横浜市の公園とPark-PFI戦略
大小あわせて約2,700の公園がある横浜市がPark-PFIを導入した背景と全体方針
横浜市内の公園(大小あわせて)
約2,700
横浜市 令和3年6月現在
Park-PFI実施公園数
3件
2026年時点
横浜市の人口規模
3,754,840人
令和7年国勢調査 速報値
横浜市は大小あわせて約2,700の公園があり、面積は合計約1,730ヘクタール(令和3年6月現在)という日本最大級の政令市である。人口は令和7年国勢調査の速報値(令和7年10月1日現在)で3,754,840人。公園施設の老朽化と維持管理費の増大が財政課題となる中、Park-PFI(公募設置管理制度)を活用した民間活力の導入を積極的に進めている。
2026年時点で横浜市がPark-PFIを実施している公園は以下の3件である。
| 公園 | 事業者 | 事業類型 | 開業時期 |
|---|---|---|---|
| 山下公園レストハウス | ゼットン代表8社共同事業体 | 飲食・観光複合 | 2023年4月 |
| 大通り公園1-3区 | 三井不動産代表4社共同事業体 | 都市リニューアル | 計画中 |
| 横浜動物の森公園 | フォレストアドベンチャー | アウトドアレジャー | 2019年9月 |
横浜市は公園公民連携推進委員会を設置し、Park-PFI事業者の審査を組織的に行っている。この制度的基盤が、事業者選定の透明性と公園活用の質の確保につながっている。
山下公園レストハウス「THE WHARF HOUSE」
ゼットン代表の8社共同事業体による「THE WHARF HOUSE」の事業構造と歴史的景観との共存設計
事業概要
横浜市は山下公園レストハウス及び周辺園地の整備・管理運営を行う事業者として、ゼットンを代表法人とする「山下公園再生プロジェクトグループ」を選定した。2023年4月14日に「THE WHARF HOUSE 山下公園」としてオープンしている。
事業者構成
共同事業体は代表法人の株式会社ゼットンを含む8社で構成される。
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| 株式会社ゼットン(代表法人) | 飲食施設運営 |
| 株式会社ファンケル | ウェルネス関連 |
| 横浜エフエム放送株式会社 | メディア連携 |
| 三菱地所株式会社 | 不動産・施設管理 |
| 株式会社ケーエムシーコーポレーション | 施設運営 |
| サカタのタネグリーンサービス株式会社 | 緑地管理 |
| 株式会社tvkコミュニケーションズ | メディア連携 |
| 株式会社ありあけ | 物販(菓子) |
8社という多数の構成は、横浜市ならではの特徴である。飲食(ゼットン)・不動産管理(三菱地所)・緑地管理(サカタのタネGS)・メディア(FMヨコハマ・tvk)・物販(ありあけ)・ウェルネス(ファンケル)と、異なる専門領域の企業が結集することで、公園の多面的な価値向上を実現している。
歴史的景観との共存設計
山下公園は1930年開園の歴史的な公園であり、横浜港を望む景観は横浜市の象徴的な風景だ。レストハウスのリニューアルでは、横浜市景観計画との整合が厳密に求められた。
THE WHARF HOUSE山下公園には足湯やBBQスペースも設けられ、従来のレストハウスにはなかった体験型の機能が追加されている。横浜港の景観を活かしながら「滞在時間を延ばす」設計は、観光地の公園活用として示唆に富む。
大通り公園1-3区リニューアル
三井不動産・東急・京急・DeNAによる大規模都市公園リニューアル
大規模都市再開発と連動するPark-PFI
大通り公園は横浜市中区に位置する都心型の帯状公園である。Park-PFIを導入する1-3区の設置予定者として、三井不動産を代表とする共同事業体が選定された。
事業者構成
三井不動産・東急・京浜急行電鉄・ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社による共同事業体が事業予定者に決定している。
| 企業 | 業種 | 想定される役割 |
|---|---|---|
| 三井不動産(代表) | 総合不動産デベロッパー | 事業統括・施設開発 |
| 東急 | 鉄道・不動産・生活サービス | まちづくり連携 |
| 京浜急行電鉄 | 鉄道・沿線開発 | 交通アクセス連携 |
| DeNA | IT・エンタメ | デジタル技術活用 |
この事業者構成は、山下公園の「飲食主導型」とは大きく異なる。三井不動産・東急・京急という不動産・鉄道大手3社が中核を担い、DeNAのデジタル技術が加わる構成は、公園単体のリニューアルではなく周辺都市再開発と連動した公園活用を想定したものだ。
横浜動物の森公園(フォレストアドベンチャー)
フォレストアドベンチャーによるアウトドア型Park-PFI
アウトドアレジャー型Park-PFI
横浜動物の森公園(ズーラシア隣接)の未整備区域において、2018年11月からPark-PFIを活用したアスレチック施設・キャンプ体験施設の公募設置が行われた。
フォレストアドベンチャーエリアが2019年9月14日に開業し、続いてトレイルアドベンチャーエリアが2020年2月29日に開業した。
この事例の特徴は「自然環境をそのまま活かす」設計にある。森林内にアスレチックコースを設置する手法は、大規模な建築物を必要とせず、公園の自然環境を損なわない。収益施設と環境保全を高いレベルで両立したモデルとして評価されている。
大都市型Park-PFIの課題と教訓
景観規制・民業圧迫・住民合意という3つの特有課題
横浜市の3事例から、大都市特有のPark-PFI課題が見える。
課題1: 景観規制との両立
山下公園のような歴史的公園では、建物のデザイン・高さ・素材について通常のPark-PFIより厳しい制約がかかる。景観計画との事前調整が事業成立の前提条件となる。
課題2: 周辺民間事業者との競合(民業圧迫)
横浜市内の主要公園周辺には既存の飲食店・商業施設が充実しており、公園内に収益施設を設置すると「民業圧迫」の批判を受けるリスクがある。公募条件で業態を差別化する設計(既存店舗と競合しない業態に限定する等)が必要だ。
課題3: 住民合意の形成
横浜市の公園は市民の日常利用が多く、「静かな公園を守りたい」という市民の声は根強い。Park-PFI導入前のサウンディング調査と住民説明会を丁寧に実施し、市民の理解を得るプロセスが不可欠である。
→ サウンディング調査の進め方については、Park-PFIのサウンディングを参照されたい。
神奈川県のPark-PFI
横浜・横須賀・真鶴の事例比較と県全体の動向
Park-PFI最新事例・統計【2026年版】
全国203公園の統計・制度改正の動向
Park-PFI完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続きを網羅的に解説
次にやること
Park-PFIの導入を検討する際は、公園の条件と利用状況、民間事業者の意向を確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 公園の敷地面積と既存施設の建築面積を確認する。休養施設や運動施設を含め、建蔽率の現況を把握する | 公園担当 |
| 2 | 条例で定める建蔽率と適用できる特例を確認する。既存施設の建築面積と照合し、新たな施設を設けられるかを判断する | 公園担当 |
| 3 | 来園者数と利用状況を調べる。平日・休日や季節による違いを確認し、需要の見込みを検討する | 現地調査、既存の調査資料 |
| 4 | 条件の近い公園の使用料の実績を確認する。面積や立地、施設の用途などの違いも比較する | 先行自治体、公表資料 |
| 5 | 調査結果と活用方針を示して民間事業者の意見を聞く。参入意向と、事業が成立するために必要な条件を確認する | サウンディング |
新たな施設を設けられるかどうかは、既存施設の建築面積と条例の規定を確認して判断する。増築の余地がない場合も、既存施設の活用や別の事業手法を含めて検討する。
この建蔽率の上乗せは、休養施設等と公募対象公園施設のそれぞれに10%が付くのではなく、両方あわせて10%である。既に休養施設や運動施設で12%に達している公園では、公募対象公園施設として便益施設を新たに設置することはできない。この10%も通常の2%も法令上参酌すべき割合で、実際の割合は各地方公共団体が条例で定める。