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ARTICLE · 公共施設マネジメント

サウンディング型市場調査の実施手順:国交省手引きから読む6段階の進め方と留意点

国土交通省『地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き』(平成30年6月作成・令和元年10月更新)を構造化解説。事業発案から事業者選定までの間にあるサウンディングの目的、把握できる5項目、実施6段階の流れと各段階の留意点、知的財産保護の論点、結果公表時の確認手順までを網羅する。

この記事の要点

  • サウンディングは民間事業者との対話を通じて市場性 / アイデア / 課題 / 参入意欲 / 公募条件 を把握する手法
  • 事業発案と事業者選定の間にある「事業化検討段階」に置く
  • 6段階の流れ(実施要領公表、現地見学会、申込受付、提案書提出、対話実施、結果公表)で進める
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • これから初めてサウンディングを実施する自治体担当者
  • サウンディングに参加する民間事業者
  • スモールコンセッション / Park-PFI / 廃校活用で公募準備段階の自治体担当者
  • 公共施設の利活用方針を検討中の自治体施設管理課・財政課職員
この記事の内容

なぜサウンディング型市場調査が重要か

公共施設の利活用や PPP/PFI 事業の公募を進める際、「公募してみたが応募がゼロだった」「想定と違う提案ばかりだった」という事態は珍しくない。原因の多くは自治体側の事前情報収集不足にある。民間事業者の参入意欲や市場性は、行政内部の検討だけでは把握しきれない。

優先的検討の対象。建設等を含む事業費総額10億円以上、運営等のみで単年度1億円以上。基準未満でもスモールコンセッションを推進する事業を含めて対象にできる。
基準に届かなくても、広域化や分野横断で届く可能性があるなら対象にできる出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」

サウンディング型市場調査は、事業発案後・公募前の段階で、民間事業者との対話を通じて事業に対する様々なアイデアや意見を把握する手法を指す。国土交通省は『地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き』(平成30年6月作成・令和元年10月更新)を公表している。手引きには実施要領、エントリーシート、対話結果公表資料の3種のひな形が添付されている。

本記事では手引きの構造を整理し、初めて実施する自治体担当者が押さえるべき要点をまとめる。

サウンディングの位置付け

事業ライフサイクルの中でサウンディングは次の位置に置く。

事業発案 → 事業化検討(← サウンディング = 民間事業者との対話)→ 事業者選定 → 事業実施

事業化を本格的に進めるかどうか、公募条件をどう設計するかを判断するための事前情報収集の段階に当たる。事業者選定(公募と審査)の前段階であり、サウンディング参加が公募応募の前提や有利不利になるものではない点が重要となる。

サウンディングで把握できる5項目

手引きが整理する把握対象は5つある。

  1. 市場性の有無や実現可能性。民間が事業として成り立たせられるか
  2. アイデアの収集。想定外の活用方法、収益源、連携先の発見
  3. 行政だけでは気付きにくい課題。法令、運用、現場感の盲点
  4. 民間事業者の参入意欲。何社程度が興味を示すか、応募見込み
  5. 民間事業者が参入しやすい公募条件。期間、リスク分担、評価項目、インセンティブ

これらを公募要件設計に反映することで、応募ゼロや不適合提案の発生を抑制する効果が見込める。

実施6段階の流れ

サウンディングは原則として以下の6段階で進める。手引きにひな形が添付されているのは「実施要領」「エントリーシート」「対話結果公表資料」の3種。

1. 実施要領の作成・公表

民間事業者がサウンディングに参加する判断材料となる重要文書。手引き本文では次の7項目をポイントとして挙げる。概要資料では一部を統合して6項目表記にしているが、本文の整理に従い7項目で把握する。

  1. ホームページ等で公表し広く周知する。記者発表、広報誌、業界紙、SNS など多経路で展開
  2. 解決すべき事項や民間事業者から意見を求めたい事項を明記する。「広く意見を求める」だけでは民間事業者が準備できない
  3. 民間事業者の負担を軽減する。無償参加が前提のため、資料作成や詳細検討の要求は最小限にとどめる
  4. 適切なインセンティブを個別に検討する。優秀な提案への公募時加点、随意契約の可能性など直接的効果も含め検討
  5. 十分な情報提供や事前相談への対応。現地見学会の開催や補足資料の開示も有効
  6. 庁内における情報共有・合意形成に留意する。対象事業が複数の所管課にまたがる場合は連携体制の構築が必要
  7. 公平性・透明性に留意する。特定の民間事業者との関係性が利害関係の疑念を招かないよう手順を設計する

2. 現地見学会・説明会等の開催

実施要領を読んだだけでは把握できない情報を民間事業者に共有する場として開催する。より実情に即した提案を求めるために有効で、必要に応じて開催する位置付け。簡易なサウンディングでは省略するケースもある。

3. 対話の申込・受付

エントリーシートで対話希望者を募集する。ひな形に従い、最低限の事業者情報と対話希望日時を記入してもらう形式。受付後、日程調整して日時と会場を連絡する。

4. 提案書等の提出

必要に応じて提案書の提出を求める。簡易な対話の場合は不要なケースもある。民間事業者の負担軽減に留意することが手引きの方針。フォーマット指定の柔軟性と提出期限の余裕が要点となる。

5. サウンディングの実施

民間事業者との対話本番。1 グループあたり30分〜1時間程度が一般的とされる(手引き本文・ひな形共に同じ記載)。民間事業者のアイデアやノウハウを保護するため、個別に実施することが一般的。庁舎のほか、利活用対象施設等で実施される場合もある。

6. 結果の公表

サウンディング結果を整理し、自治体ホームページで公表する。手順は次の通り。

  1. 対話結果の概要を作成し、ホームページで公表する
  2. 参加事業者の事前確認を必ず取る。公表内容に提案者の独自ノウハウが含まれていないか、事業者ごとに確認する
  3. その後の検討において、個別に追加質問も有効。公表とは別に、特定論点を深掘りする追加対話の余地を残す

知的財産保護の論点

サウンディングで注意が必要なのは知的財産の取り扱い。手引きが示す保護観点を押さえる必要がある。

民間事業者からの提案内容や独自ノウハウをそのまま公表すると、提案者の事業計画や事業手法等が流出し、参加意欲を低下させる可能性がある。また、参加した民間事業者の名称を公表すると、当該事業者の関心が外部に知られ、他の事業者の参入意欲に影響することもある。

このため、手引きは次の対応を求める。提案内容の詳細は非公開とし、公表に際しては各参加事業者に対して公表の可否を事前確認する。結果公表資料には参加者数(業種別)を示すが、個社名は公表しない。後続の公募に際しては、サウンディングで得た検討結果をもとに、民間事業者のノウハウを引き出せる公募条件を設定することが求められる。

庁内合意形成の落とし穴

実施要領作成時の留意点に「庁内における情報共有・合意形成に留意」とあるが、ここを軽視すると後工程で頓挫する。

典型的な失敗パターンが3つある。

  1. 担当課がサウンディングを進めたが、財政課が事業化に難色を示す
  2. 施設管理課のサウンディング結果が、議会への事業計画提案時に承認されない
  3. 部局横断(例:公共施設マネジメント担当、公園緑地担当、福祉部門)の連携不足で、提案者からの「複合的活用」アイデアが受け止められない

事前に庁内の関連部署を巻き込み、サウンディング実施前から段階的に情報共有しておく設計が必要となる。

サウンディング参加者(民間事業者)の視点

民間事業者がサウンディングに参加するメリットは4つ。

  1. 公募前に自治体側の検討状況と条件を把握できる
  2. 公募条件の設計に影響を与えられる
  3. 自治体担当者との関係構築(人物把握)が可能
  4. 後続の公募で「サウンディング参加実績」を加点要件とする自治体もある

参加時の留意点は3つ。

  1. 自社の独自ノウハウは抽象化レベルで提示し、本格的な提案は公募段階で出す
  2. 「サウンディング = 受託確約」ではないことを理解する
  3. 自治体担当者の知識レベルに応じて説明粒度を調整する。専門用語の押し付けは逆効果

まとめ

サウンディング型市場調査は、事業発案後・公募前の段階で民間事業者との対話を通じて、市場性、アイデア、課題、参入意欲、公募条件 を把握する手法を指す。事業ライフサイクルの「事業化検討段階」に位置し、公募ゼロや不適合提案の発生を抑制する。

実施は6段階(実施要領作成、現地見学会、申込受付、提案書提出、対話実施、結果公表)で進める。実施要領は7項目(周知、求める意見の明示、民間負担軽減、インセンティブ、情報提供・事前相談、庁内合意、公平性)を押さえて作成する。

知的財産保護と結果公表時の事前確認、庁内合意形成を設計に組み込めば、サウンディング後の事業化フェーズに繋がりやすくなる。

次にやること

この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。

順やることどこで目安
1対象施設の事業費規模を出す。建設等を含めて10億円以上か、運営のみで年1億円以上かで優先的検討の対象が変わる予算担当半日
2自団体の優先的検討規程があるかを確かめる。無ければ内閣府の指針を見て整備する企画担当1週間
3施設で利用料金を取っているか/取れるかを分ける。取れるなら運営権の設定が視野に入る各所管課1週間
41〜3で手法の候補を絞る。都市公園なら Park-PFI、公園以外の遊休施設ならスモールコンセッション部内の意思決定-
5最初の1件を決めてサウンディングを打つ。全施設を同時に進めない民間事業者2〜3か月

1は半日でできる。基準に届くかどうかで、そもそも検討が義務になるかが変わる。


関連資料

参考文献

地方公共団体のサウンディング型市場調査の手引き(本文)/国土交通省 (2019)

同 概要/国土交通省 (2019)

手引き|PPP/PFI(官民連携)/国土交通省 (2026)

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