沢中学校耐力度調査。9月議会で市役所の位置に関する条例を改正 |
| 2022年2月 | 先行移転方針(稲生沢中学校の校舎を改修し、執務機能を先に移す) |
| 2023年7月25日 | 旧校舎活用棟の改修工事に着手 |
| 2024年4月30日 | 旧校舎活用棟の工事が3月末に終わり、一部を先行移転して供用を始める |
| 2026年4月19日 | 新庁舎の落成記念式典と内覧会 |
| 2026年5月7日 | 新庁舎の開庁。建物は旧校舎部分と新築部分を一体化した構成 |
ISVDの視点
旧庁舎の転用で最初に決めるのは、転用後の用途である。用途が決まると、建築基準法で確認が要るか(別表第一と200㎡)、消防用設備等を変更後の基準に合わせるか(特定防火対象物か)、耐震改修促進法でどの規模から努力義務や指示の対象になるかが、条文で決まる。
事務所として貸すなら、用途変更の手続きは起きない。福祉施設やホテルにするなら、3つの法律の条件をそれぞれ確かめることになる。下田市は学校の校舎を市役所にしたが、現庁舎の耐震性能の不足、校舎の立地と構造、概算の費用を方針の資料に並べてから決めていた。
用途を決める前に、検査済証と耐震診断の結果をそろえておくと、用途の候補ごとに手続きがいくつ増えるかを比べられる。
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次にやること
旧庁舎を転用する際は、既存資料と建物の状態を確認し、用途に応じた手続きを相談する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 旧庁舎の確認済証、検査済証、図面の所在を確認する。資料が不足する場合は、特定行政庁で処分等概要書の閲覧や台帳記載事項証明書の発行を相談する | 営繕担当、特定行政庁 |
| 2 | 耐震診断の結果(Is値とq)を確認し、耐震改修促進法上の区分を所管行政庁に相談する | 営繕担当、所管行政庁 |
| 3 | 転用後の用途について、建築基準法と消防法施行令の別表第一における区分を確認する | 建築・消防の担当部署 |
| 4 | 用途の候補と図面を示して、建築主事等または指定確認検査機関と、所轄の消防に相談する | 建築主事等、消防本部 |
資料の所在は営繕担当に確認し、不足している資料と追加調査の必要性を整理してから、建築・消防の担当部署に相談する。