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ARTICLE · 公共施設マネジメント

国交省 優先的検討規程 の構造解説:10億円閾値 / 8 手法 / 3段階検討 / 別表 4 事業

国土交通省 優先的検討規程(平成29年4月1日施行)の構造を解説する。対象事業の閾値(建設製造改修10億円以上 / 運営のみ1億円以上)、対象 PPP/PFI 手法8種、検討3段階(採用手法選択 → 簡易検討 → 詳細検討)、評価結果公表ルール、別表 4 事業類型、自治体への波及(内閣府指針)まで網羅する。

この記事の要点

  • 優先的検討規程は国交省が公共施設整備事業について PPP/PFI 手法導入の適否を従来型手法に優先して検討する手続を定めた規程
  • 対象事業の閾値は建設製造改修を含む整備事業で総額10億円以上、運営のみで単年度1億円以上
  • 検討は3段階(採用手法選択、簡易検討、詳細検討)で進み、評価結果はインターネット公表が義務
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • 各省庁の公共施設整備事業担当者
  • 自治体の PPP/PFI 担当・公共施設等総合管理計画策定担当
  • 民間事業者で各事業が優先的検討対象になるかを判断したい者
  • PPP/PFI 制度の全体像を体系的に押さえたい民間コンサル
この記事の内容

優先的検討規程とは何か

国土交通省 優先的検討規程は、国土交通省が自ら実施する公共施設整備事業について、多様な PPP/PFI 手法の導入が適切かどうかを、自ら公共施設等の整備等を行う従来型手法に優先して検討することを定めた規程である。平成29年4月1日に施行された。

優先的検討の対象。建設等を含む事業費総額10億円以上、運営等のみで単年度1億円以上。基準未満でもスモールコンセッションを推進する事業を含めて対象にできる。
基準に届かなくても、広域化や分野横断で届く可能性があるなら対象にできる出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」

規程の目的は次の5つに整理されている。

  1. 新たな事業機会の創出
  2. 民間投資の喚起
  3. 効率的かつ効果的な社会資本整備
  4. 国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供
  5. 国民経済及び地域経済の健全な発展

この規程は国交省単独のものではなく、内閣府が平成27年12月に示した「多様な PPP/PFI 手法導入を優先的に検討するための指針」を受けた省庁規程の代表例。同様の規程は他省庁および自治体にも波及している。

対象 PPP/PFI 手法8種類

規程の対象とする PPP/PFI 手法は3区分・計8種類。

区分手法
民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法公共施設等運営権方式 / 包括的民間委託 / O 方式(運営等 Operate)
民間事業者が公共施設等の設計、建設又は製造及び運営等を担う手法BTO 方式 / BOT 方式 / BOO 方式 / DBO 方式 / RO 方式
民間事業者が公共施設等の設計及び建設又は製造を担う手法BT 方式 / 民間建設借上方式

PFI 法に基づく PFI 事業の事業方式(BTO / BOT / BOO / RO)に加え、公共施設等運営権(コンセッション)方式や包括的民間委託、DBO(Design-Build-Operate)も含まれている点が特徴。

対象事業の閾値と別表

対象事業の 2 閾値

事業の種類閾値
建設、製造又は改修を含む公共施設整備事業事業費総額10億円以上
運営等のみを行う公共施設整備事業単年度の事業費1億円以上

つまり、建設を伴うが10億円未満の事業や、運営のみで単年度1億円未満の事業は規程対象外となる。これらは別途、自治体の独自規程や個別判断で検討する位置付け。

適用除外

次の事業は規程対象から除かれる。

  1. PPP/PFI 手法導入が前提とされている事業(市場化テスト法に基づく既定の事業)
  2. 民間事業者が実施することが法的に制限されている事業
  3. 現に PPP/PFI 手法の導入を前提とした検討がされている事業
  4. 災害復旧事業その他緊急に実施する必要がある事業

別表の 4 事業類型と検討開始時期

対象事業検討開始時期
官庁営繕事業新規採択時評価実施前
官庁施設運営等事業新規採択時評価実施前又は既存契約終了時の 2年前
国営公園収益施設設置管理事業収益施設の新設又は改修に係る計画検討段階
国管理空港運営等事業適用除外(既に運営権方式の検討を実施)

国営公園収益施設設置管理事業は Park-PFI の起点となる事業類型。Park-PFI を検討する際の上位規程として本規程が機能している。

検討3段階の流れ

優先的検討は次の3段階で進む。

1. 採用手法の選択

事業の期間、特性、規模等を踏まえ、最も適切な PPP/PFI 手法(「採用手法」)を選択する。唯一の手法を選択することが困難なときは、複数の手法を選択できる。事業の品質確保にも留意する設計。

2. 簡易な検討

採用手法と従来型手法を比較し、PPP/PFI 手法の導入の適否を評価する段階。2つの評価方法が用意されている。

方法 A:費用総額の比較による評価(VFM 簡易算定モデル使用)

VFM 簡易算定モデルにより、次の6項目の費用総額(現在価値)を従来型と採用手法で比較する。

  1. 公共施設等の整備等の費用(運営等を除く)
  2. 公共施設等の運営等の費用
  3. 民間事業者の適正な利益及び配当
  4. 調査に要する費用
  5. 資金調達に要する費用
  6. 利用料金収入

複数の手法を選択した場合は、各々の手法について費用総額を算定し、最も低いものと従来型手法の費用総額を比較する。

方法 B:その他の方法による評価

採用手法の過去の実績が乏しいこと等により費用総額の比較が困難と認めるときは、次の方法で評価できる。

  1. 民間事業者への意見聴取を踏まえた評価
  2. 類似事例の調査を踏まえた評価

公的負担の抑制につながることを客観的に評価することが要件となる。

3. 簡易検討の省略ケース

次の場合は簡易検討を省略し、5 の詳細な検討に直接進める。

  1. 事業が施設整備業務の比重の大きいもの、又は運営等の業務内容が定型的なものに該当する場合における BTO 方式
  2. 民間事業者から PPP/PFI に関する提案があり、当該提案において従来型手法と採用手法の費用総額の比較等の客観的な評価で採用手法の導入が適切とされている場合における当該採用手法

4. 詳細な検討

簡易検討で採用手法の導入に適しないと評価された事業(簡易検討対象事業以外)について、専門的な外部コンサルタントを活用し、要求水準やリスク分担の検討を行ったうえで、詳細な費用比較を行う段階。

評価結果の公表ルール

優先的検討の評価結果は、入札手続の終了後等適切な時期にインターネット上で公表することが義務付けられている。

簡易検討の結果公表

費用総額比較の結果

PPP/PFI 手法の導入に適しないと評価した場合は次の2項目を公表する。

  1. PPP/PFI 手法を導入しないこととした旨
  2. 別紙の内容(PPP/PFI 手法簡易定量評価調書、整備等費用 / 運営等費用 / 利用料金収入 / 資金調達費用 / 調査等費用 / 税金 / 税引後損益 / 合計 / 合計(現在価値)/ 財政支出削減率 / その他)

その他評価の結果

  1. PPP/PFI 手法を導入しないこととした旨
  2. 客観的な評価結果の内容

詳細検討の結果公表

  1. PPP/PFI 手法を導入しないこととした旨
  2. 別紙の内容

公表により、PPP/PFI 手法を見送る判断の透明性を確保し、後続の事業者・住民の検証可能性を担保する設計となっている。

別紙:PPP/PFI 手法簡易定量評価調書の構造

評価結果公表時に添付する「PPP/PFI 手法簡易定量評価調書」は、従来型手法と採用手法を縦に並べた比較表の形式。

項目従来型手法採用手法
候補となる PPP/PFI 手法-採用候補
整備等(運営等を除く)費用算出根拠算出根拠
運営等費用算出根拠算出根拠
利用料金収入算出根拠算出根拠
資金調達費用算出根拠算出根拠
調査等費用算出根拠算出根拠
税金算出根拠算出根拠
税引後損益算出根拠算出根拠
合計集計集計
合計(現在価値)集計集計
財政支出削減率-算出
その他--

算出根拠の記載が必須。VFM 簡易算定モデル の出力 がこの調書の数値根拠となる。

自治体への波及

ここから先の単価と金額は、この記事が置いた前提である。公表された統計ではない。施設の状態・地域・業態で大きく変わるので、自分の案件では見積書と近隣の実績に置き換えて使う。

本規程は国土交通省内部の規程である一方、内閣府指針(平成27年12月)は地方公共団体に対しても同様の優先的検討規程の整備を促している。

人口20万人以上の自治体は、規程整備又は同等の判断基準の策定が求められた。多くの自治体が本国交省規程を参考にして自治体規程を策定している実態がある。

実務上は、自治体担当者は自治体独自の優先的検討規程を確認しつつ、本国交省規程を上位リファレンスとして参照する形が一般的。

実務での使い方

自治体担当者

公共施設等総合管理計画又は個別施設計画の中で、PPP/PFI 導入候補施設を整理する際の判断フレームとして使う。

  1. 候補施設の事業費総額を概算(建設改修10億円閾値、運営1億円閾値で対象判定)
  2. 別表 4 事業類型のうち該当するものを確認
  3. 候補となる PPP/PFI 手法8種から事業特性に合うものを選択
  4. VFM 簡易算定モデル で簡易検討
  5. 結果に応じて詳細検討(外部コンサル)又は PPP/PFI 不採用の判断

民間事業者

自治体の公共施設整備計画を見たとき、本規程に基づき PPP/PFI 検討が想定される事業を見極める。提案のタイミング(規程上、簡易検討前の段階での提案で省略可能)を狙うことで、後続の公募で有利になる可能性がある。

まとめ

国交省 優先的検討規程(平成29年4月1日施行)は、公共施設整備事業について PPP/PFI 手法の導入を従来型手法に優先して検討する手続を定めた規程。対象事業の閾値は建設製造改修を含む整備事業で総額10億円以上、運営のみで単年度1億円以上。対象 PPP/PFI 手法は3区分8種類。

検討は3段階(採用手法選択、簡易検討、詳細検討)で進む。簡易検討は VFM 簡易算定モデル による費用総額比較が原則で、過去実績が乏しい場合は民間意見聴取と類似事例調査で代替する。評価結果はインターネット公表が義務。

別表 4 事業類型(官庁営繕、官庁施設運営等、国営公園収益施設、国管理空港)ごとに検討開始時期が定められている。自治体は内閣府指針を受けて自治体独自の優先的検討規程を整備しており、本規程を上位リファレンスとして参照する形となっている。

次にやること

この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。

順やることどこで目安
1対象施設の事業費規模を出す。建設等を含めて10億円以上か、運営のみで年1億円以上かで優先的検討の対象が変わる予算担当半日
2自団体の優先的検討規程があるかを確かめる。無ければ内閣府の指針を見て整備する企画担当1週間
3施設で利用料金を取っているか/取れるかを分ける。取れるなら運営権の設定が視野に入る各所管課1週間
41〜3で手法の候補を絞る。都市公園なら Park-PFI、公園以外の遊休施設ならスモールコンセッション部内の意思決定-
5最初の1件を決めてサウンディングを打つ。全施設を同時に進めない民間事業者2〜3か月

1は半日でできる。基準に届くかどうかで、そもそも検討が義務になるかが変わる。


関連資料

参考文献

多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)/内閣府 民間資金等活用事業推進会議 (2025)

PPP/PFI手法導入優先的検討規程 運用の手引/内閣府 民間資金等活用事業推進室 (2017)

国土交通省優先的検討規程/国土交通省 (2017)

手引き|PPP/PFI(官民連携)/国土交通省 (2026)

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