静岡市 城北公園 Park-PFI — 住民訴訟による事業中断から公園全体再整備への転換
静岡市は 2021 年 3 月城北公園に Park-PFI(公募設置管理制度)を導入し、フジ都市開発を代表とする「つなぐ公園プロジェクト」共同事業体を認定計画提出者に決定した。スターバックスコーヒー + アソビコムの事業スキームだったが、2022 年 4 月にスターバックスが出店を辞退、同年 5 月の住民訴訟提起で事業は一時中断した。2024 年 3 月の判決確定(原告敗訴)を経て、市は公園全体を再整備する方針へ転換した経緯を解説する。
ざっくり言うと
- 静岡市 城北公園 Park-PFI は 2021 年 3 月事業者決定、フジ都市開発を代表とする 5 社共同事業体「つなぐ公園プロジェクト」
- 提案施設はスターバックスコーヒー + アソビコム(全天候型屋内子ども遊び場)、A ゾーン(収益施設)+ B ゾーン(駐車場 + 通路)の分割設計
- 2022 年 4 月にスターバックスが出店辞退、同年 5 月の住民訴訟提起で事業一時中断、2024 年 3 月判決確定(原告敗訴)後は公園全体の再整備方針へ転換
事業の概要
事業者決定日・認定計画提出者・提案施設・テナント撤退・訴訟決着までの経緯
事業者決定
2021年3月
選定委員会3/23
共同事業体
5社
フジ都市開発代表
住民訴訟提起
2022年5月
事業一時中断
判決
2024年3月
原告敗訴、4/12確定
静岡市 城北公園は静岡市葵区に位置する都市公園である。静岡市は 2021 年 3 月 23 日に城北公園 Park-PFI 事業者選定委員会を開催し、3 事業者の応募案件を審査したうえで認定計画提出者を決定した。決定されたのは「つなぐ公園プロジェクト」共同事業体で、フジ都市開発株式会社を代表企業とし、木内建設株式会社 / 戸﨑建設株式会社 / 株式会社フジヤマ静岡支店 / 株式会社サンの 4 社を構成企業とする 5 社共同事業体である。
提案された施設はPark-PFI(公募設置管理制度)に基づくスターバックスコーヒーのカフェとアソビコム(全天候型屋内子ども遊び場)を中心とする収益施設群である。しかし 2022 年 4 月 26 日、スターバックスコーヒージャパンが樹木伐採への住民反発を踏まえ出店を辞退した。さらに同年 5 月 19 日・20 日、住民が施設建設と管理に関する基本協定書の差し止めを求めて静岡地方裁判所に提訴し(2 事件の共同訴訟)、Park-PFI に基づく事業は一時中断となった。
2024 年 3 月 28 日、静岡地方裁判所は原告の請求を棄却する判決を言い渡し、同年 4 月 12 日に確定した。市はこれを受けて一部区域限定の Park-PFI 事業をそのまま再開するのではなく、公園全体を再整備する方針へ転換し、同年 10 月から住民アンケートを実施した。
事業スキームと提案施設
スターバックスコーヒー + アソビコムの収益モデルと A/B ゾーン分割(2021 年当初提案)
2021 年の当初提案時点で、城北公園 Park-PFI の事業スキームは A / B の 2 ゾーンに分割されていた。A ゾーンは収益施設群(スターバックスコーヒー カフェ + アソビコム 全天候型屋内子ども遊び場)を配置する民間活用ゾーンである。B ゾーンは駐車場 + 通路 + 公共整備のエリアで、認定計画提出者が管理運営を担う設計だった。
| ゾーン | 内容 | 役割 |
|---|---|---|
| A ゾーン | スターバックスコーヒー + アソビコム | 収益施設(民間活用) |
| B ゾーン | 駐車場 + 通路 + 公共整備 | 認定計画提出者が管理運営 |
スターバックスコーヒーは全国展開のカフェチェーンとして集客ポテンシャルが高く、収益施設の中核として事業性を確保する設計だった。アソビコムは全天候型(雨天でも使える)の屋内子ども遊び場で、天候リスクに依存しない収益基盤を補完する設計だった。カフェの大人向け需要と子ども遊び場の家族需要を組み合わせ、公園利用者の幅広い受け入れを意図していたが、前述のとおりスターバックスは 2022 年 4 月に出店を辞退しており、この A / B ゾーン案は当初提案の姿にとどまる。
5 社共同事業体の職種構成
フジ都市開発(代表)+ 建設 4 社
「つなぐ公園プロジェクト」共同事業体はフジ都市開発(代表企業、地域不動産開発)+ 建設 4 社の 5 社構成をとる。建設 4 社は木内建設株式会社 / 戸﨑建設株式会社 / 株式会社フジヤマ静岡支店 / 株式会社サンで、いずれも静岡地域に拠点を持つ地元建設企業である。
この職種構成は当初、地元資本 + 全国ブランド(スターバックス)の組み合わせで事業性と集客力を両立する設計だった。地元建設企業の参画は施設建設の地元発注 + 地元雇用に寄与する意義をもつが、全国ブランドのスターバックスコーヒーが 2022 年 4 月に撤退したことで、地元性と全国性の両立という当初の事業スキームの特徴は成立しなくなった。
住民訴訟の発生メカニズムとその後
住民合意形成の不足、樹木伐採への反発、訴訟決着と公園全体再整備への転換
2022 年 5 月 19 日・20 日に提起された住民訴訟(2 事件の共同訴訟)の具体的な争点は、施設建設と管理に関する基本協定書の差し止めである。争点の詳細は訴訟資料の一次確認が必要だが、Park-PFI 事業の住民訴訟事案として典型的な争点は 2 つに分類できる。
第一に、樹木伐採 / 景観変更への反発である。歴史ある都市公園の樹木伐採は周辺住民の感情的反発を招きやすい。第二に、施設立地の妥当性への疑問である。収益施設の立地が住民の従来の公園使用に支障を来す場合、反発が生じる。城北公園の事案でも、住民はまず 2022 年 3 月 8 日に住民監査請求を提起し(同年 4 月 20 日棄却)、樹木伐採への反発を主な理由に運動を継続した。
住民訴訟の提起に先立つ 2022 年 4 月 26 日、スターバックスコーヒージャパンはテナントとしての出店を辞退した。地域住民をつなぐ場としての役割を果たせないと判断したためである。訴訟自体は 2024 年 3 月 28 日に静岡地方裁判所が原告の請求を棄却する判決を言い渡し、同年 4 月 12 日に確定した。市側の主張は認められた形だが、判決確定後も一度離脱したテナント企業は戻らず、市は一部区域限定の Park-PFI 事業をそのまま再開するのではなく、公園全体を再整備する方針へ転換した。2024 年 10 月からの住民アンケート、同年 12 月の住民説明会を経て、2025 年には地域住民や公園愛護会等が参加する懇談会が設置され、公園の管理・利活用のあり方が引き続き協議されている。
法廷闘争に勝訴しても、離脱したテナント企業や住民の信頼がそのまま回復するわけではない。城北公園の事案は、住民合意形成の不足が訴訟だけでなく事業パートナーの離脱も招き、事業計画そのものの再設計を迫られ得ることを示している。
他自治体への示唆
住民合意形成を Park-PFI 公募設計時に組み込む具体手法
城北公園を反面教師として参考にする自治体が押さえるべきポイントは 3 点ある。
第一に、Park-PFI 公募設計時から住民合意形成のプロセスを組み込む。サウンディング(民間意見聴取)だけでなく住民説明会を複数回実施し、樹木伐採 / 景観変更 / 施設立地の各観点で住民意見を反映する手続きを制度化する。
第二に、収益施設の立地選定は住民の従来の公園使用パターンに与える影響を事前分析する。歩行動線 / 静穏エリア / 憩いの場の従来利用と収益施設の立地が競合する場合、住民合意形成が困難となるリスクを認識する。
第三に、訴訟で勝訴しても事業パートナーの離脱や住民の不信感は自動的に解消しないことを前提に計画する。城北公園の事案では、判決確定後も当初のテナント企業は戻らず、市は一部区域限定の再整備から公園全体の再整備へと計画を転換した。事業中断からの復旧は「元の計画への復帰」ではなく「計画自体の再設計」を要する可能性を、事業計画の段階から織り込む必要がある。
Park-PFI 完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続き・事例を網羅的に解説
Park-PFI 失敗パターン
全国の失敗・中断事例から学ぶリスク要因
Park-PFI 事例集
全国の Park-PFI 事例を類型別に整理