ざっくり言うと
- 2022年12月公布・2023年施行のPFI法改正では、対象施設にスポーツ施設・集会施設が追加され、コンセッション事業者と指定管理者制度の連携手続きが簡素化された
- 令和6年改定のPPP/PFI推進アクションプランでは、事業件数目標が650件に上方修正され、重点分野に自衛隊施設が新たに追加された
- 優先的検討規程の策定要件が人口10万人以上から5万人以上に引き下げられ、中小規模自治体への制度浸透が加速する見通しである
PFI法改正の全体像
1999年の制定から2022年改正までの主要な改正ポイントの時系列整理
7回
PFI法の主な改正回数(1999年制定以降)
1,154
累計PFI事業数(令和6年度末)
30兆円
アクションプラン10年間の事業規模目標
650
アクションプラン事業件数目標(10年間)
PFI法(民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)は、1999年の制定以来、社会経済環境の変化に対応して複数回の改正を重ねてきた。主要な改正の時系列を整理する。
| 改正年 | 主な内容 |
|---|---|
| 2001年 | 行政財産の貸付規定の整備 |
| 2005年 | 公共施設等運営権(コンセッション)制度創設に向けた基盤整備 |
| 2011年 | 公共施設等運営権(コンセッション)制度の創設・民間提案制度の導入 |
| 2013年 | 株式会社民間資金等活用事業推進機構(PFI推進機構)の設立 |
| 2015年 | コンセッション事業における公務員の退職派遣制度 |
| 2018年 | 上下水道のコンセッション推進・自治体への支援強化 |
| 2022年 | 対象施設拡大・コンセッション手続簡素化・指定管理者制度連携 |
本記事では、直近の2022年12月公布の改正内容と、2024年6月改定のPPP/PFI推進アクションプランの要点を中心に、自治体実務への影響を分析する。
2022年改正の3つの柱
対象施設拡大・コンセッション推進強化・指定管理者連携の詳細分析
2022年12月16日に公布されたPFI法改正は、以下の3つの柱で構成されている。改正内容は段階的に施行され、(1)は2022年12月16日、(3)は2023年1月16日、(2)は2023年6月15日にそれぞれ施行された。
柱1: 対象施設の拡大
PFI法第2条第1項の「公共施設等」の定義に、スポーツ施設と集会施設が新たに追加された。
従来もスポーツ施設や集会施設をPFI事業として実施することは可能であったが、法文上の明記により制度的な位置づけが明確化された。この改正の背景には、スポーツ庁と経済産業省が推進する「スタジアム・アリーナ改革」がある。
内閣府は2023年1月にスタジアム・アリーナに係るコンセッション事業活用ガイドラインを公表しており、2025年までに20拠点の整備を目標としている。
柱2: コンセッション推進の強化
コンセッション(公共施設等運営権)事業の推進に向けて、手続きの簡素化が図られた。具体的には、コンセッション事業者を指定管理者に指定する際の手続きについて、従来は議会の議決が必要であったところ、条例に特別の定めがあれば事後報告で可とする地方自治法の特例が設けられた。
これは、コンセッション事業者と指定管理者の二重手続きが実務上の障壁となっていたことへの対応であり、事業者の事務負担の軽減と事業のスピードアップを目的としている。
加えて、指定管理者となったコンセッション事業者による利用料金設定の自由度も高められた。従来の「条例で定める範囲内」という制約に対し、コンセッション事業の特性に応じた柔軟な料金設定を可能とする規定が整備された。
柱3: その他の制度整備
- コンセッション事業者による利用料金の承認に関する知事関与の緩和
- 公共施設等運営権者に関する情報開示の強化
令和6年アクションプラン改定
事業件数目標の上方修正と4つの重点施策の解説
2024年6月3日、第20回民間資金等活用事業推進会議においてPPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)が決定された。主要な改定ポイントは以下の4点である。
1. 事業件数目標の上方修正
10年間の事業件数目標が650件に上方修正された。これは、PPP/PFI事業の実施ペースが計画を上回って推移していることを反映したものである。
2. 重点分野の再編
重点分野に自衛隊施設が新たに追加された。従来の重点分野(道路・港湾・航空・鉄道・公共賃貸住宅・下水道・廃棄物処理・水道・都市公園・文教施設等)に加え、防衛分野への官民連携の拡大を示すものである。
3. 分野横断型・広域型PPP/PFIの形成促進
単一施設・単一自治体の事業にとどまらず、複数施設の包括管理や複数自治体による広域連携を促進する方針が明確化された。これは、個々の施設が小規模であっても、複数をまとめることで民間参入のスケールメリットを確保しようとするものである。
4. 民間事業者の適正利益への配慮
PPP/PFI事業において、民間事業者が適正な利益を得られる環境の構築と、適正な価格の算出の推進が新たに盛り込まれた。これは、コスト削減偏重の公募条件が事業者の参入意欲を低下させている現状への対応であり、持続可能な官民連携の基盤整備として注目される。
自治体実務への影響
優先的検討規程の基準引き下げ・民間利益確保・実務フローの変化
優先的検討規程の対象拡大
PPP/PFI推進アクションプランにおける優先的検討規程の策定要件は、従来の「人口10万人以上」から「人口5万人以上」に引き下げられた。
この基準引き下げにより、新たに対象となる自治体数は大幅に増加する。人口5万〜10万人の自治体は全国に約200存在し、これらの自治体にとってPPP/PFI検討の組織的な仕組みづくりが新たな実務課題となる。
総務省の調査では、人口規模が小さくなるほど「事業への理解やノウハウの不足、人手の不足」が課題として挙げられる割合が高い。基準引き下げに伴い、中小規模自治体への研修・支援体制の拡充が不可欠である。
コンセッション × 指定管理者の実務対応
2022年改正によるコンセッション事業者の指定管理者指定手続きの簡素化は、条例改正を前提としている。該当する自治体は、条例改正のタイミングと議会への説明準備が必要である。
適正価格の算出と公募条件の見直し
民間事業者の適正利益への配慮という方針は、公募における最低委託料の設定や、物価変動条項の導入といった具体的な対応を自治体に求める。特に人件費・資材費の高騰が続く現状では、契約期間中の価格改定メカニズムの整備が急務である。
今後の展望
スモールコンセッションの制度化・広域連携・分野横断型事業の拡大見通し
スモールコンセッションの制度的位置づけの明確化
スモールコンセッションは2023年11月に概念が明確化されたが、法律上の位置づけはまだ確立されていない。今後、PFI法の改正や新たなガイドラインの策定により、制度的な基盤が整備される可能性がある。
デジタル技術の活用
施設の維持管理・モニタリングにおけるBIM/CIM・IoTセンサー・AIの活用が進む見通しであり、PFI事業の契約においてもデジタル技術の活用を評価項目に含める動きが出てきている。
広域連携の加速
人口減少が進む地方部では、単一自治体でのPPP/PFI事業のスケールメリットが限られるため、複数自治体による広域連携型のPPP/PFIが拡大する見通しである。アクションプランにおける「分野横断型・広域型PPP/PFIの形成促進」は、この方向性を制度的に後押しするものである。
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参考文献
PFI法の改正(令和4年法律第94号) (2022)
PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版) (2024)
PFIの基本的な仕組みと近時の法改正等 (2023)
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