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ARTICLE · 公共施設マネジメント

PFI法改正の動向:2024年改正のポイントと自治体への影響

PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)の直近の改正動向を整理する。2022年改正(2023年施行)によるスポーツ施設・集会施設の対象拡大、指定管理者制度との連携強化、令和6年改定のアクションプランにおける重点分野の再編と事業件数目標の上方修正まで、自治体実務への具体的な影響を分析する。

この記事の要点

  • 2022年12月公布・2023年施行のPFI法改正では、対象施設にスポーツ施設・集会施設が追加され、コンセッション事業者と指定管理者制度の連携手続きが簡素化された
  • 令和6年改定のPPP/PFI推進アクションプランでは、事業件数10年ターゲットが全分野で650件に上方修正され、重点分野に自衛隊施設が新たに追加された(その後の令和8年改定版では、件数の目標は重点分野ごとに置かれている)
  • 優先的検討規程の策定を求められる範囲は、令和7年6月4日の指針改定で人口10万人以上から5万人以上に広がった
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • PPP/PFI事業に携わる自治体の法務・企画担当者
  • PFI法改正の実務的影響を把握したい施設管理担当者
  • 官民連携制度の政策動向を研究する研究者・コンサルタント

前提となる知識

  • PPP/PFIの基礎概念(VFM・SPC・コンセッション等)を理解していること
  • PFI法の基本的な構造を知っていると理解が深まる
この記事の内容

PFI法改正の全体像

1999年の制定から2022年改正までの主要な改正ポイントの時系列整理

ここから先の単価と金額は、この記事が置いた前提である。公表された統計ではない。施設の状態・地域・業態で大きく変わるので、自分の案件では見積書と近隣の実績に置き換えて使う。

PFI法の主な改正回数(1999年制定以降)

7回

累計PFI事業数(令和6年度末)

1,154件

アクションプランの事業規模目標(令和4年度から令和13年度までの10年間)

40兆円

令和6年改定版が置いた事業件数10年ターゲット(全分野)

650件

令和8年改定版では、件数の目標は重点分野ごとに置かれている

(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)は、1999年の制定以来、社会経済環境の変化に対応して複数回の改正を重ねてきた。主要な改正の時系列を整理する。

改正年主な内容
2001年行政財産の貸付規定の整備
2005年公共施設等運営権(コンセッション)制度創設に向けた基盤整備
2011年公共施設等運営権(コンセッション)制度の創設・民間提案制度の導入
2013年株式会社民間資金等活用事業推進機構(PFI推進機構)の設立
2015年コンセッション事業における公務員の退職派遣制度
2018年上下水道のコンセッション推進・自治体への支援強化
2022年対象施設拡大・コンセッション手続簡素化・指定管理者制度連携

本記事では、直近の2022年12月公布の改正内容と、2024年6月改定のPPP/PFI推進アクションプランの要点を中心に、自治体実務への影響を分析する。

優先的検討の対象。建設等を含む事業費総額10億円以上、運営等のみで単年度1億円以上。基準未満でもスモールコンセッションを推進する事業を含めて対象にできる。
基準に届かなくても、広域化や分野横断で届く可能性があるなら対象にできる出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」

2022年改正の3つの柱

対象施設拡大・コンセッション推進強化・指定管理者連携の詳細分析

2022年12月16日に公布されたPFI法改正は、以下の3つの柱で構成されている。改正内容は段階的に施行され、(1)は2022年12月16日、(3)は2023年1月16日、(2)は2023年6月15日にそれぞれ施行された。

柱1: 対象施設の拡大

PFI法第2条第1項の「公共施設等」の定義に、スポーツ施設と集会施設が新たに追加された。

従来もスポーツ施設や集会施設をPFI事業として実施することは可能であったが、法文上の明記により制度的な位置づけが明確化された。この改正の背景には、スポーツ庁と経済産業省が推進する「スタジアム・アリーナ改革」がある。

内閣府は2023年1月にスタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドラインを公表しており、2025年までに20拠点の整備を目標としている。

柱2: コンセッション推進の強化

(公共施設等運営権)事業の推進に向けて、手続きの簡素化が図られた。具体的には、コンセッション事業者をに指定する際の手続きについて、従来は議会の議決が必要であったところ、条例に特別の定めがあれば事後報告で可とする地方自治法の特例が設けられた。

これは、コンセッション事業者と指定管理者の二重手続きが実務上の障壁となっていたことへの対応であり、事業者の事務負担の軽減と事業のスピードアップを目的としている。

加えて、指定管理者となったコンセッション事業者による利用料金設定の自由度も高められた。従来の「条例で定める範囲内」という制約に対し、コンセッション事業の特性に応じた柔軟な料金設定を可能とする規定が整備された。

柱3: その他の制度整備

  • コンセッション事業者による利用料金の承認に関する知事関与の緩和
  • 公共施設等運営権者に関する情報開示の強化

令和6年アクションプラン改定

事業件数目標の上方修正と4つの重点施策の解説

2024年6月3日、第20回民間資金等活用事業推進会議においてPPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)が決定された。主要な改定ポイントは以下の4点である。

1. 事業件数目標の上方修正

10年間の事業件数目標が650件に上方修正された。これは、PPP/PFI事業の実施ペースが計画を上回って推移していることを反映したものである。

2. 重点分野の再編

重点分野に自衛隊施設が新たに追加された。従来の重点分野(道路・港湾・航空・鉄道・公共賃貸住宅・下水道・廃棄物処理・水道・都市公園・文教施設等)に加え、防衛分野への官民連携の拡大を示すものである。

3. 分野横断型・広域型PPP/PFIの形成促進

単一施設・単一自治体の事業にとどまらず、複数施設の包括管理や複数自治体による広域連携を促進する方針が明確化された。これは、個々の施設が小規模であっても、複数をまとめることで民間参入のスケールメリットを確保しようとするものである。

4. 民間事業者の適正利益への配慮

PPP/PFI事業において、民間事業者が適正な利益を得られる環境の構築と、適正な価格の算出の推進が新たに盛り込まれた。これは、コスト削減偏重の公募条件が事業者の参入意欲を低下させている現状への対応であり、持続可能な官民連携の基盤整備として注目される。


自治体実務への影響

優先的検討規程の基準引き下げ・民間利益確保・実務フローの変化

優先的検討規程の対象拡大

優先的検討規程の策定を求められる範囲は、令和7年6月4日改定の指針で、従来の「人口10万人以上」から「人口5万人以上」に広がった。令和6年改定のアクションプランは、この時点では人口10万人以上の団体に速やかな策定を促す内容だった。

人口5万人以上の地方公共団体は、地域の実情を踏まえ、指針に基づいて優先的検討規程を定め、これに従って優先的検討を行うことが求められる。新たに対象となる人口5万人以上10万人未満の団体は237団体あり、規程を策定済みなのは41団体、17.3%である。これらの自治体にとってPPP/PFI検討の組織的な仕組みづくりが新たな実務課題となる。

総務省の調査では、人口規模が小さくなるほど「事業への理解やノウハウの不足、人手の不足」が課題として挙げられる割合が高い。基準引き下げに伴い、中小規模自治体への研修・支援体制の拡充が不可欠である。

コンセッション × 指定管理者の実務対応

2022年改正によるコンセッション事業者の指定管理者指定手続きの簡素化は、条例改正を前提としている。該当する自治体は、条例改正のタイミングと議会への説明準備が必要である。

適正価格の算出と公募条件の見直し

民間事業者の適正利益への配慮という方針は、公募における最低委託料の設定や、物価変動条項の導入といった具体的な対応を自治体に求める。特に人件費・資材費の高騰が続く現状では、契約期間中の価格改定メカニズムの整備が急務である。


今後の展望

スモールコンセッションの制度化・広域連携・分野横断型事業の拡大見通し

スモールコンセッションの制度的位置づけの明確化

は2023年11月に概念が明確化されたが、法律上の位置づけはまだ確立されていない。今後、PFI法の改正や新たなガイドラインの策定により、制度的な基盤が整備される可能性がある。

デジタル技術の活用

施設の維持管理・モニタリングにおけるBIM/CIM・IoTセンサー・AIの活用が進む見通しであり、PFI事業の契約においてもデジタル技術の活用を評価項目に含める動きが出てきている。

広域連携の加速

人口減少が進む地方部では、単一自治体でのPPP/PFI事業のスケールメリットが限られるため、複数自治体による広域連携型のPPP/PFIが拡大する見通しである。アクションプランにおける「分野横断型・広域型PPP/PFIの形成促進」は、この方向性を制度的に後押しするものである。


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比較

PPP/PFI 7つの手法比較

指定管理者・Park-PFI・スモールコンセッション・PFI法等の横断比較


次にやること

この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。

順やることどこで目安
1対象施設の事業費規模を出す。建設等を含めて10億円以上か、運営のみで年1億円以上かで優先的検討の対象が変わる予算担当半日
2自団体の優先的検討規程があるかを確かめる。無ければ内閣府の指針を見て整備する企画担当1週間
3施設で利用料金を取っているか/取れるかを分ける。取れるなら運営権の設定が視野に入る各所管課1週間
41〜3で手法の候補を絞る。都市公園なら Park-PFI、公園以外の遊休施設ならスモールコンセッション部内の意思決定-
5最初の1件を決めてサウンディングを打つ。全施設を同時に進めない民間事業者2〜3か月

1は半日でできる。基準に届くかどうかで、そもそも検討が義務になるかが変わる。


この記事で使った統計の出典

  1. 1本記事の整理
  2. 2内閣府 令和6年度PFI事業実施状況(2025年9月) 出典を開く
  3. 3内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン(令和8年改定版)」(令和8年6月11日) 出典を開く
  4. 4内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)概要」(2024年6月3日) 出典を開く
  5. 5内閣府 スタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドライン(2023年1月) 出典を開く
  6. 6内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」(2025年) 出典を開く
  7. 7内閣府 PPP/PFI優先的検討規程策定状況(令和7年3月末時点) 出典を開く
  8. 8総務省 人口20万人未満の市区町村におけるPPP/PFI導入に関する調査研究(2021年3月) 出典を開く

参考文献

PFI法の改正(令和4年法律第94号)/内閣府 民間資金等活用事業推進室 (2022)

PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)/内閣府 民間資金等活用事業推進室 (2024)

PFIの基本的な仕組みと近時の法改正等/Business & Law (2023)

「PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)」の考察/三井住友トラスト基礎研究所 (2024)

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訂正履歴

  1. :優先的検討規程の対象が人口5万人以上に広がった時期を「令和6年のアクションプラン改定」と書いていました。実際は令和7年6月4日の指針改定です。

    訂正前
    PPP/PFI推進アクションプランにおける優先的検討規程の策定要件は、従来の「人口10万人以上」から「人口5万人以上」に引き下げられた。/新たに対象となる自治体は人口5万〜10万人で全国に約200
    訂正後
    優先的検討規程の策定を求められる範囲は、令和7年6月4日改定の指針で「人口10万人以上」から「人口5万人以上」に広がった。/新たに対象となる人口5万人以上10万人未満の団体は237団体、うち策定済みは41団体(17.3%)

    誤った理由 内閣府「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」(令和7年6月4日 民間資金等活用事業推進会議決定)が、人口5万人以上の地方公共団体に策定を求めています。令和6年改定のアクションプランは、この時点では人口10万人以上の団体に速やかな策定を促す内容で、5万人には触れていません。

  2. :数字カードのアクションプランの目標が古いままでした。

    訂正前
    アクションプラン10年間の事業規模目標として30兆円(令和6年改定版)を数字カードに出していた
    訂正後
    40兆円(令和4年度から令和13年度までの10年間、令和8年改定版)。件数のカードは、どの改定版の目標かが分かるよう見出しを直した

    誤った理由 令和8年6月11日決定の令和8年改定版が、事業規模目標を40兆円に引き上げました。件数の目標は全分野をまとめた数ではなく重点分野ごとに置かれており、令和8年改定版では17の分野に分かれています。この記事は公園を扱うサイトの記事なので、公園分野の目標に替えました。

この記事の用語

PPP/PFI
官民が連携して公共サービスの提供や公共施設の整備・運営を行う手法の総称。PFIは民間資金を活用したインフラ整備、PPPはPFIを含むより広い概念で指定管理者制度や包括的民間委託等を含む。
コンセッション方式
公共施設の所有権を行政が保持したまま、運営権を民間事業者に委託するPFI手法。水道事業では2022年に宮城県が全国初の導入事例となった。
スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
指定管理者制度
地方自治法第244条の2に基づき、公の施設の管理を民間事業者やNPO等に委ねる制度。2003年の法改正で導入。総務省の調査(令和6年4月1日現在、79,332施設)では指定期間は5年が77.1%、3年が10.9%、10年以上は5.7%で、この期間の短さが長期投資を妨げる課題として挙げられる。

ご自身の案件で確認すること

  • 自団体のPPP/PFI検討フローは、最新の法改正・アクションプランを反映したものになっているか?
  • コンセッション事業者と指定管理者の併設について、条例レベルでの対応は検討済みか?
  • 優先的検討規程の対象拡大(人口5万人以上)に該当する場合、策定のタイムラインは設定されているか?

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