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ARTICLE · 公共施設マネジメント

専門家派遣ハンズオン支援5年間の到達点:自治体職員自らで事業化できる範囲を整理した国交省 2025年4月資料

国土交通省総合政策局が令和3年10月に作成し令和7年(2025年)4月に更新の『専門家派遣によるハンズオン支援から得られた官民連携事業の具体化のポイント』を構造化解説。令和元年度から令和5年度までの26自治体支援実績、難易度4段階による職員自立度の区分、官民連携事業化の3段階手続フロー、自治体規模20万人未満を対象とした支援設計の意図までを網羅する。

この記事の要点

  • ハンズオン支援は人口20万人未満の市町村に専門家を派遣し、職員自らが事業化手続きを進められるよう伴走する国交省事業
  • 令和元年度から令和6年度まで26自治体を支援、得られた知見を他自治体に横展開する目的で本資料が作成
  • 難易度4段階で職員自立度を整理、事業化手続は3段階(事業発案 / 事業条件検討 / 公募事業化)で進める
対象読者・読む前に確認したいこと

こんな方に

  • 人口20万人未満の市町村で PPP/PFI 担当となった自治体職員
  • 外部コンサル委託前に内部で何ができるかを判断したい自治体担当者
  • ハンズオン支援を受けた自治体の先行事例から学びたい民間事業者
  • 都道府県でハンズオン支援対象自治体への助言を行う担当
この記事の内容

ハンズオン支援とは何か

国土交通省は令和元年度(2019年)から令和6年度(2024年)まで、人口20万人未満の市町村を対象に「専門家派遣によるハンズオン支援」を実施してきた。専門家を市町村に派遣し、事業化に向けて必要な手続きを地方公共団体職員自らが行えるよう伴走する取組で、当該地方公共団体の案件形成を推進する一方、その成果を横展開することを目的としていた。

優先的検討の対象。建設等を含む事業費総額10億円以上、運営等のみで単年度1億円以上。基準未満でもスモールコンセッションを推進する事業を含めて対象にできる。
基準に届かなくても、広域化や分野横断で届く可能性があるなら対象にできる出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」

国土交通省総合政策局は 2025年4月、これらの取組から得られた知見をまとめ、『専門家派遣によるハンズオン支援から得られた官民連携事業の具体化のポイント』を公表した。地方公共団体職員が自主的・自立的に官民連携事業の事業化を図るためのノウハウ普及を目的としている。

本記事では資料の構造を整理し、実務での使い方をまとめる。

5年間の支援対象事業(26自治体)

ハンズオン支援を受けた自治体と事業は以下の通り(令和元年度から令和6年度の追加分含む)。

令和元年度(2019年度)

自治体対象事業
北海道 芽室町温水プール DBO(Design-Build-Operate)事業
茨城県 下妻市公共施設の集約化・複合化事業
埼玉県 毛呂山町毛呂山総合公園における官民連携事業
愛知県 豊明市都市公園及び市営墓地の包括管理等事業

令和2年度(2020年度)

自治体対象事業
宮城県 登米市道の駅における官民連携事業
岡山県 赤磐市県営住宅跡地への民間住宅整備事業
山口県 宇部市都市公園再整備・運営事業
福岡県 宗像市都市公園における官民連携事業
熊本県 玉名市旧庁舎跡地等への公共施設集約再編事業

令和3年度(2021年度)

自治体対象事業
福島県 会津若松市公共駐車場整備・運営及び駅前広場活性化
山口県 宇部市都市公園再整備・運営事業
沖縄県 北谷町公共施設複合化及び遊休地利活用事業
東京都 小金井市小金井市花畑公園構想に関するサウンディング調査事業
大阪府 泉大津市アビリティタウン拠点整備事業
兵庫県 高砂市高砂市向島公園エリア一体活用事業

令和4年度(2022年度)

自治体対象事業
北海道 恵庭市市営住宅柏陽・恵央団地建替事業
岩手県 一戸町道の駅設計建設運営に係る DBO 方式の導入事業
愛知県 愛西市道の駅周辺整備事業 / 道の駅再整備事業
大阪府 河内長野市都市公園等における民間活力導入事業

令和5年度(2023年度)

自治体対象事業
千葉県 君津市君津市内みのわ運動公園民間活力導入事業
静岡県 掛川市掛川市 22 世紀の丘公園たまり〜な屋内遊び場等整備事業
愛知県 安城市民間事業者『多目的交流拠点』の建設運営に向けた PPP 事業
大阪府 岸和田市岸和田市中央公園における全天候型プール整備事業

令和6年度(2024年度)

自治体対象事業
岩手県 奥州市公営住宅建替え官民連携形成調査
愛媛県 松前町松前町社会教育施設リニューアル整備事業

道の駅 / 都市公園 / 公営住宅 / 公共施設集約 / プール / 駐車場 / 駅前広場 等、地方都市の公共資産活用の典型例が並ぶ。Park-PFI / DBO / 公的住宅 / スモールコンセッション 等の手法が混在し、ハンズオン支援が幅広い類型に対応してきたことが分かる。

事業種別の難易度4段階

ハンズオン支援の成果として、官民連携事業を難易度4段階で整理されている。難易度の判定軸は『専門家の関与必要性』と『調整すべきステークホルダーの範囲』。

難易度 1:既存公共施設の運営 + α(民間提案要素)

主な検討事項:

  • 仕様発注の性能発注化
  • 小規模リニューアル提案
  • 施設を活用した収益事業の実施、イベント実施

専門家の関与必要性:小規模事業であれば、アドバイザーの関与なしに職員のみで事業化することも可能。

調整すべきステークホルダー:既存の利用者、利用団体、既存の管理運営に係る事業者等。

難易度 2:公有地活用

主な検討事項:

  • 活用にあたっての制約検討
  • 活用条件(借地料、借地期間、権原(定借等))の検討
  • 収益事業と公益的要素のバランス検討

専門家の関与必要性:基本計画等を詳細に実施することで省力化、職員のみの事業化もありうる。

調整すべきステークホルダー:近隣住民、隣接地権者等、同種事業を展開する地元企業等。

難易度 3:DBO 方式 / DB 方式 / リース方式

主な検討事項:

  • 基本構想、基本計画等の検討・策定
  • 要求水準書の策定
  • 予定価格の積算

専門家の関与必要性:要求水準書の作成などに技術アドバイザーの関与が必要。

調整すべきステークホルダー:域内市民全体、建設会社等を含む地元企業・企業団体、整備予算等に係る庁内・議会調整等。

難易度 4:PFI 等

主な検討事項:

  • 事業契約書の検討・策定
  • 支払いスキーム(割賦払いやインセンティブスキーム)の検討
  • 収益事業の採算性検討(RO 方式・コンセッション方式)
  • 長期修繕計画の策定、修繕費用の積算
  • 施設のデューディリジェンスの実施、瑕疵担保に係るリスク分担

専門家の関与必要性:金融機関を含め、長期に安定した事業条件を事前に作りこむ必要があることから、事業化にあたっては財務・技術・法務アドバイザーが重要。

難易度を活用する考え方

官民連携事業の推進にあたっては、難易度が低く地方公共団体職員自らで実施可能なものから着手し、より難易度の高い官民連携手法の導入に備え、経験・ノウハウを積んでいくことが有効、とされている。

最初から PFI(難易度 4)に挑戦するのではなく、難易度1-2 から段階的に経験を積む経路が国交省の推奨。

官民連携事業化手続の3段階フロー

段階 1:事業発案段階

ステークホルダーなどの意見を勘案しつつ、民間との対話を通じて、事業化のパターンや導入による定性的な効果等を整理するフェーズ。

主な作業:

  1. 官民連携手法導入に期待する事項の整理と具体化(目的・前提の確認、庁内検討体制の構築、ステークホルダーへの意見聴取、機運の醸成、先行事例の調査・ヒアリング実施等)
  2. 事業発案段階サウンディング(実施準備、サウンディング実施、結果のとりまとめ)
  3. 事業化方針の検討

段階 2:事業条件検討段階

事業構想を実現するため、官民双方の観点から許容可能な事業条件を検討するフェーズ。

主な作業:

  1. 事業スキーム骨子案の作成
  2. 事業条件検討段階サウンディング(個別サウンディングの実施)
  3. スキームの決定・事業化判断(事業スキームの見直し、予定価格の整理、事業実施効果の把握)

段階 3:公募・事業化段階

事業条件検討段階で固めた事業化の条件を、具体的に公募関連資料などに落とし込み、特定の条件下でよりよい民間のノウハウ・アイデアを求めるフェーズ。

主な作業:

  1. 公募スケジュールの検討
  2. 公募等に必要となる各種資料の作成(募集要項、審査基準、要求水準、契約書案等)
  3. 質問回答の作成
  4. 審査委員会に要する資料の作成
  5. 契約締結にあたっての留意事項
  6. 庁内手続きにあたっての留意事項

最終的に事業者選定・事業着手に至る。

自治体規模20万人未満を対象とした設計意図

ハンズオン支援は人口20万人未満の市町村を対象としていた。これは、内閣府『多様な PPP/PFI 手法導入を優先的に検討するための指針』が当初(平成27年)に人口20万人以上の自治体へ優先的検討規程の整備を求めた閾値と対になっている。

ただしこの閾値はその後 2 度下がっている。令和3年6月の改定で人口10万人以上に、現行版では人口5万人以上の地方公共団体に求められている。ハンズオン支援の対象だった20万人未満の市町村の多くが、いまは規程の策定を求められる側にいる。

20万人未満の自治体は規程整備義務がない代わりに、PPP/PFI 担当人員も限られ、内部ノウハウも蓄積しにくい。専門家派遣ハンズオン支援は、この規模感の自治体の事業化を後押しすると同時に、職員に内部ノウハウを残す設計となっていた。

支援終了後も自治体内に事業化能力が残ることで、次の案件にも継続的に取り組める基盤づくりを目指している。

実務での使い方

自治体担当者

PPP/PFI 担当として案件に向き合うとき、まず難易度4段階のどこに該当するかを判定する。

  1. 既存施設の運営改善 + 民間提案要素のみ → 難易度 1、職員のみで進められる
  2. 公有地活用 → 難易度 2、規模次第で職員のみ可能
  3. DBO / DB / リース方式 → 難易度 3、技術アドバイザー必要
  4. PFI / コンセッション → 難易度 4、財務・技術・法務アドバイザー必須

次に手続3段階のどこに今いるかを把握。事業発案段階であれば、サウンディングの設計と庁内検討体制の構築から着手する。

民間事業者

ハンズオン支援対象自治体(人口20万人未満)は内部ノウハウが限られるため、民間事業者の提案・助言が事業化に大きく影響する。難易度判定と段階把握を共有することで、自治体担当者との対話の効率が上がる。

支援実績がある自治体(上記26自治体)は、ハンズオン支援を通じて職員側に一定の知識が蓄積している。提案時のコミュニケーション設計を、これらの自治体の理解度に合わせて調整できる。

まとめ

国土交通省 専門家派遣によるハンズオン支援は、令和元年度から令和6年度まで人口20万人未満の市町村26自治体を対象に、専門家を派遣して職員自らの手による事業化を後押ししてきた取組。総合政策局は 2025年4月、これらの知見を横展開するための資料を公表した。

事業種別ごとの難易度を4段階(既存運営 +α / 公有地活用 / DBO・DB・リース / PFI 等)で整理し、難易度1-2 は職員のみで、難易度3 は技術アドバイザー、難易度4 は財務・技術・法務アドバイザー必須としている。

官民連携事業化手続は3段階(事業発案 / 事業条件検討 / 公募事業化)で進む。難易度が低く職員自らで実施可能なものから着手し、経験を積んだ上で難易度の高い手法に進む経路が国交省の推奨となっている。

次にやること

この記事を読んだあと、その週のうちに動かせる順に並べる。

順やることどこで目安
1対象施設の事業費規模を出す。建設等を含めて10億円以上か、運営のみで年1億円以上かで優先的検討の対象が変わる予算担当半日
2自団体の優先的検討規程があるかを確かめる。無ければ内閣府の指針を見て整備する企画担当1週間
3施設で利用料金を取っているか/取れるかを分ける。取れるなら運営権の設定が視野に入る各所管課1週間
41〜3で手法の候補を絞る。都市公園なら Park-PFI、公園以外の遊休施設ならスモールコンセッション部内の意思決定-
5最初の1件を決めてサウンディングを打つ。全施設を同時に進めない民間事業者2〜3か月

1は半日でできる。基準に届くかどうかで、そもそも検討が義務になるかが変わる。


関連資料

この記事で使った統計の出典

  1. 1国土交通省「専門家派遣によるハンズオン支援」概要(2025年) 出典を開く
  2. 2内閣府 民間資金等活用事業推進会議「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」(2025年) 出典を開く

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訂正履歴

  1. :優先的検討規程の人口の閾値を「20万人以上」とだけ書いていましたが、その後 2 度引き下げられ、現行は5万人以上です。

    訂正前
    内閣府『多様な PPP/PFI 手法導入を優先的に検討するための指針』で、人口 20万人以上の自治体に優先的検討規程の整備が求められた閾値と整合する
    訂正後
    当初(平成27年)の20万人以上という閾値との対応であることを明記したうえで、令和3年6月に10万人以上、現行の令和7年改定版では5万人以上に引き下げられていることを追記

    誤った理由 内閣府「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(令和7年改定版)」に「公共施設等を管理する人口5万人以上の地方公共団体は…優先的検討規程を定め…ることが求められる」とあります。ハンズオン支援の対象だった20万人未満の市町村の多くが、現在は規程の策定を求められる側にいるため、この違いは実務に影響します。あわせて、ハンズオン支援が人口20万人未満を対象としていたことの出典(国交省の概要資料)も付けました。

  2. :ハンズオン支援の資料の年月を、公表と更新に分けました。

    訂正前
    国土交通省総合政策局が 2025年4月公表
    訂正後
    国土交通省総合政策局が令和3年10月に作成し令和7年(2025年)4月に更新

    誤った理由 2025年4月は更新の月で、作成は令和3年10月です。掲載ページの表記に合わせました。

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