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九州の廃校×福祉施設 — 長洲町・建設技術研究所の取組み
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九州の廃校×福祉施設 — 長洲町・建設技術研究所の取組み

横田直也
約7分で読めます

九州地域の廃校を福祉施設に転用する事例を分析。長洲町の旧長洲中学校スモールコンセッション事業、B&G財団「子ども第三の居場所」事業、九州の廃校×福祉転用パターンを整理。福祉施設への廃校活用が増加する構造的背景と、自治体が取るべきステップを解説。

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ざっくり言うと

  1. 長洲町は旧長洲中学校の跡地利活用にスモールコンセッションの手法を導入し、2025年度形成推進事業で選定された7自治体の一つ
  2. B&G財団は長洲町に「子ども第三の居場所」を2025年4月に開設。助成額7,880万円で旧地域福祉センターを多世代交流拠点に改修
  3. 全国の廃校→福祉施設転用は735件(令和6年度調査)で増加傾向。報酬の安定性と建物との物理的相性が構造的要因

九州の廃校の現状

九州7県の廃校発生状況と活用率。福祉施設への転用が増加傾向にある背景

735件

全国の廃校→福祉・医療施設転用数(令和6年度調査)

7,880万円

B&G財団による長洲町「子ども第三の居場所」助成額

7自治体

2025年度スモコン形成推進事業の選定数(長洲町含む)

九州7県(福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島)は、少子高齢化と人口流出が進む地域であり、廃校の発生が続いている。特に離島部(長崎県・鹿児島県)や中山間地域(熊本県・大分県)では、複式学級→統廃合→廃校というプロセスが加速している。

全国の廃校施設8,850校(2004-2023年度累計)のうち、福祉施設・医療施設として活用されているものは735件であり、近年増加傾向にある。この増加傾向は九州地域でも同様であり、児童福祉・障害福祉・高齢者福祉の各分野で廃校の転用事例が見られる。

九州における福祉ニーズの高さ

九州は全国的に見ても高齢化率が高い地域であり、特に熊本県・大分県・鹿児島県では高齢者福祉サービスの需要が逼迫している。同時に、子どもの貧困率も全国平均を上回る県が多く、児童福祉の充実も課題となっている。この「福祉ニーズの高さ」と「廃校ストックの存在」の組み合わせが、九州での廃校×福祉転用を後押ししている。


長洲町のスモールコンセッション

旧長洲中学校跡地の利活用計画と基本計画策定プロセス

旧長洲中学校跡地の利活用

長洲町(熊本県玉名郡)は、人口約15,000人の町である。有明海に面し、金魚の養殖と造船業で知られる。2025年度のスモールコンセッション形成推進事業で選定された7自治体の一つであり、旧長洲中学校の跡地利活用が対象事業となっている。

統合に伴う跡地活用の経緯

長洲町では令和6年4月に中学校の統合が行われ、旧長洲中学校の校舎・敷地が遊休化した。町は統合後速やかに跡地利活用の検討を開始し、「長洲中学校跡地の利活用に関する基本計画」の策定に着手している。の手法を活用することで、国の専門家派遣支援を受けながら、民間の創意工夫を最大限に活かした活用策を検討している。

建設技術研究所の関与

建設技術研究所は、公共施設マネジメント・PPP/PFI分野で豊富な実績を持つ総合コンサルタントであり、長洲町の跡地利活用計画策定の支援に関与している。大手コンサルタントが九州の小規模自治体を支援する構図は、スモールコンセッションの全国展開が進んでいることの表れである。

長洲町モデルの特徴

長洲町の事例は、以下の点で注目に値する。

  • 中学校跡地の活用: 廃校活用事例の多くは小学校であるが、中学校は体育館・プール・運動場が大規模であり、活用の選択肢が広い
  • 統合直後の迅速な対応: 統合から基本計画策定までのタイムラグを最小化し、施設の劣化が進む前に活用方針を決定する姿勢
  • 福祉と地域振興の融合: 後述の「子ども第三の居場所」事業と併せ、福祉機能を核とした地域拠点の形成を目指している

長洲町の「子ども第三の居場所」

B&G財団の助成事業。旧地域福祉センターの多世代交流拠点への改修

B&G財団の助成事業

B&G財団(ブルーシー・アンド・グリーンランド財団)は、「子ども第三の居場所」事業として全国に拠点を展開している。この事業は、生活困窮家庭等の子どもたちに、家庭(第一の居場所)・学校(第二の居場所)に次ぐ安全な居場所を提供するものである。

長洲町には2025年4月に「子ども第三の居場所」長洲拠点が開設され、助成額は7,880万円である。旧長洲町地域福祉センターを多世代交流拠点施設へと改修し、子どもから高齢者まで安心して集える場として整備された。

「子ども第三の居場所」の運営構造

長洲拠点の運営には以下の特徴がある。

  • 対象: 生活困窮などの家庭の小中学生を主対象としつつ、多世代交流の場としても機能
  • 運営主体: 一般社団法人SEPが運営を担い、地域の福祉ネットワークとの連携を確保
  • 施設改修: 旧地域福祉センターを改修し、学習支援スペース・調理スペース・交流スペースを整備

廃校→福祉施設転用の構造分析

735件の福祉・医療転用事例の増加理由。報酬安定性・建物相性・供給不足の3軸

なぜ福祉転用が増加しているのか

廃校の福祉施設への転用は全国的に増加傾向にある。令和6年度調査では福祉施設・医療施設への転用が735件に達した。この増加には3つの構造的理由がある。

理由1: 福祉報酬の安定性

障害福祉サービス・介護サービスは、報酬単価が国の制度で定められており、一定の稼働率があれば安定的な収入が見込める。観光施設やカフェのように市場リスクに左右されにくく、事業計画の見通しが立てやすい。

理由2: 建物との物理的相性

学校建築は「多数の人間が同時に滞在する施設」として設計されており、廊下の幅・教室の広さ・トイレの数・バリアフリー(エレベーターは別途必要)の観点から、福祉施設としての転用がしやすい。特に就労継続支援B型・生活介護・放課後等デイサービスは、教室の広さ・体育館の存在が活動スペースとして最適である。

理由3: 全国的な福祉施設の供給不足

障害福祉サービス・児童福祉サービスの需要に対して、施設の供給が追いついていない地域は全国に多い。廃校を活用することで、通常の新規開設(物件探し→賃貸契約→内装工事)よりも低コスト・短期間で施設を確保できる。

福祉転用の収支優位性

廃校を福祉施設として活用する場合の最大のメリットは「施設費の圧縮」である。通常の賃貸物件では月額20〜40万円の施設賃借費がかかるが、廃校の無償または低額貸付により月額0〜5万円に抑えることができ、月15〜35万円のコスト削減が実現する。

→ 廃校×福祉施設の詳細な収支モデルについては、廃校×福祉施設の収支モデルを参照されたい。


九州の廃校×福祉パターン

児童福祉型・障害福祉型・高齢者福祉型・多世代交流型の4パターン

九州地域の廃校×福祉事例を整理すると、以下の4パターンに分類できる。

パターン1: 児童福祉型

廃校を放課後等デイサービス・児童館・子育て支援施設として活用する。長洲町の「子ども第三の居場所」はこのパターンに含まれる。地域の子育て支援ニーズに応え、多世代交流の拠点としても機能する。

パターン2: 障害福祉型

就労継続支援B型・生活介護・就労移行支援など障害福祉サービスの事業所として活用する。教室を作業室・訓練室に転用し、体育館をレクリエーションスペースとして活用する。九州は農業が盛んな地域であり、「農業×障害福祉」(農福連携)のモデルが成立しやすい。

パターン3: 高齢者福祉型

デイサービス・地域密着型通所介護・小規模多機能居宅介護などの高齢者福祉施設として活用する。九州は高齢化率が高く、特に中山間地域では通所サービスの供給不足が深刻であるため、廃校を活用した高齢者福祉施設の需要は大きい。

パターン4: 多世代交流型

福祉施設の単一機能ではなく、児童・障害者・高齢者が交流する「多世代交流拠点」として活用する。長洲町の「子ども第三の居場所」が多世代交流の場として位置づけられているのは、このパターンの先行事例である。


検討のためのステップ

福祉転用を検討する自治体が確認すべき5つの前提条件

廃校の福祉転用を検討する九州地域の自治体が確認すべき前提条件を5つのステップで整理する。

ステップ1: 地域の福祉ニーズの把握

自治体の障害福祉計画・介護保険事業計画・子ども子育て支援計画を確認し、供給不足の福祉サービス類型を特定する。福祉ニーズのない地域での福祉転用は成立しない。

ステップ2: 建物の状態確認

廃校の建築年・耐震性能・設備の状態を確認する。1981年以前の建築は耐震補強が必要であり、改修費が大幅に増加する。スプリンクラー設置基準(延床面積275m²超の福祉施設)の該当有無も確認する。

ステップ3: 用途変更の手続き確認

学校施設から福祉施設への用途変更に伴う建築基準法・消防法の適合確認。排煙設備・非常用照明・避難経路の追加整備が必要な場合がある。

ステップ4: 事業者の募集・選定

社会福祉法人・NPO・民間事業者から活用提案を募集する。文部科学省「みんなの廃校プロジェクト」への掲載で全国の事業者にアプローチできる。

ステップ5: NIMBY問題への対応準備

福祉施設(特に障害者施設)の開設に対する近隣住民の反対(NIMBY)のリスクを事前に評価し、住民説明会・意見交換会の設計を行う。

→ 廃校活用の前提条件チェックリストについては、廃校活用事例47選を参照されたい。


廃校×福祉施設の収支モデル

施設費を月15〜35万円削減する構造。就労継続支援B型20名規模の収支シミュレーション

スモールコンセッション事例7選

2026年度選定7自治体の対象施設・専門家・設計意図の分析

参考文献

令和6年度 公立小中学校等における廃校施設の活用状況に関する調査 (2025)

スモールコンセッションに取り組む地方公共団体に派遣する専門家の公募を開始 (2026)

熊本県長洲町子ども第三の居場所 長洲拠点がオープン (2025)

長洲町に「子ども第三の居場所」 生活困窮などの家庭の小中学生対象、2025年春開設 (2024)


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事例集

廃校活用事例47選

文部科学省データから読む成功パターンと失敗要因

ガイド

廃校活用完全ガイド

年間450校の廃校を地域の拠点に再生する方法

地域別

東北の廃校活用

少子化先進地域の挑戦と成功事例

読んだ後に考えてみよう

  1. 検討中の廃校は、福祉施設としての建築基準法上の用途変更に対応可能か?
  2. 地域の福祉ニーズ(児童・障害・高齢者)のうち、最も供給不足な分野はどれか?
  3. NIMBY問題(近隣住民の反対)のリスクをどう評価し、対策を設計するか?

この記事の用語

スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。
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