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ARTICLE · スモールコンセッション

北海道のスモールコンセッション:広大な土地と遊休施設の活用戦略

北海道は全国最多の廃校数を抱え、遊休公共施設の活用が喫緊の課題。池田町×エリアクラフト北海道のスモールコンセッション事例、道内の遊休施設プラットフォーム、廃校活用の先行事例(小清水町・旭川市)を分析し、北海道型の活用戦略を解説。

この記事の要点

  • 北海道は全国で最も廃校数が多い都道府県。平成16年度から令和5年度までの累計で859校(小学校558校・中学校210校・高等学校等91校)で、2位の岩手県331校の2.6倍
  • 池田町は2025年度スモールコンセッション形成推進事業で選定され、エリアクラフト北海道が専門家として伴走支援を実施
  • 北海道庁は遊休公共施設の情報を「利活用募集」として一元公開し、民間事業者とのマッチングを推進している
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • 北海道内の自治体で遊休施設・廃校の活用を検討している担当者
  • 北海道での事業展開(サテライトオフィス・体験施設・農業連携等)を検討している民間事業者
  • 過疎地域のスモールコンセッション事例を研究している研究者・コンサルタント

前提となる知識

  • スモールコンセッションの基本概念([スモールコンセッションとは?](/small-concession-what-is)を参照)
  • 廃校活用の基本([廃校活用の全手順](/abandoned-school-how-to)を参照)
この記事の内容

北海道の遊休施設の現状

全国最多の廃校数。道庁が一元管理する遊休施設情報の概要

出典を示していない収支試算の単価・金額は、説明用に仮定した数値であり、統計に基づく相場ではない。事業計画を作る際は、対象施設の状態や立地、事業内容に応じた見積もりと実績を用いる。出典を示した統計や事例の金額は、この仮定とは区別して参照する。

北海道の廃校数(平成16〜令和5年度の累計・全国最多)

859校

2位の岩手県331校の2.6倍

うち小学校の廃校数

558校

中学校210校・高等学校等91校

北海道の面積。全国377,980km²の22.1%にあたる(令和8年1月1日時点)

83,422km²

北海道は全国で最も廃校数が多い都道府県である。平成16年度から令和5年度までの累計で859校が廃校となり、内訳は小学校558校・中学校210校・高等学校等91校である。2位の岩手県331校の2.6倍にあたる。

スモールコンセッション推進上の3つの壁。イメージの壁、パートナーの壁、事業化の壁と、それぞれの打ち手。
事業への理解、協力事業者の確保、事業化の支援を、検討の進捗に合わせて整理する出典: 国土交通省 総合政策局「スモールコンセッション推進方策案について」(2024年)

北海道の廃校数が突出して多い構造的理由は3つある。

  1. 広大な面積と分散型集落: 83,422km²の面積に179市町村が分散しており、1校あたりの児童数が少ない小規模校が多かった
  2. 少子高齢化の先行: 北海道の合計特殊出生率は全国平均を下回り、特に道東・道北の過疎地域では急激な人口減少が進行している
  3. 炭鉱・漁業の衰退: 旧炭鉱町(夕張市・赤平市等)や漁業集落の人口減少に伴い、かつての産業基盤とともに学校も閉じた

北海道庁の遊休施設プラットフォーム

北海道庁総合政策部地域創生局地域戦略課は、道内市町村の遊休公共施設情報を「利活用募集」として一元的に公開している。このプラットフォームには、廃校校舎・旧庁舎・旧公営住宅・旧病院など多様な施設が掲載されており、サテライトオフィス設置・工場開設・事業展開を検討する企業向けの情報提供となっている。

また、北海道教育庁は、道立学校の廃校校舎・未利用地等の情報を別途公開しており、売却・貸付の対象施設を一覧化している。


池田町のスモールコンセッション

ワインの町・池田町の遊休施設活用。エリアクラフト北海道の伴走支援モデル

ワインの町・池田町の概要

池田町は北海道十勝地方の町である。昭和38年には果実酒類試験製造免許を取得し、国内では最初の自治体経営によるワイン醸造を手がけ始めた。十勝ワインのブランドは全国的に認知されているが、人口減少と高齢化が進行しており、遊休公共施設の活用が課題となっている。

エリアクラフト北海道の伴走支援

池田町は2025年度のスモールコンセッション形成推進事業で選定された7自治体の一つであり、一般社団法人エリアクラフト北海道が専門家として選定されている。

エリアクラフト北海道は、大手コンサルティングファーム(PwC・デロイト等)とは異なり、北海道の小規模自治体に特化した地域密着型の支援組織である。の7自治体の中で「一般社団法人」が専門家として選定されたのは池田町のみであり、この人選は「地域の文脈を理解した伴走支援」を重視した結果と読み取れる。

池田町モデルの設計思想

池田町のスモールコンセッションでは、遊休公共施設をワイン・農業・食文化と連携した体験型施設として活用するビジョンが想定されている。十勝ワインのブランド力を活用し、域外からの来訪者(観光客・ワーケーション利用者)を呼び込む設計である。

池田町の強み:

  • 十勝ワインの全国的ブランド認知度
  • 十勝平野の広大な農業景観
  • とかち帯広空港からのアクセス(車で約40分)

池田町の課題:

  • 地域内の市場が小さい
  • 冬季(11〜3月)の厳しい寒冷地条件
  • 域内の民間事業者の層が薄い

北海道の廃校活用先行事例

小清水町の旧北陽小学校(せんべい工場)、旭川市の廃校校舎公募、札幌近郊の事例

小清水町:旧北陽小学校のせんべい工場

北海道小清水町では、旧北陽小学校をせんべい工場として活用した事例がある。文部科学省の廃校活用事例集にも掲載されており、廃校の広い空間(教室・体育館)を食品製造の生産ラインとして活用するモデルである。

食品製造業への転用は、廃校活用の中でも比較的成功率の高い業態である。理由は以下の3点にある。

  1. 広い床面積の活用: 教室・廊下・体育館は、食品製造の生産ライン・倉庫として十分な面積を持つ
  2. 水道・電気のインフラ: 学校施設は給食調理のための水道・電力インフラが整備されている場合が多い
  3. 冬季の影響が小さい: 食品製造は屋内作業であり、積雪・寒冷地の外部環境に左右されにくい

旭川市:廃校校舎の公募

旭川市は、廃校校舎等の跡利用者を公募しており、北海道第2の都市として比較的アクセスの良い環境での廃校活用機会を提供している。旭川市は旭川空港・JR旭川駅からのアクセスが良好であり、道北の中核都市として商圏人口も確保できるため、廃校活用の成立条件が相対的に良い地域である。

CHILDHOOD:次世代型屋内遊戯施設

北海道内では、廃校校舎を丸ごと屋内遊戯施設に転用した「CHILDHOOD」の事例もある。北海道初の次世代型マルチアトラクションパークとして、冬季でも利用可能な屋内空間を提供し、子育て世代の集客に成功している。寒冷地の廃校活用において「屋内完結型」の業態は有利であることを示す事例である。


北海道特有の条件と活用戦略

広大な土地・寒冷地・過疎の3条件を踏まえた戦略設計

3つの構造的条件

北海道の遊休施設活用を考える際、以下の3つの条件を前提としなければならない。

条件1: 広大な土地と長大な距離

北海道の面積は83,422.27km²で、全国377,979.74km²の22.1%を占める(令和8年1月1日時点)。この広大さは「土地の安さ」という利点をもたらす一方、「施設間の距離が長い」という不利も生む。道東の廃校から最寄りの都市(帯広・釧路)まで車で1〜2時間かかるケースも珍しくなく、日帰り利用を前提とした事業モデルは成立しにくい。

条件2: 寒冷地の維持管理コスト

冬季(11〜3月)の暖房費・除雪費は施設運営の大きな負担となる。灯油暖房で月額15〜40万円、除雪費で年間30〜80万円が一般的な水準であり、これを事業収支に織り込んだ上で採算が取れる業態を選定する必要がある。

条件3: 過疎地域の担い手不足

北海道の179市町村のうち、人口1万人未満の町村が過半数を占める。域内の民間事業者の絶対数が少なく、施設活用の提案者が域内から現れにくい構造がある。

北海道型の活用戦略:3つのアプローチ

アプローチ1: 滞在型・合宿型

日帰りが困難な立地の施設は、宿泊を前提とした滞在型・合宿型の活用が有効である。スポーツ合宿(夏季)・ワーケーション・企業研修・アーティストレジデンスなど、「わざわざ遠くまで来る」動機を持つ利用者をターゲットとする。

アプローチ2: 食品製造・加工業

小清水町のせんべい工場事例が示すように、食品製造業は広い床面積・既存インフラ・冬季の影響を受けにくい屋内作業という条件に合致する。北海道は農業・酪農・水産業の生産地であり、地域産品の加工拠点として廃校を活用する発想は自然である。

アプローチ3: 季節限定の体験型施設

冬季の運営コストを回避するため、夏季(5〜10月)限定の体験型施設として運営する戦略もある。アウトドア体験・農業体験・自然教育プログラムなど、北海道の夏の魅力を活かした業態であれば、6か月間の営業で年間収支を成立させることも可能である。


今後の展望

アドベンチャーツーリズム・農業連携・ワーケーションとの組み合わせ

アドベンチャーツーリズムとの連携

北海道はアドベンチャーツーリズム(自然体験・アウトドアスポーツを軸とした旅行形態)の受け入れが進んでいる地域である。廃校を拠点施設に使う構想が全国で何件あるかを数えた資料は見つかっていない。サイクリング・カヌー・トレッキングのベースキャンプとして廃校を活用すれば、広大な自然資源と既存の建物ストックを結びつけることができる。

ワーケーション拠点としての可能性

コロナ禍以降、ワーケーション需要は一定程度定着しており、北海道の廃校はその拠点として有力候補である。高速インターネット環境の整備が前提条件となるが、光回線の地方展開が進んだ2025年以降、以前よりもハードルは下がっている。

国交省スモコンPFの活用拡大

池田町の事例を皮切りに、北海道内の他の自治体がスモールコンセッション形成推進事業に応募する動きが広がることが期待される。道庁の遊休施設プラットフォームと国交省のスモコンPFの両方を活用することで、「施設情報の発信→専門家支援→事業化」の一連のプロセスが加速する可能性がある。

→ スモールコンセッションの専門家派遣制度については、スモールコンセッション専門家派遣ガイドを参照されたい。


事例集

スモールコンセッション事例7選

2026年度選定7自治体の対象施設・専門家・設計意図の分析

廃校活用事例47選

文部科学省データから読む成功パターンと失敗要因

次にやること

遊休施設の活用を検討する際は、施設の状態と地域の需要、民間事業者の意向を確認する。

順確認・検討すること担当・相談先
1遊休施設の状況と周辺の需要を整理する。建物の状態や立地と、地域で必要とされる用途を照合する財産管理担当
2候補施設の耐震診断とアスベスト調査の結果を確認する。未実施の場合は、調査の範囲と実施方法を検討する営繕担当
3国交省のプラットフォームで情報を集める。会員登録は無料で、先進事例や補助金、専門家派遣の公募案内を受け取れるプラットフォームの公式サイト
4民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く。単独での事業化が難しい場合は、近隣自治体との連携も検討するサウンディング、近隣自治体
5民間の意見を踏まえて、運営権、賃貸借、指定管理などの手法を比較する。施設の用途や収支、官民の役割分担に合う手法を選ぶ所管課、財産管理担当

プラットフォームの会員登録は、専門家派遣や補助制度の公募情報を受け取る手段になる。応募を検討する際は、募集要項で対象者、支援内容、期限を確認する。


関連記事

ガイド

スモールコンセッション完全ガイド

定義・事例・進め方・補助金を網羅

地域別

東北の廃校活用

少子化先進地域の挑戦と成功事例

この記事で使った統計の出典

  1. 1文部科学省 令和6年度「廃校施設活用状況実態調査」(令和6年5月1日現在)都道府県別廃校発生数(2025) 出典を開く
  2. 2国土地理院「令和8年全国都道府県市区町村別面積調(1月1日時点)」(2026年) 出典を開く
  3. 3池田町ブドウ・ブドウ酒研究所「十勝ワインの誕生」(2026) 出典を開く
  4. 4国土交通省 スモールコンセッション形成推進事業(2025年) 出典を開く

参考文献

企業等の利活用を募集している公共施設(遊休施設等)/北海道庁 総合政策部地域創生局地域戦略課 (2025)

廃校校舎・未利用地等情報/北海道教育庁 総務政策局施設課 (2026)

スモールコンセッションに取り組む地方公共団体に派遣する専門家の公募を開始/国土交通省 (2026)

廃校活用事例集/文部科学省 (2025)

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訂正の内容

  1. :北海道の面積と全国に占める割合を、出典なしの概数で書いていました。

    訂正前
    約83,000km²、全国の22%
    訂正後
    83,422.27km²、全国377,979.74km²の22.1%(令和8年1月1日時点)

    理由 国土地理院「令和8年全国都道府県市区町村別面積調(1月1日時点)」で確かめました。

  2. :「廃校を拠点にする構想が広がっている」という記述を落としました。

    訂正前
    廃校を拠点施設として活用する構想が広がっている
    訂正後
    廃校を拠点施設に使う構想が全国で何件あるかを数えた資料は見つかっていない

    理由 件数を数えた資料が公表されていないので、増えたかどうかを確かめられません。

  3. :北海道の廃校数が、期間も件数も古い数字のままでした。最新の調査に差し替えました。

    訂正前
    2002年度から2015年度までに688校が廃校(小学校463校・中学校153校・高校72校)。2016年度以降も毎年20〜30校のペースで、累計は800校を超えている
    訂正後
    平成16年度から令和5年度までの累計で859校(小学校558校・中学校210校・高等学校等91校)。2位の岩手県331校の2.6倍

    理由 688校の出どころが確認できませんでした。出典に挙げていた文部科学省の実態調査は入口ページを指しており、たどっても数字に届きません。最新の「令和6年度 廃校施設活用状況実態調査」の都道府県別廃校発生数を開くと、北海道は859校(558・210・91)です。「毎年20〜30校」「累計800校超」も裏づけが取れないため落としました。

  4. :町の人口を出典なしで書いていたので落とし、ワイン醸造の記述を公表資料に合わせました。

    訂正前
    人口約6,200人の町。1963年に自治体として全国初のワイン醸造を開始(出典はWikipedia)
    訂正後
    昭和38年に果実酒類試験製造免許を取得し、国内では最初の自治体経営によるワイン醸造を手がけ始めた(池田町ブドウ・ブドウ酒研究所)

    理由 出典がWikipediaでした。ワイン醸造については池田町ブドウ・ブドウ酒研究所(十勝ワイン)の公表している記述に差し替えています。人口については、いつ時点のどの統計かをたどれる出典を確認できなかったため、数字を落としました。

この記事の用語

スモールコンセッション
地方公共団体が所有する空き家・廃校等の遊休不動産について、民間の創意工夫を活かした小規模(事業費10億円未満程度)なPPP/PFI事業を行う取組み。2024年に国交省がプラットフォームを設立。

ご自身の案件で確認すること

  • 検討中の遊休施設は、北海道庁のプラットフォームに掲載されているか?
  • 冬季(11月〜3月)の施設運営をどう設計するか?通年型か季節限定型か?
  • 最寄り空港・都市からのアクセス時間と、想定する利用者の移動手段は整合しているか?

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