地域プラットフォームとは何か
国土交通省は、地方公共団体で官民対話(サウンディング等)を行うケースが増加していると書いている。同省自身も令和元年度に全国6会場で71団体の84件の案件について民間事業者と対話した。国はこのほか、マニュアルの作成、地域プラットフォームでのサウンディング等の企画・運営、市町村長との意見交換会に取り組んできた。
国土交通省は令和2年(2020年)1月、これらの活動を通じて得られた示唆をとりまとめ、地方公共団体や民間事業者が官民対話に取り組む際の参考資料として『地域プラットフォームの取組から得られた円滑な官民対話のポイント』を公表した。
本記事では概要資料の構造を整理し、9つの示唆をまとめる。資料は地方公共団体への示唆を6つ、民間事業者への示唆を3つ挙げている。「民間事業者の意見を引き出す工夫」には、事前の基本的な情報整備・意見を引き出すきっかけづくり・スケジュール等の提示・行政の本気度の提示の4つが並ぶ。
3ヵ年の取組実績
ブロック方式サウンディングの実績
平成29年度(2017年)から「オープン方式」によるサウンディングを実施。令和元年度(2019年)は全国 6 会場で71団体84件の案件について、民間事業者と対話した実績がある。
ブロックプラットフォームサウンディングの流れは次の3段階。
- 地方公共団体等に対し、サウンディングを行いたい案件を募集
- 応募案件を公表し、助言等を行う民間事業者を募集
- 1 案件ごとに、地方公共団体と当該案件に助言する民間事業者が一同に会し、意見交換(オープン方式サウンディング)
民間提案イベントの実施
平成31年2月8日、地方公共団体と民間事業者による対話型イベント『公共空間活用作戦会議』を開催。公募によって選定された6社が、地方公共団体に向けて自社の事業についてプレゼンテーションを実施。
参加6社と提案内容:
| 提案事業者 | 提案内容 |
|---|---|
| 株式会社 R.project | 都市公園や遊休地を活用したキャンプ事業 |
| 認定 NPO 法人 芸術と遊び創造協議会 | 姉妹おもちゃ美術館の創設 |
| 株式会社 スノーピーク | 公園や遊休地、キャンプ場などで公共空間のにぎわい創出・活用 |
| u.company inc 株式会社 | 地域社会の産業を活性化させるホテル事業 |
| 株式会社 リビタ | 地域の活動拠点を内包したシェア型複合ホテル |
| YMS コンソーシアム(三井住友建設 / ムラサキスポーツ / 矢野研究所) | 公共空間を活用した X スポーツ施設 |
民間事業者が自社事業を地方公共団体に直接提案する場として機能した。
自治体への 6 示唆
国土交通省は自治体に対し、官民対話時2項目と通常業務時4項目の計6 示唆を整理している。
官民対話に向けた示唆
① 民間事業者に聞きたい事項を明確にする
官民対話を通じて案件形成の手がかりを得るためには、民間事業者に聞きたい事項を明確化する必要がある。「広く意見を求める」だけでは民間事業者も準備できない。
② 民間の意見を引き出す4つのポイント
民間事業者から有効な意見を引き出すために、次の4点を押さえる。
- 事前の基本的な情報整理
- 意見を引き出すきっかけづくり
- スケジュール等の提示
- 行政の本気度の提示
参考として、民間事業者が官民対話に求める基本情報は次の通り。
- 地方公共団体の基本方針、事業目的
- 施設の過去 3年程度の収支情報
- 施設の交通アクセスや立地状況
- 施設に存在する法的制約
- 施設の諸元(築年数、規模、面積、耐震性等)
- これまでの検討経緯、スケジュール
- 庁内、議会、地域住民、関係機関との合意形成状況 等
これらを事前に整理して提示できる体制が、有効な対話の前提条件となる。
通常の業務にあたって官民対話につながる取組
③ アンテナを高くする
民間事業者とのつながりを大切にするとともに、他の地域で行われている官民連携の事例研究が大事となる。日常的な情報収集が官民対話の質を左右する。
④ 継続的な官民対話の実施
案件の熟度に応じて、官民対話を行う機会を積極的に設けることが必要。サウンディングは単発のイベントではなく、案件熟度に応じた段階的な対話の連続として設計する。
⑤ 情報の発信方法の工夫
多様化する情報リソースを活用した情報発信の検討が必要となる。ホームページ単独ではなく、業界誌、関連団体、SNS、関連自治体ネットワーク等の多経路展開が望まれる。
⑥ 地域プラットフォームの形成
地域プラットフォームでは、案件が安定的に提起されやすくなり、官民対話が継続的に行われた地域に定着していくことが期待される。地域単位での継続枠組み構築が示唆として位置付けられている。
民間事業者への 3 示唆
① 行政からの行動を待つことなくアピールする
官民対話で民間事業者がもつ事例の発想やアイデアをとりいれたいという希望はあるが、それらの引き出し方がわからない地方自治体に対して、民間事業者は自社のノウハウをアピールするような機会をもつことが大事となる。
民間事業者は受け身ではなく、自社事業の特徴・実績・他地域での成功事例を能動的に発信することが期待される。
② 地方公共団体における行政プロセスへの理解
地方公共団体が事業を行う上では、事業化までの合意形成など一定のプロセスがある。どのような検討プロセスを経なければならないのか、スケジュール感はどのようなものなのかを知っておくことが重要となる。
民間事業者の提案タイミングは、自治体の意思決定プロセスに合わせて設計する必要がある。
③ 継続的なノウハウの習得と事例研究
地方公共団体の希望に応えるような提案ができるように、継続的な情報収集や事例研究が重要。一度のサウンディング参加で終わらせず、他地域・他事業の動向を継続的に追う姿勢が求められる。
検討プロセスの全体像
概要資料に示された検討プロセスは、構想検討(約1年)→ 基本計画策定(6 ヵ月から 1年)→ 公募要項検討(約6 ヵ月)→ 公募開始(3 から 6 ヵ月)→ 事業者決定・契約(2 から 3 ヵ月)→ 事業実施、という流れ。
サウンディング型市場調査は事業手法検討の段階で行うのが標準。民間事業者は提案タイミングをこの全体像の中に位置付けて準備する。
実務での使い方
自治体担当者
サウンディング実施の事前準備として、本概要資料の自治体向け 6 示唆をチェックリストとして使う。
- 民間事業者に聞きたい事項のリスト化
- 民間の意見を引き出す4ポイント(事前情報整理 / きっかけ / スケジュール / 本気度)の準備状況確認
- 通常業務でサウンディングにつながる 4 取組(アンテナ / 継続的対話 / 情報発信 / 地域プラットフォーム)の運営状況確認
民間事業者
自社の提案アプローチを設計する際、民間事業者向け 3 示唆を起点にする。
- 行政待ちではなく能動的アピールの場(自治体個別訪問、業界イベント、地域プラットフォーム参加)を設ける
- 提案先自治体の行政プロセス・スケジュール感を事前リサーチ
- 他地域の成功事例・失敗事例の継続研究
まとめ
地域プラットフォームは官民対話を継続的に行うための地域単位の連携体として国交省が推進してきた取組。平成29年度から3ヵ年、令和元年度はオープン方式サウンディングで全国 6 会場71団体84件案件、民間事業者と対話する実績を積んできた。
これらから得られた示唆は、自治体向け6項目(民間に聞きたい事項の明確化 / 意見引き出す4ポイント / アンテナ / 継続対話 / 情報発信 / 地域プラットフォーム)と民間事業者向け3項目(能動的アピール / 行政プロセス理解 / 継続的事例研究)の計9つ。
サウンディングを単発のイベントとして終わらせず、地域単位の継続的な官民対話の枠組みとして設計することが、PPP/PFI 導入の成功確率を高めるとされている。
次にやること
この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。
| 順 | やること | どこで | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 対象施設の事業費規模を出す。建設等を含めて10億円以上か、運営のみで年1億円以上かで優先的検討の対象が変わる | 予算担当 | 半日 |
| 2 | 自団体の優先的検討規程があるかを確かめる。無ければ内閣府の指針を見て整備する | 企画担当 | 1週間 |
| 3 | 施設で利用料金を取っているか/取れるかを分ける。取れるなら運営権の設定が視野に入る | 各所管課 | 1週間 |
| 4 | 1〜3で手法の候補を絞る。都市公園なら Park-PFI、公園以外の遊休施設ならスモールコンセッション | 部内の意思決定 | - |
| 5 | 最初の1件を決めてサウンディングを打つ。全施設を同時に進めない | 民間事業者 | 2〜3か月 |
1は半日でできる。基準に届くかどうかで、そもそも検討が義務になるかが変わる。
関連資料
- 一次情報アーカイブ:国土交通省 PPP/PFI 手引き類 (令和2年1月更新版)
- 関連手引き:地域プラットフォームの取組から得られた円滑な官民対話のポイントは同アーカイブの 05 番文書
- 関連記事:サウンディング型市場調査の実施手順 / 国交省 優先的検討規程 の構造解説