ウォーターPPPとは何か
レベル4とレベル3.5の総称であること、令和7年度からの呼び名、従来の委託との違い
汚水管改築の交付金等にウォーターPPP導入の決定が必要になる年度
令和9年度
国交省ガイドライン第3.0版(2026年4月)3.7
レベル3.5の契約期間の原則
10年
同2.1。包括的民間委託は3〜5年が一般的
レベル3.5の入札・公募資料等の公表までにかかる期間の目安
2〜3年
同3.2
妙高市で同じ会社が受け持つ事業(ガス・水道・下水道)
3事業
内閣府 優良事例表彰の資料
ウォーターPPPは、コンセッション方式(レベル4)と、管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)の総称である。国は令和7年度から「水の官民連携」と呼んでいて、変わったのは呼び名だけで中身は同じである。この記事では、交付要件の文言に残る「ウォーターPPP」の名前で書く。
内閣府のPPP/PFI推進アクションプラン(令和8年改定版)は「水の官民連携」を重点分野と書き、水道と下水道のそれぞれで10年のターゲット目標を100件にしている。
従来の民間委託との大きな違いは、維持管理と更新(改築)を同じ事業者にまとめて長く任せる点にある。ガイドラインは、従来は細分化され短期で委託されていた業務をまとめて長期で委託することで、官民双方の事務負担の軽減や、効果的・効率的な事業運営を目指すとしている。
| 従来の委託 | ウォーターPPPのレベル3.5 |
|---|---|
| レベル3.5の事業期間は、包括的民間委託(レベル1〜3)で一般的な3〜5年間よりも長い10年間が原則である | 契約は原則10年。更新の効果が出るまでの期間を確保する |
| 委託の範囲は修繕の計画と実施まで | 維持管理をしている事業者が更新計画案も作る(更新支援型) |
| 改築は地方公共団体が発注する | 改築の発注業務まで任せる形(更新実施型)も選べる |
表の中身はガイドライン第3.0版の2.1と2.3による。
レベル3.5は、レベル4と違って公共施設等運営権の設定が要らず、利用料金を事業者が直接受け取ることもない(ガイドライン1.2、1.3)。地方公共団体がレベル4(コンセッション)を選ぶと、実施方針を条例の定めるところにより定め、運営権を設定する前に議会の議決を経る必要がある。
レベル区分の整理
レベル1〜3の包括的民間委託と、レベル3.5の更新支援型・更新実施型、レベル4の業務範囲
ウォーターPPP とは、レベル4(コンセッション方式)とレベル3.5(管理・更新一体マネジメント方式)の総称である。 レベル1〜3 は複数年度・複数業務による民間委託であって、ウォーターPPP には含まれない (ガイドライン第3.0版の1.1)。 レベル3.5という呼び名は、民間委託(レベル1〜3)とレベル4のあいだに位置することに由来する。
業務の範囲と契約期間で並べると次のようになる(ガイドライン第3.0版の1.2、1.3、2.1、2.3)。
| 区分 | 業務の範囲 | 契約期間 | ウォーターPPPか |
|---|---|---|---|
| レベル1〜3(包括的民間委託) | 水質管理・運転操作・保守点検、ユーティリティの調達と管理、修繕計画案の作成と修繕 | 3〜5年が一般的(同2.1の記述) | 含まれない |
| レベル3.5 更新支援型 | レベル3までの業務に、更新計画案の作成を加える(コンストラクションマネジメントまで含めるかは管理者が決める) | 原則10年 | 含まれる |
| レベル3.5 更新実施型 | さらに、改築の発注業務まで任せる | 原則10年 | 含まれる |
| レベル4(コンセッション方式) | 施設の運営権を民間事業者に設定し、事業者が利用料金を直接受け取る | 設定は自由(同1.3の図表に「先行事例は20年以上が多い」とある) | 含まれる |
レベル3.5は、レベル4に準ずる効果が期待できる方式として、また水道・下水道・工業用水道でレベル4に段階的に移行するための方式として置かれている(ガイドライン1.1)。公共施設等運営権の設定が要らないことなどから、レベル4より取り組みやすいとガイドラインは書いている(同1.2)。
レベル3.5の4要件
レベル3.5と名乗れるのは、次の4つをすべて満たす民間委託である(ガイドライン1.2)。
- 長期契約(原則10年)
- 性能発注
- 維持管理と更新の一体マネジメント
- プロフィットシェア(契約期間中に事業者の提案で費用が減ったとき、減った分を官民で分ける仕組み)
ガイドラインは、レベル1〜3との違いを、事業期間の長短、性能発注の程度、修繕や改築に関係する業務範囲が設定されるか否かにあるとしている(1.2)。
令和9年度補助金要件化の影響
対象になる改築、決定済みと認められる時点、準備にかかる期間と間に合わないときの道
要件の中身
この要件化は、すでに決まっている。PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)で決まったもので(ガイドライン第3.0版の3.7)、国土交通省のガイドライン第3.0版(2026年4月)にこう書かれている。第2.0版(2025年4月)と同じ文言である。
令和9年度以降に汚水管改築の交付金等を受けるには、「ウォーターPPP 導入を決定済み」であることが必要となる。「ウォーターPPP 導入を決定済み」は、レベル 3.5 の場合、実施方針の公表等では足りず、入札・公募の開始(募集要項等の公表)を意味する。
レベル3.5とレベル4で、「決定済み」の意味が違う。
| 「決定済み」と認められる時点 | |
|---|---|
| レベル3.5 | 入札・公募の開始(募集要項等の公表)。実施方針の公表では足りない |
| レベル4 | 実施方針の公表(議会議決が必要なこと等から) |
| 入札・公募以外の選定 | 契約締結 |
取り組みやすいのはレベル3.5だが、交付要件を満たす時点で見るとレベル4のほうが早い。 ここは直感と逆になる。
あわせて、もう1つの交付要件がある。令和9年度以降の改築で交付対象となる管路施設は、 その施設情報と維持管理情報が地理情報システム(GIS)を基盤としたデータベースで管理されている必要がある (ガイドライン3.7)。ウォーターPPPの要件とは別建てなので、両方を満たさなければならない。
対象になる改築
要件の対象は「汚水管の改築に係る国費支援」で、社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金、沖縄振興公共投資交付金、個別補助金(下水道事業費、下水道防災事業費)を想定している。3.8に規模で対象を絞る記述は無く、改築する施設の種類で決まる。
| 改築するもの | 要件の対象か |
|---|---|
| 汚水管(管路施設) | 対象 |
| 合流管 | 対象 |
| ストックマネジメント支援制度と総合地震対策事業での管路の改築、その計画策定と調査・診断 | 対象 |
| 緊急輸送道路と重要物流道路の下に埋設されている管路の耐震化 | 対象外(例外) |
| 汚水管の新設(未普及対策など) | 対象外(改築ではない) |
| 処理場、ポンプ場、マンホールポンプ、送泥管 | 対象外 |
| 機械設備と電気設備 | 対象外 |
交付金を受ける汚水管の改築を、レベル3.5の業務範囲に入れる必要はない(同3.8)。
決めていないときに起きること
令和9年度以降に汚水管の改築で国費を受けるには、レベル3.5かレベル4の導入を決定済みにしておく必要がある。決めていないと、次のことが起きうる。
- 汚水管の改築に国費が付かない(処理場やポンプ場の改築は対象外なので、そちらの国費には響かない)
- 一般会計からの繰入金を増やすか、使用料を上げる圧力が強まる
- 長期の財政計画の前提を見直すことになる
対応スケジュールの目安
令和9年度は2027年4月に始まる。ガイドラインは、レベル3.5の入札・公募資料等の公表までに2〜3年程度の期間が必要と考えられるとしている。
この記事を見直した2026年9月の時点で、令和9年度まで7か月を切っている。 いまから検討を始めて令和9年度の交付申請に間に合わせるのは、ガイドラインの目安では難しい。
間に合わない場合に取りうる道は3つある。
| 道 | 中身 | 向くとき |
|---|---|---|
| レベル4に切り替える | 実施方針の公表で要件を満たせる。ただし実施方針は条例の定めるところにより定め、運営権の設定には議会の議決が要る(PFI法第18条、第19条第4項) | 議会の合意が取れる見込みがあるとき |
| 令和10年度以降を狙う | 令和9年度の汚水管改築は交付金なしで進めるか、先送りする | 当面の改築が急がない、または一般財源で賄えるとき |
| 近隣と共同で発注する | 複数の管理者が共同発注などで連携すれば、すべての管理者が同時に要件を満たせる(ガイドライン3.7) | 単独では事業規模が小さく、民間が手を挙げないとき |
どの道を選ぶにせよ、まず自団体の令和9年度以降の改築計画に、対象の汚水管の改築があるかを確かめることが先になる。
政策的背景
アクションプランが挙げる課題と、ガイドライン・水道法の整備
国が挙げている課題
アクションプラン(令和8年改定版)は、人口減少、水道・下水道・工業用水道の膨大な施設の老朽化、職員の不足などを現下の社会課題として挙げ、その解決に「水の官民連携」の推進で官民一体でサービスを維持・向上させる必要があるとしている。ガイドライン第3.0版も「はじめに」で、職員不足、施設の老朽化、水道料金や下水道使用料の収入の減少を、地方公共団体の抱える課題として挙げている。
制度整備の流れ
| 時期 | できたこと | 出典 |
|---|---|---|
| 2018年12月公布、2019年10月施行 | 水道法の改正で、地方公共団体である水道事業者が水道施設運営権を設定するとき、あらかじめ国の許可を受ける仕組みができた(第24条の4) | e-Gov法令検索 |
| 2023年6月 | PPP/PFI推進アクションプラン(令和5年改定版)で、汚水管の改築の国費支援にウォーターPPPの導入決定を令和9年度以降に要件化することになった | ガイドライン第3.0版の3.7 |
| 2025年4月 | 国土交通省が下水道分野のガイドライン第2.0版を出した | 第2.0版 |
| 令和7年度 | 国が呼び名を「水の官民連携」に変えた(中身は同じ) | 国土交通省「官民連携(PPP/PFI)の活用」 |
| 2026年4月 | ガイドライン第3.0版。要件の文言は第2.0版と同じ | 第3.0版 |
| 2026年6月 | アクションプラン(令和8年改定版)が要件化を改めて書き、市町村ごとの小規模案件の乱立で広域化が妨げられないよう制度設計を行うとした | アクションプラン(令和8年改定版) |
先行事例: 新潟県妙高市
ガスの民営化と上下水道の包括的民間委託を同じ会社で行った事例の概要
概要
新潟県妙高市は、ガス事業を譲渡して民営化し、上水道と下水道の維持管理・修繕を同じ会社に包括的民間委託した。内閣府は第1回PPP/PFI事業優良事例表彰の優秀賞(人口20万人未満の地方公共団体で事業化された事例部門)にこの事業を選んでいる。
民間事業者名は 妙高グリーンエナジー株式会社。上下水道事業は令和4年4月から令和14年3月までの10年、ガス事業は令和4年4月の譲渡契約による民営化である。内閣府が評価の視点に挙げたのは、10年の長期契約と性能発注に加えて、ウォーターPPPレベル3.5を目指して包括委託の業務内容に施設の更新工事とプロフィットシェアを盛り込む予定であること。ガス本管と水道本管を同時に埋設して設計と工事をまとめた点、令和6年元日の能登半島地震で最大震度5強を記録しながら供給停止がなかった点も挙がっている。
シュタットベルケ型への発展可能性
シュタットベルケ(Stadtwerke)はドイツ語で「都市公社」を意味し、電気・ガス・水道・交通・廃棄物処理といった地域の公共インフラをまとめて運営する事業体を指す。
妙高市は、ガスと上下水道という複数の事業を同じ会社にまとめている点で、この記事はシュタットベルケに近い形として読む。ただし内閣府の資料が書いているのは事業方式と評価の視点までで、会社の出資の構成は書かれていない。シュタットベルケと同じ形かどうかは、この資料からは決められない。
事例で確かめられること
| 論点 | 内閣府の資料に書かれていること |
|---|---|
| 事業の組み方 | ガスは事業譲渡による民営化、上下水道は維持管理・修繕等の包括的民間委託。方式の違う事業を同じ会社で行う |
| 工事のまとめ方 | ガス本管と水道本管を同じ掘削で同時に埋設し、設計と工事を効率化した |
| レベル3.5への道筋 | 10年の長期契約と性能発注で始め、施設の更新工事とプロフィットシェアを包括委託の業務に盛り込む予定 |
自治体が今すべき準備
現状把握・市場調査・議会説明の三段階での実務準備
1. 現状把握と運営状況の可視化
まず行うべきは、自団体の上下水道事業の運営状況を客観的に可視化することである。具体的には、資産台帳(ストックマネジメント計画)の整備状況、維持管理委託費の推移、更新投資の見込み、職員構成と退職予定者数を整理する。これらの情報が整っていないと、民間事業者との対話そのものが成立しない。
2. 市場調査(サウンディング)の実施
サウンディングは、事業化前の段階で民間事業者の関心・意見を聴取する手続きである。ウォーターPPPの場合、単独自治体では事業規模が小さく民間参入が難しいケースが多いため、 近隣自治体との広域化 や 事業範囲の拡大(ガスや廃棄物処理との統合)といった工夫が必要になる可能性がある。サウンディングを通じて、市場側が成立可能と考える事業規模・期間・範囲を早期に把握することが重要である。
3. 議会・住民への説明
長期委託は10年程度の期間にわたって事業者を固定するため、議会・住民からの懸念が生じやすい論点である。料金設定・サービス水準・緊急時対応・地元雇用への影響などについて、丁寧な説明材料を準備する必要がある。議会説明の進め方も参考になる。
ウォーターPPPと他の官民連携との関係
Park-PFI・スモールコンセッション・PFI法との使い分け
ウォーターPPPは、既存のPPP/PFI手法と競合するものではなく、 対象インフラと事業規模に応じた使い分け の一つとして位置づけるのが適切である。
| 手法 | 主な対象 | 事業規模感 |
|---|---|---|
| ウォーターPPP(本記事) | 上下水道 | 中〜大規模 |
| Park-PFI | 都市公園 | 小〜中規模 |
| スモールコンセッション | 小規模公共施設 | 小規模 |
| PFI法によるコンセッション | 大規模インフラ全般 | 大規模 |
ウォーターPPPは上下水道に特化しており、他の手法と直接競合するわけではない。妙高市のように、ガスと上下水道を同じ会社にまとめる形もある。
課題とリスク
長期契約のリスク分担・更新投資見込み・地元企業参画の論点
長期契約におけるリスク分担
10年の長期契約では、物価変動・金利変動・法制度変更といった不確実性への対応が要る。物価スライド条項・法改正対応条項・不可抗力条項を丁寧に設計しておく必要がある。
更新投資見込みの精度
ウォーターPPPは更新工事を含む一体契約であるため、契約期間中の更新投資額の見込みが事業者提案の核となる。自治体側のストックマネジメント計画が不十分なまま契約に進むと、 予想外の追加工事 や 契約変更協議 が頻発するリスクがある。契約締結前の資産調査と現況把握の精度が、事業成否を左右する。
地元企業参画機会の確保
包括契約化は大手事業者優位の構造を生みやすく、地元建設業・設備業の参画機会が失われるリスクがある。募集要項において 地元企業の構成員・協力会社としての参画を評価項目に含める 、あるいは 地元企業向けの説明会を開催する といった配慮が重要となる。
住民合意形成の難しさ
水道・下水道は住民生活に直結するサービスであり、民間事業者への委託に対する不安感は根強い。料金水準・水質・緊急時対応についての不安を丁寧に解きほぐすコミュニケーションが必要であり、形式的な住民説明会では十分とは言えない。
次にやること
交付要件への対応を検討する際は、改築計画、管路情報の管理状況、財源を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 令和9年度以降の改築計画に、交付要件の対象となる汚水管の改築があるかを確認する。処理場・ポンプ場の改築、汚水管の新設、緊急輸送道路と重要物流道路の下の管路の耐震化は対象外となる | 下水道の計画担当。判断に迷う場合は都道府県の担当課または国交省 |
| 2 | 管路施設の情報がGISのデータベースで管理されているかを確認する。ウォーターPPPとは別の交付要件として確認する | 下水道台帳担当 |
| 3 | 令和9年度の汚水管改築費と必要な財源を整理する。交付金を受けられない場合の不足額も確認する | 予算担当 |
| 4 | 改築計画、台帳の整備状況、財源を踏まえて、レベル3.5、レベル4、共同発注、実施時期の見直しを比較する | 下水道担当、意思決定を担う部署 |
| 5 | 事業化を検討する場合は、民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く。単独で規模が足りない場合は近隣自治体との連携も検討する | サウンディング、近隣自治体 |
まず、改築計画が交付要件の対象になるかを担当課に確認する。対象外の場合は、この要件への対応と、水道・下水道事業全体の運営手法の検討を分けて判断する。
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