不登校の現状と構造的背景
11年連続増加の背景、学校種別の内訳、民間の団体・施設で支援を受ける子どもの増加
出典を示していない収支試算の単価・金額は、説明用に仮定した数値であり、統計に基づく相場ではない。事業計画を作る際は、対象施設の状態や立地、事業内容に応じた見積もりと実績を用いる。出典を示した統計や事例の金額は、この仮定とは区別して参照する。
令和5年度の不登校児童生徒数(11年連続増加・過去最多)
346,482人
廃校活用による施設費削減効果(通常賃借は月20〜40万円)
月0〜5万円
NPO法人設立に要する期間(補助金申請の前提)
3〜5ヶ月
34万人を超えた不登校
令和5年度における小・中学校の不登校児童生徒数は346,482人で、前年度の299,048人から47,434人(15.9%)増えた。11年連続の増加で、過去最多である。高等学校を含めると不登校生徒数はさらに多い。
| 区分 | 令和5年度 | 令和4年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 小学校 | 130,370人 | 105,112人 | +25,258人 |
| 中学校 | 216,112人 | 193,936人 | +22,176人 |
| 合計 | 346,482人 | 299,048人 | +47,434人 |
増加率は15.9%で、前年度の22.1%より下がった。文部科学省は、増加の背景として次のようなことが考えられるとしている。
- 児童生徒の休養の必要性を明示した教育機会確保法の趣旨が浸透するなどして、保護者の学校に対する意識が変わった
- コロナ禍の影響で、登校する意欲が下がった
- 特別な配慮を必要とする児童生徒への、早期からの適切な指導や必要な支援に課題があった
民間の団体・施設で支援を受ける子ども
フリースクールは、学校に通えない子どもたちに 学習・生活・社会参加の場 を提供する民間教育支援施設である。学校外の「民間団体、民間施設」で専門的な相談・指導等を受けた不登校の小・中学生は、令和元年度の6,328人から令和5年度は15,431人になった。同じ令和5年度に教育支援センターで相談・指導等を受けたのは30,365人である。
フリースクールの制度的位置づけ
教育機会確保法の意義、学籍・出席扱いの問題、法的位置づけの現在地
教育機会確保法の意義
2016年12月に公布された 「教育機会確保法」(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)は、フリースクール等の多様な学習機会を「公的に認める」方向性を示した画期的な法律だ。
主なポイントは以下のとおりだ。
- 不登校を「問題行動」と捉えず、休養の必要性を認めること
- 学校以外の多様な学習機会(フリースクール等)の確保が国・自治体の責務として位置づけられたこと
- 特別な事情がある場合の夜間中学等での就学機会の確保
学籍・出席扱いの問題
フリースクールに通う子どもの多くは、在籍する学校に籍を置いたまま利用する。学校長の判断によりフリースクールへの出席を「出席扱い」とすることが可能となっているが、その適用は自治体・学校によってばらつきが大きい。
学校外の機関等で専門的な相談・指導等を受け、指導要録上の出席扱いになった不登校の小・中学生は、令和5年度で38,632人(前年度32,623人)だった。文部科学省の調査でいう「学校外の機関等」は、教育支援センター、児童相談所、保健所、病院、民間団体、民間施設などを指す。
法的認可は不要
フリースクールの運営は 法的認可が不要 である。学校教育法に基づく「学校」ではないため、文部科学省や都道府県の認可を取得する必要がない。ただし、NPO法人格を取得することで、自治体の補助金申請に有利になるケースが多い。
廃校活用のメリット
施設費削減・空間特性・地域連携の3つの優位性
メリット1:施設費の大幅削減
フリースクールの収益性の最大の課題のひとつが 施設費 である。都市部では教室・スタジオ等の賃借だけで月20〜40万円を要することがある。廃校活用により、この固定費を 月0〜5万円 まで削減できれば、事業の継続性は飛躍的に高まる。
施設費の削減は、保護者負担額を下げる ことにも直接的につながる。経済的に困難な家庭の子どもこそ支援が必要なケースが多い中、廃校活用は「支援が届きにくい家庭への手が届く」構造を作りうる。
メリット2:空間の親和性
廃校のもつ物理的空間は、フリースクールが必要とする環境と驚くほど一致している。
- 教室: 少人数の学習活動、アートや工作のアトリエに転用可能
- 体育館: 運動・表現活動・大人数イベントに活用可能
- 図書室: 読書・調べ学習・居場所として機能
- 校庭・農園: 野外活動・農業体験・自然学習の場
- 給食室・家庭科室: 料理・食育プログラムの実施
「かつての学校」という空間は、学校から距離を置いた子どもたちにとっても、馴染みのある安心感のある環境として機能することが多い。
メリット3:地域との連携
廃校を活用することで、地域コミュニティとの連携が自然に生まれやすい。地域の高齢者・農家・職人等と子どもたちをつなぐ 「地域まるごと学校」 的な機能を持てることが廃校フリースクールの大きな強みだ。これは都市部の賃貸施設では実現しにくい。
収益モデル:保護者負担+補助+寄付
3本柱の収益構造と廃校による固定費削減の効果
3本柱の収益構造
フリースクールの収益モデルは、一般的に以下の3本柱で構成される。
第1の柱:保護者負担(月謝) 月3〜8万円の保護者負担が標準的だ。廃校活用で施設費を削減できれば、負担額の下限を抑えることができる。
第2の柱:自治体補助・委託 フリースクールへの補助制度を設けている自治体がある。制度の内容は自治体によって異なる。また、不登校支援の委託事業として自治体から運営費補助を受けるケースもある。
第3の柱:寄付・助成金 NPO法人であれば、休眠預金活用事業・民間財団・共同募金等の助成金申請が可能だ。初期費用・改修費・プログラム費の充当に活用できる。
廃校活用による収支シミュレーション
前提条件
- 在籍者: 20名
- 月謝: 5万円/名
- 自治体助成: 1万円/名
- 寄付・助成金: 年間100万円
| 収入項目 | 月間金額 |
|---|---|
| 月謝収入 | 100万円 |
| 自治体助成 | 20万円 |
| 寄付・助成金(月換算) | 約8万円 |
| 収入合計 | 約128万円 |
| 支出項目 | 廃校活用 | 通常賃借 |
|---|---|---|
| 施設費 | 0〜5万円 | 25〜40万円 |
| 人件費(スタッフ3名) | 約75万円 | 約75万円 |
| プログラム費・消耗品 | 約15万円 | 約15万円 |
| その他 | 約10万円 | 約10万円 |
| 支出合計 | 約100〜105万円 | 約125〜140万円 |
| 月間収支差 | 約23〜28万円 | 約▲12〜+3万円 |
廃校活用の場合は月間収支が黒字(約23〜28万円)となるのに対し、通常賃借では収支がギリギリか赤字になりうる。廃校活用が事業継続性の鍵を握ることがよくわかる。
課題と克服策
収益の不安定性・人材確保・NIMBY・認知度向上への対処法
課題1:収益の不安定性
フリースクールの収益の中心は保護者負担(月謝)であり、在籍者数の変動が収益に直結する。不登校の子どもはしばしば状況が変化し、突然通わなくなることもある。
克服策: 最低稼働ラインを設定し、それを下回る場合の対応(定員変更・スタッフ体制の調整)を事前に計画する。自治体の委託事業化により固定的な収入を確保することが、収益安定化の最も有効な方法だ。
課題2:人材確保
フリースクールで求められる人材は、学習支援・カウンセリング・生活支援等の複合的なスキルを持つ人材であり、資格要件はないが 実質的な専門性 が求められる。廃校が所在する過疎地では、そうした人材の確保がさらに難しい。
克服策: 「住み込みスタッフ」「地域おこし協力隊との連携」「遠隔での学習支援(オンライン授業)の組み合わせ」といった創意工夫が有効だ。
課題3:NIMBY問題と認知度
廃校に「学校に通えない子どもたち」が集まる施設を開設することへの地域住民の不安が生じるケースがある。
克服策: 地域向けの開放イベント・農業体験・ワークショップ等を定期的に開催し、地域住民と子どもたちが交流できる機会を設けることで、相互理解が深まる。「地域コミュニティの場」として機能させることが、NIMBY問題の最も根本的な解決策だ。
成功事例
廃校フリースクールの先行事例から学ぶ共通要因
廃校フリースクールの先行事例に共通する要因
廃校フリースクールの先行事例を分析すると、以下の共通要因が浮かび上がる。
- 自治体との共同開発: 自治体が「不登校支援の充実」という政策目標として廃校フリースクールを位置づけ、低額賃借・補助金・広報支援を提供している
- 複合機能の設計: フリースクールのみならず、放課後等デイサービスや学童保育等を複合させることで収益の多元化と利用者の多様化を実現している
- 「探求的学習」のカリキュラム: 教科書通りの学習ではなく、農業・ものづくり・地域探求・アート等の体験型学習を中心に据えることで、学校になじめなかった子どもたちが生き生きと学べる環境をつくっている
- 卒業後の進路支援: フリースクール卒業後の進路(高校進学・就労等)を見据えた支援を組み込むことで、保護者の安心感が増す
開設に向けた3つの準備
地域の不登校実態と既存資源を調べる
対象地域の不登校児童生徒数・既存フリースクールの定員・待機者数・自治体のフリースクール支援制度の有無を調査する。自治体の教育委員会に問い合わせることで、概況を把握できることが多い。
自治体教育委員会に意向打診する
フリースクールへの廃校転用に関心があることを自治体の教育委員会に打診する。特に不登校支援の充実に積極的な自治体では、廃校活用との組み合わせに前向きな反応が得られやすい。
NPO法人格を取得して設立準備を進める
フリースクール運営は法的認可不要だが、NPO法人格を取得することで自治体補助金・民間助成金の申請が容易になる。設立には3〜5ヶ月程度を要する。
廃校活用の具体的な手続きについては「廃校活用の全手順:施設選定からプロポーザルまでを完全解説」を参照されたい。廃校活用で使える補助金については「廃校活用で使える補助金6省庁分まとめ」で詳しく解説している。
廃校活用の進め方:実態調査の数、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分の手続き、国の補助制度
実態調査の数と用途が決まらない理由、活用用途を募集する廃校の一覧、財産処分が報告で済む場合と国庫納付金が要らない場合、国庫補助制度の一覧
廃校×福祉施設の収支モデル
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