事業の概要
供用開始日・事業者・契約期間・名古屋市第1号公園としての歴史的位置付け
開園
1909年
明治42年11月19日。名古屋市が設置した最初の公園
事業期間
20年
2022年4月-2042年3月
TSURUMA GARDEN 開業
2023年5月27日
矢作地所グループ
鶴舞公園は名古屋市昭和区に立地する名古屋市第1号公園である。開園は明治42年(1909年)、100年を超える歴史をもつ都市公園で、バラ園 / 噴水塔 / 奏楽堂(音楽堂)等の歴史的建造物を有する。名古屋市民の憩いの場として長く親しまれてきた。
この公園に 2022年4月1日からPark-PFI(公募設置管理制度)が導入された。認定計画提出者は鶴舞公園整備運営事業共同事業体で、代表企業は矢作地所株式会社である。構成企業は電通名鉄コミュニケーションズ / ヤハギ緑化 / 日比谷花壇 / ホーメックス(名古屋支店)の4社で、代表企業と合わせて5社共同事業体を構成し、事業期間は 20年で 2042年3月31日までとなる。2023年5月27日には Park-PFI による商業施設「TSURUMA GARDEN(ツルマガーデン)」が開業した。
歴史的公園への Park-PFI 導入
100年超の公園に民間活用を導入する保存 + 活用の両立設計
鶴舞公園の特徴は 100年超の歴史をもつ歴史的公園に Park-PFI を導入したことにある。鶴舞公園の事業スキームでは歴史的建造物(奏楽堂 / 噴水塔 / バラ園)の保存を前提としつつ、その周辺に便益施設を新設して収益を確保する設計をとる。歴史的建造物の保存費用は便益施設の商業収益で部分的に賄われ、特定公園施設(公共整備)の更新も収益で賄う構造である。
保存要件は名古屋市の上位計画で明示的に定義されており、Park-PFI 事業者は便益施設の立地 / 設計 / 運営で歴史的景観を損なわないよう、事前に空間デザイン原則を遵守する制約を負う。
矢作地所主導の5社共同事業体
不動産 / 広告 / 緑化 / 花壇 / 施設運営の多職種コンソーシアム
鶴舞公園の事業スキームで注目されるのは代表企業が地元有力不動産企業(矢作地所)である点である。全国の Park-PFI 事案では大手不動産デベロッパー(三井・三菱・東急等)が代表企業を務めるケースが多いが、鶴舞公園では地元企業が主導する。
この背景には名古屋市が地元企業の参画を公募条件で促進した判断がある。地元企業の参画は地域経済の循環を高め、公園整備の便益を地元に還元する効果をもつ。5社の役割分担は以下のとおり明確に分業されている。
| 構成企業 | 役割 |
|---|---|
| 矢作地所(代表) | 不動産開発 + 事業統括 |
| 電通名鉄コミュニケーションズ | 広告 / プロモーション |
| ヤハギ緑化 | 緑化 / 植栽 |
| 日比谷花壇 | 花壇整備 |
| ホーメックス(名古屋支店) | 施設運営 |
各社の専門性を組み合わせることで歴史的公園の複合ニーズに対応する。
名古屋2例目としての位置付け
久屋大通公園に続く名古屋の Park-PFI 展開戦略
鶴舞公園は名古屋市の Park-PFI 事案として2例目にあたる(1例目は 2020年開業の久屋大通公園)。1例目の久屋大通公園が都心中枢 + 独立採算型で三井不動産主導だったのに対し、2例目の鶴舞公園は郊外 + 歴史的公園 + 地元企業主導という異なる事業モデルとなる。
このコントラストは名古屋市が Park-PFI 制度を都心 + 郊外の双方で展開する戦略をもつことを示唆する。
他自治体への示唆
歴史的公園への Park-PFI 導入を検討する前提条件
鶴舞公園を参考にする自治体が押さえるべきポイントは3点ある。
第一に、歴史的公園への Park-PFI 導入は保存要件の明示的な定義が前提となる。上位計画で保存範囲(歴史的建造物 / 樹木 / 景観)を事前に確定し、便益施設の立地 / 設計制約を公募設置等指針で明示する。この事前準備なしに公募を開始すると、応募事業者と保存派住民の事後対立が発生する。
第二に、地元企業を代表企業とする事業スキームは地域経済循環に効果的だが、資本力の制約が事業性を圧迫するリスクがある。多職種コンソーシアム構造で大手企業を構成企業に加える設計が補完策となる。
第三に、都心 + 郊外の双方で Park-PFI を展開する名古屋市モデルは中規模都市が参考にできる汎用性をもつ。
Park-PFI 完全ガイド
公募設置管理制度の仕組み・手続き・事例を網羅的に解説
久屋大通公園 Hisaya-odori Park の独立採算型 Park-PFI
名古屋1例目・日本最大級 Park-PFI の事業スキーム
Park-PFI 事例集
全国の Park-PFI 事例を類型別に整理
次にやること
事例を参考に事業を検討する際は、対象公園との条件の違いを確認する。
| 順 | 確認・検討すること | 担当・相談先 |
|---|---|---|
| 1 | 事例と対象公園の面積、立地、利用者層を比較する。人口規模だけで事業性を判断しない | 公表資料、対象公園の調査資料 |
| 2 | 事例の自治体が公表した公募設置等指針と選定結果を確認する。公開されていない資料は担当課に照会する | 事例の自治体の公園担当 |
| 3 | 指針の使用料の最低額と、選定された提案の金額を比較する | 公募設置等指針、選定結果 |
| 4 | 対象公園の既存施設の建築面積と、条例で定める建蔽率を確認する | 公園担当 |
| 5 | 対象公園の条件と事例の実績を示して、民間事業者の参入意向と必要な条件を聞く | サウンディング |
事例を対象公園に当てはめる際は、公募条件と選定された提案を確認する。面積や立地、利用者層の違いも踏まえて、参考にできる条件を整理する。
この建蔽率の上乗せは、休養施設等と公募対象公園施設のそれぞれに10%が付くのではなく、両方あわせて10%である。既に休養施設や運動施設で12%に達している公園では、公募対象公園施設として便益施設を新たに設置することはできない。この10%も通常の2%も法令上参酌すべき割合で、実際の割合は各地方公共団体が条例で定める。