文部科学省の実態調査の調査項目は、廃校の数、活用の状況、活用に向けた検討の状況の3つである。賃料や売却価格は調べていないので、全国の相場はこの調査からは出せない。この記事は、同省の活用用途を募集している廃校施設の一覧で、自治体が募集に書いている金額と、無償や減額の条件を全部拾った。あわせて、行政財産の使用料と普通財産の貸付料を決める地方自治法の条文と、国庫補助を受けた建物を有償で出すときに文部科学省が求める算定根拠の書類を載せる。譲渡と貸与のどちらを示しているかの数は廃校は売るか貸すかの記事に、売払いと貸付の条文での違いは廃校の売却と貸付を条文で比べるの記事に載せた。
貸付料、賃料、売却価格の額を書いた募集
16件
活用用途を募集している廃校施設の一覧(令和8年9月1日現在の情報に基づく版を9月14日に取得)で、地方別の一覧にページがある455件のうち。この記事で数えた数
無償、減額、減免、優遇措置、0円からの応募のどれかを書いた募集
32件
同じ455件のうち。税の減免や改修費の補助は数えていない
指定都市を除く市町村が物件を貸し付けるとき、随意契約にできる額として規則で定められる上限
30万円
予定賃貸借料の年額又は総額で比べる。都道府県と指定都市は50万円(地方自治法施行令第167条の2第1項第1号・別表第五)
募集に書かれた金額
活用用途を募集している廃校施設の一覧の455件のうち、貸付料、賃料、売却価格の額を書いた16件と、額の意味の違い
文部科学省は、地方公共団体の希望に基づいて、各地方公共団体が活用方法や利用者を募集している未活用の廃校施設等の情報を集め、一覧にして公表している。一覧は毎月更新され、いま載っているのは令和8年9月1日現在の情報に基づく版である。地方別の一覧は全国統一の様式で、作成要領は、貸与・譲渡条件等の欄を募集に当たっての条件や希望する用途などを自由に書く欄とし、例に「賃料(月額)○○円」「売却予定価格○○○円」を挙げている。
9月14日に取得した地方別の一覧で、目次に載り、ページがある455件の募集内容、貸与・譲渡条件等、備考の3つの欄を読み、貸付料、賃料、売却価格の額を書いたものを拾った(画像で載っているページは画像で読んだ)。金額を書いたのは16件である(この記事で数えた数)。岩手県一関市の3校は貸付料の概算額を、宮城県大崎市の6校は、予定価格ではないと断ったうえで売却時の参考価格を書いている。茨城県小美玉市と栃木県那須塩原市は売却予定価格を、栃木県日光市は想定している年額の賃料を書いている。東京都足立区は、令和6年度の公募のときの土地貸料の最低提案限度額を書いている。兵庫県豊岡市は基準貸付価格を、兵庫県三木市は月額の賃料を書いている。広島県福山市は、校舎3階の教室の賃料の最低価格を書いている。
| 自治体と学校 | 募集の形 | 書いてある金額 | 一覧のファイル |
|---|---|---|---|
| 岩手県一関市の旧老松小学校 | 事業提案の募集(貸付) | 貸付料(概算額)年額487,300円 | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 岩手県一関市の旧永井小学校 | 事業提案の募集(貸付) | 貸付料(概算額)年額1,518,770円 | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 岩手県一関市の旧新沼小学校 | 事業提案の募集(貸付) | 貸付料(概算額)年額602,800円 | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の西大崎小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格4,200万円(令和7年6月の市の試算額、消費税等除く。予定価格ではない) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の上野目小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格3,500万円(同) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の池月小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格9,800万円(同) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の清滝小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格1億5,200万円(令和6年10月の不動産鑑定時点価格、消費税等除く。予定価格ではない) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の高倉小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格1億3,600万円(令和7年6月の市の試算額、消費税等除く。予定価格ではない) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県大崎市の東大崎小学校 | 利活用提案の募集 | 売却時の参考価格1億8,500万円(同) | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 茨城県小美玉市の下吉影小学校 | 民間提案制度による公募 | 建物の売却予定価格246,015,000円(消費税含)、土地の売却予定価格112,950,000円 | 関東1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 栃木県那須塩原市の旧大貫小学校等 | 譲渡先募集(事業提案型の公募) | 売却予定価格5,660,000円以上 | 関東1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 栃木県日光市の旧日光中学校 | 民間提案制度による事業者募集(公募型) | 年額の賃料は約450万円を想定 | 関東1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 東京都足立区の旧北鹿浜小学校 | 事業提案の募集(土地は貸付、建物は譲渡) | 令和6年度の公募のときの土地貸料の最低提案限度額は月額1,667,000円 | 関東2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 兵庫県豊岡市の奈佐小学校 | 貸与先募集(10年間) | 基準貸付価格は年額2,658,000円(建物は無償で、土地の貸付料だけの設定。上回る額も下回る額も提案できる) | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 兵庫県三木市の星陽中学校 | 貸与先募集(10年間) | 賃料(月額)665,000円(別途消費税及び地方消費税) | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 広島県福山市の山野中学校 | 事業提案の募集(校舎3階の一部を貸付) | 3階教室の賃料の最低価格は年66,331円から(教室ごとに基準価格が異なる。別途消費税及び地方消費税) | 中国(外部サイト、新しいタブで開きます) |
同じ「金額」でも、書いてある額の意味は違う。大崎市の参考価格は、予定価格ではないと断った額である。足立区の最低提案限度額、那須塩原市の「以上」を付けた売却予定価格、福山市の賃料の最低価格は、提案できる額の下限を示している。豊岡市の基準貸付価格は、上回る額も下回る額も提案できる。一関市は概算額、日光市は想定している額と書いている。
金額を書かずに、問い合わせや検討とした募集もある。京都府舞鶴市の5校は賃料等を担当窓口への問い合わせとし、三重県津市の太郎生小学校は、利活用の希望を受けて譲渡又は賃貸借の契約形態、価格又は賃料、その他の条件を検討するとしている。山形県金山町の2校は貸付と譲渡を原則有償とし、条件等は要相談としている。
無償や減額を書いた募集
無償、減額、減免、優遇措置、0円からの応募を書いた32件と、条例か議会の議決、財産処分で無償の根拠を付けること
貸付料、賃料、売却価格について、無償、減額、減免、優遇措置、0円からの応募のどれかを書いた募集は、同じ455件のうち32件、17自治体である(この記事で数えた数)。貸付料や価格のことではない税の優遇や減免、改修費や事業への補助、奨励金は数えていない(三重県津市、岩手県一関市、青森県佐井村など)。
条例による減額や無償を書いたのは、秋田県大館市(市条例適用による減額措置、奨励処置あり)、秋田県男鹿市の3校(市条例適用による減額措置あり)、福島県川俣町(町条例により貸付料の無償、減額の措置あり)である。新潟県阿賀町の2校も、条例に定める要件を満たせば無償貸付等の優遇措置があるとしている。
| 自治体(ページの数) | 書いてあること | 一覧のファイル |
|---|---|---|
| 北海道えりも町(1) | 建築物は有償譲渡、ただし利用目的等の条件により無償譲渡可(協議が必要)。土地は有償譲渡 | 北海道(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 宮城県山元町(1) | 有償での貸借を前提とし、公益に資する事業であれば減額・無償での貸借も検討する | 東北1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 秋田県大館市(1) | 市条例適用による減額措置、奨励処置あり | 東北2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 秋田県男鹿市(3) | 市条例適用による減額措置あり | 東北2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 福島県西会津町(1) | 原則として有償(賃料は応相談)による貸与。公共公益的利用のほか、町長の認めるものは無償 | 東北2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 福島県川俣町(1) | 町条例により貸付料の無償、減額の措置あり | 東北2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 茨城県筑西市(3) | 譲渡・貸与ともに0円から応募可(1校は譲渡のみ)。令和7年度の事業提案型の一般公募は受付を終えていて、今後の募集は未定 | 関東1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 茨城県小美玉市(1) | 「公益性」がより高い提案と認められる場合は、建物を「無償譲渡」とすることがある | 関東1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 東京都足立区(1) | 建物の無償譲渡(議決された場合) | 関東2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 新潟県阿賀町(2) | 条例に定める要件を満たせば無償貸付等の優遇措置がある | 中部1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 長野県佐久穂町(1) | 校舎等の建物は無償譲渡。校舎や体育館に接続していない施設等(プールなど)が不要なら、譲渡前に町が解体撤去費を負担し、工事が終わってから引き渡す | 中部2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 京都府宮津市(1) | 貸付料は有償(公益事業等の場合は、減免等の場合もあり) | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 京都府京都市(9) | 事業者の負担で地域住民の自治活動施設や防災拠点を整備・維持管理し、地域利用部分の土地貸付料は減免 | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 兵庫県丹波市(2) | 貸付料は土地建物とも無償(1校)、無償も可(1校) | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 兵庫県豊岡市(1) | 利用促進のため建物は無償で貸し付け、土地の貸付料だけを設定 | 近畿(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 熊本県天草市(2) | 貸付、譲渡について優遇措置あり | 九州1(外部サイト、新しいタブで開きます) |
| 鹿児島県指宿市(1) | 無償貸付等の募集内容を検討中 | 九州2(外部サイト、新しいタブで開きます) |
普通地方公共団体の財産は、第238条の4第1項の規定の適用がある場合を除き、条例又は議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくして譲渡し、若しくは貸し付けてはならない。条例で定める場合を除くほか、適正な対価なくして財産を譲渡し、若しくは貸し付けることは、議会が議決しなければならない。表の大館市、男鹿市、川俣町、阿賀町は条例を、足立区は議決を書いている。国庫補助を受けた建物を無償で譲渡・貸与する財産処分では、無償での処分が可能な根拠(条例や議会の議決等)を必ず添付する。ハンドブックは、土地を有償、建物を無償として一体で譲渡・貸与の契約をする場合に、建物を無償で処分する根拠資料の添付漏れが多いとしている。豊岡市や足立区のように、土地と建物で有償と無償を分ける募集では、建物を無償にする根拠も確かめる。
使用料と貸付料を決める条文
行政財産の使用料、普通財産の貸付と随意契約にできる額、国庫補助を受けた建物を有償で出すときの算定根拠の書類
行政財産のまま使わせるとき
行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができ、この許可を受けてする使用には借地借家法の規定を適用しない。普通地方公共団体は、この許可を受けてする行政財産の使用につき使用料を徴収することができ、使用料に関する事項は条例で定めなければならない。許可の期間について、総務省は、将来その財産を本来の目的に使うときに直ちに原状回復などが難しくなり、本来の用途や目的を妨げる結果になるような長期継続的な使用は原則として許可できないが、行政財産の構造や耐震性、耐用年数等に問題がなく、将来にわたって公用又は公共用に使用する予定がない等の場合は、適切な期間を設定して長期継続的な使用を許可することも可能で、どのような場合にどのような期間を設定できるかは具体的事例により個別に判断するとしている。
廃校を公共施設に転用し、利用する人から、維持管理費に相当するものとして条例等で定めた使用料や利用料金を取る場合でも、財産処分の手続きでは無償による処分として扱う。
普通財産を貸すとき
普通財産は貸し付けることができる。貸借の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとし、指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。随意契約によることができる場合の一つは、予定価格(貸借の契約は予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五の額の範囲内で規則で定める額を超えない契約で、別表第五は物件の貸付けを都道府県と指定都市で50万円、指定都市を除く市町村で30万円としている。貸付料をいくらにするかの計算の仕方は、この条文には書かれていない。
国庫補助を受けた建物を有償で出すとき
有償の譲渡と有償の貸与の承認申請には、契約額・使用料の算定根拠として、契約額等を算定する際の計算方法を示した条例・規則等、契約額等の算定に用いる不動産鑑定評価書や固定資産税評価書、それに基づいて契約額等を算定した計算書を付ける。計算書は、建物(複数の棟を含む場合は各棟)に係る契約額と土地に係る契約額を分けて算出するなど、財産処分の対象となる範囲に係る金額を明示する。国庫納付額等を出すときの棟別の譲渡額・貸与額は、不動産鑑定評価額や固定資産税評価額等に基づいて算出する。有償の譲渡では処分する建物の補助金相当額と譲渡額に係る補助金相当額を、有償の貸与では貸与期間に係る補助金相当額と貸与額に係る補助金相当額を比べ、低いほうを国庫納付額等とする。計算の仕方と基金への積立ては廃校の財産処分の記事に載せた。
金額を自治体に確かめるときに聞くこと
金額の種類、算定の根拠、無償や減額の根拠、使用許可か貸付か、維持管理費と改修費の負担の5つ
- 書いてある金額が、予定価格、参考価格、最低提案限度額、基準貸付価格、想定額、概算額のどれで、提案で上下させてよいか。
- 算定の根拠。国庫補助を受けた建物を有償で出すなら、計算方法を示した条例・規則等、不動産鑑定評価書や固定資産税評価書、計算書を承認申請に付けるので、その資料を基に説明を求める。
- 無償や減額を求めるなら、当たる条例の名前か、議会の議決の予定。
- 使うのは行政財産の使用許可か、普通財産の貸付か。使用料の条例か、契約の貸付料か、借地借家法が当たるか、期間はどう決まるか。
- 維持管理費と改修費をどちらが出すか。舞鶴市の5校は、改修する場合は利用者が負担し事前に許可が要り、維持管理費も利用者の負担としている。宮津市は維持管理費と使用に当たっての改修費を、丹波市の2校は維持管理費を利用者の負担とし、津市は改修費と維持管理費を原則事業者の負担としている。那須塩原市は、施設改修と光熱水費等の費用を全て提案者の負担としている。
廃校は売るか貸すか:募集中の廃校で自治体が示す形と金額、事例集で譲渡と有償貸与を選んだ14事例
活用用途を募集している廃校の一覧で数えた譲渡と貸与の示し方、金額と期間を書いた募集、事例集の改修費の負担
廃校の売却と貸付を条文で比べる:行政財産と普通財産、議会の議決、相手方の選び方、契約後の解除、貸付の期間
行政財産のままでは売れないこと、議会の議決が要る場合、競争入札と随意契約、契約後に自治体が解除できる場合、借地借家法の期間と使用貸借
廃校の財産処分:手続きが要らない場合、報告で済む処分、国庫納付金と基金、必要書類と提出の時期
手続きが要らない場合、報告で済む処分と承認が要る処分、国庫納付金の算定と基金への積立て、必要書類と提出の目安
次にやること
この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。
| 順 | やること | どこで | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 入居予定者を1者でも先に見つける。用途を決めてから探すのではなく、借りる人を決めてから用途を決める | サウンディング、地元事業者 | 1〜3か月 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を出す。無ければ先に実施する | 営繕担当 | 2〜3か月 |
| 3 | 2を踏まえた改修費の概算を取る。解体費も同時に出して比べる | 設計事務所 | 1か月 |
| 4 | 財産処分の手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎を処分制限期間内に学校以外に使うときは文科省の承認が要る(要件を満たせば報告で済む) | 教育委員会、文科省 | 1〜2か月 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生・地域団体に説明の場を持つ | 同窓会、自治会 | 1か月 |
1を飛ばすと、用途だけ決まって借り手が現れない状態になる。