廃校の活用を始める前に、国の資料で確かめることを並べる。文部科学省の実態調査で廃校の数と用途が決まらない理由を見て、同省の活用用途を募集している廃校施設の一覧、財産処分の通知、国庫補助制度の一覧、事例集の順に開く。用途ごとの制度と条文は、それぞれの記事に載せた。
廃校の数と用途が決まらない理由
実態調査の廃校の数、活用されていない廃校の内訳、主な活用用途、用途が決まっていない理由と地域住民からの意向聴取
平成16年度から令和5年度に発生した廃校
8,850校
小学校5,799校、中学校1,835校、高等学校等1,216校(令和6年5月1日現在)
施設が現存する7,612校のうち、活用されているもの
5,661校
74.4%。活用されていないものは1,951校(25.6%)
活用されていない1,951校のうち、用途が決まっていないもの
1,503校
施設が現存する廃校の19.7%
文部科学省の実態調査は、全国の公立の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校を対象に、廃校の数、活用の状況、活用に向けた検討の状況を調べている。平成16年度から令和5年度に発生した廃校8,850校のうち、施設が現存しているのは7,612校(86.0%)で、1,238校(14.0%)は現存する施設が無い。現存する7,612校のうち活用されていない1,951校は、用途が決まっている235校(3.1%)、決まっていない1,503校(19.7%)、取壊しを予定している213校(2.8%)に分かれる。
主な活用用途は、校舎と屋内運動場を分けて数えた複数回答の件数で、学校(大学を除く)4,191件(40.5%)が最も多く、社会体育施設1,693件(16.4%)、企業等の施設・創業支援施設1,207件(11.7%)、社会教育施設・文化施設1,206件(11.7%)、福祉施設・医療施設等735件(7.1%)と続く。件数は校数ではない。用途ごとの件数と前回調査との違いは、廃校活用の用途別比較の記事に載せた。
文部科学省は、全国で毎年約450校程度の廃校施設が生じていると書いている。同省の実態調査を年度別に見ると、2016年度以降は毎年279〜405校で450校に達した年はなく、2023年度は298校である。都道府県別の廃校の数は、北海道が859校で最も多く、岩手県331校、福島県330校、東京都300校と続く。
用途が決まっていない理由は複数回答で、校舎(n=2,177)では「地域等からの要望がない」903件(41.5%)と「建物が老朽化している」902件(41.4%)が多く、「立地条件が悪い」387件(17.8%)、「財源が確保できない」327件(15.0%)と続く。地域住民から意向を聞いたかについては、校舎(n=7,211)の3,580件(49.6%)、屋内運動場(n=7,144)の3,850件(53.9%)が「実施していない」だった。
廃校活用の2026年動向:実態調査の内訳、用途が決まらない理由、住民への聞き取り、国の動き
前回調査と並べた実態調査の数、用途が決まっていない理由と地域住民からの意向聴取の表、住民への聞き取りの方法
活用用途を募集している廃校の一覧
文部科学省の一覧の中身、更新の頻度、問い合わせ先、自治体が掲載を頼むときの様式
文部科学省は、地方公共団体の希望に基づいて、各地方公共団体が活用方法や利用者を募集している未活用の廃校施設等の情報を集め、一覧にして公表している。一覧は毎月更新され、いま載っているのは令和8年9月1日現在の情報に基づく版で、募集を終えていたり募集の内容が変わっていたりする場合もある。掲載内容への質問や応募の方法は、直接、地方公共団体の施設担当窓口に問い合わせる。
目次には、都道府県、市区町村、学校、所在地が施設ごとに1行ずつ並び、施設によっては「NEW!! 9/1」や「更新」と書き添えてある。一覧は目次のほかに、北海道から九州2(鹿児島)までの地域別のPDF12ファイルで出ている。
新しく掲載を希望する地方公共団体と、載っている情報を更新する地方公共団体は、事務連絡に従って文部科学省の施設助成課に連絡する。様式1は活用用途募集廃校施設一覧の様式、様式2は一覧から削除を依頼する申請書である。
「みんなの廃校プロジェクト」は使えるのか:登録された廃校から事業化につなげるための実務ガイド【2026年版】
一覧の読み方、自治体の掲載の申し込み方、事業者の問い合わせの手順、廃校活用推進イベントの使い方
財産処分の手続き
令和8年3月31日付けの通知で、手続きが要らない処分、報告で済む処分、国庫納付金が要らない処分と、それ以外の国庫納付金
公立学校施設整備費補助金等を受けて整備した学校施設を処分制限期間内に学校教育以外の用途で使うときは、その施設を所管する地方公共団体が、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律に基づいて文部科学大臣の承認を受け、国庫補助相当額を国庫に納める手続が要る。文部科学省は、一定の要件を満たせば国庫納付をせず報告書の提出で手続が済むようにするなど、手続の簡素化を図っている。
要件は令和8年3月31日付けの通知に書いてある。廃校の活用に関わる扱いを並べると、次のとおり。
| 処分の内容 | 手続き | 国庫納付金 |
|---|---|---|
| 学校教育に使っていない廃校施設などを、手を加えずに一時的に、公益に資する用途に転用・貸与する | 財産処分に当たらず、手続きは要らない | 財産処分に当たらない |
| 国庫補助事業の完了後10年以上たった建物等を、無償で処分する | 報告書を出せば、承認があったものとみなされる | 要らない |
| 通知の別表1に並ぶ処分。統合や別敷地への移転などで廃校になった学校の建物等で、その統合などに国庫補助を受けたものを、営利を目的とせず利益もあげない公共用・公用の施設に転用するもの、特別支援学校などの学校に使うための転用と無償の貸与・譲渡など | 報告書を出せば、承認があったものとみなされる | 要らない |
| 国庫補助事業の完了後10年以上たった建物等を有償で処分し、国庫に納めることになる補助金相当額以上を、学校の施設整備に充てる基金に積み立てる | 承認を申請する | 要らない |
| 上のどれにも当たらない処分 | 承認を申請する | 原則として、処分する部分の残存価額に対する補助金相当額。期間を限った貸与では、その期間の残存価額の減少額に対する補助金相当額。適正な対価で有償処分するときは、残存価額に対する補助金相当額を上限に、処分で生じる収益のうちの補助金相当額 |
報告で済む処分でも、学校施設に不足を生じる場合は、承認があったものとはみなされない。報告書に記載事項の不備など必要な要件が欠けている場合も同じである。10年は、国庫補助事業の完了から数える。地方公共団体が地域再生計画の認定を申請し、内閣総理大臣の認定を受けたものは、地域再生法第18条により文部科学大臣の承認を受けたものとみなされ、通知の手続きは要らない。この場合は、国庫補助事業の完了後10年を経ていないものも対象になる。市区町村が申請書や報告書を出すときは、都道府県教育委員会を経由する。
通知は、財産処分をする設置者に、学校施設に不足が生じないことや、児童生徒等の安全と教育環境への配慮が十分であることなど、学校教育の円滑な実施に支障が生じないことをあらかじめ確かめ、地域住民の理解を得るよう努めることを求めている。
文部科学省のページには、この通知のほか、「公立学校施設整備費補助金等に係る財産処分手続の概要」「財産処分手続必要書類一覧(令和8年3月31日時点)」「財産処分手続ハンドブック(令和8年3月)」が載っている。
廃校の財産処分:手続きが要らない場合、報告で済む処分、国庫納付金と基金、必要書類と提出の時期
手続きが要らない場合、報告で済む処分と承認が要る処分、国庫納付金の算定と基金への積立て、必要書類と提出の目安
廃校活用の全手順:施設選定からプロポーザルまでを完全解説【2026年版】
現況調査、財産処分手続き、用途変更と建物調査、サウンディング、プロポーザルの7ステップ
国の補助制度
令和8年4月現在の国庫補助制度の一覧に載る、対象となる転用施設等、事業名、所管官庁
文部科学省は、廃校施設の活用に使える主な国庫補助制度を、対象となる転用施設等ごとに一覧にしている。令和8年4月現在の一覧に載る事業は次のとおり。
| 対象となる転用施設等 | 事業名 | 所管官庁 |
|---|---|---|
| 地域スポーツ施設 | スポーツ振興くじ助成(地域スポーツ施設整備助成) | スポーツ庁 |
| 国の重要文化財に指定又は国の登録有形文化財に登録された建造物 | 重要文化財(建造物)修理、防災、公開活用事業、登録有形文化財(建造物)修理等事業、高付加価値化された文化財への改修・整備促進事業 | 文化庁 |
| 埋蔵文化財の公開及び整理・収蔵等を行うための設備整備事業 | 地域の特色ある埋蔵文化財活用事業(国宝重要文化財等保存・活用事業費補助金) | 文化庁 |
| 児童福祉施設等(保育所を除く) | 次世代育成支援対策施設整備交付金 | こども家庭庁 |
| 保育所等、小規模保育事業所等 | 就学前教育・保育施設整備交付金、保育対策総合支援事業費補助金 | こども家庭庁 |
| 放課後児童クラブ | 放課後子ども環境整備事業 | こども家庭庁 |
| 放課後のこどもの居場所 | 保育対策総合支援事業費補助金(放課後居場所緊急対策事業) | こども家庭庁 |
| 私立認定こども園 | 就学前教育・保育施設整備交付金 | こども家庭庁 |
| 障害者施設等 | 社会福祉施設等施設整備費補助金 | 厚生労働省 |
| 地域間交流・地域振興を図るための生産加工施設、農林漁業等体験施設、地域芸能・文化体験施設等(過疎市町村等が実施する過疎地域の廃校舎の遊休施設を改修する費用が対象) | 過疎地域持続的発展支援交付金(過疎地域遊休施設再整備事業) | 総務省 |
| 農山漁村における所得の向上と雇用の創出を図る取組に必要な施設等 | 農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策のうち地域資源活用価値創出整備事業(農泊推進型))、農山漁村振興交付金(地域資源活用価値創出対策のうち地域資源活用価値創出整備事業(定住促進・交流対策型)) | 農林水産省 |
| 交流施設等の公共施設 | 林業・木材産業循環成長対策のうち木材需要拡大・木材産業基盤強化対策(うち木造公共建築物等の整備)、林業・木材産業国際競争力強化総合対策のうち建築用木材供給・利用の強化(うち木造公共建築物等の整備) | 林野庁 |
| 立地適正化計画に位置付けられた誘導施設(医療施設、社会福祉施設、教育文化施設、子育て支援施設)等 | 都市構造再編集中支援事業 | 国土交通省 |
| まちづくりに必要な地域交流センターや観光交流センター等の施設 | 社会資本整備総合交付金(都市再生整備計画事業) | 国土交通省 |
| 空家等対策計画に基づき市町村が実施する空き家の活用で、地域活性化のための計画的利用に供されるもの(宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設等) | 空き家対策総合支援事業、社会資本整備総合交付金(空き家再生等推進事業) | 国土交通省 |
| 地方公共団体の自主性と創意工夫に基づく地域独自の取組を、計画から実施まで後押しする | 地域未来交付金(地域未来推進型) | 内閣府 |
みんなの廃校プロジェクトのページは、補助事業には要件があり、各補助制度の詳しいことは所管官庁の担当部署に問い合わせるよう書いている。補助の割合、上限、申請できる団体は、次の記事に載せた。
廃校活用で使える補助金6省庁分まとめ【2026年版】
文部科学省の令和8年4月現在の一覧と各省の資料で、補助の割合と申請できる団体を整理した記事
事例集と用途ごとの記事
事例集47事例の契約の形、学校から用途を変えるときの確認、用途ごとに条文と国の資料で確かめた記事
文部科学省の事例集は47事例を載せ、事例ごとに活用用途と契約の形を書いている。47事例の契約の形は、転用18事例、無償貸与15事例、有償貸与8事例、有償譲渡3事例、土地は有償譲渡で建物は無償譲渡2事例、土地は有償貸与で校舎は無償貸与1事例である。
建物の用途を変えて、別表第一(い)欄の用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるものにする場合は、確認の手続きの規定が準用される。児童福祉施設等は別表第一(い)欄(二)項の用途に類するもので、確認が要らない類似の用途の組に学校は挙がっていない。学校から児童福祉施設等に用途を変え、その用途に使う部分の床面積の合計が200㎡を超えるときは、確認の手続きが要る。ほかの用途と用途地域は、用途別比較の記事に条文で載せた。
廃校活用事例47選:文部科学省データから読む成功パターンと失敗要因【2026年版】
事例集47事例の一覧と活用用途、分野ごとの事例
廃校活用の用途別比較:実態調査の件数、事例集47事例の契約の形、用途ごとの建築基準法
用途別件数と校舎・屋内運動場の内訳、活用用途ごとの貸与・譲渡・転用、用途変更の確認と第一種低層住居専用地域
福祉事業者のための廃校活用ガイド:借り方、建物の確認、補助金、指定基準と事例【2026年版】
取得の方法と行政との交渉、建物の調査、補助金・交付金、サービスの種類ごとの設備の基準と事例
廃校×児童福祉(保育所・学童):省令の面積基準と整備費の補助割合、三原市・西海市・四日市市の事例
保育所の設備の基準と改修、学童保育への転用、補助金、校庭と余った教室の使い方
放課後等デイサービス×廃校:報酬の単位数、設備と人員の基準、指定の要件、建物で確かめること【2026年版】
令和6年度改定後の報酬体系、施設基準と改修、法人格の取得から指定申請まで
廃校×観光・宿泊施設:旅館業法の許可、用途地域と消防、農泊の補助、事例集の6事例
旅館業法の許可と構造設備の基準、用途地域と市街化調整区域、消防法施行令の区分
廃校×IT・コワーキング:事例集の10事例、用途地域と市街化調整区域、お試しサテライトオフィスと交付金
実態調査の件数、事例集の10事例の契約の形と改修費、建築基準法と都市計画法の条文、お試しサテライトオフィスの要綱
廃校の用途変更と建築基準法:福祉施設転用時の改修義務【2026年版】
用途変更の確認が要る面積、防火区画・排煙設備・内装制限の条件を条文で確かめた記事
一般社団法人 社会構想デザイン機構(ISVD)では、廃校活用の方針策定から事業者選定まで、自治体の担当者と一緒に進める無料相談を受け付けている。複数の廃校を抱える自治体からの問い合わせを歓迎する。
次にやること
廃校の活用を検討する自治体が、改修の予算を組む前に踏む順に並べる。
| 順 | やること | どこで | 目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 入居予定者を1者でも先に見つける。用途を決めてから探すのではなく、借りる人を決めてから用途を決める | サウンディング、地元事業者 | 1〜3か月 |
| 2 | 耐震診断とアスベスト調査の結果を出す。無ければ先に実施する | 営繕担当 | 2〜3か月 |
| 3 | 2を踏まえた改修費の概算を取る。解体費も同時に出して比べる | 設計事務所 | 1か月 |
| 4 | 財産処分の手続きを確認する。国庫補助を受けた校舎を処分制限期間内に学校以外に使うときは文科省の承認が要る(要件を満たせば報告で済む) | 教育委員会、文科省 | 1〜2か月 |
| 5 | 用途を公表する前に、卒業生・地域団体に説明の場を持つ | 同窓会、自治会 | 1か月 |
1を飛ばすと、用途だけ決まって借り手が現れない状態になる。
さらに詳しく
廃校活用のプロポーザル:選定フローと評価基準の設計【2026年版】
プロポーザル方式で事業者を選ぶ流れと、評価基準の設計
廃校×福祉施設の収支モデル:就労継続支援B型の報酬と施設費を試算する【2026年版】
基本報酬の区分、新しく指定された事業所の特例、施設費の差の出し方と事例
廃校活用の失敗事例:なぜ再び遊休化するのか。撤退・経営破綻の構造的要因
撤退・経営破綻の構造的要因を分析
廃校×農業・6次産業:植物工場・加工場・直売所への転用モデル
植物工場・加工場・直売所への転用モデル