文部科学省の実態調査で分かること
調査の対象と時点、廃校8,850校から活用されている5,661校までの数、前回調査と並べるときの注意、みんなの廃校プロジェクト
平成16年度から令和5年度に発生した廃校
8,850校
前回調査(平成14年度から令和2年度)は8,580校
施設が現存している廃校
7,612校
現存する施設なしの1,238校を除く
施設が現存している廃校のうち、活用されているもの
74.4%
5,661校。前回調査は74.1%
活用されていない1,951校のうち、用途が決まっていないもの
1,503校
施設が現存している廃校の19.7%
文部科学省は、廃校の数と活用の状況を「廃校施設活用状況実態調査」で調べている。対象は全国の公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校で、調査項目は廃校の数、活用の状況、活用に向けた検討の状況。令和6年5月1日現在の状況を令和7年3月31日に公表し、前回調査は令和3年5月1日時点だった。
| 区分 | 今回(令和6年5月1日現在) | 前回(令和3年5月1日現在) |
|---|---|---|
| 数えた廃校の年度 | 平成16年度から令和5年度 | 平成14年度から令和2年度 |
| 廃校の数 | 8,850校 | 8,580校 |
| 施設が現存している廃校 | 7,612校(86.0%) | 7,398校(86.2%) |
| 活用されているもの | 5,661校(74.4%) | 5,481校(74.1%) |
| 活用されていないもの | 1,951校(25.6%) | 1,917校(25.9%) |
| 現存する施設なし | 1,238校(14.0%) | 1,182校(13.8%) |
表の数は資料3「廃校施設の活用状況」による。施設が現存している廃校と現存する施設なしの割合は廃校の数に対するもの、活用されている・されていないの割合は施設が現存している廃校に対するものである。
今回と前回では、数えている廃校の年度が2年ずれている。今回は平成14年度と平成15年度の廃校が外れ、前回調査のあとの令和3年度から令和5年度に発生した1,025校が加わった。前回との差を、そのまま増えた数や減った数として読むことはできない。
文部科学省は平成22年9月に「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、活用用途を募集している全国の廃校施設の情報を集めて発信し、廃校活用推進イベントの開催や廃校活用事例の紹介もしている。
廃校が出るペース
年度別の廃校の数、令和7年度学校基本調査の学校数と在学者数、5〜14歳にあたる人口の推計、統廃合のパンフレット
年度別の数
8,850校を対象期間の20年で割ると、年平均約442校になる。みんなの廃校プロジェクトのページにある「全国では毎年約450校程度の廃校施設が生じています」とおおむね合うが、20年の平均であり、近年の実数はこれを下回る。同じ調査の年度別では、2016年度以降は毎年279〜405校で450校に達した年はなく、2019年度から2023年度は384・345・369・358・298校である。事業計画で母数を置くときは年度別の実数を使う。
学校と子どもの数
令和7年5月1日現在、公立の小学校は18,291校で前年度より215校、公立の中学校は8,982校で51校少なく、公立の義務教育学校は254校で22校多い。在学者数(国立・公立・私立の計)は、小学校が581万2千人で前年度より12万9千人、中学校が310万5千人で3万6千人減り、どちらも過去最少だった。
国立社会保障・人口問題研究所の推計結果表の5歳階級別人口で、5〜9歳と10〜14歳を足すと、令和7(2025)年が968万人、令和32(2050)年が719万人になる。25年でおよそ26%減る。小学生と中学生にあたる年齢の子どもの数である。
文部科学省は令和7年3月に、平成27年の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置に関する手引」を基にしたパンフレット「公立小中学校の統廃合をお考えの皆さまへ」を出した。統廃合で生じることが多い課題と対応策の例に「地域の拠点機能の継承」を挙げ、その中に「廃校施設等の活用」を入れている。
何に使われているか
校舎と屋内運動場を分けて数えた用途別の件数(複数回答、合計10,348件)と前回調査の件数
実態調査は、活用されている廃校の用途を件数で数えている。校舎と屋内運動場を分けて数えた複数回答で、合計は10,348件になり、活用されている5,661校より多い。用途別割合は10,348件に対する割合で、学校数の割合ではない。
| 用途 | 件数(用途別割合) | 校舎 | 屋内運動場 | 前回調査の件数(用途別割合) |
|---|---|---|---|---|
| 学校(大学を除く) | 4,191件(40.5%) | 2,110件 | 2,081件 | 3,948件(39.1%) |
| 社会体育施設 | 1,693件(16.4%) | 155件 | 1,538件 | 1,756件(17.4%) |
| 社会教育施設・文化施設 | 1,206件(11.7%) | 750件 | 456件 | 1,330件(13.2%) |
| 福祉施設・医療施設等 | 735件(7.1%) | 533件 | 202件 | 774件(7.7%) |
| 企業等の施設・創業支援施設 | 1,207件(11.7%) | 789件 | 418件 | 1,020件(10.1%) |
| 庁舎等 | 449件(4.3%) | 323件 | 126件 | 461件(4.6%) |
| 体験交流施設等 | 535件(5.2%) | 349件 | 186件 | 520件(5.1%) |
| 備蓄倉庫 | 231件(2.2%) | 158件 | 73件 | 199件(2.0%) |
| 大学 | 81件(0.8%) | 47件 | 34件 | 79件(0.8%) |
| 住宅 | 20件(0.2%) | 13件 | 7件 | 21件(0.2%) |
最も多い「学校(大学を除く)」4,191件は、校舎2,110件と屋内運動場2,081件でほぼ半分ずつ。社会体育施設1,693件のうち1,538件は屋内運動場である。前回調査と比べると、企業等の施設・創業支援施設は1,020件から1,207件、社会教育施設・文化施設は1,330件から1,206件になった。前の節に書いたとおり、2つの調査は数えている廃校の年度が違う。調査は「学校(大学を除く)」をそれ以上分けていないので、統合先の学校なのか、別の種類の学校なのかはこの表から分からない。
活用されていない1,951校
用途が決まっている・決まっていない・取壊しを予定の内訳、用途が決まっていない廃校の年度、決まらない理由8項目
3つの区分
活用されていない1,951校は、活用の用途が決まっている235校、決まっていない1,503校、取壊しを予定している213校に分かれる。
| 区分 | 今回 | 前回 |
|---|---|---|
| 活用の用途が決まっている | 235校(3.1%) | 278校(3.8%) |
| 活用の用途が決まっていない | 1,503校(19.7%) | 1,424校(19.2%) |
| 取壊しを予定 | 213校(2.8%) | 215校(2.9%) |
割合は施設が現存している廃校(今回7,612校、前回7,398校)に対するもの。
用途が決まっていない廃校の年度
用途が決まっていない1,503校を廃校になった年度で見ると、令和5年度が129校で最も多く、令和4年度が118校で続く。平成16年度は66校、平成25年度は75校で、平成16年度から平成25年度までを足すと605校になる。
用途が決まっていない理由
理由は複数回答で、校舎(n=2,177)と屋内運動場(n=1,994)に分けて集計している。
| 理由(複数回答) | 校舎(n=2,177) | 屋内運動場(n=1,994) |
|---|---|---|
| 地域等からの要望がない | 903(41.5%) | 795(39.9%) |
| 建物が老朽化している | 902(41.4%) | 749(37.6%) |
| 財源が確保できない | 327(15.0%) | 275(13.8%) |
| 立地条件が悪い | 387(17.8%) | 299(15.0%) |
| 用途に応じて法令上の制約がある | 126(5.8%) | 104(5.2%) |
| 活用方法が分からない | 137(6.3%) | 100(5.0%) |
| 活用の検討を行っていない | 189(8.7%) | 217(10.9%) |
| その他 | 615(28.2%) | 550(27.6%) |
校舎では「地域等からの要望がない」と「建物が老朽化している」が1件差で並び、「その他」も28.2%ある。どちらが理由かで、次にやることが変わる。要望が無いなら、借りて使う人をサウンディングなどで探すところから始める。老朽化なら、耐震診断と改修費の概算を先に出し、解体する場合と比べる。
住民への聞き取りと研究
地域住民からの意向聴取の状況、手引きにある意見のもらい方、舟瀬ら(2021)・太田ら(2024)・Davisら(2023)の抄録
地域住民からの意向聴取
実態調査は、廃校の活用に向けて地域住民から意向を聞いたかも尋ねている。校舎(n=7,211)の49.6%、屋内運動場(n=7,144)の53.9%が「実施していない」だった。
| 意向聴取(複数回答) | 校舎(n=7,211) | 屋内運動場(n=7,144) |
|---|---|---|
| アンケート調査を実施 | 479(6.6%) | 413(5.8%) |
| 説明会等によるヒアリングを実施 | 2,782(38.6%) | 2,500(35.0%) |
| その他 | 739(10.2%) | 717(10.0%) |
| 実施していない | 3,580(49.6%) | 3,850(53.9%) |
令和8年5月の手引き「スモールコンセッションのすすめ」は、地域住民に意見をもらう方法としてアンケート、ヒアリング、ワークショップ、説明会を挙げ、少人数で意見をまとめるならヒアリングやワークショップ、幅広く聞くならアンケート、事業への理解を得るなら説明会と、目的で選ぶとしている。活用の方向性を地域と具体的に合意すると、その機能が事業として成り立たなかったときに他の機能で使いにくくなるおそれがあるとして、複数の機能を選択肢にしたり、「観光客を呼び込む機能」のように抽象度の高いイメージで合意したりする方法を挙げている。
研究3本
舟瀬ら(2021)は、日本都市計画学会関西支部の研究発表会講演概要集に載った研究である。抄録によると、全国の廃校活用の優良事例76校から地域参画の特性をつかみ、兵庫県の優良事例4校で検討から運営に至るプロセスを調べた。全国の優良事例では約半数で地域参画がみられ、地域が組織を作って自治体と協働で検討すること、会議による合意形成を基本にワークショップや社会実験を使うこと、専門家や若者らが加わって柔軟な発想で検討することが有効だったとしている。
太田ら(2024)は、愛知県豊田市の中山間地域で廃校を使った活動拠点「つくラッセル」を、公開資料と観察調査で分析した論文である。抄録は、地域の主体どうしが関係を続けてきたことが多様な活動を生んでいること、つくラッセルが新しい活動を生むきっかけになっていること、主体どうしのつながりの多くが1階の自由に使えるスペースでの活動から生まれていることを挙げている。
Davisら(2023)は、プエルトリコで2007年から2019年に650校を超える公立学校が閉校したことを受けて、転用された学校161校を分類して地図にした。うち38校は、住民が自発的に学校を地域づくりに使い直す「rescued schools」だった。12件のインタビューと2回のフォーカスグループから、学校の所有権を得ることと、資金とボランティアを続けて集めることが課題に挙がり、行政機関が地域の団体、市町村、その他の支援者のあいだに新しい連携をつくれば、閉校の害を小さくできると論じている。
2026年の国の動き
余裕教室活用状況実態調査の結果と次回以降の扱い、スモールコンセッションの手引きの旧西尾小学校、形成推進事業の学校2件
余裕教室の調査は次回以降行わない
余裕教室は、いま普通教室として使っていない教室のうち、学区域に住む児童等の人口から見て、今後5年間以内(令和12年度中まで)に普通教室として使われることがないと考えられる教室をいう。令和8年4月10日に公表された令和7年度の調査では、公立小中学校等の余裕教室は74,138室で、前回(令和3年)の73,247室より891室多い。そのうち72,902室(約98.3%)が活用され、当該学校の施設が69,468室、放課後児童クラブなど学校施設以外が3,094室、特別支援学校など他の学校の施設が340室だった。同じ資料は、累次の調査で全国的・継続的に余裕教室の活用が図られていることが明らかになり、調査の趣旨はおおむね達成されたとして、特段の状況変化がない限り次回以降の調査は行わないとしている。この資料は、廃校施設活用状況実態調査の今後には触れていない。
手引きに載った廃校の事例
スモールコンセッションについて、国土交通省と内閣府が令和8年5月に出した手引き「スモールコンセッションのすすめ」は、地方公共団体が所有する遊休公的施設(廃校・空き家等)を民間事業者と協力しながら活用し、地域課題の解決やエリア価値の向上につなげる取組と説明し、事業費は原則10億円未満程度としている。
先進事例のCASE2は、石川県小松市の旧西尾小学校である。平成30年3月に閉校し、校舎は平成23年の大規模改修で耐震性が確保されていた。市は指定管理料を払わない独立採算型の指定管理者制度を選び、地元企業の参加のハードルが上がらないよう改修工事は別に発注した。過去の改修で使った補助金の制約があったため、地域再生計画を作り、国庫納付が免除される制度を使った。事業期間は令和3年3月から令和13年3月までの約10年間で、公共が負担した事業費は施設改修工事費が約5億6,000万円、設計業務委託料が上限3,100万円、活用した補助金は空き家対策総合支援事業(2億6,500万円)。宿泊施設、レストラン、レンタルスペースが入る。
形成推進事業で学校を対象にした2件
国土交通省のスモールコンセッション形成推進事業は、廃校や古民家等の遊休公的施設を使う地方公共団体に、プロジェクトの初期段階の課題を解くための専門家を派遣する事業である。令和8年度は9調査が実施中で、学校を対象にしたものは静岡県磐田市の「地域コミュニティ拠点機能を有する旧岩田小学校利活用検討調査」(派遣する専門家はAmame Associate Japan 株式会社)と、山口県・山口県宇部市の「旧宇部西高等学校利活用検討調査」(同じく株式会社日建設計総合研究所)の2件である。
廃校活用の最新動向・統計【2026年版】
文科省の実態調査で、前回調査から件数が動いた用途と、国の施策・補助制度を読む
国交省「スモールコンセッションのすすめ」完全解説:3つの壁・VFM算定不要・契約リスクまで【2026年5月公表手引き】
手引きの3つの壁、4つの事例、進め方と手続きの簡素化、支援制度を読む
遊休公的不動産を「負債」から「資財」に変える:自治体のための活用戦略【2026年版】
遊休公的不動産の現状、活用の選択肢、制度と補助金、失敗パターン、棚卸しから公募までの手順
次にやること
この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。
| 順 | やること | どこで | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 入居予定者を1者でも先に見つける。用途を決めてから探すのではなく、借りる人を決めてから用途を決める | サウンディング、地元事業者 | 1〜3か月 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を出す。無ければ先に実施する | 営繕担当 | 2〜3か月 |
| 3 | 2を踏まえた改修費の概算を取る。解体費も同時に出して比べる | 設計事務所 | 1か月 |
| 4 | 財産処分の手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎を処分制限期間内に学校以外に使うときは文科省の承認が要る(要件を満たせば報告で済む) | 教育委員会、文科省 | 1〜2か月 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生・地域団体に説明の場を持つ | 同窓会、自治会 | 1か月 |
1を飛ばすと、用途だけ決まって借り手が現れない状態になる。


